7.猫のカミサマ
7.猫のカミサマ
ぼくらは、それからここで昼と夜をいくらか繰り返した。そう、あっという間の数日だった。
はじめはいくらかのいざこざもあったのだが、人間が取っ替え引っ替えやってくるこの場所は、凄く居心地が良い。毎日ご飯をくれるヤツが居るんだ。
縄張りだなんだと言ってくるヤツらも、大人しくなったしな。
弁当だなんだと、人間たちが置いて言った冷えたご飯をむしゃむしゃやっていると、ボスのキジ白が尻尾を振りながらやってきた。手下は二匹まだ連れているようだ。しかし以前のような威圧感は無く、どこか遠慮した様子である。
それを認めたぼくは、トラに目配せしてから、ちょっと端に寄り、餌場を空けてやった。
するとすぐにボス猫は隣に駆けてきて、それに続けと手下の猫らもやってきて、一転賑やかな食事会となった。
しばらくすると、下を向いてご飯を口に運びながら、ボスが話しかけてきた。
『お前たちはどこから来たんだ?』
『うん、ぼくらはトラックに乗ってね。遠いところから伊勢にいこうという旅の途中なのさ』
『おいおい、あのトラックに?』
そうさ、とこたえると、どよめきが起こった。
『良くあんなのに乗れたな。こんな大きな体で臭い煙を吐くのに』
『案外中にいると、気がつかないものだよ』
へえと、取り巻きが息を吐く。
『お前、大した奴だな』
『そうかい』
短く返事をすると、再びご飯に取り掛かる。となりのトラは、この間いじめられていたのも忘れて得意な顔だ。
お腹がいっぱいになったぼくは、顔を上げて誰にともなく、一人で呟いた。
『そろそろ、ここから出発しないとな』
ボスが耳を立てて、こちらを向いた。
『そうだ、伊勢には何があるんだ?』
『人間たちのカミサマがいるのさ』
そう答えると、ふうんと言って今度は前を向いた。
『猫のカミサマもどこかに居るのかな?』
『さあね』
そう言って空を見上げる。そこには雲一つない真っ青な空が広がっていた。
……
その晩。大きな月がこんにちはしているその晩に、ぼくらは出発する事にしたんだ。
『じゃあぼかあ行くよ』
『僕も行く!みんなさようなら』
ついつい長居をしてしまったサービスエリアの面々に、簡単に挨拶してトラックに飛び乗った。今度は、ふわりと魚の匂いがする荷台だった。
『今度会ったら、伊勢の話を聞かせてくれ』
ボスが言った。出会いは喧嘩だったが、すぐに和解した彼だ。
『うん、また会えたらね』
そう言って別れた。
さあ、このトラックは今度はどこへ連れて行ってくれるのか。