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第34話 盗賊王 【改】

 いつもお読み頂きありがとうございます。

 エクレーシア王国、五大陸でも珍しい人族国家でありながら多種族が住み着いている国であった。

 人間大陸第二位の国土を有し、人口に至っては五大陸において第一位を誇っていた。この人口には、住民登録をしている国民の他に冒険者と奴隷等の全ての人物を含んていた。

 

 数百年前までは、数多くある小国の一つだったが多種族間戦争後に十人の英雄の生き残りの五人が働きかけ北の獣人族の大陸、南の亜人族の大陸、中央の魔人族の大陸の三大陸と隣接していた多数あった小国に同盟を結ばせる事に成功し連邦国家を作った。

 しかし、数百年の間に盟主国であったエクレーシア王国一国に統一された。


 同盟を結んだのを見届けた五人は姿を消したとされているが現在では同盟を結ばせたのが英雄の生き残りの五人だったという説は否定されている。何故なら仲間が次々と死んだ事に不信を抱いて姿を消した五人がそんな事をする訳が無いと共通認識され歴史書からも伝説からも消され始めている。


 国は一つに纏まったのだが人間が本当の意味で一つに纏まる事など出来る訳がなく元々のエクレーシア王国の王侯貴族による王族派とその他の国の王侯貴族による貴族派の二派に分かれてしまい争いが始まってしまった。現在は女王なので、女王派と言われている。

 国が一つに統一され最初に行なわれた領地を一本化しその後に領地分配を行なったのだがその際に反発した

王侯貴族による反乱が起き鎮圧のために多くの者が処刑されてしまった。

 貴族派と言っても最初こそバラバラに反抗をしていたが一つに纏まった頃から王族派も無理に処罰することができなくなり王族派、貴族派で争い事が絶えなかった。

 しかし、派閥争いが激化した時にエクレーシア王国に名君が現れ二派閥間の対立も緩和されてきたが少なからず現在でも遺恨が残っている。

 派閥争いは、貴族だけではなく国で働く者全員で起こっているが数年前にセラビア教会を国教とされた切欠で表向きの争いことはなくなった。

 

 現在はおもに領地経営や政治での争いに移行している。

 王族派は、身分、種族に関係なく使える人間を登用していた。平民や孤児、奴隷にスラムの住民でも差別なく使える人間は登用するのに対し貴族派は、人族王侯貴族至上主義で、人族の王侯貴族以外は人間では無いと宣言し兵士以上の役職を与えるべきではないと思っているが王族派に対抗する為に仕方なく下級文官までなら平民を登用していた。が平民で学校で文官コースを卒業し尚且つ優秀な人物だけだ。


 エクレーシア王国王都ディフェーザ、各大陸からの盾の意味があり一番危険とされている魔人族の大陸から攻撃された際の最初の防波堤とされるため盾の城塞王国。人間大陸にいながら五大陸の品物が集まる商業王国。王都の近場に五大陸で一番古く一番深い迷宮を含めて合計四つもある迷宮王国。高ランクの魔物が巣食い貴重な素材が採れる素材王国と色々な面のある王国で、月に一度エクレーシア王国からBランクAランク冒険者数人を各大陸の最初の都市へ派遣し希望する一般人や商人又は冒険者を王国まで護衛し人口を増やす努力を行なっている。が、エクレーシア王国王都ディフェーザに人が集まる最大の理由が学園王国と呼ばれる教育機関だった。

 他国では、王侯貴族以外教育を受けることができないので自然と身分に関係なく人が集まってくる。

 学校は六才から小学部に通う事が出来、十二才から選択別の授業を受ける事が出来る。領地経営、魔術師、文官武官、侍女女中、騎士兵士、商人、冒険者等になる為のカリキュラムが細かく分かれており自由に選択する事が出来る。

 領地経営は貴族、侍女女中は女性と決められている以外は身分、種族に関係なく選択する事が出来る。

 能力が認められた者は卒業もしくは卒業前に志願の道が開かれている。 

 

 エクレーシア王国王都ディフェーザは、街壁一周五十キロの正方形の形をした巨大都市だ。

 都市の中心に城があり各行政府も入っている。城の周りに上級貴族の住む貴族地区、下級貴族や大商人の住む上級地区さらにその周りに中級地区、宿屋、武器屋等の商業地区、鍛冶屋等の工業地区、屋台が集まる屋台街、飲食店等の繁華街の一角に娼館があり下級地区にスラム地区もあり区域分けがしっかりとされていたが人口が増える度に都市を広げているので上級地区とスラム地区以外の区域分けが曖昧となっている。


 貴族地区、上級地区は最初から広めに地区整理されていたので今のところ拡張は必要とされていない。

 スラム地区は、都市が大きくなるに連れて常に移動させられている。税金を払っていないのに都市から追い出される事が無いので大人しく従っているが犯罪の溜まり場となっている危険な場所でもある。

