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第30話 事故…… 【改】

 いつもお読み頂きありがとうございます。

 誤字脱字が多く読みずらいと思いますが申し訳ありません。

 眼の病気の為に確認不十分になってしまいます。

 感想などで知らせて頂けると助かります。

 アーセファとトゥーナの兄妹と別れてから一月ひとつきフェス達六人と一匹は、ゼルザール王国を抜けて目的地であるエクレーシア王国の一つ手前の国であるアグロティス公国公都ルリジオンにいた。

 

 アグロティス公国……東と西を大国に北を深い森その先に高い山に挟まれた国であるが南側に美しい湖がある人族大陸に一国しか無い永久中立国だ。

 美しい湖と森、中立国のために観光地と別荘地として有名な国で人族大陸の他国貴族の別荘も沢山あるがそれ以上に有名なのが六年前に出来たばかりのセラビア教会の総本山がある。

 セラビア教会の信徒が集まってきて人口が一気に増えてきた為に数ヵ所で村の開拓が始まっている。

 公国には、近衛兵、警備兵などの国内を守る兵はいるが他国を攻める為の兵士はいない。

 他国の要人も沢山いる為に国内のいたる場所に兵士が配備され盗賊や魔物も討伐隊により定期的に徹底して排除されているので、よほど運が悪くない限り出会う事がないほどに安全な国である。

 国内の食材も豊富で一年を通して色々な食材が採れ今までに一度も食糧難に陥った事が無い。

 料理も色々と有名だが特に魚料理が有名だ。


 その話を聞いたフェスが有名な魚料理を食べたいと言った為に街に寄り一軒の魚料理専門店に入り料理を待っているところだった。

 フェス達が注文した料理は、店主の本日のおすすめ、を頼んだ。


 フェスが笑顔で料理がくるのを待っているとアーシャが申し訳なさそうな声で忠告した。

「フェス、楽しみに待っているところ悪いけど……忘れたの? この前食べた魚料理を?」

 アーシャの言葉に全員が頷きフェスは、忘れていたようで悩み始めた。

「……忘れていました。自分で作って食べた記憶しか残っていませんでした」

「不味い料理を美味い料理で上書きされたのかしらね」

 フィーニス先生がポツリと呟いたのが聞えたフェスだったが、店主のおすすめを信用する事にして窓の外から見える湖に目を向けた。

 

 暫く湖を見ているとお店の看板娘が料理を運んできた。


「お待ちどう様でございました。ごゆっくりどうぞ」

「……これは何ですか?」

「はい、ウナギの姿焼きです」


 ……そのままじゃん! 


 フェス達の前に出された料理は、一匹のウナギを網で焼いて香草の上に置かれただけの料理だった。


「どうやって食べる……の?」

 フェスが料理を運んできた女の子に食べ方を聞いた瞬間に全員が驚きの顔をして同じ事を考えた。えっ!? 食べるの? と。


「フォークで押えてナイフで食べやすい大きさに切ってタレに付けてお召し上がりください」

 女の子は一礼してからお店の奥へ引っ込んだ。


 手で額を抑えているフェスにマインが恐る恐る話しかけた。

「食べるの?」

 少し悩んだフェスが答えた。

「……無理……です。食べられる人いますか?」

 フェスの質問に全員が勢いよく首を振った。

「フェスはこのウナギ? 料理できないの?」

「……出来ない事は無いです。が、料理する元気が出ません」

「どうするのこの料理?」

 マインの質問にフェスが渋っているとエナが料理の処理をどうするか聞いた。

「うーん……『サラサ食べるかい』」

『いらない』

 困ったフェスはサラサに食べさせようとしたが拒否られてしまった。その時、外から子供達の神の声が聞えてきた。


「おかあさん、ウナギ食べたい」

「駄目よ! そんな高いの」

「僕も食べたい」

 僕も僕も、と子供達の声が聞こえた瞬間に全員顔を見合わせて頷き合いマインが席を離れて外に出て暫くすると子供達とその母親を連れて戻ってきた。


「あのー……本当によろしいのですか?」

「構いません。私達には食べられないので……食べて頂けると助かります」

「助けると思ってお願いします」

 困惑した母親だったがフェス達の必死の説得と子供達を見て根負けしたのが一度息を吐いてからお礼を言ってから代わりに食べてくれることを承諾してくれた。フェス達は、お金を支払い事情を説明してから店を後にした。


