第36話 新たな仲間 【改】
いつもお読み頂きありがとうございます。
本来なら第一章から六年後から過去を振り返る内容にするつもりでしたが思った以上回想シーンを書くのが難しくちぐはぐな内容になってしまいました。
読みずらいと思いますがよろしくお願いします。
フェス達がエクレーシア王国王都ディフェーザに到着してから六年の年月が流れていた。
フェスは十二才となり三ヶ月後に学園のカリキュラム選択授業が待っていた。平民のフェスには選択できるカリキュラムは、兵士と冒険者しかなかった。
「別に国で働きたい訳じゃないから構わない」
と、フェスの言葉を聞いたアーシャが皆に報告すると女王を始めフェスと面識のある全員ががっかりした。
フェスも最初から思っていた訳ではないが、この六年で貴族に係わるのが嫌になっていた。
アーシャとマイン以外ではソフィア王女のみの接触しかなく、本当ならソフィア王女とも係わり合いになりたくないと思っていたがソフィア王女の従者として学園に通っているので係わりをなくすことは出来なかった。
ヴァージニア大公の屋敷にいては貴族と必要以上に係わりを持ってしまうと思い中級地区にあった中古の屋敷を買い移り住んだ。エナ、エスト、フィーニス先生がフェスについてきた。
ヴァージニア大公は気にしていなかったが周りにある貴族の目が平民が獣人族が貴族地区に入るな! と視線を浴びせていたので居心地が悪くなっていたから丁度良かったのだった。
中古で買った屋敷の隣に孤児院がありその隣に教会があった。
フィーニス先生は孤児院のお手伝いをしながら子供達に勉強を教えていた。
今ではフェスの屋敷と孤児院が直接出入り出来るように庭にあった壁をなくしていた。
フェスも子供達に勉強を教えたり料理をして食べさせたり一緒に遊んだりして心の疲れを癒していた。
エナとエストも孤児院を手伝いながら勉強を頑張り今では、フィーニス先生も含めて日本語を完璧にマスターしていた。
アーシャとマインもフェスについて行こうとしたが大公の娘が中級地区に住む訳にいかないので諦めることになった。
どうして、フェスがそこまで貴族嫌いになったかと言えば、学園に通い始めたことにある。
フェスは最初から目立っていた。ソフィア王女の従者として一緒に学園に入ったのもあるがフェスに女の子達が群がっていて男達にとっては面白い状況ではなかった。
目を付けられるのは当たり前であり貴族の子供達による嫌がらせの日々が始まった。がフェスは全然気にしていなかった。それが気に食わなかった貴族の子供達は直接手を出してきた。決闘と言う名の集団攻撃である。貴族の子供達に手を出したら面倒なことになると思いわざとやられる事にした。
抵抗せずにやられたために調子に乗った貴族の子供達が毎日のように襲って来るようになった。流石のフェスも我慢の限界がある。だが、平民のフェスが貴族の子供に手を出すと処刑される場合が有るためにフェスが選択したのは学園を辞める事だった。がアーシャやマイン、ソフィアに止められてしまい試験の日だけ学園にくることにした。
学園の規則の一つに毎日学園に通う必要はないが毎月、月初めにある試験だけは受ける必要があった。
嫌々ではあるが毎月試験だけは受けていた。
六年で、アーシャとマインがエクレーシア王立学園を卒業し現在は、第五騎士団に所属している。
第五騎士団とは、騎士の見習いたちが所属する騎士団で、武具の訓練はもとより、騎士としての心構えなどの基本的なことを一から叩き込まれる騎士団だ。
第一騎士団から第四騎士団へ見習いとして配属され幾つかの試験に合格すると従士となり正騎士の下で勉強することになる。
従士になると第十位階十位名誉士爵……一代限りの貴族となる。
従士になり試験に合格すると第十位階五位准士爵となる。
さらに厳しい試験合格とある程度の手柄を上げると晴れて正騎士、第十位階一位士爵となる。