 各地区には憲兵、警備兵が配置され各地区に相応しくないと思われる人物を発見すると声をかけ用件などを聞き怪しい場合は詰所に連れて行く。

 都市に入る為の門は東西南北の各二カ所ずつ合計八ヵ所にあり門兵が立っていて街の中を憲兵、警備兵が二十四時間体制で都市を見回っている。


 エクレーシア王国には大きい問題があった。

 その問題とは、国のトップである女王に絶対的な権威・権力はなかった。

 王族派の貴族には的確に指示を出すことはできるのだが、中立派と貴族派の貴族に対しては難しかった。

 わかりやすい例を出すならば、王族派の貴族が治める領地に指示する女王に反対する貴族はいないのだが、エクレーシア王国全体に関わる政策になると反対意見を言い出す貴族が必ず現れる。

 女王の政策に反対意見が出ると関係者が集めら話し合いの場が設けられることとなる。

 関係者とは、領地経営の政策なら領地持ち貴族となる。政策内容により集められる者が変わることとなっていた。

 どうして女王の政策に真っ向から反対意見が言えるかというと公爵家の存在がある。   

 エクレーシア王国の公爵家は元とは言え王家の家であるために反対意見のすべてを無視することができないために話し合いの制度があった。

 そんな制度ができた経緯は、大小様々あった周辺諸国を吸収していった際に問題が多くあったために作られたものだった。

 最初こそ上手く機能していた制度だったが、現在のように王族派とそれ以外の派閥の差が広がると女王の政策を真っ向から反対する場所となっていた。

 そのために同じエクレーシア王国内で、女王の政策を取り込んでいる領地を取り込んでいない領地で貧富の差が広がっていた。

 

 王族派の領地は、一切無いとは言えないが、他国他領に比べて身分種族差別は無いに等しかった。

 中立派の一部や貴族派の領地には受け入れられなかったが、国民を助けるための政策を進めているために王族派の領地の国民からの支持は高かったが、あまりにも平民より王族に敬う気持ちはあるが尊崇する者は少なかった。


 それに対して面白くなかいのが、中立派の一部や貴族派の領地の平民たちだった。 

 本来なら自分の住んでいる領主に不満が行くものなのだが、情報操作が行われていた。自分たちの生活が苦しいのは、派閥の違う領地に対して王族は何もしてくれないと言ったような内容だ。

 そのような話を聞かされている中立派の一部や貴族派の領地の平民から王族は敵意の対象となっていた。  

 

 中立派の一部や貴族派の貴族は、エクレーシア王国内で、王族に対して権威の失墜を狙って情報操作を行っていた。

 上級貴族である貴族派の公爵家が話をしていたために信じる貴族もいた。

 

 長年もエクレーシア王国内で噂されているために王家の権威が失墜し始めていた。



 西門の一つから入ったフェス達の馬車が中級地区を走り始めた頃に人通りが多くなり馬車の速度が落ちた。

 フェスが何気なく馬車の窓から外を見てみると大勢の人が集まっていてその中心辺りから女性の悲鳴やら切羽詰まった様な声がフェスの耳にわずかに聞こえた。


 ……何の声だ今の? 女性の悲鳴?


「馬車を止めてください」

 フェスが御者をしている騎士に声をかけたが、聞こえなかったのか止める気がなかったのかはわからないがそのまま馬車は進んでいた。

「どうされたんですか?」

 馬車を止める理由がわからなかったソフィアは、小首を傾げてフェスに質問した。

「馬車を止めて頂けませんか?」

「馬車を止めなさい!」

 必死に馬車を止めようとするフェスを見たソフィアは、理由を聞いている場合ではないと思い御者の騎士に止めるように命令をしたが聞き入れなく一刻も早くこの場を離れるかのように馬車を走らせていた。

 馬車を止める素振りもないのでフェスは、馬車の扉を開けると躊躇なく飛び降り人が集まっている場所まで戻った。


「どうかされたんですか?」

 フェスは一人の男性に声をかけ事情を聞こうとした。しかし男は、フェスが下りた馬車を見ると舌打ちをしてから怒鳴り声で事情の説明を始めた。

「また貴族様の馬車に子供が轢かれたんだ!」


 なっ! しかし、轢いた馬車が見当たらない? 大した怪我ではなかったのか? いや、ならあんな声はおかしい……撥ねた馬車がいないと言う事は、轢き逃げか? 