「……助かりましたね?」

 フィーニス先生の呟きに全員が頷いた。

「昼食どうするの?」

 お腹の空いたエストがフェスの手を握って聞いた。

「そうだね……」

 フェスは、周りを見渡すと湖畔こはんにキャンプ場が見えたのでそこで食べる事にした。


「おにぎりとトマトスープでいいかな?」

「うん、あと肉食べたい」

 

 旅で慣れた全員が自分の役割を分かっているので指示がなくとも準備を的確にこなしていた。

 

 おにぎりを握りトマトスープが出来始めると肉を焼き始めた……すると何処からともなく人が集まってきたのでいつも通りに食べさせることにした。


 作った料理が全て無くなると全員お礼を言ってから解散した。


 今日は、この場でキャンプをする事にし魔道具テントを空間倉庫から出した。

 

 全員本を読んだり文字の読み書きをしたり算術を覚えたりして時間を潰した。

 エナとフィーニス先生がかなり日本語を話す事が出来るようになるとアーシャ、マイン、エストも習い始めていた。

 夕食の時間となると勉強を一時中断し居間で夕食を食べた後で、また勉強して寝る時間になると一人また一人と眠りについたのだが、いつもは誰よりも早く寝ていたフェスは最後まで起きていて落ち着きがなくソワソワしている事に気になったアーシャが声をかけた。


「どうしたの? 寝ないの?」

「えーと、あのー……良く分からないのですが何故だが落ち着かないんです」

「体の調子が悪いの?」

「いいえ……そういうのとは……」

「眠れない? 横になれば眠れると思うわよ」

「……はい」

 フェスはアーシャに連れられてベッドに入り目を閉じ暫くすると眠りに入った。



 眠りに入ったフェスの夢の中に二人の人物が現れた。

 二人の人物とは、フェスが竜耶だった世界で、竜耶を産んだ女性とその夫……つまり竜耶の両親だった。


 暗闇の中の二人は苦しそうな顔をし手を伸ばしベッドに寝ているフェスに向けて何かを叫んでいたが何も聞こえなかった。

 ベッドに寝ているフェスも手を伸ばし叫んでいたが自分の声でさえ聞こえなかった。

 そんな状況がしばらく続いた時にフェスの叫び声が響いた。

「父さーん、母さーん」

 すると今まで聞えなかった二人の声も聞えるようになった。

「すまなかった。竜耶! フェス」

「ごめんなさい。竜耶君、フェス君」

「父さーん、母さーん」


「フェス! フェス!」

 フェスがもう一度叫ぶとフェスを呼ぶ声が聞こえ目を覚ますとアーシャとマインが心配そうな顔で見てエナとエストもその横で同じく心配そうに見ていた。


「フェス大丈夫? 汗凄いわよ」

「怖い夢でも見たの?」

「……」


 アーシャとマインが順に声をかけたフェスは言葉を出す事ができなかった。


「……すいません……少し頭を冷やしてきます」

「一人で大丈夫?」

 アーシャの声に頷きベッドから降りて歩き始めた。

「気を付けてね」

 フェスは、マインの言葉に頷きテントを出ると雲一つない風も全くない夜で、月と星の光で道が光り輝いていてまるでフェスを誘導している様にも見えた。

 湖の傍まで歩き空を見上げ月を見た。


 月は、フェスがこの世界に来て……いや、竜耶として生を受けてから初めて見た月、青い月の満月だった。


「綺麗な月だな。……初めて見た青い月だ」


 でも、どうして夢に父さんと母さんが現れたのかな? それと竜耶とフェスの二人の名前を呼んでいたし……どうして?


