第39話 報告 【改】
いつもお読み頂きありがとうございます。
「か」を「が}となっていると指摘して頂きました。これは、三つの理由があります。
1、訛りのようなもの
2、一応修正を行なっていますが修正不足が否めません。
3、アクセントとしてわざとやっている部分もあります。
読みづらい部分も多々あると思いますかご了承ください。
アーシャとマインの任務の話を聞いた翌日の朝、フェスは、エナ、エスト、フィーニス先生とカシアと屋敷で働くメイドの二人と食事をしていた。
メイド二人の名前は、アリアとアリス双子で十五才、瑠璃色の髪と眼の美しい女の子だった。
二人は、隣にある孤児院で生活をしていたのだが屋敷のお掃除をしてくれる人を探していたフェスにフィーニス先生が紹介し泊まり込みのメイドとして雇う事となった。
時間のあるときは、フェスやフィーニスが料理と勉強を教えていた。
飲み込みの早い二人で教えたことはすぐに吸収していった。
で、屋敷にいる全員で朝食を食べていたところに来訪者が現れた。
フェスが玄関に確認に行くとそこにいたのは、第一王女エレノアと第二王女アリゼだった。
何しに来たの? 王女二人で来るのは止めた方がいいと思う。
「おはようございます。昨日の今日でどうされたのですか?」
「お迎えに参りました」
エレノアの言葉にアリゼもコクコクと笑顔で頷いていた。
お迎えって、何?
「……お迎えって、なんですか?」
「昨日のお約束です。お忘れですか?」
「私達の補佐の話しです」
エレノア、アリゼが続けて説明した。
「いえ、覚えています。……毎日では無いですよね?」
「一月に一、二回で構いません。それ以外は、お呼び致しますのでお願いします」
「……つまり、それが今日、ですか?」
そうです。と二人は笑顔で答えフェスを馬車に誘導しようとしたが、フェスはそれを制した。
「待って下さい。皆に言ってきますから」
二人の王女に許可を取りフィーニス先生たちに説明しに戻った。
説明を終わらせて戻るとフェスは、馬車に乗せられて城に連れて行かれた。
城に着くと訝しげに見て来る兵士や騎士を気にしないように場内を歩き二人の王女の執務室前に到着した。
エレノアとアリゼが先に部屋に入り続いてフェスも部屋の中に入るとテーブルの上に積まれている書類の山を見て絶句した。
この書類の山はなんだ?
「……聞いていいですか?」
フェスは、わかっていても一応聞いておこうとして質問した。
「なんでしょう?」
フェスの言葉にエレノアが笑顔で返事をした。
「この書類の山は何ですか?」
「私達のお仕事です」
アリゼも笑顔で答えた。
「これ、一日分……ですか?」
「ううん! 十日分です」
エレノアが満面な笑顔で答えるとアリゼも笑顔で頷いていた。
成程……こんな状況だから補佐を頼まれたんだな。
「……もしかしなくても書類仕事……苦手ですか?」
「うん」
「二人して笑顔で誤魔化すの止めてください」
二人は俯いてしまった。
まあ、苦手な人は苦手だから仕方ないけど……誰もやり方を教えていないのか?
