33 騎手力(2)
太陽が優を送り出したオリオンステークスの出走馬は全8頭と、あまり頭数が揃わなかった。
実のところ、芝の長距離路線は近年、空洞化が進んでいる。血統的にスピード豊かな馬が求められるようになり、長距離適性のある競走馬が減ってきたこと、長距離レースを勝っても種牡馬や繁殖牝馬としての価値が上がらず敬遠されるようになったことなどが、要因として挙げられよう。
とは言え、位置取りや展開、仕掛け所、コース取りなど、レースの結果に対して騎手の技量の占める割合が高い長距離戦は、一瞬のミスが命取りとなる短距離戦や、馬の能力通りに決まりやすい中距離戦とはまた違った魅力を持つのも確かである。
第5回阪神競馬4日目 第9レース オリオンステークス
(3歳以上1600万円以下条件 ハンデ戦 芝2400メートル外回り)
1枠1番 イッキュウ 7歳牡馬 54キロ 菅田 満
2枠2番 ガッツマン 5歳牡馬 54キロ マッテオ・ジョバンニ
3枠3番 トツゲキラブハート 3歳牡馬 53キロ 神谷 陽介
4枠4番 レオパルドン 4歳牡馬 52キロ 藤平 優
5枠5番 バーニングサン 4歳牡馬 55キロ ミッシェル・ロベール
6枠6番 ブラックミストラル 3歳牡馬 54キロ ロビー・ジョーンズ
7枠7番 コッペリア 3歳牝馬 52.5キロ 屯田 勝男
8枠8番 インビンシブルマン 8歳牡馬 53キロ 蟹田 仁
少頭数ではあるが、なかなか濃い面子の騎手が揃った一戦となった。
1番人気は、ジョーンズのブラックミストラル。前走はGⅠ菊花賞に参戦し、直線一旦先頭に立つなど見せ場たっぷりの4着。好位からの先行抜け出しを得意としており、この脚質は長距離戦では大きな武器となる。
2番人気は、屯田 勝男のコッペリア。GⅠオークスでは5着と掲示板に載る健闘を見せた。こちらは最後方が定位置ながら、まくりも打てる器用さがあり、鞍上のペース判断が重要となる。屯田は、地方競馬の笠松から44歳で移籍して中央競馬所属となったベテラン騎手で、ファンからはトンカツの愛称で親しまれている。地元では『カラスが鳴かない日はあってもトンカツが勝たない日はない』と言われるほどの名騎手で、中央に来てからも多くの大レースを制している。
3番人気は、ロベールのバーニングサン。長距離重賞のGⅢダイヤモンドステークスで,
格上挑戦ながら3着に入った実績を持つ。逃げ差し自在で、折り合いの不安が全くないのが売り。
4番人気は、ジョバンニのガッツマン。このクラスで4回の2着がある安定勢力。詰めが甘く勝ち切れないため、馬券は連軸として売れるタイプの馬である。もうひと押しを求めてジョバンニを起用した。
5番人気は、菅田のイッキュウ。道中溜めないと伸びないタイプで、器用さには欠ける。7歳という年齢からいい頃に比べると衰えが目立ってきており、これが引退レース。名手のマジックで一発に賭ける。
6番人気は、陽介のトツゲキラブハート。ジリジリと伸びるスタミナ自慢の馬で、早めに先頭に立っての押し切りが理想。この馬が逃げる可能性もあり、展開のカギを握る。
7番人気は、優のレオパルドン。前走で1000万円以下条件を勝ち上がったばかりの格下的存在で、ここでは昇級の壁があると見られている。中団から長く脚を使うタイプで長距離は合うが、切れ味になると分が悪い。最軽量のハンデを生かして、上手く立ち回っての勝利を目指す。
8番人気は、蟹田のインビンシブルマン。逃げか番手での競馬がこの馬のレースパターン。8歳の高齢馬でもあり成績は振るわないが、コンスタントに使える丈夫さがセールスポイント。
出走各馬は、後方で輪乗りしながら静かにゲートインを待っている。スターターがスタート台に登り、いよいよ発走時刻を迎えた。