貴族の中には、士爵以下は貴族と認めていない者もいる。
アーシャとマインは、十才で学園のSクラスに編入し卒業するまでエリートクラスのSクラスだった。
大公の娘として入ったのでSクラスだったが卒業するまで二人でトップ争いをしていた。知識はフェスとの旅の間に習った事とフィーニス先生が毎日遅くまで二人に教えると他の人が追いつけないほどの知識を身につけることが出来た。
剣術もフェスが教えた。二人でフェスに教えを請うたら自分が教えるとスパルタで教えると言うとそれでも構わないと答えた。……後に二人は後悔することとなった。
王都ディフェーザから一時間ほどの距離にある迷宮に籠ったりした。本来なら迷宮に入るには冒険者ギルトに登録しEランク以上の者しか入れないのだがこの迷宮は、迷宮核が既に死んでいるとされ許可なく入ることができた。
名もなき迷宮……別名ゴブリン王国と言われていた迷宮に一度入ると二十日ほど籠っていた。最初の頃はアーシャもマインも逃げ出そうとしたがフェスは逃がさなかった。
名もなき迷宮はこれ以上成長しない迷宮でありゴブリン以外の魔物がいなかった。迷宮核が既に死んでいたために新しい魔物が生まれることがないからゴブリンだけが異常に繁殖していた。
迷宮核が蘇る可能性もあるが現在まで一度も蘇っていなかったことにより実入りの少ない迷宮に冒険者が近寄らないために一般に開放されていた。
名もなき迷宮、地下二十階の迷宮で最短記録達成者は平均年齢二十才の冒険者Dランク六人パーティーだったがアーシャとマイン二人が十四才で突破してしまった。最下層にいたボスは、ゴブリンキング、ゴブリンジェネラル、ゴブリンセイジが各一匹ずつとゴブリンナイトが二匹だった。
ボスのゴブリンキングを倒すと迷宮内にいるゴブリンの中から新しいゴブリンキングが生まれる事となっていた。ゴブリンは繁殖能力が高く倒しても倒しても増える一方だった。
ゴブリンキングの魔石を城の担当部署に提出すると迷宮探索の達成が確認され城から見習い騎士の資格が得られた。しかし、大公の娘なのに騎士になる必要あるの? とフェスの言葉だった。
ちなみにフェスは、七才で迷宮を突破していたがゴブリンキングの魔石を城に届けていないので未達成だった。
アーシャとマインは、学園に通っている最中に卒業と同時に見習い騎士の資格を得た。
学園を卒業すると第五騎士団に所属し女王親衛隊の見習いとなった。
アーシャとマインの二人はフェスのお蔭で強くなった。が魔術だけはフェスでも教える事が出来なかった。
無詠唱で唱えるフェスには、人に教える方法がまだわからなかった。
フェスの能力ならSクラスが当たり前なのだが平民で学園に入学したために入学してから六年間Cクラスだった。
Sクラス=能力が一定以上ある貴族。
Aクラス=能力が一定以下の貴族。能力が一定以上ある大商人。
Bクラス=能力が一定以下の大商人。
Cクラス以下が平民の能力差となっていた。
一日の授業内容は、
S、A,Bクラスは、朝六時から夜六時までの時間で好きなだけ勉強が出来る。剣術、魔術等の術と名の付く授業を好きなだけ勉強することができた。
Cクラス以下は、朝九時から昼十二時までの時間で剣術と家庭魔術、初級魔術、読み書き算術を選択できる。平民が勉強してどうするんだ。平民は冒険者にしかなれないだろう……しかし、少ないが一応お金を払っている以上授業をしてやるというのが貴族派の学園経営だった。
試験の日しか学園に通わなくなったフェスが何をしていたかと言うと名もなき迷宮に籠ったり、サラサを連れて人族の大陸と魔人族の大陸の境にある人魔の森に行き魔物やら魔獣を狩っていた。
フェスの能力でも最初の頃は森の浅い部分までしか入れなかった。
十一才になった頃に森の真ん中辺りまで行けるようになっていた。
