お母さん、コレ、誰だったっけ?
引き出しから、古い写真が出て来た。私が小学生くらいの、誕生日会だろうか。引っ繰り返す。裏面には、日付と年齢が在った。六歳の、五月。
やっぱり、私が小学一年生のころだ。
当時は仲良くしていた子が五人いた。みきちゃん、かなちゃん、しずちゃん、さきちゃん、ゆみちゃんだ。
私を入れての六人、この写真に収まっていた。懐かしいなぁ、と頬が緩み掛け……止まった。
写真に写る一人の顔が、白く暈けていて、掠れてしまっているのだ。
光の加減だろうか? それとも長年、きちんと管理しなかったから傷んで消えてしまったとかだろうか。
とにかく、誰かわからない。何せ髪形さえも消えてしまっているので。
写っているのは六人だ。私と、みきちゃん、かなちゃん、しずちゃん、さきちゃ……ああ。
私は、何だ、と嘆息した。よく見たら、ゆみちゃんがいなかった。
じゃあ、この消えちゃっている子はゆみちゃんだ。腑に落ちた私は写真を仕舞い掛け────ばっ、と裏返し見直した。
日付をなぞる。西暦から始まるそれは、確かに表面に刻まれたタイムコードとも一致していた。私は記憶を辿る。
その年は大きな災害が在って、ゆみちゃんの家はお婆ちゃんの家や親戚の家が巻き込まれ大変だったのだ。
まだ五月と言うと忙しかったころで、ゆみちゃんは参加出来そうに無かった。
だから延期にしようとなったんだけど、ゆみちゃんも、ゆみちゃんのお母さんも「気にせずお祝いして」と、プレゼントだけ先にくれて。
ゆみちゃんは、始めから誕生日会にはいなかったのだ。
私は「じゃあ、……」写真を見詰める。
写真に写る、六人。
私にみきちゃん、かなちゃん、しずちゃん、さきちゃん。
あの日いた人間は、みんないる。
削れたみたいに顔が消えてしまったこの子。
私は呆然と呟いた。
「いったい、誰……?」
何か急に怖くて仕舞い直した写真は、あとでお母さんに見せようとしたら、もう無かった。