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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
186/222

186 スプリングステークス

 皐月賞の前哨戦も残りわずか。本番の優先出走権を得られるトライアルの最終戦となるのは、中山芝1800メートルで行われるGⅡスプリングステークス。

 ステップレースとしては、本番と同コース同距離の弥生賞に有力馬の多くが集まるという時期もあったが、近年はこのスプリングステークスからの好走馬も目立つようになっており、その地位が見直されつつある。その理由としては、距離が1ハロン短いことでより厳しい本番に近い流れを経験できることが大きいと思われる。少頭数によるスローの上がり勝負になりがちな弥生賞と、マイラータイプの参戦も多く上がりが掛かる展開になりがちなスプリングステークスという最近のレース傾向の対比も、それを裏付けていると言えよう。



第2回中山競馬8日 第11レース スプリングステークス

(GⅡ 3歳オープン 馬齢 芝1800メートル 馬場状態:稍重)


1枠1番 スルスミ      牡 56キロ 田崎   


1枠2番 ワイネルタリスマン 牡 56キロ 多田


2枠3番 ダイクファルコン  牡 56キロ 中田


2枠4番 ステキフテキムテキ 牡 56キロ 蟹田


3枠5番 アバレンボーイ   牡 56キロ 藤平


3枠6番 セイショウブシン  牡 56キロ 川越


4枠7番 ニューホライズン  牡 56キロ 小野 


4枠8番 ドラゴンロアー   牡 56キロ 田仲


5枠9番 ケイエムウェルダン 牡 56キロ 仲本


5枠10番 ブルーバード    牡 56キロ ロベール


6枠11番 シンエモンサン   牡 56キロ 平山


6枠12番 ローリングサンダー 牡 56キロ ジョバンニ


7枠13番 ブルーゲイル    牡 56キロ 三田村


7枠14番 シゲオガパオライス 牡 56キロ 戸村


7枠15番 テグザー      牡 56キロ 棚田


8枠16番 マイフェイバリット 牡 56キロ 屯田


 フルゲート16頭がエントリーしたこのレースは、午前中の雨の影響もあり、良に近い稍重の馬場コンディションで行われることとなった。

 

 1番人気に支持されたのは、走る度に進境を見せる成長力の持ち主で、前走ホープフルステークスでエナジーフローの2着に入ったスルスミ。

 鞍上の田崎がクラシックのパートナーとして、朝日杯フューチュリティステークス2着のフリーアズアバードでなくこちらを選んだのも大きなセールスポイントとなっている。馬体重はプラス12キロも太目感はなく、更なる上積みを感じさせる仕上がりとなっている。


 2番人気は、京都2歳ステークス1着以来となるテグザー。先行策に定評のある棚田と新たにコンビを結成し、ケレン味のない大逃げを武器に重賞連勝を狙う。


 3番人気は、シンザン記念で待望の重賞初制覇を果たしたローリングサンダー。ダービー馬ライトニングボルトの半弟ながらスピードが勝ったタイプで、1800メートルの距離もぴったりの印象。


 4番人気は、新潟2歳ステークスの覇者で朝日杯フューチュリティステークス4着のブルーバード。早期デビューからの重賞勝利とあって伸びしろには疑問符が付くものの、高い完成度と決め手は侮れない。今回は鞍上にロベールを確保して勝負気配だ。



 レースは、好スタートを切ったテグザーが想定通りの大逃げを打って始まった。

 続いてブルーバードが離れた2番手に付けるも、初距離の影響か若干ハミを噛んでいる様子。人気のスルスミは6番手で、先頭からは12馬身ほどといったところか。ローリングサンダーは最後方待機の位置取りで一発を狙っている。


 快調に飛ばすテグザーは、最初の1000メートルを58秒4のハイラップを刻んで通過した。隊列に大きな動きはないが、番手のブルーバードとの差はまだ6、7馬身ほど開いている。

 3コーナーに入ると、逃げ切りは許さないとばかりに後続が動き始める。ずっと逃げ馬を見る位置にいたロベールが手綱をしごくと、それが合図となったかのように一斉に馬群が加速して来たのだ。


 そして直線に入ると、ブルーバードは先頭のテグザーとの差を3馬身ほどに縮め、射程圏に入れたかに思われた。ところが序盤で折り合いを欠いた影響か、ブルーバードはここから伸びあぐね、逆にじわじわと差を広げられ始めてしまった。代わってスルスミが2番手に浮上し、徐々にテグザーに接近して行くが、バテない粘り腰が持ち味のテグザーも簡単には譲らない。


 勝負はこの2頭に絞られたかと思われた残り100メートル地点。後方で脚を溜めていた2頭が馬体を併せて一気に飛んできた。緑の帽子のローリングサンダーの外からこれを上回る勢いで末脚を伸ばして来たのは、オレンジの帽子。1戦1勝で格上挑戦して来た、8番人気の伏兵ブルーゲイルだ。


 激戦となったゴール前。結局先頭でフィニッシュラインを駆け抜けたのは、大外一気のブルーゲイル。ハイペースの恩恵を受けたとはいえ、レースの上がり3ハロン36秒3を大きく上回る34秒4の末脚を披露し、皐月賞戦線に新たに名乗りを上げた。若干渋った馬場での1分47秒0という勝ち時計も優秀だ。

 

 残り50メートルで一旦は抜け出した本命馬スルスミだったが、展開の綾もあり最後は強烈な決め手に屈して2着に甘んじる結果となった。

 

 逃げたテグザーはラストで甘くなっての3着。初騎乗の棚田が若干飛ばし過ぎたきらいもあり、持ち味を生かし切れなかった印象だ。中山の急坂を意識して道中もう少し息を入れられれば最後の粘りも増すはずで、2度目のタッグとなる本番でのパフォーマンス向上に期待が懸かる。


 以下、ローリングサンダー、ブルーバードと入線。ローリングサンダーはその切れ味を生かすには、もっとスローで流れるレースの方が望ましいタイプのようである。ブルーバードは距離延長に加え、前残りを意識したロベールが前半出して行った分、末を失くした感がある敗戦となった。


 この結果、ブルーゲイル、スルスミ、テグザーの上位3頭が皐月賞の優先出走権を獲得した。


 


 

 

 




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