第9話 童貞の旅立ち
この話で第1章は完結となります。
果たして岩崎けいすけは第1章で童貞を卒業出来るのか…
俺はリリムを慰めながら不謹慎ながらも心の中でこれからのリリムとのパラダイス生活を妄想していたが
頭の中で『娘に手を出したら殺す』という魔王の声が聞こえて、完全に萎えてしまっていた…
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「さて……どうしたものか……」
俺は困った表情で目の前のドアを見つながら溜息を吐いた。
俺は今、リアの家のお隣さんの家へと来ている…
何故こんなところにいるのかというと
先日魔王からリリムを引き取った後、塞ぎこみ、林の中から動かないリリムを引き摺ってトモマヤ村に戻った。
リリムの頭についている角を見て初めは村のみんなも驚いていたが、俺が害のない女の子だと伝えると案外すんなりと受け入れてくれた。
ちなみに魔王の娘だとは伝えていない。
リアの部屋に3人で住むのは手狭だったこともあり、お隣さんに頼んでリリムを空いている部屋に住まわせてもらっていたのだ。
代金は俺が魔石で支払っている。
話は逸れるがGODスキルは村に戻る前にOFFにしておいた。
俺から【魔】のオーラが出ていたら村人達が恐慌状態になりかねないからね。。
そして話は戻る。
ここにいる理由なのだが…
以前からリリムの事でお隣さんから度々クレームが入ってたのだが、その度に俺とリアが頭を下げて許してもらっていた。
だが、この度それがとうとう限界に達してしまったらしく、リリムをなんとか追い出して欲しいと土下座をしてお願いされてしまったのだ。
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ここ1ヶ月、リリムは完全に引きこもりになっていた。
はじめのうちこそ何度か俺もリリムに会いに行っていたのだが、ドア越しに何度声をかけても返答がなく、それを見かねたお隣さんが「私が面倒をみるから今はそっとしておいてあげましょう」と言ってくれ、その言葉に甘えさせてもらっていた。
お隣さんによると、食事を持っていってもドアを開けてくれないらしく、諦めてドアの前に料理を置いておくと、いつの間にか食器がカラになっているようなので、一応キチンと食事は摂っているようだ。
だが、部屋に引き篭もっているので水浴びもしていないせいか、最近部屋の方から微かに異臭がしはじめたらしい…
それに加え、最近では夜中にお隣さんの家の横を通ると、聞いたことのない女のすすり泣く声が聞こえてくると、軽い心霊スポットとなっていた。
と、ここでお隣さんの方がまいってしまったのだ。。
お隣さんには本当に悪い事をした。
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「さて……どうしたものか……」
ドアは最悪壊して良いとお隣さんには言われているが、とりあえず話しかけてみるか。
「リリム、俺だ。部屋を開けてくれないか!!」
何度かドアをノックする
「いつまで引き篭もってるつもりだ?そうしていても何も変わらないぞ」
『…… 』
部屋の中からガサゴソと小さな物音は聞こえるが応答はない
「じゃあ勝手に部屋に入らせて貰うからな」
そう言って俺は部屋のドアを壊そうとタックルをした
だが、ドアは壊れない…
映画のようにはいかないものだ
そこで俺は一瞬だけGODスキルをONにする
身体の中に強大な力が満ちてくる
そして力を最小限に抑えてドアを指の先で小突いた
するとドアは吹っ飛び、そのまま勢いよく壁へとぶつかった
ドアを小突く瞬間、中から『お父様!?』という声が聞こえた気がした…
すぐにGODスキルをOFFにして部屋の中に入る
それにしても本当に恐ろしい程強力な力を手に入れてしまったものだな……
部屋に入ると異臭がより強まった
「うう…臭い…」
そして辺りを見渡すもリリムの姿はどこにもない。そんなはずはないと焦ってベッドの下を覗いてみるのだが、やはりいない。
いったいどこへ行ったのかと考えていると、先程壁にぶち当たったドアが静かに動きはじめ、床へと倒れる。
するとそこには涙を流し煤けた色をしたリリムがいた
ドアを飛ばした時にドアのすぐ反対側にいたのだろう
「そこに居たのか」
『やーなのー!!』
泣きながら、うるさくだだをこねるリリムを抱きかかえてお隣さんの家を出ると、家の外で心配そうな顔をしたリアが俺を待っていた。
その後、リアに頼んでリリムの身体を洗って服を洗濯してもらい、リアの寝衣を借りてリリムに着せた。
後で知ったのだが、GODスキルを発動させた時間帯に村人の何人かが同時に気絶していたそうだ…
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テーブルに俺とリア、それに向かい合う形でリリムが座っている。
さあ会議のはじまりだ。
「今から、リリムの今後について話したいと思う。」
そう言って俺は話を切り出す
「リリム、俺はお前のお父さんにお前を任された、そして俺はお前を一人前の跡継ぎ候補にすると約束をした。それでお前は今後どうしようと考えてるんだ?」
『……。』
リリムはむすっとした表情で黙ってる。
するとリアが大きな声をあげる
『リリムちゃん!!自分の事なんだからしっかり答えなさい!!』
それでもリリムは黙ったままだ
「そうだぞリリム、これはお前の問題なんだ。俺は出来るかぎりリリムに協力したいと思ってる。お前のお父さんとの約束云々じゃなくて、俺は心からそう思ってる。お前はもうお父さんと会いたくないのか?」