「撥ねた馬車は? 轢かれた子供はどうなったんですか? 治療院に運ばれたんですか?」

「何も知らねえんだな! 貴族様の馬車が子供を轢くのは日常茶飯事で轢いた事を気にする貴族はいねえし治療院に運ぶ奴なんで居ねえよ! 高額で一般人の俺らに払える金額じゃねえ!」

「なら教会は? セラビア教会なら見てくれるでしょ?」

「ちっ! ……王都にいる司祭様たちはたいした力はない! 馬車に轢かれた怪我を治せる司祭様はいないんだ! わかったら黙ってろ!」

 男は、舌打ちしてから早口で捲し立てた。

「……なら、其処を通してください」

 フェスは、男の横をすり抜けようとしたが男に肩を捕まえられた。


 最初フェスの言葉と行動の意味が分からなかった男だったが、少し考えてから自分の横をすり抜けようとしているフェスの肩を捕まえて後ろに突き飛ばし怒鳴り散らした。

「豪華な馬車に乗っているって事は、お前は貴族が貴族の関係者だろ! そんなお前が何をするって言うんだ! 轢かれた子供を見て嘲笑うのか?」


 嘲笑う? そんな事する訳ないだろ!


「フェス大丈夫?」

 馬車を止めさせたアーシャとマインが心配になりフェスの傍に駆け寄ってきた。他の人は騒ぎに巻き込まれない様に馬車の中で待機していた。


「マイン姉様! 子供が馬車に轢かれるのか日常茶飯事だそうです。どうなっているんですか?」

 フェスはマインに八つ当たりで怒鳴ってしまった。

「……私がいた頃はそんなことなかったんだけど……」

 マインは顔を俯き呟いた。それを見たフェスは、自分が八つ当たりをしていることに気づいた。

「……ごめん……八つ当たりしました」


 フェスはマインに一言謝ってから自分を突き飛ばした男の傍に戻りもう一度話しかけた。

「そこを通してください」

「まだ懲りない……」

 男は怒鳴りながらフェスに振り向いたが、フェスの雰囲気に恐怖を覚え途中で言葉を切ってしまった。避けない男にさらにフェスが言葉をかけた。

「私は、通してくださいと、頼んでいるんです。退いてください」

 フェスは言葉に威圧を込めると目の前の男だけでなく中心までの道が開いた。恐怖で顔が引きつっている人達の間を通ってフェスは集まっている人の中心まで歩いた。

 

 中心には女の子と女の子を抱いている女性がいた。

 女性は女の子を抱いたまま泣きながら集まっている人に助けを請うっていたが誰もが手を差し伸べる事は無かった。

 フェスが中心にいた女の子を見た瞬間に重傷だとわかった。

 手足が折れているのでありえない方向を向いていた。なにより……胸と頭を轢かれたようで胸は潰れ頭が半分潰れていて生きていたら奇跡な状態だった。

 もう死んでいるかも。と思いつつもフェスは、女の子に近づき確認してみた。すると虚ろな目でまだ死にたくないと訴えているようフェスには見えた。

 

 フェスの姿を見た女性は、見ているだけで誰も近づいてもくれなかったところに現れた女の子……フェスに

助けてくださいと何度も何度も泣き叫びながら頼んでいた。


 良かった。まだ息がある。これなら助かる。


 息があることを確認したフェスは、女性の手に自分の手を重ね大丈夫、と込め視線を合わせてから頷いた。フェスの顔を見た女性は安心したのが泣いてはいたが取り乱す事は無くなった。

 

 【空間倉庫】から現在持っている最高ランクの回復薬を取り出すと女の子の口に運び飲ませようとしたがもはや女の子には、自分で飲む力は残っていなかった。

 自分で飲む力がないとわかったフェスは、怪我をしているところへ直接振りかけると回復を始めたが反応が鈍かった。


 怪我が酷すぎて回復が鈍ってるのか? どうする? ……うん、自分で飲む力がないのなら。


 どうするか一瞬悩んだフェスだったが悩む必要もなかったと思い即実行した。


 自分の口に回復薬を含み女の子の口を開くと唇を合わせ流し込んだ、それを二度三度と繰り返すと折れていた手足は骨がくっつき、潰れていた胸は膨らみ元に戻ると……潰れていた頭も元に戻り始めた。

 完全に回復をすると絶え絶えだった呼吸もなめらかになった。


「もう大丈夫です」

 フェスが女性の肩をぽんぽんと二度軽く叩き言葉をかけるとその場にいた全員から大歓声が起きた。女性は奇跡が起きたと喜びたかったが困惑し女の子とフェスを交互に見る事しか出来なかった。女性が自分の娘が助かったのに喜べなかった理由に死にかけていた人間を回復させる高価な回復薬……どれたけのお金を要求されるのかわからなかったからだ。

 しかし、女性がそんなことを考えているとは知らずにフェスは、女性に笑顔を見せてから立ち上がりその場を離れ歩き出した。

 拍手や歓声に送られその場を後にするフェスを突き飛ばした男が前に立ち塞がり頭を下げ謝った。

 男に気にしないで、と言葉を残してアーシャとマインと一緒に馬車に乗り込んだ。


 フェスが馬車に乗ったそのときになって女性は、自分が高価な回復薬の心配ばかりしてお礼を言っていなかったことに気づき娘を抱いてフェスを追いかけたが馬車は走り去っていた。


 フェスが馬車に乗り込み走り始めて暫くするとソフィア王女が頭を下げ謝った。

「フェスさま申し訳ありませんでした。子供が轢かれているのが見え助からないと思い止めなかったそうです」

「そうですか……」


 回復薬の効果を知っていて止まらなかったのか?


