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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
202/222

202 京都新聞杯

 春の天皇賞が終わり、いよいよ東京競馬場での5週連続GⅠ開催がスタート。第一弾の今週は、3歳限定のマイルGⅠ・NHKマイルカップが行われる。


 日本ダービーを3週間後に控えた今週は、土曜日に京都競馬場でGⅡ京都新聞杯、東京競馬場でトライアルレースのプリンシパルステークスも予定されており、本番の出走馬がほぼ出揃う重要な一週間となる。



 ダービーへの最終便となるこの3つのレース、まずは土曜メインの京都新聞杯が発走時刻を迎える。


 フルゲート16頭が集まったこのレース、馬場状態は先週に引き続きパンパンの良馬場である。ここで1番人気に推されたのは、ホダカブロンソン。皐月賞こそ8着に敗れたが、5着ブルーゲイルとの差はわずか1馬身半。芙蓉ステークスを勝ち、長期休養明けの若葉ステークスでも2着に食い込んだ実績は、唯一の皐月賞組として出走するここでは、大威張り出来るものであった。今回はジョバンニを鞍上に迎え、この一戦に必勝を期している。


 その対抗格と見られているのは、マイフェイバリット。格上挑戦のGⅠ朝日杯フューチュリティステークスで5着に健闘して素質の一端を示したものの、その後は若駒ステークスで2着、スプリングステークスで6着とクラシックロードに乗り損なってしまった格好。それでもトンカツこと屯田騎手がその乗り味の良さに惚れ込んでおり、連闘で挑んだ毎日杯では2着に入って賞金加算に成功。現状坂のない長距離の方がチャンスがあるとのジャッジでここに照準を合わせて来た。


 他にも、共同通信杯を逃げて3着に粘り込んだワイネルアートマン、きさらぎ賞4着ヂアミトール、同5着セイショウオオワシ辺りの重賞好走馬たちが上位を窺うという構図である。


 レースは、ワイネルアートマンとセイショウオオワシの2頭の先行争いで始まった。重賞でハナを切った経験のある両馬だが、どちらもスローの溜め逃げが持ち味だ。テンから無理に急がせてまで争う意志はなく、内枠を引いたセイショウオオワシが頭一つ抜けると、外のワイネルアートマンはあっさり引いて2番手を確保し、すんなりと並びが決まった。


 その後ろは、3番手にヂアミトール、マイフェイバリットはいつもより前目の5番手、今回も差しに回ったホダカブロンソンは12番手という隊列で、集団はそれほど縦長にはならずに1コーナーへと向かって行く。


 馬群に目立った動きもないまま、馬群は向こう正面に到達。逃げるセイショウオオワシが刻んだ1000メートル通過タイムは、1分1秒0。この世代の中距離戦は積極的に飛ばす馬が少なくスローペースが目立っていたが、このレースも馬場状態と距離を考えると、やはりゆったりとしたペースに落ち着いた。

 それでも賞金加算を狙う有力馬たちは、最後の直線までいかに脚を残すかに腐心しており、牽制し合うかのように動かないまま3コーナーへとなだれ込んで行く。


 この辺りからようやく、遅すぎるペースに焦れた差し馬勢の多くが少しでも差を詰めようとにじり寄って来るが、人気のホダカブロンソンの鞍上ジョバンニの手綱はピクリとも動かない。この動きに乗っかって外を回すような競馬では、差し切るのが困難な馬場であると認識しているからである。


 一気にペースが上がり、馬群が大きく横に広がった4コーナー。出し抜けを食わされるのを嫌ったマイフェイバリットの屯田は、先行する3頭を可愛がることもなく早々に先頭を奪うと、内ラチ沿いの進路をしっかりと確保して直線に突入した。

 一方のジョバンニは、あくまでホダカブロンソンの持ち味を生かすレース運び。密集した馬群に息を潜め、そこにほんのわずかなスペースを認めると馬の首を捻じ込んだ。そして外の馬を弾くように強引に馬群を割って出ると、最後の直線を迎えた同馬の前方はオールクリアとなっていた。


 後は、人気2頭の下馬評通りのマッチレースとなった。直線入り口で付けられたおよそ6馬身ほどのビハインドを跳ね返すべく、ジョバンニの激しいアクションに呼応するかのようにホダカブロンソンが猛加速を見せる。

 対するマイフェイバリットは早目のスパートながら、展開と高速馬場を味方に付けて、その伸びは容易には鈍らない。一完歩ごとに差を詰めて来るライバルを尻目に、決定的な失速を見せぬまま粘り込みを図る。


 スタイルを崩してまで馬場に合わせた競馬をしたマイフェイバリットと、自分のスタイルを貫いて全能力の発揮に賭けたホダカブロンソン。対照的な2頭の争いは最終的にゴール前までもつれたが、軍配は前者、マイフェイバリットに上がった。勝ち時計2分12秒9のスロー決着を上がり3ハロン33秒9で手堅くまとめたレースぶりは、そのポジショニングの利を大いに印象付けるものであった。

 1勝馬だった同馬はその収得賞金に2700万円を加えて3100万円とし、ダービー出走を確実なものとした。

 

 これに頭差及ばず2着に敗れたホダカブロンソンだが、実質最後の直線だけの競馬で上がり3ハロン33秒0をマークする鬼脚を披露し、収得賞金1100万円を上乗せすることに成功。最低限の目標を達成し、こちらも本番の出走権をほぼ手中に収めた。




 



 

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