「知っている人にやり方を聞かなかったんですか?」
「自分達で悩んで考えなさい、とお母様に言われて……」
エレノアが言い終わるとアリゼと二人から笑顔が消えて俯いてしまった。
そう言ってみたのはいいけど此処まで溜まるとは思わなかったんだな……そして、一度言ったことを撤回するのは難しい……そのための補佐と言うわけか……。
「わかりました。取り敢えず書類を見せて頂きます」
フェスか二人に笑顔で言うと二人にも笑顔が戻った。
書類の整理をしながら纏め方、処理の仕方をわかり易く説明した。
昼食前に山と積まれていた書類の処理を終わらせることができた。
「す、すごいね! 十日分あった書類が四時間ほどで終わるなんて」
アリゼの言葉にエレノアもうんうんと頷いていた。
書類の処理が終わったのを見計らったかのようにメイドが部屋に入ってきて昼食を運んできた。
メイドが準備をしてくれた昼食を三人で食べていたときにフェスは、朝からアーシャとマインを【探査)で確認していたのだが、異変が起きたことに対して溜息を吐いて呟いた。
「やっぱり無謀だった……」
と、フェスの呟きを聞いた二人は何のことだがわからなかったのでエレノアが聞き返した。
「フェス君? どうしたの?」
「昨日言っていた誘拐犯討伐のことです」
フェスの説明を聞いてもまだわからなく次にアリゼが聞いた。
「誘拐犯討伐がどうかしたのですか?」
「誘拐犯討伐に向かった見習い騎士と監督の騎士も含めて全員の反応が消えました。……いえ、一人が逃げるのに成功したようです。報告に城に向かってきています」
「本当ですか?」
「はい、本当です」
フェスの言葉を信じることが出来なかったエレノアは聞き返したが、フェスは躊躇なく本当だと言い放った。
半信半疑のアリゼだったが念のために部屋から飛び出しコーデリア女王に報告に向かった。
数分後、アリゼを先頭に大公と一緒に女王がフェスとエレノアのいる部屋に入って来た。
フェスと女王が話し始めた。
「フェス、アリゼの話は本当ですか?」
「本当です」
にわかには信じられなかった女王だったが、フェスの言うことだから本当なのだろうとは思っていたが、確認のために気になっていることを聞いた。
「全員やられた……のですか?」
「いいえ、死んではいないと思います。死んだ反応ではなくその場から突如として消えたんです」
「どういう事でしょう?」
「可能性の一つですか……反応を消す魔術があるのかもしれません。僕の話が信用できなくとも……数時間後に逃げ延びた騎士の一人が城に向かってきていますから報告を受けてください」
「フェスはどうしますか?」
「勿論調べに行きます。二人が心配ですから」
「一人で?」
「はい!」
「……騎士団を任せます。連れていって下さい」
何言ってんの?
「平民の僕が騎士団を連れて行ける訳ありませんよ?」
「私が命じます。第一騎士団近衛騎士第四隊隊長グラード・ハーフェルが率いている部隊に任せます。面識がありますから他の隊よりは問題ないでしょう」
グラード隊長? ソフィア王女誘拐事件のときの隊長さん?
「面識があっても聖女として会っていますから面識があるとは言えないのでは?」
「大丈夫です。グラード隊長にはばれていたようですよ?」
大公が部屋の外にいたメイドにグラード隊長を呼ぶように命じていた。
グラード隊長には、ばれていた?
数分後、グラード隊長が部屋に入ってきて女王から話を聞いた。
「そうですか……聖女様のお話なら確かでしょう……ですから無謀と進言致しましたのに」
「……男の格好をしている時は、名前で呼んで下さい」
「これは失礼。お久しぶりです。……しかし、男の格好をされていても女の子にしか見えないので……」
グラードの言葉に溜息を吐いてから答えた。
「自分でもそう思います。身長は伸びないし、筋肉は付かないし……髪は縛らないと地面に着くし……でも、スカートを穿いていない時は、フェスでお願いします」
「わかりました。筋肉、付かないので?」
「何をやっても付きません」
「フェスに筋肉は不要です」
フェスは落ち込んでいたが、周りの女性達からはフェスの筋肉反対意見が飛んでいた。
「周りの人が反対をするんです」
「はぁ! まあ、お気持ちは分かります。筋肉とか似合いそうもないですから……」
グラードの言葉に部屋にいる全員が笑顔で頷いていた。が他にも部屋の外にいたメイドも頷いていた。
「……本題に入りたいと思います。女王様が僕に近衛騎士を連れて行けと言います。無理ですよね?」
「無理です」
グラードは力一杯に無理と答えた。
ほら! やっぱり無理だ!
「しかし、力を示せば問題ないかと」
力を、示す? この人も何言ってんの?
「力を示すとは?」
「我が隊の百人と戦って頂き力を示してください。そして、連れて行く騎士を選んでいただきます」
フェスが女王を見ると笑顔で頷いていた。
こうなる事がわかっていた? んだろうな……早く向かいたいのに。
観念したフェスはグラードに向かって頷いた。
「わかりました。早速やりましょう」
「もう準備ができています」
最初から指示をしていた?
フェスが女王と大公を見てみるとにこにこと笑っていた。
部屋を移動したフェスは練兵場に連れて来られた。練兵場には、百人の騎士が集まっていてフェスを憤怒の表情で睨んでいた。
何を言ったらあそこまで怒らせる事が出来るんだ?