「貴族が乗った馬車が轢いたようです。捕まえる事は出来ないのですか?」

「……申し訳ありません。憲兵が警備隊が現行犯で捕まえなければ無理なのです」

「日常茶飯事とも言っていました。捕まった人はいるのですか?」

「数人はいます。しかし、貴族本人が捕まることはありません。御者が捕まるだけで終わります」

「何故、と聞いてもいいですか?」

「……内密にお願いできますか?」

「王女様!」

「構いません」

 御者をしている騎士が話をしようとするソフィア王女を止めようとしたがそれを遮り話し始めた。

「派閥争いが関係しています。貴族派が王族派の貴族の仕業と見せかけるためにです。一般の人には貴族の見分けができませんから」


 でも、そのやり方だと自分の首も絞めているのでは?


「派閥争いに国民を巻き込んでいるんですね?」

「……」

 フェスの言葉にソフィア王女が返答する事が出来ずに沈黙が続いた。


 沈黙が続き暫くすると都市の中心にある王城に到着した。

 

 馬車を降りると大勢の騎士が現れソフィア王女を囲んで無事だった事を喜んでいた。

 城内に入城すると入口の傍にあった部屋にエナ、エスト、フィーニス先生が待つ事となった。サラサは城の外で待たされていた。

 フェス、アーシャ、マインの三人は、ソフィア王女の案内で謁見の間に案内された。

 

 謁見の間に入ると騎士が数人と大臣らしき男が待っていて、沈黙の中で暫く待たされ暫くすると女王が現れると言う事でフェス、アーシャ、マインの三人が片膝をつき、頭を下げて待ち受けソフィアが横で立ったままでいた。

 

 頭を下げていると一人の女性が現れ玉座へと座りフェス達に声をかけた。

「面をあげなさい」

「……」

「面をあげなさい」

 二度目で面を上げると女王が玉座に座ってフェス達を見ていた。マインが女王の顔を確認すると驚いた顔をした。

 マインの驚いた顔が気になったフェスは女王を【鑑定】してみると【青:人族:貴族(大公爵)】と出た。マインが驚いたのは女王が現れるものだと思っていたら自分の母親が現れたことによるものだった。

 マインが驚いて声を発しようとしたが玉座に座っている女性が黙っていなさい、と視線に込めると俯き黙ってしまった。


「この度は我が娘を助けて頂それからき誠に有難う御座いました。聞く所によりますと騎士顔負けの強さとお聞き致しております。此度の褒賞として金貨百枚をお渡しいたします。それからエクレーシア王国の国民登録する際の税を無料とします。此れからも我が娘と仲良くして下さい」

「……ありがとうございます」

 女王はフェスの言葉を聞くとさっさと退室し大臣より金貨百枚入った布袋と書類を手渡されてフェス達も謁見の間を後にした。


「フェス様、私の母はどうでした? お綺麗でしたでしょう?」

「はい、一つお聞きしても宜しいですか?」

「はい、なんでしょう?」

「この国の女王様は、マイン姉様のお母様なのですか? そうなるとマイン姉様とソフィア王女様は姉妹なのですか?」

 フェスの言葉に全員が驚きフェスを見合いソフィアが口を開いた。

「……なぜそう思われたのですか? いえ、どうしてお分かりになられたのですか?」

「マイン姉様が驚き大公爵様? が何も言うな、と視線に込めていましたから……それに何やら空気と言うか雰囲気がおかしいように思ったので……もしかして違うのでは、と思いました」

「騙した感じになりまして申し訳ありません」

「いいえ、気にしないで下さい。平民が女王様に会えるとは思っていませんでしたから。大公爵様でも過分な計らいだと思います。そろそろ失礼させて頂きます。寝泊まりするところを探さないといけませんので……」