 考え事をしていたフェスに竜耶から【念話】が届いた。


『……フェス…』

『竜耶……父さんと母さんに……何があったのか?』

『知っていたのか?』

『いや、詳しくは……夢に現れて竜耶とフェスに謝っていた……』

『そうか……虫の知らせ……なのかな?』

『で、何かあった?』

『……』

『竜耶!』

 言い難そうにしていた竜耶だったがフェスの呼ぶ声に決心がついたのか話し始めた。内容は、両親がトラックに轢かれて亡くなったという話だった。

 

 今日の昼前に昼食を最近噂になっていたお店に外食することになり両親と姉と竜耶が歩いて向っていた。

 高台にあるお店の前の勾配のきつい坂道を歩いていると坂に止まっていたトラックが急に竜耶達に向かってきた。

 トラックが自分達に向かってきている事に気付いた両親が姉と竜耶の手を握り避けようとしたが逃げる方逃げる方にトラックがハンドルを切って狙っているようだった……そして、四人に当たる前に両親は姉と竜耶を安全な場所へ突き飛ばし助けたそうだ。

 両親は、姉と竜耶に笑顔を向けた瞬間トラックに轢かれ坂の下まで引き攣られ止まった。二人共即死だったそうだ。

 

 警察の現場検証が終わった後で聞いた話によると……トラックの運転手は、サイドブレーキはきちんとしていたしタイヤの全てにストッパーをしていたから動くはずはない、と語っていた。

 目撃者の全員が口を合わせて、誰も運転席に乗っていかったのにまるで、家族を狙うように襲っていた。勢いよく坂道を降りていたはずなのに坂道が終わった途端に何処にもぶつかることもなく止まった。

 誰かしらの意思が働いていた気がする。

 姉弟二人が助かっただけでも奇跡の様な事故だった。


『竜耶、大丈夫か? 怪我は無いか? 姉さんは?』

『……姉さんも僕も大丈夫だ』

『……それは、良かった。……父さんも母さんも……笑って逝ったんだな』

『……ああ』


 でも、夢に出てきた二人は、苦しんでいた。無人のトラックが襲ってきた、か……もしかして、ティモリアの仕業じゃないだろうな?


『フェス?』

『ああ、ごめん……考え事をしていた』

『考え事?』

『無人のトラックが狙ってきたことか気になって、気の所為かも知れないけど……』

『……フェス随分と冷静だな! 両親が死んだんだぞ悲しくないのか!?』

『悲しくない訳ないだろ! 何言ってんだ! 生みの親で六年間育ててもらった父さんと母さんだぞ!』

『そうだな……ごめん』

『いや……話は終わり?』

『明日……遺体を焼くそうだ……また連絡するよ』

『……うん……竜耶! 気をつけろよ! お姉ちゃんを頼む』

『わかってる……フェスも気をつけろよ」


 フェスと竜耶の念話が閉じた。


 すると、竜耶に指摘されたように冷静だったフェスだったが、急に悲しみが押し寄せてきて地面に泣き崩れてしまった。

 フェスを心配して見守っていたアーシャとマインは、驚き傍まで駆け寄り抱きついた。


「どうしたの?」

「……父さんと……母さんが亡くなった……そうです」

「皇帝? いいえ、生みのお母様とお父様?」

「はい、事故だった様ですが不審な点が沢山あります。狙われたんだと思います」

「誰に?」

「……たぶん僕を殺そうとした奴です」

「そんな事が出来るの?」

「わかりませんが……出来る可能性はあります。それだけの力を持っています」

「……」

 それっきり三人は、口を開く事がなくフェスは、一晩その場で泣き続けた。


 朝、フェスの体調を心配したアーシャとマインによってもう一日滞在することになった。


 夜に再び竜耶から念話が届き驚きの話を聞かされることになった。


『父さんと母さんの遺体が消えた』と。 

  

 悲しみを完全には晴れることはなかったがフェスは、朝食を食べると目的地まであと少しの旅を続けることにした。


 最後までお読み頂きありがとうございました。

 

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