「グラード隊長、一体何を言ったんですか?」
「大した事ではありません……お前達の相手をしてやるから全員でかかって来い。と言っていたと言っただけです」
「成程、時間を省くにはいい案ですね! って、馬鹿ですか?」
「出来ませんか?」
成程、この人も本当は、僕のことを認めていないんだな。……それとも女王か大公の仕業か?
フェスが二人を見てみると……二人も驚いていた。グラードの独断だったようだ。
二人があそこまで驚くと言うことは、やっぱりこの人の独断だったようだね。
「わかりました。では、隊長もご一緒にどうぞ」
フェスのその言葉で、グラードも含め全員が憤怒の鬼のような形相になった。
女王と大公が止めようとしたがフェスは無言で制した。
訓練刀を取り出すと練兵場の中央に移動しグラードに合図を送った。
グラードは、フェスの合図を受けて開始の合図をした。
「始め!」
グラードの開始の合図と同時にフェスは、威圧を練兵場中に放った。
グラードを入れて百一人中十一人が動けなくなりその場に立ち止まったのだが残りの九十人は、十一人の異変に気づかずにフェスへと襲い掛かった。
フェスは威圧を放ったまま襲い掛かってきた騎士の剣を踊るように躱し騎士の首、肩を強めに打ち意識を刈っていった。
躱しては斬り、避けては斬り隙を見せた相手の懐に飛び込めは鞘で鳩尾に突きを放ち意識を刈り取った。
フェスの動きを見ていた女王と大公には美しく踊ってているようにしか見えなかった。
騎士の一人が、フェスの長い髪を握った者もいたのだがフェスの逆鱗に触れたかのように今までの誰よりも強く打たれ吹き飛ばされ口から泡を吹くことになり、それを見た者達は髪を握ろうとはしなくなった。
フェスの剣舞が終わった後で立っていられたのは、フェスの威圧を感じて動くことの出来なかった十一人だけだった。
フェスが威圧を解いた瞬間にグラードを除いた十人は動けるようになったのだが、戦ってもいないのに体中から汗を流し疲れ切ったようにその場に座り込んでしまった。グラードは何とか崩れずに立ったままだったが疲れて息も絶え絶えだった。
フェスは練兵場を見渡してからグラードに声をかけた。
「まだ、やりますか?」
「い、いや、勘弁してください」
そこで、勝負がついた。
フェスの剣舞の美しさに見惚れていた女王、大公、エレノア、アリゼが動けるようになると大公が代表してフェスに話しかけた。
「フェス君、最初に何やったんですか?」
「威圧です」
「威圧?」
「グラード隊長はご存知だと思います。ある一定以上のレベルの戦いをする際には必要となります。グラード隊長は、知っているだけで使えないようですが」
女王と大公がグラードに顔を向けると頷いた。
「しかし、十一人以外の騎士は、動けてフェス君に襲い掛かりましたよね?」
「今回は、威圧を調整して、ある一定の力の無い人には感じられないようにしました」
「動けた人は、弱いと言うことですか?」
「そう言うことです」
女王に聞かれたフェスは、はっきりと言い放った。
「動ける方がいいのでは?」
大公が少し考えてからフェスに言った。
「そうですね……でも、威圧を感じなかった人が戦ったらこうなりました。威圧を感じた人は生き残っています。威圧とは、相手の強さを計る目安でもあります。自分より強いとわかれば戦わずに逃げることもできます」
「傍目には、戦わなかった者の方が弱腰に見えます」
エレノア王女の言葉にグラードを含んだ十一人が落ち込んでしまった。フェスは、苦笑してから口を開いた。
「そうですね……そう見えなくもないです。が、死んでは何にもなりません生き残ってなんぼです。威圧を感じない人は死に感じる人は生き残る可能性を得る。ついでに言いますと……あるレベル以上の戦いは武器と武器の戦いの前に威圧のぶつかり合いから入ります。普通なら僕がおこなったような威圧の使い方はしません。敵とみなした全員に威圧をぶつけてきます。そうなると今回動けた人は、確実に死にます」
「どうして、全員に威圧をぶつけなかったのですか?」
大公が聞くとフェスは言い難そうにしているとグラードが代わりに話し始めた。
「フェスの様な強者が弱い者に威圧をぶつけるとショック死する場合もありますし、なにより……死ななかったとしてもお漏らし、脱糞をすることになります。流石に女王様方の前でそんな真似は出来なかったのでしょう」
グラードの言葉を聞いた女性陣は、顔を青ざめていた。
「そう言うことです。弱い人に本気で威圧を放つと戦いの前に決着がつきます」