「お、お待ちください!」

 フェスがマインに声を掛けようとするとソフィアが遮った。

「騙したことをお怒りになられているのでしたら謝ります。フェス様のお力をお借りしたいのです」

「怒ってはいませんけど力を借りたいとは?」

「ご案内致します」

「ソフィア様!」

 騎士の一人がソフィアを止めようとしたが、ソフィアは首を振り口を開いた。

「このままでは、死ぬのを待つだけです。それならば、助かる可能性があるのなら形振り構っている場合ではありません」

「……わかりました」

 騎士との話を終わらせたソフィアは、一度フェスの顔を見てから案内を始めた。


 フェス達が連れてこられたのは最上階である地上十階にある一部屋の扉の前だった。

 フェスとアーシャが驚いたのは、九階から十階に上る階段を見た時だ。

 十階にある部屋は全て王族の部屋であり王族を守る為に階段から十階の廊下に王室騎士団ロイヤルガードが隙間無く立っていた。

 フェス達の姿を見た王室騎士団ロイヤルガードたちは、いつでも剣を抜くことが出来るように柄に手を掛けていた。

 それをソフィアが合図を出すと柄から手を離しフェス達の動向を見守るだけとなった。


 一つの部屋の前に立つとソフィアがノックをし返事がないまま王室騎士団ロイヤルガードが扉を開けるとマインがソフィアの後に続いて部屋の中へ入って行った。

 フェスとアーシャは中へ入って良いものかどうか迷っていると騎士の一人に手で入る様に促されて中へと進んだ。中へ入ると扉を閉められてしまった。

 フェスが中を確認するとソフィア、マインの他には、四人の女性騎士が四隅に立ち、部屋の中心にテーブルがあり五人が座っていた。三人が男性で二人が女性、そのうちの一人は先程会った大公爵だった。

 

 マインがテーブルに近づき大公爵に挨拶を始めた。

「お母様只今戻りました」

「お帰りなさい。帰国はもっと先だと思っていましたが予定より早いと言う事は……お亡くなりになられたんですね?」

 マインは一瞬迷った後で頷いた。


 ……亡くなった? 誰が? フェガロフォス? どういう事?


 考え事をしているフェスに大公爵が傍まで歩いてきた。

「先程は失礼致しました。私は、エクレーシア王国大公爵ヴァージニア・エクレーシアです。マインの母でもあります。あなた方は? あの場で名前を聞く訳にいきませんでしたので」


「フェスです。マインさんと旅をしてきました」

「ア、アーシャです。同じくマインさんと旅をしてきました」

「あら! フェス様、先程までマイン姉様と言っておられましたのにどうされたのですか?」

 ソフィアは、フェスをからかうような笑顔で言った。

「旅の間は、姉妹と言う事にした方が安全だと言われましたので」

「では、もうマイン姉様と呼ぶ事は無いのですね?」

 フェスはソフィアの言葉に困ってしまいマインを見た。それに気づいたマインはフェスとソフィアの間に立った。

「ソフィア王女様、この子は世間知らずで純粋なんです。からかうのは止めた下さい」

 

 マインの言葉でソフィアがフェスに謝ると座っていた残りの四人も立ち上がり傍まできた。

 一人は公爵リチャード・エクレーシアでソフィアの父であり現女王の第一夫人であった。

 一人は侯爵パトリック・エクレーシアでマインの父、

 一人の女性……女の子は、第一王女エレノア・エクレーシア。ソフィアの姉だ。

 最後の一人は、エレノアとソフィアの兄であり女王コーデリア・エクレーシアの息子で、次期国王となる第一王子アルフォンス・エクレーシアだ。

 ひととおり挨拶が終わるとソフィアに案内されたフェスが部屋にあった大きめのベッドに向かった。

 マインもその後を歩きフェスへと声をかけた。

「フェス、フードを下げて、失礼でしょう?」

「すいません。フードをしているのが当たり前になっていましたから気づきませんでした」

 フェスはマインの言葉にフードを下げた。フードを下げたフェスを見た大公爵ヴァージニアはフェスに抱きついてしまい先程までの気品溢れる立ち振る舞いが嘘のように取り乱していた。


 わっ! わっ! 何? 何? わぶっ!


 大公爵ヴァージニアは、可愛い可愛いとフェスを自分の胸に押し付けていた。

 ソフィアとマインが止めてやっと落ち着いた。

「し、死ぬかと、思いました」

「フェス大丈夫?」

 ヴァージニアはフェスに謝るとマインがフォローを入れた。

「お母様は、可愛い子を見ると見境がなくなるの……」

「だって、ここまで可愛い女の子見たことないのだから仕方ないでしょ? アルフォンス王子もそう思うでしょ?」

「えっ!? ええ、まあ……は、はい」

 フェスを見て見惚れていたアルフォンスは、ヴァージニアに急に話を振られて戸惑ってしまった。

 そんなアルフォンスを見た部屋にいた全員が笑ってしまうとアルフォンスは、顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。


 部屋の空気に耐えかねたフェスは、ベッドに横になっている女性を見てソフィアに話しかけた。

「ソフィア様、もしかして、私が呼ばれたのは寝ている方に関係ありますか?」

「そうでした。申し訳ありません。そうです。フェス様に見て頂きたい方です」

「どなたですか?」


 まあ、聞かなくてもわかるけどね……この部屋で寝ていて、部屋にいる人物を見て考えると。


「エクレーシア王国女王であり私とエレノア姉様、アルフォンス兄様のお母様……コーデリア・エクレーシアです」


 ほら! やっぱりね。


「状態を聞いてもいいですか?」

「はい……今から十ヶ月前にアルフォンス兄様の社交界デビューの舞踏会が開かれました。兄様とお母様が貴族の方との談話中に急に倒れられました。それ以来、立ち上ったり歩いたりすると目眩で倒れたりすることが多くなりました。座っているか横になっていることか多くなって、ここ一月ひとつき前から立ち上がる事も出来なくなり寝ていることが多くなりました。……フェス様お願いします。お母様を助けてください」

「私からもお願いフェス!」

「見てみますけど……助けられるかわかりませんよ? 病気に効く薬がありませんから」

「わかっています」

「薬は飲ませていますか?」

「はい、城内にいる王族専属の薬師に調合して貰って一日三回飲ませています」


 薬師が作った薬を飲ませても効かないのか? 専門の薬師がわからないのなら僕には無理じゃない?


