表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女ときどきジョッキー  作者: モリタカヒデ
第2部 少女のちジョッキー
130/222

130 セントライト記念(1)

 ストロングソーマの新馬戦の翌日は、三連休の最終日となる月曜祝日=成人の日。この三日間開催を締めくくる中山メインレースが、菊花賞トライアルのGⅡセントライト記念である。


 世代トップを巡って春のクラシックを戦った既存勢力と、夏の間も休まずにレースを使ってのし上がって来た新興勢力が激突するこのレース。来週の神戸新聞杯に出走を予定しているダービー馬ライトニングボルトに挑戦状を叩き付けるのは、一体どの馬であろうか。


 レースは、春2冠を2、3着と善戦し断然の実績を誇る重賞2勝馬ダイヤモンドダストが主役を務める。この圧倒的人気が予想される本命馬に対し、ホープフルステークスの覇者ブラックジョーカー、GⅡ青葉賞を制しダービー6着のフェノバルビタール、ラジオNIKKEI賞馬ホウヨクテンショウ、小倉記念馬ソーマナンバーワンらが挑む構図となる。

 有力馬に前に行く馬が多く、先行争いの兼ね合いが展開を大きく左右することが予想される中で、新旧勢力の力関係がどう変化したのかが大きな見所である。



第4回中山競馬5日目 第11レース セントライト記念 

(3歳オープン 馬齢 芝2200メートル外回り)

※今年の出走馬は全て牡馬56キロ


1枠1番 ラッキーストライク 蟹田 仁  9番人気 追込


1枠2番 ダイヤモンドダスト 神谷 陽介 1番人気 逃げ


2枠3番 イシノウェイパー  中田 幸広 5番人気 差し


2枠4番 ウィスパーワード  岩橋 翔  11番人気 先行


3枠5番 フェノバルビタール 田崎 英太 2番人気 自在


3枠6番 ポークジンジャー  北山 浩志 13番人気 差し


4枠7番 デビルプロポーズ  仁村 公平 10番人気 追込


4枠8番 コズモホシマル   戸村 晃彦 15番人気 先行


5枠9番 ホウヨクテンショウ 相川 雅  7番人気 逃げ


5枠10番 ホークコマンダー  島田 義人 8番人気 差し


6枠11番 イッテヨシ     田仲 勝利 16番人気 逃げ


6枠12番 ワイネルシュトルム 増岡 拓海 6番人気 先行


7枠13番 シゲオポテンヒット 小野 克也 12番人気 先行


7枠14番 ワカシマヅ     平山 陽一 14番人気 逃げ


8枠15番 ソーマナンバーワン 藤平 優  3番人気 追込


8枠16番 ブラックジョーカー 棚田 裕延 4番人気 逃げ


 

 ホウヨクテンショウに騎乗する雅はこのレースに向けて、並々ならぬ闘志を密かに燃やしていた。

 ラジオNIKKEI賞での勝利後、元来のアイドルばりのルックスと話題性から、彼女は競馬界の広告塔として再び持ち上げられることとなった。デビュー時に発売した写真集の売り上げは好調で、第2弾も企画されているという。騎乗依頼も急増し、新しいエージェントを迎えて順調に成績を伸ばし、この時期に既に12勝を上げている。

 アイドル騎手として騎乗馬を集めて成功している現状は、結果としてデビュー当初の目論見を実現したことになる。それでもこの世界に身を置いておよそ半年間、彼女はそのシビアさを身に染みるほど実感していた。ましてや自分は逃げ先行に特化した騎乗スタイルで、差し追い込みはまだ二束三文レベル。もし今新しいスターが出現でもしたら、たちまち閑古鳥が鳴くことになるだろう。

 

 だからこそ、ここで騎手としての自分の存在価値を示したいと、雅は思っていた。前走のラジオNIKKEI賞の殊勲は、軽ハンデと展開の助けによるところが大きいと思われており、それは重賞を勝ったばかりなのに7番人気という単勝オッズにもよく表れていた。もしこの強力メンバー相手にセントライト記念を制したなら、ホウヨクテンショウの実力と共に、先行の雅を強く印象付けることが出来るであろう。

 トップジョッキーへの階段を猛スピードで駆け上がって行く陽介や、地道にステップアップして一人の若手騎手としての確かな地位を築きつつある優と、いつかGⅠの大舞台で一緒に覇を競いたい。大好きな二人に自分だけ置いて行かれるわけにはいかないという焦燥感が、彼女を熱くさせていた。



 ここを勝ちたい気持ちなら、大本命ダイヤモンドダストの陽介も負けてはいない。ダービーの直線では

トンカツこと屯田の老獪な誘いにまんまと乗せられてしまい、3着ながら不完全燃焼の結果に終わった。

 もし自分の競馬が出来ていれば、強力な上位2頭相手に一体どこまで迫ることが出来たのか。大舞台で残した悔いは、大舞台でしか返すことが出来ない。だから最後の一冠である菊花賞は、何としてもこの馬に取らせたい。そのためにも、ステップレースのここで躓くわけにはいかない。実績馬や上がり馬を向こうに回してもなお、負けられないくらいの意気込みを抱いていた。



 そして前走の小倉記念で、古馬相手に待望の重賞初勝利を飾ったソーマナンバーワンと優のコンビ。春からの続戦でこれが4走目になるが、間隔を取って使っていることもあり疲れはなく、叩き良化型らしく引き続き好調子をキープしている。脚質的に展開に左右されやすい面はあるが、折り合いやスタミナに不安はないタイプで長距離適性は充分。神谷厩舎がまだ成し得ていない悲願のGⅠ制覇に向けて、菊花賞が楽しみになるような結果を示したいところだ。


 何より1番人気のダイヤモンドダストには、年明けのデビュー戦で惨敗を喫している。あの時の5馬身差がどこまで縮まっているのか、あるいはさらに開いているのか。力関係を計る意味で格好の試金石となる、今年のセントライト記念である。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