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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
148/222

148 東京スポーツ杯2歳ステークス(1)

 エリザベス女王杯は、ペレイラに乗り替わった今年のオークス馬ラウンドアバウトが優勝。休み明けで惨敗に終わった秋華賞の雪辱を見事に果たし、GⅠ2勝目を飾った。

 一方で、GⅠ連勝を狙った陽介のプレシャスガーデンは5着。スローになりがちな外回り中距離コースの牝馬限定戦ということもあり、各馬が高速上がりを使う中で追い込み一手の同馬には厳しいレースとなってしまった。 明けて今週は、日曜日に京都競馬場でGⅠマイルチャンピオンシップが行われ、秋のマイル王が決定する。秋の天皇賞では惜しくも4着に終わった安田記念馬アールタイプの、春秋マイルGⅠ連覇なるかが見所である。


 そしてクラシック戦線に目を向けると、何と言っても今週の注目は土曜日のGⅢ東京スポーツ杯2歳ステークスである。ダービー好走馬を多数輩出して来たこのレースは、今年も好メンバーが集結したハイレベルな一戦となることが予想されている。来年の主役と目されるゴールドプラチナムと、新馬戦→アイビーステークスと連勝中の超良血馬エナジーフローが激突するこの大一番は、来年の本番を占う意味でも重要なレースとなる。


 優の騎乗馬に関して言えば、ダービーを目指す相棒ストロングソーマの次走が、暮れの中山開幕週に芝2000メートルで行われる自己条件戦の葉牡丹賞に決定した。ダートで手堅く勝ち上がりを狙うプランもあったものの、太陽と相馬の協議の末、芝の走りに慣れさせる当初の目的を貫徹するため、ダービーまでは芝オンリーで使って行くことが決まったのだ。クラシック出走に向けたローテーションを組む上でも、ここで勝って賞金を積み上げることは至上命題と言える。

 

 また、新馬勝ちを決めたもう一頭のお手馬ソーマスターシップは、予定通り今週の土曜日に1勝クラスの芝1400メートル戦に出走する。重賞の合間でメンバーが手薄になるレースをチョイスした太陽らしい采配で、朝日杯フューチュリティステークス出走に向けて勝利を目指す。



 東スポ杯に出走するゴールドプラチナムの本追い切りは、美浦のウッドチップコースで行われた。中5週と充分に間隔を開けていることもあり、一度使ってテンションが上がる様子もなく、併せ馬から最後に抜け出すいつも通りの内容を消化した。それでも軽く追っただけであっさりとパートナーを置き去りにする瞬発力には前走以上の鋭さがあり、早枯れなどではない確かな成長力を感じさせた。


 これに対してライバルのエナジーフローは、強敵相手にスピード強化を意図してか、坂路で目一杯に追われた。結果4ハロンで49秒8の超抜タイムを叩き出し、前走からの上昇度という点ではゴールドプラチナム以上という印象を与えた。



第5回東京競馬5日目 第11レース 東京スポーツ杯2歳ステークス 

(GⅢ 2歳オープン 馬齢 芝1800メートル 良)


1枠1番 ワイネルワイバーン 牡 55キロ 増岡    3番人気


2枠2番 ホワイトブレス   牡 55キロ 御子柴   6番人気 姉シロイコイビト


3枠3番 フライアウェイ   牝 54キロ 中田    8番人気 兄マシンハヤブサ


4枠4番 ローリングサンダー 牡 55キロ ペレイラ  4番人気 兄ライトニングボルト


5枠5番 スルスミ      牡 55キロ 田崎    5番人気


6枠6番 ロハノチャールズ  牡 55キロ 棚田    7番人気 兄ロハノロッキー


7枠7番 エナジーフロー   牡 55キロ ロベール  2番人気 兄ヴイマックス


8枠8番 ゴールドプラチナム 牡 55キロ 神谷    1番人気


 東京千八という好条件から、多頭数になることも多いこのレースであるが、今年は人気2頭相手ではノーチャンスと見たか、出走は8頭にとどまった。ただ、それでもエントリーして来ること自体が自身の表れでもあり、実際期待馬が揃った少数精鋭のメンバーとなった。


 1番人気の座は、当然のようにゴールドプラチナムが獲得。走る姿そのものが強さを感じさせる稀有なオーラの持ち主は、この相手でも単勝1.5倍の圧倒的人気を集めている。まだレースで本気の走りを見せていないだけに、この重賞の舞台でどんなレースを見せてくれるか要注目である。


 2番人気のエナジーフローは、同じ2戦目でこのレースを制した兄ヴイマックスとの兄弟制覇を目指す。前走で見せた兄譲りの切れ味に加えて、操縦性の高さと距離延長への適性は兄以上と評されており、「府中の千八展開要らず」と言われるこの王道コースで実力を証明したいところ。


 3番人気のワイネルワイバーンは、札幌2歳ステークスの2着馬。インドラには完敗したものの、能力の高さは示した。ワイネル軍団の強みである完成度の高さとキャリアを武器に2強の一角崩しを狙う。


 4番人気のローリングサンダーは、今年のダービー馬ライトニングボルトの半弟。父が替わった分スピードタイプに出てスケール感では若干見劣るが、レースセンスと基本能力の高さは良血馬らしさを感じさせる。新馬戦でストロングソーマに敗れた後、未勝利戦をしっかり勝ち上がり、クラシック候補との力関係を探る目的でここを使って来た。来日して以来勝ちまくっているペレイラを鞍上に確保し、そのマジックの一押しで上位進出を目論む。


 5番人気は、関東のトップジョッキー田崎が高評価するスルスミ。前走のアイビーステークスでは離された4着に沈んだが、陣営は使い込んで良くなるタイプと見ており、続戦で強敵相手に経験を積ませる目的での参戦の模様。この馬に合ったレーススタイルを模索している最中であり、積極的に行きたい馬がいないここでは逃げの手も検討しているようだ。


 6番人気は、今年の桜花賞馬シロイコイビトの全弟ホワイトブレス。ここは10月京都開幕週の芝2000メートルの新馬戦を勝っての参戦。前走はメンバーに恵まれたとの評価だが、良血馬の潜在能力をここで発揮出来れば一発も期待出来る。姉同様前に行って粘るタイプだが、ハナにはこだわらない気性の持ち主。


 7番人気のロハノチャールズは、交流競走を合わせてGⅠ11勝を上げたロハノロッキーを半兄に持つ。ダートの新馬戦を勝ち上がったが、陣営は芝向きとジャッジしたようで、ダービーの夢を追ってこのクラシックの登竜門に挑戦した。


 8番人気のフライアウェイは、重賞ウィナーのマシンハヤブサの半妹。6月の早期デビューから勝ち上がるまでに4戦を要したが、その分キャリアの豊富さでは他馬を一歩リード。牝馬ながらこの強力メンバー相手に使って来たのは、陣営の期待の表れか。



 なお、お昼の第6レースに行われた2歳1勝クラスのレースは、狙い通りメンバーに恵まれた優のソーマスターシップが快勝。レース内容こそ平凡なものであったがデビュー2連勝を達成し、目標に向けての賞金の上積みに見事成功した。


 そしていよいよ、メインレースの東京スポーツ杯2歳ステークスの発走時刻が迫って来た。来年の主役に名乗りを上げるのは果たしてどの馬か。各馬ゲートの後ろで輪乗りをしながら、静かにその時を待っている。


 

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