「どんな薬がわかりますか?」

「回復薬、解毒薬、病気薬など全く効かなかったので、今では高価な材料を使った特別な薬を作って貰っています」

「高価な材料ですか?」

「はい、一回分金貨一枚する薬です」

「……そんなに高い薬を飲んでも治らないのですね?」

「薬を飲んで暫くは頭の痛みが無くなるそうです」


 そんなに高価な薬を飲んでも効かないということは、病気にあっていないのでは? …………! いや、飲んでも治らない可能性が一つあるけど自分の国の女王にするか? 【鑑定】してみるかな?

 

 フェスが女王を【鑑定】しようとしたとき部屋をノックする音が聞こえた。音のした方を見てみると高価そうな服を着た五十代くらいの偉ぶった感じの男が入って来た。

 

「どうも皆様方お集まりの様ですね? 見覚えのない顔もあるみたいですが薬の時間ですのでお邪魔させて頂きます。薬を飲ませている間は近寄らないでください。薬に埃でも入ったら駄目になりますから」

「……先生お願いします」

「勿論です。さあ、そこを退いてください」

 薬師の言葉に全員が頷き部屋の中央まで戻った。


 ……随分偉そうな人だけど……なんとなくこの人ならさっきの考えた事やりそうかも……いや、見た目で人を判断したら駄目だよね。


「さあ、女王様、薬の時間です」


 ……薬? 一応確認を【鑑定】……。 


 薬を鑑定した瞬間にフェスは駆け出し薬師の持っていた薬を奪い取った。

 それを見ていた全員が驚き四隅にいた女騎士が女王の元へ駆け寄ろうとしたがヴァージニア大公がそれを制止した。

 一番驚いていた薬師が顔を青くさせてフェスから薬を必死に取り返そうとしていた。


「おい! 貴重な薬を返せ! お前なんかに買えるような薬じゃないんだぞ!」

「何を言っているんですか? こんなの銅貨一枚の価値もないでしょ?」

「なっ!? し、素人が何を言っている。お前のような小娘が集められない材料ばかり使っている薬だぞ!」

「確かにこんなゴミ集めること出来ません……そもそも薬じゃないですよねこれ? 薬草の類一つも入っていないでしょ? 匂いを誤魔化すのに香草を入れてあるみたいですけど……高価な効く薬は、匂いも苦味も酷い物です。とか言っているんじゃないですか?」

「…………」

 そんなことをフェスに言われた薬師は、口を開くことができなくなった。

「どういう事ですか? フェス様」

 ソフィアの質問に薬を見た後で全員に説明した。

「この薬? に使われている材料って、全然薬にならない雑草、カビ、野菜とか果物汁が入っています」

 フェスの言葉を聞いた全員が絶句していたが女騎士が剣を抜き薬師とフェスに向かって歩き始めていた。

「で、一番良くないのが鉛、銅、鉄が多く入っています」

「一番良くないとは? それを飲むことによって何か起きるのですか?」

「これと女王陛下の症状を見て病気の原因がわかりました」

「なんですか?」

 ソフィアは必死の表情でフェスに聞いた。

「重金属中毒です。貧血に呼吸障害、骨障害、髪が抜けたりです。二~三年で死ぬ事になると思います。女王陛下の症状は十ヶ月程の症状ではありませんからもっと前から徐々に摂らせていたのでしょう」

「どうやって?」

 アルフォンスがフェスに聞いた。

「気づかれないようなら何でも構いません。料理、飲み物、後は枕の中に粉塵にして入れとけば寝ている最中に鼻や口から吸い込むことになります」

「し、しかし、そんなこと……仮にそうだったとしても薬師にそんなこと出来る訳ないのでは?」

「メイド、侍女の中に仲間が居れば簡単にできます」

 フェスが説明するたびに薬師の偉そうにしていた顔が歪み尋常じゃない汗が流れていた。

「だ、騙されてはいけません。今の話は全て出鱈目です。これは本当に特別な材料を使っています」

「フェス様、証拠は御座いますか?」


 証拠? 【鑑定】を使ったと言っても駄目なような気がするし……どうするかな?