『サラサ……何あれ? ゴブリンが馬を襲っている。ように見えるけど……ゴブリンって馬も繁殖対象なの?』
『フェス、あれ馬に見えるけど馬じゃない……一角獣だよ』
フェスとサラサが隠れている場所から五十メートル先に……体は純白、蒼みかかった銀色の鬣、純白の角の一角獣が二十匹程のゴブリンに襲われていた。反撃はしていたが数に負けそうになっていた。
『東の妖精の大陸の妖魔の森にいて森から出て来ないはずなんだけど』
『珍しいの? 助けた方がいいかな?』
『うん、助けた方がいいと思う』
フェスとサラサが念話で話している最中にとうとうゴブリンに倒されて襲われそうになっていた。
フェスは【空間倉庫】から弓矢を取り出すと弓を引いて矢を連射した。一角獣に乗りかかろうとしていたゴブリンから倒していくと隙をついた一角獣が立ち上りフェスの方に向かって駆け出してきた。
ゴブリンが一角獣を追いかけてフェスにも襲い掛かってきたが一匹もフェスに辿りつく事が出来ずに全滅した。
ゴブリンが全て倒され安心したのが一角獣はフェスの懐に飛び込んてきた。殺気がなかったために反応が遅れたフェスは倒されて……そして、フェスの膝の上に頭を乗せて眠ってしまった。
あまりの事にフェスは頭が上手く働かなく時間だけが過ぎていった。どれくらいの時間が経ったがわからないがやっと気持ちを落ち着かせたフェスは、サラサに質問した。
『サラサ……此れは一体どういうこと?』
『……』
『サラサ!』
少し怒っているフェスに言っていいのかどうかわからなく迷っているとさらにフェスに名前を呼ばれたので諦めて説明した。
美しく装った生粋の処女を好み汚れなき乙女にのみ心を許す。と……それを聞いたフェスは大爆笑をした。がサラサは震えていた。
『つまり……男の僕が処女、乙女と思われたってこと?』
『……うん』
『いや、女の子扱いされるのはまだ良い……聖女として教会でも働いているから……でも、まさか……処女扱いされて、膝の上に眠るってどういうことだ?』
『……』
サラサはフェスから視線を逸らし震えだした。
サラサが見ていないのを確認すると膝の上ですやすやと眠っている一角獣の頭を思いっきり殴った。
殴られて吃驚した一角獣が目を覚まし飛び上がると人型に変身してしまった。
見た目十才位で身長140センチの蒼みかかった銀色の髪を背中まであり碧眼の神秘的な美しい女の子が現れた。
殴られた場所を両手で押さえ涙目でフェスに言い寄った。
「いったあーい! なにすんのよ」
「……」
まさか人型になるとは思わなかったフェスは驚き固まってしまった。
『サラサ……一角獣って人型になれるの?』
『うん、聖獣の中には、人型になれる者もいるよ』
「ちょっと! 私を無視して二人で話するのやめてよ!」
「念話で話しているの分かるのか?」
「わかるわよ……使えないけど……それよりなんでいきなり殴るのよ」
「なら聞くけど……何故いきなり僕を押し倒し膝の上で寝た?」
「そんなの決まっているでしょ? 処女で汚れなき乙女の膝で眠る事が私達の幸せだからよ! 分かったら寝かせなさいよ」
「いや、まて、僕は男だ。それに女? なのに乙女の膝で眠りたいのか?」
「私達は男でも女でも乙女が好きなのよ……それより貴女が男? 男の訳が無いじゃない……何処からどう見ても女でしょ?」
フェスは、掌で顔を隠すと自分の容姿を思い浮かべて、確かに、と自分でも思ってしまった。
十一才になったフェスは身長が伸びたが同年代の男の子に比べて低かった。同年代の女の子と同じくらいか少し低い百四十㎝くらいだった。そして髪も伸びた。何度も切ろうとしたがその度に姉達に止められていた。聖女であるフェスが髪を切ってどうするの? と……。
聖女だから髪を切ったら駄目って意味がわからん。男が地面に着きそうな髪の長さをしているのおかしくない? おかしいよね?