リリムの肩がピクリと動く
「そうか…お前がそのままの態度なら、俺ももうお手上げだ。それじゃあお父さんにはもう会えないな。」
俺は冷たく言い放つ
酷い言い方かもしれないが彼女の事を思うからこそ厳しく言わなければならない
『…………もんっ……』
「ん??」
『リ、リリムはお父様に会いたいもん……』
リリムがやっと声を出す、目には涙が溜まっている。
「やっと話をしてくれたな。偉いぞ。それじゃあ、お父さんと会うためにリリムは何をするんだ??またずっと引き篭るのか?」
『引き篭もらないもん。リリム、しっかり強くなってお父様に認めて貰うんだもん。』
「そうか。それじゃあその覚悟は本物なんだな?」
リリムは力強く首を縦に振る。
「そうか分かった。」
俺は少しだけ考える、そして…
「それじゃあ、旅に出るか。」
『『えっ!?』』
リリムとリアがハモる。
そして俺はリアの方に身体を向き直し、リアに話しかける
「リア、今まで世話になったな。本当に感謝している。でも俺はこれからリリムと旅に出るよ。」
『えっ、で、でもここに居てもリリムちゃんと一緒に訓練とかは出来るよね?ちょっと狭いけどこの家で3人で暮らそうよ。』
リアが引き止めようとしてくれている。
凄く嬉しいが俺には使命が出来た。それは神様に強制されたような使命ではなく、魔王とした男と男の約束だ。そして、この世界で初めて出来た俺の目的でもある。
「ここに居てはダメなんだ。この辺りには強いモンスターはいない…それは平和で良いことだ。だけど、俺はリリムの事を一人前の後継者にすると約束した。リリムの父親は一流の“職業持ち”、だからこそ旅に出て強いモンスターと戦ってリリムを強くしていかなければならないんだ。」
視界の端でリリムが頷いてるのが見える
リアは少し考え、何かに納得したように言葉を口にした
『わかったわ。でも、ケミくんの目的が終わったら必ず帰ってきてね。』
「うん!約束するよ!」
俺は笑顔でリアに約束する
『それじゃあ旅支度をしなきゃだね!私は先に二人の荷物を準備しておくね!』
リアは明るく振る舞う、だが無理している感じが隠しきれてはいない。
でも俺は行かなければならないのだ。
リアが部屋を後にし、部屋には俺とリリムの二人だけとなった
俺はその後、少しだけリリムと話をし、翌日へと備えるのだったーーー
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その夜ーー
ベッドにリリムを寝かせ、リアと俺は床で一緒に横になっていた。
するとリアが俺の方へと寄ってきて俺の手に指を絡めてくる
「あひょっ…」
俺は変な声を出してしまった…
そしてリアのもう片方の腕が俺の背中へと周り二人の距離が近くなる
リアの荒い息づかいが伝わってきて俺の心拍数は一気に跳ね上がる
自分の手が震えているのが、すごく恥ずかしく感じる…
二人の目と目が一直線に見つめ合う
きっと俺の瞳孔は開ききっているだろう
そして、唇と唇が触れ合う寸前の距離を保ちつつ、リアが吐息混じりの声をあげる
『ケミくん…いいよ……』
リアの頬は熟れた林檎の様に紅く高揚した色を放っており、唇はしっとりと湿っている
彼女の激しく高ぶる心臓の音がこちらにまで伝わってくる
全身の血液が下半身の一部へと集結し、それを悟られない様にへっぴり腰になりながら俺は言った……
「リ、リリ、リリムがすぐそこで寝ているから、や、辞めておこう…」
『えっ…』
「いや…だ、だから、ひ、ひひ人がいるからダメだよ…」
人間はここまでどもる事が出来るのかと新たな発見をする
するとリアは残念そうな顔をしたあと、怒ったように反対側を向いて眠ってしまった
やはり俺は根っからの童貞である……
その後頭の中で何度も後悔を繰り返し、意を決してリアの肩に手をかけたのだが時すでに遅く、その手は冷たく弾かれた。
俺は取り返しのつかない事をしてしまった…
そしてその日、俺は静かに枕を濡らして眠りについた…
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翌日、旅立ちの日だと言うのに朝からリアは不機嫌そうだったのだが、いざ出発の時になると不機嫌そうな感じも消えていた。
荷物をまとめた俺とリリムはリアに感謝の言葉を伝え、ハグをして家を出る
門の所へ行くと村の人達が手を振って俺達を旅立ち見送ってくれていた、それぞれに「また来いよー」とか「元気でなー」とか言っている。
1ヶ月と少しの間だったが、本当に良い人達だった。
と感傷に浸っていると、お隣さん姿が見えてそちらにも手を振る
そして、その口元をよく見ると
『もう帰ってくるなー』
と言っていた…
こうして俺とリリムの旅は幕を開けたのであるーーー
次回から第2章の幕開けとなります!!
新展開に乞うご期待www
第2章は明日か明後日の更新になると思います!!
読者の皆様のお陰でなんとか1章を完結する事が出来ました。本当に感謝しております。
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ブックマークや評価をしてくれた読者の皆様のおかげで少しずつですが、ポイントも上がって来ました。そして全ての読者の皆様のおかげ第2章にも入ることが出来ました。本当にありがとうございます!
これからも頑張ります!!
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(2017/11/24)