「証拠がないようです。やっぱり出鱈目なんです。騙されてはいけません」

 薬師の言葉の後に考えを纏めたフェスが口を開いた。

「聞きたい事があります。宜しいですか?」

「なんだ!」

「この薬を飲ませてどれくらいですか? 回復しなかったんですよね?」

「半年くらいで回復は見ての通りです」

 フェスの質問にヴァージニア大公が薬師の代わりに答えた。

「しかし、飲ませた後暫くは、良くなっているではないですか」

 薬師はヴァージニア大公を見て必死に説明した。それにはフェスが答えた。

「それ中毒ですから……飲んだ後だけ良くなっているように見えるだけです」

「そんなことわからんだろ! それより早く証拠を見せろ!」

「証拠になるのかわかりませんが……」

 話の途中で【空間倉庫】から解毒薬を取り出し見せた。

「なんだ! それは」

「これは、私が調合したランクB解毒薬です。飲んで貰い回復すれはいいですよね」

「そ、そんなどこの誰だがわからん奴の薬を飲ませる訳にいかんだろ!」

 薬師の言葉に頷く人もいたがソフィアがフェスのことを説明した。

「フェス様なら大丈夫です。セラビア教会の聖女様ですから」

 フェスが聖女であることを知らなかった者が驚き薬師だけより一段と取り乱してしまった。

「う、うそだ! 聖女様が此処にいる訳がない。確かにセラビア教会に聖女様が現れた話は聞いるがヴェスナー神聖帝国にいると聞いた。此処にいる訳がない偽者だ!」

「いつの話をしているんですか?」

 フェスは教会の身分証を渡し確かめさせた。すると薬師は今にも倒れそうな程に顔色を悪くさせた。

「薬を飲ませて宜しいですか?」

「お願いします」

 フェスの言葉にヴァージニア大公が許可を出したので女王に近づくと女性騎士が女王の体を起こしてくれたが既に意識がなく自分で飲むことが出来なくなっていた。

 それを見た薬師の顔色が少し良くなったが、フェスの行動を見た瞬間にまた顔色が悪くなった。薬師だけではなく部屋にいた全員がフェスの行動に目を見開いて驚いた。

 

 フェスが行った行動は、馬車に轢かれた女の子を助けたときと同じく自分の口に解毒薬を含み自分の唇と女王の唇を重ねて喉に流し込んだ。すると数秒もしないうちに女王が目を覚まし自分の唇に女の子? の唇があることに気づき夢だと思い目を閉じてしまった。


 女王が目を覚ましたことに気づいたフェスは、薬師に話しかけた。

「回復したようですね?」

「た、偶々だ! 偶然だ!」

「貴方は偶々でも偶然でも回復させることは出来ませんでしたよね?」

「俺が今まで薬を飲ませてきて良くなってきていたところに偶々薬を飲ませたらよくなったんだ!」

「聞いた話によると良くなるところが悪くなっていったとお聞きしました。現在は立てなくなったともお聞きしました」


 この人まだ認めないの? 仕方ない……。


「この方法は使いたくありませんでしたが、その薬が安全だと確かめる一番の方法があります」

「その方法とは?」

 ソフィアが問うとフェスはゆっくりと答えた。

「その薬を作った本人が飲んで安全な薬だと示せばいいんです。さあ、飲んでみて下さい」

 全員が成程と頷いていたが薬師だけは、体が震え顔色がさらに悪くなりフェスの顔を見て小刻みに首を左右に振っていた。

 コーデリア女王は女騎士に支えられたまま薄眼を開けてみていた。

 全員が見つめる中、体中がプルプルと震えていた薬師を見ていたフェスだったが体中に鳥肌が立ったかと思うと尋常ではない汗が流れ出た。

「フェス様?」

 急にフェスの様子がおかしくなったことに気づいたソフィアが声をかけたがフェスの耳には届いていなかった。


 フェスは、自分の体に起こった異常の意味はわからなかったが本能が武器を出せと言っているようで、【空間倉庫】から刀を取りだした直後に目の前の空間が一瞬歪んだかと思うと一人の男が現れ剣を振り上げていた。

 いきなり現れた男に対して誰も反応出来なかった。

 男は無表情のまま振り上げていた剣を女王に向けて振り下ろした。その光景を見ていた者全員がもう駄目だと思った。

 しかし、フェスだけは何とか反応し取り出していた鞘に収められたままの刀で剣を防いだ。

 フェスの行動により女王が助かったことを悟ったヴァージニア大公は、女騎士に男を取り押さえるように指示をしたが女騎士の行動を見て絶句してしまった。

 コーデリア女王を支えていた女騎士が立ち上り短剣ショート・ソードを抜くと女王の首を狙って振り下ろした。が短剣ショート・ソード振り下ろされるよりも早くフェスは女騎士の顎を強く叩き脳震盪を起こさせた。残りの女騎士三人も男の仲間だった様で男の傍まで寄ると短剣ショート・ソードを構え牽制した。


「なかなかの反応だな? 前に会った時に比べてかなり強くなったな……聖女様」

「えっ!?」

 女王を守る様に立ち刀を構えていたフェスは、男の声に反応し会ったことがあるのかを思い出そうとしていた。


 ……この人強い……勝てる気がしない……それにしても前に会ったことがある? ……何となく聞き覚えのある声だとは思うけど……こっちの世界にきてからだと…………まさか!


