第10話 リリムはいい子
今話から新章突入です。
物語の進行速度を少し早くしようとも思ったのですが、とりあえず今まで通りのスピードで書いていきたいと思います(*´ω`人)
どこまでも続く広大な平原、遮蔽物などなく遠くまで見渡すことが出来る大地に夕日が差しているーー
俺達は街へと向かう街道を進んでいた
「リリム、街までは後どのくらいかかりそうだ?」
『うーん、このままのペースなら、あと二日ってところかなー。この先は少し魔物が多くなるから、今日はこの辺でキャンプした方がいいかもね。』
「わかった。そうしよう。」
俺達がトモマヤ村を出てから一日半が過ぎていた。
順調に街への旅路を進んでいるのだが、実はここまで順調に歩いて来れたのにはリリムの力が大きい。
そして、昨日一日の間に俺のリリムに対する印象はだいぶ変わっていたーー
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昨日、村を出発してから一時間ほど歩き、街道の分かれ道に差し掛かった時に、地図を貰ってくるのを忘れたことに気付いた俺が、リリムに一旦村に引き返そうと言うと
『地図ならだいたい頭に入ってるよー』
と言って道を指示してくれた。
さらに他にも、道中で鱗に包まれた狼型の魔物に出くわしたのだが、その際にはリリムが魔物の噛みつき攻撃をひらりと素早くかわし、水魔法と剣の連撃で見事にこれを返り討ちにしていた。
村で引き籠もりをしていたリリムを、これまでは温室育ちで何も出来ないお嬢様だと思って少しだけ下に見ていたのだが、色々聞いてみると、幼少期から座学に加え戦闘訓練等の英才教育を受けていたらしく、かなりハイスペックなお嬢様だということが判明した。
さすがは魔王の娘というところか…。
そして貴重なライフラインである水を、魔法で作り出してくれるおかげで、俺達の旅はだいぶ楽になっていた。
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俺が簡単なテントを張り終える頃、枯れ木の枝を集めていたリリムが戻ってきた。
手にはウサギのようなモンスターを持っている。恐らく枝拾いの途中で見つけて狩ってきたのだろう。
『リリムおかえり。』
「ただいまだよー。途中で見つけたから拾ってきたよー。」
この程度のモンスターなら彼女にとっては狩りではなく、落ちている物を拾ってきた程度の感覚なのだろう。
『ありがとう。助かるよ。それじゃあ火を着けるから拾ってきた枝をおいてくれ。』
「あいあいさー。」
リリムが枝を一箇所に集める。
そして俺は一瞬だけGODスキルを発動し、魔力を最小限に抑えて枝に火をつけた。
魔法によってつけられた炎は、ちょうど良い焚き火となり辺りを優しく照らす
「うん。今日は成功だな。」
親指を立ててリリムに向かってニヤリと笑う。
『グッドなのー。』
リリムも同じく親指を立ててニヤリと笑った。
実は昨日、同じ様にして火をつけようとしたら魔力の抑え方がたりなくて、枝が一瞬にして燃えカスになってしまっていた。。
リリムが捕ってきてくれたウサギを食べ、満腹になりながら焚き火を眺めていた俺は、リリムに気になっていたことを聞いてみた。
「あのさリリム、昨日の夜に英才教育を受けていた話を教えてくれたよな。」
『うんー。そうだっけ?それがどうしたのー?』
「リリムって、ぶっちゃけ普通の状態の俺なんかが、足下にも及ばないくらい強いよな。ちなみにお前のステータスってどんな感じなんだ??これから一緒に旅をする訳だし、知っていた方がいいかなと思ってさ。教えてくれないか?」
『そんなに強いかなー?いつも先生には負けてたけどなー。まあいいや、教えてあげるー。』
そう言ってリリムはステータスを教えてくれた…
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リリム
種族:魔族
職業:魔王女
称号:魔王見習い
LV:25
HP:530
MP:280
力:330
賢:220
早:580
所持魔法: ウォーターボール、ウォーターウィップ、ウォーターアロー、ウォーターウォール、ヒール(中)
スキル:魔の統率者(弱)
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スキル説明
【魔の統率者(弱)】魔物をテイムする。対象に自身のMPを与えてテイムする。自身の総MP量の百分の一が対象の総MPを上回る場合に成功する。例外的に、威厳を示すことによりMP量に関係なくテイムが成功する場合もある。
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やっぱり俺より全然強い。性格面で少しドジな所もあるが、それを補って余りあるステータスだ。
ドジ過ぎて、前にスライムに気絶させられてたけどな……
MPと賢は俺の方が断然強いが、それ以外の数値が全然違う。
魔王のステータスに比べると霞んでしまうのだが、それでも俺に比べたら相当強い。
それとも、この位のステータスがこの世界では普通なのか??
