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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
193/222

193 皐月賞(1)

 皐月賞ウィークの水曜日。出走馬の多くがこの日、最終追い切りを行った。


「今回はぶっつけになりますが、いつも通り走れる態勢は整っています。僕は先週乗りましたが筋肉が付くべき所に付いて来た感じで、馬体増があっても成長分でしょう。ダービーも控えているので目一杯作ってはいませんが、GⅠ出走馬としては胸を張れる状態に仕上がっています」

 追い切り後の共同会見。3戦無敗の2歳王者ゴールドプラチナムの主戦騎手である陽介は、緊張することもなく堂々と記者との受け答えをこなしていた。

 先週ビシッと追って実質の本追い切りを済ませている同馬は、今週はサラッと流すだけの内容。牧場の調教施設や外厩が充実した現代競馬では、競走馬の消耗を避けるため出走レースを極力絞る傾向が強まっており、シーズン初戦にGⅠレースを選ぶ陣営も多く見られるようになって来ている。デビュー戦を圧巻のレース内容で勝利したゴールドプラチナムの調教で見せるキレッキレの動きは、このローテーションへの心配が全くの杞憂であることを言葉要らずに伝えるものであった。


 

 ゴールドプラチナムだけでなくエナジーフロー、インドラなど他の有力馬も順調な仕上がりを見せる中、美浦トレセンのウッドチップコースに優とストロングソーマが姿を見せた。

 前走の弥生賞では出負けから折り合いを欠いての2着。ゲート内で待たされたのがあるにしてもテンションが上がってしまったのは事実。休養明けで元気が有り余っていた前回とは違い、レースを使ったことである程度のガス抜きが出来ているはずではあるが、今回は太陽や太一とも相談の上で調整内容を変更する賭けに出た。


「一回使った分、状態は上がってますね。あとは落ち着いてさえいれば、フワッと出すことで葉牡丹賞と同じように理想的な先行が出来そうですけど……」

 そう報告する優が騎乗した最終追い切りは、5ハロンを69秒7、ラスト1ハロン12秒3という終いを軽く伸ばしただけの軽い内容。これまでは馬にレースを意識させるためにビッシリとやるのがこの馬のお決まりのパターンであったが、テンションを考慮してのソフトな仕上げとなった。だがこの馬に優しい調整は、気性面だけではなく肉体面でも馬に余力を残すことを意味しているため、溜め込んだエネルギーが外に出てしまい暴発するリスクをも孕んでいる。大レースを前にしてのこの方針転換が果たして吉と出るか凶と出るか、厩舎戦術の是非が問われる皐月賞となる。


 中間の降雨もなく、先週からの馬場状態も絶好。GⅠらしい高速馬場での開催が濃厚となった今年の皐月賞。木曜日には出走全18頭の枠順が決定し、発表された。



第3回中山競馬8日目 第11レース 皐月賞

(GⅠ 3歳オープン 定量 牡馬57キロ 牝馬55キロ 芝2000メートル 馬場状態:良)


1枠1番 エナジーフロー   57キロ ロベール      


1枠2番 テグザー      57キロ 棚田 


2枠3番 ポテンショメータ  57キロ 蟹田


2枠4番 ホダカブロンソン  57キロ 川越


3枠5番 ストロングソーマ  57キロ 藤平


3枠6番 ブルーゲイル    57キロ 三田村


4枠7番 ダンシングヒーロー 57キロ ジョバンニ 


4枠8番 スルスミ      57キロ 田崎


5枠9番 ローリングサンダー 57キロ シュミット


5枠10番 フレイムハート   57キロ 多田


6枠11番 フリーアズアバード 57キロ 中田


6枠12番 イッキトウセン   57キロ 平山


7枠13番 ライディーン    57キロ 福山


7枠14番 ゴールドプラチナム 57キロ 神谷


7枠15番 インドラ      57キロ 御子柴 


8枠16番 ブルーバード    57キロ 杉山


8枠17番 ワイネルワイバーン 57キロ 増岡


8枠18番 マッハマン     57キロ 菅田  



 そして皐月賞本番を翌日に控えた土曜日。

 

 この日の阪神のメインレースは、3歳マイルGⅢのアーリントンカップ。先週のニュージーランドトロフィーに有力馬が流れたこともあり手薄なメンバー構成となったこのレース、勝ったのは直線追い込んだ伏兵ファイナルラップ。押し出される形で逃げたキャプテンダイモスが2着に粘った。この2頭は京王杯2歳ステークスでマッハマンに一蹴されており、重賞としてはいささか低調な結果となったのは否めない。

 

 次いで行われた中山のメインレースは、障害GⅠ・中山グランドジャンプ。その表彰式には、パートナーのカルテジアンに跨り男泣きする優の同期・五十嵐の姿があった。

 昨年の2度の挑戦では最強馬マイティフロッグの高い壁に跳ね返される結果となったが、三度目の正直でようやく嬉しい初戴冠となった。

 10歳となった古豪とベテラン東山がタッグを組む王者に引導を渡したのは、二十歳の若武者と5歳牝馬のフレッシュなコンビ。否応なしに世代交代を告げるこの結果は、百戦錬磨の先輩騎手たちが待ち構える明日の大一番に臨む優と陽介の同期二人にも、大いに勇気を与えてくれることとなった。



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