 フェスが考え事をしているとヴァージニア大公が外にいる王宮護衛騎士を呼ぼうとしたが、それに気づいたフェスが呼ぶのを止めた。。

「何故呼んだら駄目なのですか?」

「……呼ぶ王室騎士団ロイヤルガードの中にもこの人の仲間がいるかもしれません。いたとしたら混乱するし女王を守る事が難しくなります。予想では、この人に勝てる人いません」

 ヴァージニア大公は、フェスの言葉を聞き入れた。

 フェスの言葉を聞いていた男はニヤニヤと笑い始めた。肯定も否定もしなかったがその通りだと物語っているようだった。


「質問してもいいですか?」

「なんだ? 答えないかもしれないかな」

「貴方はもしかして、ヴェスナー神聖帝国マースチェル領領都ファウダーの領主と領主代理の護衛をしていた方ですか?」

「ほう! 思い出したのか? あの時は顔を隠していたのにな」

「声と威圧の質です。ずっと背中に威圧をぶつけられていたら忘れませんよ」

「やはり気づいていて無視していたのか……なら何故反応しなかった?」

 男は、フェスが答えを言葉を知っているようで面白そうに笑っていた。男の笑いを見てフェスも笑顔で返した。

「知っていて聞くのですね……反応したら戦いになっていたでしょ? あの場なら死ぬことはなかったと思いますが痛いのは嫌ですからね」

「本気でやり合いたかった訳じゃないんだがな。お前の力を見てみたかっただけだ。……お前日本人か?」

 男は、最後の言葉だけ日本語で言った。

 フェスは、日本語には反応しないで無表情で通した。

「最後なんて言ったんですか?」

「いや、わからないならいい」

 

 誤魔化せたかな?


「マースチェル伯爵方はどうされたのですか? まさか殺したんじゃないでしょうね?」

「安心しろ殺していない。俺のことは覚えていないだろうかな」

「どういう事ですか?」

「俺のことは忘れさせてから後にしたからな…………話はもういいか?」


 フェスは、首を振り最後に一つだけ、と言って質問した。


「貴方か貴方の仲間の中にトウヤ・タチバナと言う方はいませんか?」

 フェスの言葉を聞いた男は、驚いたような面白いことを聞いたという顔をしていた。

「本当に面白いなお前! 俺がトウヤ・タチバナだ。闇ギルトマスターであり盗賊王だ!」

 

 やっぱり日本人で、まさかこの人がトウヤ・タチバナだったとは……。


「あなたの友達のアーセファさんとトゥーナさんに頼まれました。見つけたら教えてほしいと」

 二人の名前を聞いたトウヤ・タチバナは、一度瞳を閉じてからフェスを見てから口を開いた。

「懐かしい名前を聞かせてもらった。……礼に今回は退く事にする。がその前に役立たずを始末する事にする」

 トウヤ・タチバナはそう言葉にするとフェスが反応出来ない剣筋で薬師の首を刎ねた。その光景を見たソフィアとエナノアは気を失い倒れてしまいアーシャとマインは顔色を悪くしたが倒れずに耐えた。


「失礼する前に名前を聞いておこうか?」

「……フェス……もう一つ質問していいですか?」

トウヤに名前を聞かれ答えてから質問していいか聞いた。

「なんだ? さっきので最後じゃなかったのか? ……まあいいか、答えないかもしれないが言ってみろ」

「いきなり現れたのは、魔術ですか?」

「知らないのか? 転移魔術だ」


 フェスに意識を集中していると思いアルフォンス王子が剣を抜き襲い掛かった。がトウヤは、アルフォンスの剣を避けると足を引っかけ転ばせてから剣を振り下ろした。マインの悲鳴が部屋中に響き渡った。


「ほう! これくらいなら反応出来るみたいだな?」

「……ギリギリですけど」


 ……帰るって言ってんのに何故、攻撃をするの?


 トウヤの剣をフェスの刀が受け流していたためにアルフォンスは斬られずに済んだ。


「……アルフォンス様すみませんがそのままでお願いします。女王様を守るだけで精一杯ですので……」

 アルフォンスが頷いたのを確認したフェスは、トウヤに話しかけた。

「すいませんが早く退いて頂けませんか?」

「襲ってきたのはそっちなんだが?」

「……」

 トウヤの言葉にフェスは返答できなかった。

「まあいい……今回此処に来たのは其処の馬鹿を殺すためだ。女王はどうでも良かったんだ。用事が済んだので失礼する」

 トウヤ・タチバナは言い終わり魔術を唱えるとトウヤと女騎士の四人と薬師の死体が消えていた。


 後で分かった事だが女王親衛隊、王室騎士団ロイヤルガードと女王付きのメイド、侍女の数人も消え大騒ぎとなった。

 

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