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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
185/222

185 若葉ステークス

 ファルコンステークスは脚質転換を果たしたマッハマンが快勝。その裏で行われる土曜阪神のメインレースは、皐月賞トライアルの若葉ステークス。

 かつての中山開催から阪神に舞台を移して行われるようになったこのレース、弥生賞やスプリングステークスといった重賞レースに実力馬が流れることから、前哨戦としては空き巣的な立ち位置になることが多く、歴史的にもここから本番を制した馬は少ない。それでも時として後の名馬クラスが参戦することもあり、レースレベルが低いと簡単に軽視するのは危険であろう。


 今年の出走馬は12頭と少なめ。その要因となっているのが、断然の主役と目されているフレイムハートの存在だ。新馬戦→つばき賞を圧巻のパフォーマンスで連勝中で、ここも順当に突破するようなら、本番でも人気の一角を占める有力馬となることは必至である。

 2着までに本番の優先出走権が与えられるものの、フレイムハートの1着は当確と見られているためか、残る1席を獲りに行くよりも他のレースでチャンスを窺う陣営が続出し、結果手薄なメンバーとなってしまった。


 そんな1強ムードに待ったを掛けるべくこのレースに矛先を向けて来たのが、デビュー2連勝で芙蓉ステークスを制した後に骨折が判明し休養を余儀なくされたホダカブロンソン。

 後方待機からまくり気味に繰り出す鋭い差し脚は、ブロンソンズターン産駒特有のえもいわれぬ大物感を醸し出しており、ここでも通用の期待が高まる。

 ただし元々脚元に不安を抱えているため、なかなか攻めの調教を施すことが出来ない現状で、最終追い切りの動きも何とか間に合ったといった印象を与えるものではあった。それは、2歳時の460キロから28キロも増加した488キロという馬体重にも表れていた。


 そしてレースがスタートすると、単勝オッズ1.2倍の大本命フレイムハートは好位2番手をスムーズに追走。鞍上の多田の手綱は全く動いておらず、余裕綽々の様子である。

 一方のホダカブロンソンは、半年のブランクの影響もあってか追走にも苦労している様子で、コンビを組む川越が懸命に促しながら最後方を進んでいる。


 前半の1000メートルの通過タイムは、1分1秒5のスローペース。抑えきれないほどの手応えを示すフレイムハートを、多田は自信たっぷりに堂々の4角先頭へ導く。

 その様子を見てこのままでは到底間に合わないとばかりに、ホダカブロンソンの川越の手が激しく動くが、反応は芳しくない。大外から進出を図るもなかなかポジションを上げて行くことが出来ずに、惨敗の予感が漂う。


 最後の直線は、まさに大本命フレイムハートの独壇場の様相を呈していた。馬なりでスーッと抜け出すと、軽く促しただけで後続を5馬身ほど突き放して見せた。その背中に跨る多田も、次走に疲れを残すまいと残り150メートルほどから追うのを止めて、淡々と流し始める余裕のパフォーマンスだ。


 そんな中で、後方でもがいていたホダカブロンソンのエンジンがようやく点火した。重心がグッと沈むと一気にストライドがダイナミックに広がり、まるでチーターのようなフォームで先行く馬をごぼう抜き。残り100メートル地点で2番手に上がるとさらに加速し、先頭のフレイムハートにすら襲い掛かる勢いを見せた。

 その勢いに気圧されたか多田が思わず手綱をしごくと、フレイムハートは再加速。久々に加えて太目もあったかホダカブロンソンの末脚も最後の最後に失速し、結局2馬身差でフレイムハートの勝利に終わった。良馬場の勝ち時計は2分フラットで、レースの上がり3ハロンは勝ったフレイムハートのもので34秒4。もちろん途中から流していなければもっと時計は縮まったであろうが、2着に追い込んだホダカブロンソンのラストも33秒2という優秀なものであり、長期休養明けを叩いたことで大きな上積みが見込める次走の本番が楽しみな結果となった。


 3歳戦メインレース3連発の大トリ・GⅢフラワーカップは、ティンカーベル→トーキョーブギウギの堅い決着。どちらかと言えばオークス志向の2頭が順当に賞金を加算した。


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