フェスの威圧を感じることの出来た十一人がフェスと共に救助に向かうこととなり現在休んでいた。
フェスにやられた九十人はしばらく目が覚めそうになかったので、そのまま練兵場に寝かされている。
フェスと女王達はエレノアとアリゼの執務室に戻るとアルフォンス王子とソフィア王女も姿を現した。
山となっていた書類が無くなっていることに気づいた女王と大公が驚き自分達の仕事もフェスに任せようとしたがいち早く察したフェスは、ケーキを取り出しメイドに人数分の紅茶をお願いした。
紅茶を運んできたメイドに使用人達で食べて、とケーキを多めに渡した。
ケーキを食べながらアルフォンスが、フェスが使用人達にまで手土産を渡していた理由を聞くのに口を開いた。
「フェス殿、何故、使用人達にまでケーキを渡されたのですか?」
聞かれたフェスは、お城の使用人達の好感度を上げていた。と言うとエレノアとアリゼ、ソフィアはフェスを睨んだ。
そんな二人の娘を見た女王は口を押えてクスクスと笑っていた。
「フェス君、そんな言い方では私の娘たちが勘違いしますよ? きちんと言って上げてください」
そんな事を言われた三人の王女は顔を赤らめた。アルフォンスは、意味がわからなく首を傾げていた。
フェスは、女王を見て頷いてから話し始めた。
「昨日お話したことを覚えておられますか? 民がいてこその国であると」
王子王女の四人が頷いた。
「昨日話したことは真理ですが、正確に言えば、民だけでも貴族だけでも王だけでもダメなのです。民は、は畑を耕し物を作り兵として戦う。貴族は、民を導き騎士は民を守り兵を指揮します。王は身分に関係なく全国民を守り導く存在です。王太子殿下、王女殿下も権力はまだ小さいとはいえ民を導く存在です」
四人は、真剣に聞いていたが、内心では、メイドにケーキを渡した理由が知りたがっただけなのに、と思っていた。
フェスは、さらに話を進めた。
「今の話を国ではなく城の中に当てはめて考えます。王と貴族はそのまま騎士も貴族とします。侍女は家に戻れば貴族の娘ですが、侍女として働いている内は身分は関係ありませんから平民と考えます。メイド、執事、兵士を平民として、お聞きします。城門の内側で一番多い身分はどれですか?」
「平民」
「平民です」
アルフォンス、エレノアが答えるとアリゼ、ソフィアも同じ答えのようで、頷いていた。
「そうです平民です。王、貴族が指示し命令されて仕事を行なうのは、平民です。……極端な話になりますが仕事を行なっている平民が仕事放棄した場合、仕事が遅れることになり長期間続くと国は大打撃を受けます」
「そうなった場合は、指示をしていた貴族が行えばいいのでは?」
まだ国の仕事をしたことがないソフィアが軽く答えた。
「残念ですがそうもいきません。指示していた貴族が現場の仕事の仕方を知らないから無理です」
「仕事の仕方ですか?」
ソフィアは首を傾げて呟いた。
「はい……貴族の仕事は机の上でできることです。平民の仕事は、勿論書類仕事もありますから机作業もありますが人によれば一日の殆んどを城外にいます。現場の仕事とは、民の声を聞いたり汗を流す仕事です。汗を流すのが極端に嫌う人もいる貴族に現場仕事は無理でしょう」
「確かに……」
「そうですね」
「しかし、それと使用人にケーキを渡すこととどう繫がるのですか?」
アルフォンス、エレノアは納得したがアリゼには、そこからどう使用人にケーキを渡すことになるのかわからなかった。
「そうですね……確かに今の話しから持っていくには難しいかもしれませんね。最初に言いましたが簡単に言うと使用人たちの好感度を上げることです。これは別に女性の方からの人気を得るためではありません。僕の処世術です」
「処世術ですか?」
エレノアが聞き返し他の王子王女は首を傾げていたが女王大公は、フェスを見て微笑んていた。
「本来なら平民の僕が王子王女様方と話をすることは無理な話でしょう。変な噂を流されて、そんな噂の好きな貴族の耳に入ると不敬罪に問われる可能性があります。平民の王侯貴族への不敬罪に問われると正否に関係なく処罰されます」
「しかし、フェス殿は、平民ではないでしょう」
「生まれは皇子かもしれませんが、そんなことを城にいる使用人達は知らないことです。変な噂を流されないためには、使用人たちを味方につけることです。甘い物が嫌いな女性はいませんからね」
フェスは、女性陣を見て苦笑した。
「フェス殿……使用人たちの話から国の話しへ大きな話になりましたね」
もしかして気づいていないのか?
