表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

7.猫のカミサマ

7.猫のカミサマ


ぼくらは、それからここで昼と夜をいくらか繰り返した。そう、あっという間の数日だった。

はじめはいくらかのいざこざもあったのだが、人間が取っ替え引っ替えやってくるこの場所は、凄く居心地が良い。毎日ご飯をくれるヤツが居るんだ。

縄張りだなんだと言ってくるヤツらも、大人しくなったしな。


弁当だなんだと、人間たちが置いて言った冷えたご飯をむしゃむしゃやっていると、ボスのキジ白が尻尾を振りながらやってきた。手下は二匹まだ連れているようだ。しかし以前のような威圧感は無く、どこか遠慮した様子である。


それを認めたぼくは、トラに目配せしてから、ちょっと端に寄り、餌場を空けてやった。

するとすぐにボス猫は隣に駆けてきて、それに続けと手下の猫らもやってきて、一転賑やかな食事会となった。

しばらくすると、下を向いてご飯を口に運びながら、ボスが話しかけてきた。


『お前たちはどこから来たんだ?』

『うん、ぼくらはトラックに乗ってね。遠いところから伊勢にいこうという旅の途中なのさ』

『おいおい、あのトラックに?』


そうさ、とこたえると、どよめきが起こった。


『良くあんなのに乗れたな。こんな大きな体で臭い煙を吐くのに』

『案外中にいると、気がつかないものだよ』


へえと、取り巻きが息を吐く。


『お前、大した奴だな』

『そうかい』


短く返事をすると、再びご飯に取り掛かる。となりのトラは、この間いじめられていたのも忘れて得意な顔だ。

お腹がいっぱいになったぼくは、顔を上げて誰にともなく、一人で呟いた。


『そろそろ、ここから出発しないとな』


ボスが耳を立てて、こちらを向いた。


『そうだ、伊勢には何があるんだ?』

『人間たちのカミサマがいるのさ』


そう答えると、ふうんと言って今度は前を向いた。


猫の(おれたちの)カミサマもどこかに居るのかな?』

『さあね』


そう言って空を見上げる。そこには雲一つない真っ青な空が広がっていた。



……



その晩。大きな月がこんにちはしているその晩に、ぼくらは出発する事にしたんだ。


『じゃあぼかあ行くよ』

『僕も行く!みんなさようなら』


ついつい長居をしてしまったサービスエリアの面々に、簡単に挨拶してトラックに飛び乗った。今度は、ふわりと魚の匂いがする荷台だった。


『今度会ったら、伊勢の話を聞かせてくれ』


ボスが言った。出会いは喧嘩だったが、すぐに和解した彼だ。


『うん、また会えたらね』


そう言って別れた。

さあ、このトラックは今度はどこへ連れて行ってくれるのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