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少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
144/222

144 アルテミスステークス

 そして迎えた土曜日、今年のアルテミスステークスには、フルゲートには満たないものの16頭の出走馬が集まった。

 抜けた実力馬がいると頭数が揃わないこともよくあるが、女傑との呼び声高い今年の主役ニンリルについては、新馬戦の内容が気性に危うさを感じさせるものであったことに加え、初長距離輸送初コースなどの不安もあり、まだ付け入る隙が充分にあると他馬陣営に思われているようである。



第4回東京競馬8日目 第11レース アルテミスステークス 

(GⅢ 2歳牝馬オープン 馬齢54キロ 芝1600メートル 良)


1枠1番 ロンリーアクトレス ロベール


1枠2番 フジコチャン    増岡


2枠3番 ツブツブミカン   仁村


2枠4番 シルエットバレエ  藤平


3枠5番 アラマイヤシルフィ 御子柴


3枠6番 レヴェランス    田崎


4枠7番 ソラトブホウキ   平山


4枠8番 セイショウハンナリ 小野


5枠9番 オテンバムスメ   島田義


5枠10番 レクリエーション  棚田 


6枠11番 ニンリル      菅田


6枠12番 マーマレードジャム 中田


7枠13番 オンナハドキョウ  福山


7枠14番 カイネジュエリー  戸村


8枠15番 ホームシアター   仲本


8枠16番 トーキョーブギウギ 蟹田


 この時期の2歳重賞らしく1勝馬が多数参戦しており、実際の力関係がはっきりしない中でレースに臨むこととなる。


 1番人気は、マスコミの煽りも手伝って、競馬ファンからもGⅠ級の期待を集めるニンリル。粗削りなレースぶりながら楽々逃げ切った新馬戦から、相当な脚力の持ち主であることは明らか。距離は長くても問題ないとの厩舎評だが、牝馬ながら筋肉の鎧をまとったかのようなド迫力の馬体から、本質的にはマイラーと思われる。


 2番人気は、一昨年のオークス馬フリルワンピースの全妹、レヴェランス。姉同様サタデーフィーバー産駒らしい瞬発力の持ち主で、スローの上がり勝負になる傾向の強い牝馬限定戦で特に強さを発揮するタイプである。美浦の下山厩舎の管理馬で、鞍上は牝馬GⅠに強い田崎を先々まで確保しているとの噂である。


 3番人気が、サフラン賞の覇者シルエットバレエ。前走に引き続いての鞍上・優の連続騎乗は、気性に難しさを抱える同馬にとってはプラスに働くと見られる。ここまで既に2勝を上げており、高い能力の持ち主であることは疑いないが、大レースを勝ち取るには若干パンチ力不足な感も。


 4番人気は、中山の新馬戦2着から、開幕週の東京の未勝利戦を勝ってここに臨んだトーキョーブギウギ。ダービー馬セイショウタイタンの産駒で、エンジンの掛かりが遅いため、直線の長いコースでこそ末脚が生きる。ブギのリズムに乗って、蟹田得意のダンスが炸裂するか。


 5番人気は、サフラン賞2着のロンリーアクトレス。前走は1番人気に応える事が出来なかったが、新潟で新馬勝ちしたように左回りの軽い芝が合うとの判断で、このレースをチョイスした。人気急落でマークが緩くなれば、この馬本来の先行力と軽快なスピードで、上位人気馬に一泡吹かせるシーンも。



 ややばらけたスタートから飛び出したのは、9番のオテンバムスメ。これを見るように、スッと直後につけたのが、1番ロンリーアクトレス。2番フジコチャンを挟んで、ここに6番レヴェランス。15番オンナハドキョウ、5番アラマイヤシルフィが続いて、12番マーマレードジャムと14番カイネジュエリーが並んで追走。差なく8番セイショウハンナリで、ゆったりしたペースでここまでが一団。


 馬群は二手に大きく分かれており、後方集団は3番ツブツブミカン、15番ホームシアター、10番レクリエーション、16番トーキョーブギウギの順。そして7番ソラトブホウキを挟んで、最後方でじっくりと折り合いを付けるシルエットバレエとニンリルの2頭。


 半マイルの通過は48秒9と、重賞としてはかなりの緩ペース。早めに仕掛ける馬もおらず、各馬が充分な手応えを残したまま、525メートルの長い直線を目一杯に使ったヨーイドンの競馬となりそうだ。


 直線に入るとロンリーアクトレスが内から抜け出し、これをレヴェランスが追う展開。後方からはソラトブホウキとトーキョーブギウギが並んで脚を伸ばし、遅れてシルエットバレエとニンリルがスパートを開始する。


 ここで優のシルエットバレエが内から馬体を寄せ、ニンリルとの併せ馬に持ち込もうと試みた。本命馬の勢いを借りて浮上し、あわよくば足元を掬ってやろうという狙いである。

 そして、2頭の鞍上はほぼ同時に鞭を入れた。


 結論を先に言うと、この併せ馬は成立しなかった。完璧に折り合ったニンリルが繰り出した一瞬の脚は、シルエットバレエとは次元の違う、文字通りの瞬間移動であった。

 シルエットバレエを置き去りにしたニンリルはそのままあっさり先頭まで突き抜けると、ラスト1ハロンを流す余裕を見せて格の違いを見せつけた。勝ち時計1分34秒5、自身の上がり3ハロン32秒9はともに、最後まで追えば更に短縮出来たであろう。


 2馬身半差の2着には直線で一旦先頭に立ったレヴェランスが入り、それから1馬身遅れた3着争いは、シルエットバレエとの追い比べを首差凌いだトーキョーブギウギが制した。4角先頭のロンリーアクトレスは粘りを見せたものの、ラストで踏ん張れず5着に終わった。


 表彰式を終えた住田調教師は、ニンリルの今後について、阪神ジュベナイルフィリーズ→チューリップ賞→桜花賞まで予定が決まったことを明かした。果たしてこのローテーションを無敗で駆け抜け、頂上決戦の日本ダービーに電撃参戦することがあるのだろうか。

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