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常夜の国のヒト1  作者: 長崎
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定休日のごちそう


常夜の国のヒト







太陽が昇らない国には色々なイキモノが集まる


陽の光を嫌う妖精、妖魔や吸血鬼などヒトではないものが多い


そんな中珍しく人間が常夜の国のユウヤミ町に住んでいた


それがボク、ユウヤ


お家の事情でこの町で食事処を営んでるよ


日本の労働基準法とかはガン無視だよ!


生きていくためだし仕方ないね!


「あー今日は悪戯妖精が多いな」


今日は定休日だから貯めこんでいた洗濯物を干していたよ


陽の光のないこの国だと自然乾燥は風ぐらいだから外干しは風の通り道が多いんだけど


必然的に風の妖精の通り道でもあるからこんな風に


長袖を蝶々結びに悪戯されちゃうんだ


そのせいで殆ど袖がのびきっているよ


まあこんなの慣れっこだし寒い季節は指先まですっぽり隠せるから


逆にありがたいこともあるよ


「今日の3ご飯は何にしようかな~」


ほぼ常に夜のこの国には朝、昼、夕の概念はないから


1ご飯2ご飯3ご飯と呼んでいて


大人なら酒を楽しむ食事頃が3ご飯だよ


お酒は好きじゃないからボクには関係ないけどね


「ユウヤくーん!お店まだあけないのー!?」


『腹ペコなんだけどー!』


通り側の窓からのにぎやかな声が聞こえる


店兼住居の前には常連客であり友犬


全身黒毛に覆われた2つ頭の犬オルトロスがお行儀よく座っていた


2つ頭で性格も違うからいつも何かしらしゃべってるよ


食べ物の好みも違うから確実に調理器具を二つ同時に汚してくれるよ!


「オルくん、ロスくん、今日は定休日だよ~」


昨日きちんと教えておいたんだけどね


それに札も出してるんだけど2人ともたぶん


【なんか札がかかってる】程度の認識で文字も読んでないな


オルくんもロスくんも結構忘れやすいとこと大雑把なところが


兄弟らしいなって思うよ


「え!?」


『休みにうるさくしてごめんなあ!』


「明日またくるねぇ」


しょんぼりと耳としっぽを垂らして立ち去ろうとするのが可哀想で


「今から3ごはんだからなんでもいいなら食べてく~?」


そう声をかけてみる


「『食べる!』」


二つの尻尾をブンブン振りまわし振り向くのを見て


ほっこりしながらすぐ下へ降りると扉をあけた


「お休みなのにごめんねぇ」


『俺たちユウヤのごはんじゃないと食べた気しなくってついきちまった』


「いいよ、ボクたち友達だろ」


二頭の頭を撫でて店の中へ招き入れる


「おじゃましまーす」


『定休日に入れるってダチの特権だよな』


「うんうん」


尻尾を振りながら中へ入るとオルくんロスくんは


料理が一番早くに出せるカウンター前にお座りをした


「2人ともソコ好きだよね~」


そこは2人にとっての特等席だ


「うん!」


『ここだとすぐ飯が食える!』


「それにユウヤくんの料理してるとこみるの楽しい!」


「そかそか、手伝ってくれてもいいんだよ?」


『ムリムリ、道具壊す自信しかねえよ』


「味付けもできないとおもう~」


オルくんが首を振りそれにうなずくロスくん


そんな2人を見て獣型用の調理道具でも買いそろえようかと思ったけど


結構高いから宝くじが当たったら買うことにした


年末当たるといいな


「2人とも何が食べたい?」


「オレはね肉が食べたい!」


『なんでもいいならっていいながら聞いてくれんのな』


さっき自分が2人に言ったことを思い出す


2人のうっかりがうつっちゃったみたいだ


「へへ、材料仕入れたばっかだからなんでも作れるよ」


笑ってごまかしておこう


「なんでも!?」


『じゃあアレだ!和牛サーロインステーキ!』


「ボクはリブロースステーキがいい!!」


「マンモス肉もあるよ?」


「『うし!』」


人間界ならマンモス肉のほうが需要があるんだけど


この国では和牛、というか牛や豚、鳥なんかの食料として育成された肉は


非常に人気がある、あるかないかで売り上げが全然違うくらいにね


とんでもなく人気があるから定休日に仕入れて次の日から出せるようにしておく


こっちでは日が当たらないせいで牧草が育たないし


魔獣に襲われちゃったりしてなかなか畜産が上手くいかないようだ


でも今朝の新聞でチクサーン=スキオさんが


対魔獣ようのバリケードを開発したとか言ってたから1年後くらいには


需要に供給が追い付く日がくるかもしれない


とりあえずオルくんとロスくん用のお皿を出して赤いほうにサーロイン


青い方にリブロースをもりつける


玉ねぎを使ってない醤油系ソースをかけて完成


『「ふわああ」』


垂れそうになる涎をなんとかこらえて


ものすごい勢いで尻尾を振りながらボクを見る


すぐに食べていいんだけど


律儀な2人はきちんと待っていてくれるんだ


食いしん坊でうっかりさんだけどとても良い友達だよ


ボクはサーロインの表面だけをさっと焼いてタタキにした


ポン酢を小皿にそそいで2人がいるカウンターに並んで座る


「「『いただきます』」」


3人声をあわせて食事をはじめる


箸でつまみ上げた肉を口の中に入れた瞬間


ポン酢のさっぱりした酸味と一緒に肉の旨味と甘味が広がる


オルくんとロスくんを見ると2人ともフガフガいいながらお肉にくらいついてた


誰もとらないからゆっくり食べていいんだけどね


ソース気に入ってくれたのなら嬉しいから何も言わずに見守ってると


視線に気づいたらしいオルくんがこっちに顔を向ける


黒毛並みだからパッと見はわからないんだけど


ソースで口の周りの毛がべちゃってなっててなんかただの犬にしかみえない


本当はオルトロスってめちゃくちゃ威厳があるはずなんだけどな


吹き出すのを堪えるために視線を逸らしたんだけど


「なになに?なにが面白いの?」


顔をあげたロスくんもまったく同じ状態なのが見えてボクの唇が限界だった


「あはっ2人ともっ!」


『あ、ロスきたねえ!』


「オルだって!」


2人が顔を見合わせて言い合い汚れをとるためにくちの周りをぬぐう


でも油汚れだからとれなくてワックス代わりになったみたいだ


「あはは!ドワーフみたいだ」


「ドワーフ・・・」


『仕方ねえな。食べ終わってから洗うか』


落ち込む2人には悪いけど


おかげで明日も仕事ができるくらいの英気が養えた。




ここまで読んでもらえてありがたいです!

いろんな魔物やら妖精やら書きたいな

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