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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
163/222

163 年度表彰

 今年の中央競馬の全日程が終了。大井の交流GⅠ・東京大賞典を始め、地方競馬の開催は年末年始も続くものの、優の騎手生活2年目は幕を閉じた。


 優は有馬記念の裏の阪神競馬場で、平場のダート1800メートルの2勝クラス戦をトラクターヘッドで勝利。これで同馬は未勝利戦からダートでは無傷の3連勝となり、来年の飛躍が大いに期待される一頭となった。

 この1年間の優の中央での騎乗成績は、計420レースに騎乗して26勝、2着24回。昨年より騎乗機会も増えて勝利数も順調に伸ばしたものの、斤量減で有利な平場のレースでの依頼が多い現状を考えると、よりたくさんの関係者からのより強固な信頼を得ることが来年の課題となる。


 騎手リーディングに目を移すと、全国リーディングは今年も栗東所属のフランス人ミッシェル・ロベール。勝率、賞金部門でも首位に立ち、騎手大賞とMVJも同時に獲得した。ただし勝ち鞍は149と近年の彼からすると低調な数字で、短期免許の外国人や若手の台頭に押されている印象もある。年齢的に肉体面のピークを過ぎたことを考えると、来年は正念場と言えよう。

 2位に付けたのは、日本人騎手の第一人者・菅田 満。有力馬主や調教師が外国人騎手を多用する中で、バックアップしてくれる個人馬主を中心に乗り馬の質と量を確保し、142勝と上々の成績を残した。

 そして3位にランクインしたのが、優の同期の神谷 陽介で、138勝を上げて関東リーディングを獲得。まだ2年目とは思えない高い技術に裏打ちされた逃げ差し自在の手綱捌きで勝ち星を量産し、既にトップジョッキーの風格が漂いつつある。ダービー最右翼のゴールドプラチナムを筆頭に各路線のお手馬も充実しており、来年は彼の年になるのではと目されている。

 以下、マッテオ・ジョバンニ133勝、田崎 英太127勝、御子柴 茂120勝、蟹田 仁116勝、中田 幸広111勝、屯田 勝男108勝、山田 大河101勝と続く。ロベール1強の時代に変化の兆しが見えており、騎手界は戦国時代の様相を示している。

 なお、最優秀障害騎手はGⅠ2勝のマイティフロッグの主戦、東山 伸。新人騎手で最も勝ち星を積み上げたのはアイドル的人気を誇る女性騎手の相川 雅であったが、20勝にとどまり30には届かなかったため、規定により最多勝利新人騎手は該当なしとなった。


 年間62勝でリーディングトレーナーの座に輝いたのは、栗東の沼尾 秀忠調教師。大社グループの良血馬をズラリと揃えた豊富な手駒を、外厩を利用して馬房を回転させることでフル活用し、2年連続の栄冠を射止めた。現在の看板馬はホープフルステークスを制した2歳馬エナジーフロー。

 55勝でこれに続いたのが、陽介の師匠でもある美浦の伊沢 義男調教師。無理に数を使わずに狙ったレースを確実に勝ちに行くタイプで、勝率と賞金では沼尾師を大きく上回り全国トップとなり、優秀技術調教師にも選ばれた。3歳のダイヤモンドダスト、2歳のゴールドプラチナムと強力な2騎を抱えており、来年の大レースを席巻する可能性も十二分にある。


 なお、年明けに発表された各部門の表彰馬は、以下の通り。


年度代表馬:レーザーポインター


最優秀4歳以上牡馬:レーザーポインター(4歳、菅田 満)

 主な勝ち鞍:天皇賞(春)、ジャパンカップ

最優秀4歳以上牝馬:ドリームシアター(4歳、ミッシェル・ロベール)

 主な勝ち鞍:ヴィクトリアマイル

最優秀3歳牡馬:ダイヤモンドダスト(神谷 陽介)

 主な勝ち鞍:菊花賞

最優秀3歳牝馬:ラウンドアバウト(マッテオ・ジョバンニ)

 主な勝ち鞍:オークス、エリザベス女王杯

最優秀2歳牡馬:ゴールドプラチナム(神谷 陽介)

 主な勝ち鞍:朝日杯フューチュリティステークス

最優秀2歳牝馬:ニンリル(菅田 満)

 主な勝ち鞍:阪神ジュベナイルフィリーズ

最優秀短距離馬:ブラインドフェイス(5歳牝馬、屯田 勝男)

 主な勝ち鞍:高松宮記念、スプリンターズステークス

最優秀ダートホース:サジョウノロウカク(5歳、屯田 勝男)

 主な勝ち鞍:帝王賞、JBCクラシック、チャンピオンズカップ

最優秀障害馬:マイティフロッグ(9歳、東山 伸)

 主な勝ち鞍:中山グランドジャンプ、中山大障害


 ほとんどの部門ですんなりと受賞馬が決定する中で、最も票が割れる激戦となったのが最優秀3歳牡馬部門である。

 最高峰の日本ダービーを制し、古馬相手のジャパンカップでも2着に善戦したライトニングボルトを推す声も強かったが、菊花賞の惨敗がネックとなった。その結果、これを上回る重賞4勝を上げてGⅠ4戦で2、3、1、4着と抜群の安定感を見せたダイヤモンドダストが、接戦となった記者投票を制して今年の3歳の顔に選ばれたのである。

 なお、短距離GⅠを2勝したブラインドフェイスの方が最優秀4歳以上牝馬に相応しいのではとの意見も出たが、古馬牝馬部門と短距離部門を分けて考える記者が多数派を占めており、投票ではドリームシアターの圧勝に終わった。



 そして年が明けて騎手3年目。ダービー制覇を目指す優にとっては勝負の一年が、いよいよ幕を開ける。


 


 




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