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白色  作者: 睦月
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第二幕 スノードロップ

聞いたか?今回の現場の話。


あぁ、酷かったみたいだな。


両手両足が切断だとよ。


よくもそんな(むご)いことができたものだ。



  対策本部に着くと、すでに集まっていた捜査員たちがそんな話をしていた。百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の刑事と(いえど)も、今回のような現場に遭遇(そうぐう)することなど実際には滅多になく、驚きを隠せないようであった。



「やっぱり捜査員も増員されてますね。どこに座りましょうか」



 レイは空席を探しながらそう言った。



「後ろのほうでイイだろ。俺らの知ってるようなことはどうせ他の捜査員が報告してくれるさ」


「まーたそんなこと言ってんのか?だいたいお前には覇気が感じられねぇんだよ、桐崎」



と、こちらへズカズカと近寄って来る男がいた。天然パーマの頭にのっぺりとした顔のこの男は青木和也(あおきかずや)。警察学校からの同期で同じく捜査一課に所属している。



「まったく…。どーしてお前はそう熱いんだろうなぁ。少しは肩の力を抜いたらどうだ?」


「刑事たるもの常に気を張ってなければならない。俺こそ刑事としてのあるべき姿だっ!レイちゃんもそう思うよ、んな゛っ?!」



 青木の声が裏返る。見れば、レイは青木の(すね)に痛烈な蹴りを繰り出していた。青木は脚を抱え転げている。このやり取りを見るのも何度目だろうか。レイは俺以外の人からのイジリに対して妙に厳しい。



「青木先輩、僕は男の子ですよ?レイ君ならともかく、ちゃん付けはどうでしょう。そもそも、貴方にレイと呼ぶことを許した覚えはありません。このアホ天パ」



 顔は笑っているが目は笑っていない、というのはこの顔のことを言うのだろう。そして、いつもの通り痛快な毒を吐いた。しかし、青木はそれどころでなく、脛の痛みを癒すのに必死であった。



「まぁ、その辺にしておいてやれ、レイ。こんなんでも俺の同期だ。アホ天パは言い過ぎだろ。せめて熱血アホ天パオッさんくらいにしておけ」


「はい、桐崎さん!」



 レイが微笑む。



「悪化してるだろッ?!それにオッさんはお前もだ!!!」



 青木に聞こえてしまったようだ。青木は何か言い返そうとしたが、本部に管理官が入って来るのが目に入りすぐさま席へと戻っていった。



「俺らも席に着くぞ」



 レイは軽く頷き、俺たちは後方の席に着席した。



「これより捜査会議を始める」



 浅田(あさだ)管理官の号令で捜査員たちが静まる。浅田宗一郎(あさだそういちろう)管理官。階級は警視で所謂(いわゆる)キャリアだ。その(おごそ)かな雰囲気は対策本部を取り仕切るのにぴったりである。



「では、今回の捜査状況の報告を」


「はい、今回も被害者は女性。名前は水谷麻美(みずたにあさみ)。年齢は20歳。新宿のキャバクラで働いてたようです。死因は青酸カリによる中毒死。四肢を切断されていますが、死亡後のものかと。死亡してから1日以上は経ってるようです。以上です」



 前方の席で青木が報告をする。先ほどとは打って変わって刑事らしさに溢れている。



「他にある者は?」


「はい、遺体はウェディングドレスが着せられ、化粧が施されていました。側には切断された四肢が並べなられており、現場の状態を考えると秩序型の犯人ではないかと」


「こちらは遺体のそばにあった花について調べてきました。花はスノードロップというものでした。入手は特段難しいモノではなく、一般的な花屋でも取り扱ってるようですが、自家栽培される方が多いとのことです。事件に関連があるかは不明ですが、スノードロップには、慰め、希望、それから…あなたの死を望みます、という花言葉があるようです。以上です」



 次々に別の班の捜査員たちが報告する。それにしても花言葉か。普通の事件ならばそこまで関連があるとは思えないが、今回の事件は事情が違う。単なる花言葉だけではなく、負の花言葉を含んでいることが、事件と関係している気がしてならなかった。



「ふむ、ホシに直接つながるようなものはまだないと…。ではこれにて捜査会議を終える。各捜査員は主任刑事の指示の下、引き続き捜査に当たってくれ。解散!」


「はい!!!」



 威勢(いせい)のいい返事と共に捜査員がぞろぞろと本部を出て行く。



「僕たちも行きましょ?桐崎さん」


「あぁ、だがその前に少し寄るところがある。」


「またあの人の所ですかぁ?」



 なぜだかむくれたようにレイが尋ねてくる。



「嫌か?」


「別に嫌ってわけじゃないですけど…。僕、あの人苦手です」


「まぁ、そう言うな。検視官に知り合いがいると色々と助かることもある」


「そうじゃなくて…あの人、桐崎さんと妙に…仲良いし、桐崎さんだって…」


「ん?なんだって?」


「なんでもないですっ!!」



 なぜかレイはその透き通る肌を紅潮(こうちょう)させている。何を慌てているのだろうか。



「そうか。じゃあ、行くぞ」


「…はぁ。わかりましたよ」



 そうして俺たちは本部を出て行った。



第二幕、いかがでしたでしょうか。第一幕に引き続き、閲覧誠にありがとうございます。


今回は花言葉がキーワードとなっていました。花言葉ってたくさんあるんですね。びっくりしました。執筆活動を続けていればそのうち雑学王になれそうですね。


今後も投稿していきますのでよろしくお願いします。

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