フェスが女王と大公に視線を合わせると二人して苦笑していた。
この人が次代の王様になるのか? 甘やかし過ぎじゃないのか?
「アルフォンス王子、話の内容の本当の意味がわからなかったようですので、今の話を国に置き換えてハッキリと言いましょう。僕が王都ディフェーザを落すとしたら一年もかかりません」
フェスの言葉を聞いた王子と王女の四人は、驚きのあまり立ち上がりフェスを見た後に女王と大公を見た。女王と大公の二人は微笑んでいるだけだった。
「落ち着いてください。例え話です。そうですね……四人にお聞きします。王都を歩いたことはありますか? 特に貴族地区、上級地区以外を……馬車ではなく自分の足でです。そして、平民と話をしたことはありますか?」
話を振られた四人は、歩いたことがなかったので首を左右に振るしかなかった。
「気に病む必要はありません。普通はしませんから。貴族以外で、王族の方々にお会いする機会は滅多にありません。自分の国の王族だから表向きは人気があるように見えますが、あまり会うことのない話のしたことのない王族に真に忠誠心のある平民はいるでしょうか?」
「…………なら貴族に対しての忠誠心は?」
アルフォンスが悩んだ末に口を開いた。
「確かに人気のある貴族はいます。その貴族に対しての忠誠心を持っている平民もいます。しかし、そう言う貴族は、王都ではなく自分の領地で働いています。人気や忠誠心のない貴族は、領地を持っていないか持ってても代官を置き領地経営を任せっきりにしています」
「なら、その代官に人気が集まっているのですね」
エレノアが聞いた。
「残念ながら……さらに人気をなくす原因となります。代官を置いている領地は酷い有様です。大まかな国の法はありますが、細かい法は、領地ごとで違います。王都の平民の税金は、総収入の一割です。その他に市民税がかかります。ですが、ある貴族の代官を置いている領地の平民の税金は、七割と市民税がかかります」
「えっ!?」
アルフォンスの驚きの言葉に三人の王女は、口を開くなとができなかった。
「そんなに取られて、生活はできているのですか?」
「贅沢をしなければ、なんとかできるほどには……しかし、子供の多い家族では、子供を奴隷商人に売ったりしています。市民税と六割の税金は、領地の収入で、残り一割が王都の収入になります。平民にそんなことわからないので、すべて王都の収入と思っている人もいますから王族を恨んでいる人もいます。しかし、王族を恨んでもどうすることもできないから奴隷を買って、八つ当たりしている人もいます。その人達は、領主、代官に騙されていることに気づいていません。何故なら知識がないから騙されていることがわからないのです。多額の税金を取られているために領地を出ることができずに学校に通うことができないのも原因の一つです」
「…………」
誰も口を開くことができなくなりただフェスの話を聞いているだけになった。
「そこで、その王族を恨んでいる人たちを纏めれば王都を落すことができます。僕がやらないにしても貴族派の誰かまたは、他国の人が同じことをする人がいれば大変なことになります」
「一体、どうすればいいのですか?」
ソフィアがやっとの思いで口を開き聞いた。
「昨日も言いましたが、国を見て歩くことです。詳しく言えば、国民と対話し誤解を解き話を聞き、自分の考えを聞かせ王族の人気を上げ忠誠心を持たせます」
「できると思いますか?」
アルフォンスがなにやら決意した目をしてフェスに聞いた。
少しはやる気になったか?
「できるできないではありません。出遅れになる前にやるべきです。王位についたら回れなくなりますから」
「わかりました」
取り敢えずこんなところかな?
フェスが、女王と大公を見ると満足したかのように頷いていた。
話が終わったのと同時に報告が入ってきた。
見習い騎士と監督の騎士が捕まり任務失敗と……。
最後までお読み頂きありがとうございました。
最初、書類整理、処理の仕方も詳しく書きましたが仕事をしている錯覚に陥りましたので止め一文で纏めることにしました。