103 小倉記念プレビュー
7月も中旬に差し掛かり、関東地方の梅雨明けが発表された。精彩を欠いたままの優はその後も、チグハグなレースぶりで負けを重ねた。梅雨は明けても優の連敗期間は明けることなく、結局7月の1か月間未勝利のまま、ソーマナンバーワンが出走する小倉記念の週を迎えた。
小倉記念の主役と目されているのは、ソーマナンバーワンではなく、同じ関東馬のマシンハヤブサである。昨年の夏は七夕賞、小倉記念に挑むも重賞の壁に跳ね返されたが、5歳になって気性の成長が著しく、ペースの緩急に対応出来る柔軟さを身につけてからは成績が安定。2年連続で出走した七夕賞で待望の重賞初制覇を果たすと、勢いに乗って小倉に乗り込んで来た。ここを勝てばサマー2000シリーズの優勝が濃厚で、陣営の鼻息も荒い。
そしてこのマシンハヤブサが注目されているのには、もう一つ理由があった。それは鞍上の古畑の大記録が懸かっているからである。関東ローカルを夏の主戦場とする古畑は、北海道シリーズや小倉で騎乗する機会自体が少なく、去年まで函館と小倉で重賞を勝ったことがなかった。その彼がついに2週間前の函館2歳ステークスを制し、中央競馬全10場の重賞制覇達成に王手をかけたのだ。
完成の域に達した相棒にとって、軽快なスピードの生きる小倉の高速馬場は最高の舞台である。ましてや調教師試験受験を表明している古畑にとっては、偉業を達成する最大にして最後のチャンスかも知れない。マスコミも関係者もファンも、引退の花道を飾るドラマチックな勝利を期待する空気で満ちていた。
さらには昨年の覇者ジェットマンと、同じく2着のウイニングショットも参戦する。昨年陽介を背にレコード勝ちを果たしたジェットマンだが、重賞制覇の代償としてハンデ戦で重い斤量を背負うようになり、成績が低迷。キャリアを積んだ6歳でピークは過ぎた感もあり、今年も人気薄での出走となりそうである。一方のウイニングショットは小倉大賞典を連覇するなど好調を維持しており、ドル箱とも言えるこのコースで重賞3勝目を狙う。レースでは去年と同じく菅田が騎乗する。
本命視はされていないものの、陽介に乗り替わるソーマナンバーワンも、当然ながら有力馬の一角を占めている。元々この時期の3歳馬は古馬に対して恵まれた斤量設定がなされているが、ラジオNIKKEI賞2着、スプリングステークス4着の重賞実績はいずれも3歳限定戦であるため、古馬混合戦となる今回はハンデに恵まれることが予想される。鞍上の陽介には昨年に続く小倉記念連覇が懸かる。
水曜日の追い切り。かなりの長距離となる直前輸送を避けるため、小倉に参戦する関東馬の多くは現地に先乗りし、滞在しながらの調整を行っている。
最終追い切りでソーマナンバーワンに跨った陽介は、外から見ていたイメージ以上の素軽い動きに自信を深めていた。
(もっとパワータイプかと思っていたけど、これなら軽い小倉の馬場でも問題なくこなせそうだな。それに何と言ってもこの乗り味の良さと言ったら……。)
奮起を促すべく突き放してしまった手前、優から情報を引き継ぐことは出来なかったが、背中から伝わって来る感触は、この相手でも好戦可能な潜在能力の高さを陽介に示してくれていた。
そして金曜日。土曜日の前日発売に備えて、小倉記念の枠順が決定し発表された。
第2回小倉競馬4日目 第11レース 小倉記念
(GⅢ 3歳以上オープン ハンデ 芝2000メートル)
1枠1番 マシンハヤブサ 牡5 56キロ 古畑 耕三
2枠2番 ロートプライマル 牡8 53キロ 御子柴 茂
3番3番 ナッキーミサイル 牡4 50キロ 太田 卓
3枠4番 スナイプジエネミー 牡9 58キロ 豊橋 大
4枠5番 セイショウダイドウ 牡8 54キロ 三田村 祐司
4枠6番 ウイニングショット 牡5 57.5キロ 菅田 満
5枠7番 エイテンランラン 牡6 53キロ 高木 裕
5枠8番 ケイエムトリガー 牡7 53キロ 多田 修二
6枠9番 サドノクロノス 牡4 55キロ 山田 大河
6枠10番 スモールワールド 牡4 52キロ 屯田 勝男
7枠11番 ジェットマン 牡6 56キロ 川越 健一
7枠12番 オネストマン 牡3 49キロ 伊藤 鉄二
8枠13番 モッコービューティ 牝5 51キロ 福山 明秀
8枠14番 ソーマナンバーワン 牡3 52キロ 神谷 陽介
今週は天候にも恵まれ、レコードで決着した去年同様、絶好の馬場コンディションでのレースとなりそうである。日曜日の15時35分発走予定のこのレース、先頭でゴールを駆け抜けているのは果たしてどの馬か。