通常時の俺のステータスをリリムに知られてしまったら、笑われてしまう様な気がする。
それにしてもこのスキルに対してこのMPは少し残念な気がするが、LVが上がれば色々なモンスターをテイム出来るようになるだろう。
ひと通りステータスを聞いた俺は横になって星空を眺める。
「今夜は星がとても綺麗だ…」
横では何やらリリムが
『ねーねー。ケミのステータスも教えてよー。』
『これから一緒に旅をする仲間だから知っとかないといけないのー。』
と話しかけているが、それを無視して俺は眠りにつく。
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翌日、昨日の残りのウサギ(っぽいモンスター)肉を食べた俺達は早々に準備をして街への旅路を歩いていた。
昨日に比べるとモンスターの数が増えていたが、全てリリムが倒していっていた。
おかげで俺のレベルは一向にあがらない…。
「たまには俺にも倒させてくれよー。」
『やなのー、戦って強くなって早くお父様に認められるのー。』
『それにケミはたまにお父様と同じ位強くなるのー。だからこれ以上強くなる必要ないの。』
あんな力を常に纏っていたら国から命を狙われる気がする。
だから少しでも通常時のステータスを上げておきたいのだが……
どうやら俺にモンスターを残す気はないらしい。
モンスターを倒しながら道を進めていくと、リリムが何かを発見をしたらしく、遠くを見つめて目を細めた。
『ケミー、遠くに昨日倒した鱗狼の群れがいるよー。二十匹くらいかな。あ、それと人間の乗った馬車もいるね。たぶんあの人達襲われちゃうねー。』
「なんだって!?それってどの辺にいるんだ!?」
『うーん、あっちの方だよ。一キロくらい先かな。』
リリムは俺達の進行方向へと向かって指をさす。
指のさした方向を見ると確かに馬車の様なものが見える。
「リリム!今すぐ助けに向かうぞ!」
『えーー。やだよー。めんどくさいもんっ。』
リリムは本当に面倒くさそうな表情をする。
GODスキルを使えばどんなモンスターであれ、余裕で倒せるだろう。
だが、他の人間がいる以上、むやみに魔王化はできない。
しかし、通常状態の俺一人では、恐らく返り討ちにあうだろう。
あの人達を助けるにはリリムの力が必要だ!!
「いいのか。人を助けなかったってお父さんに報告するぞ。」
少しずるいとは思ったのだが、お父さんをダシに使う。
『いいよー。お父様だって、人間なんてゴミクズ以下だって言ってたし。』
どうやら、言葉の選択を間違えたらしい……それじゃあ、これならどうだ。
「俺はお父さんにリリムを任されてるよな。それじゃあ、後でお父さんと再開した時にリリムが俺の言うことを聞かない悪い子だったって伝えていいのか?」
『それは困る……』
「それじゃあどうする??リリムはいい子だよな??」
『むうう、リリムはあの人達を助けるー!!リリムはいい子ーー!!』
そう言って、リリムは馬車に向かって尋常じゃない速さで駆け出していったーー
次回、冒険者目線で物語を書いてみます。
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これからも頑張ります!!
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