205 サバイバル
「今年は優先なしの賞金持ちが多いみたいだから、このままだと厳しいかも知れないわね」
先週で日本ダービーの前哨戦は事実上終了。週が明け、競馬記者の冴から本番の出走予定馬の想定を伝えられた優は、ストロングソーマの出走が現状難しいことを知った。NHKマイルカップを始め他路線に流れた実績馬を差し引いても、予定馬が全て出て来てしまうと同馬の出走順位は20番手前後。回避馬が出なければ除外となる可能性が高いのだ。
同馬を管理する調教師の太陽も当然その情報を把握はしているものの、オーナーの相馬と相談の上、あくまでダービー出走を前提としての調整を決断した。もし除外された場合は、そのまま在厩して翌月のダートのマイル戦、GⅢ・ユニコーンステークスを目指すこととなった。
「GⅠを使った疲れもないし、スー君の出来は物凄く良くなってるよ。元々使って良くなるタイプなのは分かっていたけど、自分からハミをぐいぐい取って走る気を見せているし、デビュー以来一番かも知れない」
普段の調教を付けている太一が、ストロングソーマの好調を伝えて来る。調整は順調そのもの、競走馬にとっては一生に一度の晴れ舞台で愛馬を走らせてあげたいという思いが滲み出ていた。
週末、東京競馬場の5週連続GⅠの第2弾として行われたのは、古馬牝馬によるマイル戦のヴィクトリアマイル。このレースを制したのは、御子柴騎乗の桜花賞馬シロイコイビト。近況が冴えず5番人気にとどまっていたものの、好位追走から早めに先頭に立つと、先行有利の馬場を生かしてそのまま押し切って見せた。
1番人気に推されたオークス馬ラウンドアバウトは、中団から鋭い伸びを見せるも届かず2着。陽介が騎乗した2番人気プレシャスガーデンは、上がり3ハロン最速の末脚で馬群を縫うように追い込んだものの4着に終わった。
全レース終了後、来週の特別レースとともに、その翌週の日本ダービーの登録馬も発表された。
外国所属馬:マルコポーロ
優先出走馬:ゴールドプラチナム(皐月賞1着)
マッハマン (皐月賞2着)
フレイムハート (皐月賞3着)
エナジーフロー (皐月賞4着)
ブルーゲイル (皐月賞5着)
ドンヴォルカン (青葉賞1着)
デッドリーウェイブ(青葉賞2着)
ダンシングヒーロー(プリンシパルステークス1着)
賞金上位馬:ニンリル
テムジン
インドラ
マイフェイバリット
ライディーン
ポテンショメータ
スルスミ
フリーアズアバード
ホダカブロンソン
ワイネルワイバーン
ローリングサンダー
テグザー
ストロングソーマ
クラッチヒッター
ワーカホリック
(以下、収得賞金900万円)
アラマイヤカイザー
イッキトウセン
ヂアミトール
ホワイトブレス
ロハノチャールズ
ワイネルアートマン
回避馬が出ないと仮定するなら、出走可能なのは18位のワイネルワイバーンまで。優のストロングソーマは22位となっており、4頭も回避しないと出られない大変厳しい情勢だ。
実際には、青葉賞2着馬デッドリーウェイブと朝日杯フューチュリティステークス2着馬フリーアズアバードの2頭は、調整を続けているものの前走の疲れが抜けないため、ここは登録のみにとどめて回避する公算が大きい。となると実質ストロングソーマの出走は、ダービー当週の木曜日までにあと2頭のリタイアがあるかどうかにかかっていると言える。
オークス週の水曜木曜は、ダービー出走予定馬が1週前追い切りを消化する。輸送やテンション等を考慮して、これが事実上の本追い切りとなる馬も見られる中、京都新聞杯2着馬ホダカブロンソンに異変が発生した。調教後に歩様が乱れたため検査をしたところ、再びの骨折が判明。
各馬が消耗度と負荷を天秤に掛けたぎりぎりの調整を進める中で、このサバイバルレースから脱落する馬が目立ち始めた。デッドリーウェイブとフリーアズアバードも出走を断念して放牧に出されたため、ストロングソーマの出走順位は現在19番手まで浮上することとなった。
そして迎えた週末。日曜東京メインレースのGⅠ・オークスに、優はお手馬のシルエットバレエで参戦する。