「ほら、言い返すこと出来ないのでしょ? やっぱり貴女は女で決定よ」
「ああ、うん、女でいいよ……じゃあ、気をつけて家に帰ってね」
説明がめんどくさくなったフェスは、自分を女と言うことにして一角獣と別れる事にして後ろを向いて歩き出した。サラサに念話で指示すると走り出した。何故ならばそうしなければめんどくさい事になると思ったからだ。
「ここまで来ればもう大丈夫かな?」
「うん、大丈夫だよ」
「良かった。良かった。……えっ?」
フェスはサラサと話しているつもりだったがサラサが声を出して話せないことを思い出し声のする方を見ると一角獣が人型のままついてきていた。
フェスは額を抑えながら質問した。
「……なぜ……ついてくる?」
「乙女と一緒に行くのよ」
「……いや、こないでいいよ」
「行くのよ! もう決めたのよ」
もうどうでもいいや! と思い一角獣の少女の手を握り自分の下半身を触らせた。フェスのことを女の子と思っていた少女は下半身を触った瞬間に時間が止まったかのように立ち止まっていた。
動かなくなった少女をそのままにして、サラサに指示をし森を抜けるのに走り出した。
十時間程で森を抜けることが出来たがすっかり暗くなっていたので【空間倉庫】から魔道具テントを取り出し中に入ろうとすると外簔を掴まれ驚いたフェスが振り向いてみると少女が立っていた。
「……何をしてる? なんでついて来る?」
「乙女と行くのよ」
「また言ってんの? 僕が男だと分かったでしょ?」
「でも、行くのよ」
僕が男とわかっても何故、付いてくる? 一角獣って女が好きなんだろ?
「男の僕についてくるの?」
「うん!」
少女は満面の笑みで頷いた。
あっ! これ、説得無理だ。
「……わかった。ついて来てもいいよ」
「本当?」
「うん」
フェスの言葉に喜んでいた。がフェスの次の言葉で俯いてしまった。
「名前は?」
「……」
あれ? 聞いてはいけなかった?
「名前無い……」
名前無かったのか……名前無いと呼ぶのに不便だし考えるかな?
「名前無いなら、僕がつけていいかい?」
「本当! いいの?」
俯いていた顔を上げて笑顔でフェスを見た。
「カシアでどうかな?」
「カシア? カシア! それが私の名前? うん、ありがとう」
適当に考えたけど気にいったようで良かった。
カシアと名付けられた少女は、フェスと一緒に魔道具テントに入り休んだ。
別々の部屋で寝たはずなのだが、朝フェスの目の前にカシアが寝ていた。
来るかもと思ったが本当に来るとは……。
朝食を食べながらカシアの話を聞いた。
何故一人で、住んでいた森と反対側の森にいたかと言うと住んでいた集落が何者かに襲われたそうだ。仲間たちとバラバラになって逃げていたらいつの間にかあそこにいたそうだ。で、力尽きて寝ていたらゴブリンに襲われてしまった。
その話を聞いて、気になった事を聞いてみた。
「一生懸命に逃げたのはわかった。でも……大陸の反対側からこっちまで走ってきたのか? 何日くらいで?」
「十日くらい? 休まず走り続けて」
「……十日! 休まず?」
『フェス、一角獣は、獣の姿なら十日ほどなら休まずに走れるし、本気で走ると地上を走る生物で一角獣に勝てるのいないよ?」
『本気?』
『うん。流石に空を飛ぶ生物には勝てないけど』
「僕と一緒に来るんでしょ? 街に行くけど大丈夫かい?」
「うん、平気よ」
「なら一度戻るかな? 試験も近いし」
こうして、十一才の春に新しい仲間が増えた。
後から聞いた話だが一角獣族の姫だという話を聞かされたフェスだった。
姫なのに名前が無かったのか?
この年にマインが主席、アーシャが次席で卒業し騎士団に見習いとして入団した。
お城でお祝いが催され招待を受けたがフェスは出席を辞退した。
最後までお読み頂きありがとうございます。