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第22話 セラ様の頼み

 昼食を摂った後すぐにベッドに横になったフェスは眠りに着いた。 

 眠りに入ったフェスの夢の中に創造主セラが現れた。


「セラ様?」

「フェス君、夢の中に失礼してごめんなさい。今のわたくしは封印を解くために魔力の大半を使用しているために、夢を渡ることしか出来ない状況なのです」

「セラ様、大丈夫なのですか?」

「封印されているだけですから問題はありません。現在一日でも早く封印を解こうとしているところです。そのためにこれ以上フェス君を見守ることができなくなります。

 ここからは自分の能力を鍛えて行くしかありません……苦労をさせることになりました。ごめんなさい」

「セラ様、気にしないで下さい。何とかやって行きます」

「……フェス君に頼み難いお願いがあります。もちろん無理して行う必要はありません」

「お願いとは何ですか?」

「現在、自分の魔力を使い封印を解こうとしています。しかし、このままでは何百年かかるか分かりません。そこで、見つけてもらいたい者たちがいます」

「誰ですか?」

「五竜とも古竜エンシェントドラゴンとも呼ばれている五匹の竜です」

「五匹の竜、ですか?」

「はい、五竜らは、アマルティアの時代に悪魔族を監視する為に送り込んだ者たちなのですが、悪魔族との戦いに敗れてしまい傷を癒すために眠っています。五竜の力を一時的に戻せば私自身に施されている封印を解くことができるかもしれません。そうすれば世界樹イルミンスールからも出ることができるでしょう」

「わかりました。その五竜は、どこにいるのですか?」

「わかりません……もともとは、各大陸に一竜を配置していましたから……おそらくは、各大陸のどこかにいるものだと思われます」

「……わかりました。何とか探してみます」

「ありがとうございます。しかし、今のフェス君の能力ではすべての大陸を探すことは無理です。ですから力を付けて下さい。……でも、私の封印を解くことはフェス君の最優先事項ではありません。フェス君の最優先事項は力をつけることとこの世界を楽しむことです」

「はい」

「お願いします。そしてこれからは、会うことはできないと思います……気を付けてくださいね……」

「必ず五竜を探して見せます」

「それとティモリアの手紙を私も読ませて頂きました。彼女の話を信用するのならば、私はブロエレスフィに何万年前から騙されていたことになりますね。多忙な私の為にと報告は一級神からのみと決めたのもブロエレスフィだったのです。信じてあげることができずにティモリアには悪いことをしてしました。……話し合いの場を設ければフェス君を狙わせることもなかったのかもしれません。封印を解くことができたのなら謝ろうと思います」

「…………」

「最後に、フェス君には迷惑を掛けることになってしまい申し訳ありません。……では、失礼します」

「はい」


 創造主セラが消えるのと同時にフェスは目を覚ました。


 ……夢では、ないよね? 五竜探し…… 取り敢えず今やることは、能力アップかな?


 フェスが考えことをしているとエナが朝食の準備が出来たと部屋に呼びにきた。


 朝食? 夕食じゃないの? ……昨日の昼食摂ってから今まで寝ていたの?


 エナに手を引かれて居間に向かうと食事がテープルに用意されアーシャとマインが待っていた。 

 朝食のメニューは、パンとシチューと焼いて塩を振っただけの肉だった。


 ……二人が作るといつも同じメニューになるけど……それとも、これが普通の食事なのか? 


「ごめんね? フェスみたいに作れなくって……」


 違った! 単なる作れないだけみたいだ……あれ? でも……。


「アーシャ姉様は、メイドでしたよね? 家事全般出来るんじゃないんですか?」

 フェスの言葉にアーシャが視線を逸らすとマインが苦笑しながら代わりに答えた。

「アーシャさんは、フェスのお世話をする為だけにメイドになったそうなので家事とかできないみたいですよ」


 そうだったんだ。と言うことは……。


「あの部屋で一日中一緒だったんですか?」

「ずっと一緒だった訳じゃないです」

 アーシャは、焦ったように言い訳を始めた。


 何焦ってんのかな?


「そもそも、どうして、世話をすることになったんですか?」

「私は、神聖ヴェスナー帝国の帝都にある孤児院育ちで、フェガロフォス様がお生まれになった時にある大族に拾われてお世話をするようにと言われました」

「お世話って言っても……二才ですよね?」

「はい、お世話と言うよりも遊び相手だと思います。……でも、フェガロフォス様があのような状態だったので、お世話係り兼お話し相手になりました。二歳だった私ではまともなことはできませんから最初はもう一人いました」

「その人は?」

「私が五歳になったときにその女性は十五歳……成人しました。成人したのと同時にフェス様から別の皇子様へ仕える人が変更になりました。変更になってから数日後……姿が見えなくなりました。どうなったのは身分違いのため確認することは叶いませんでした」

「フェス様以外の皇子様皇女様に仕えた人は度々姿が見えなくなるため人材が変わることが多かったです」

 マインがアーシャに続いて説明を行った。

「それって……」

「はい、おそらく生きてはいないのでしょう。耳に挟んだことですから真実かどうかは分かりませんが、フェス様以外の方は小さい失敗も許すことはないそうです。……話を戻しますね。私が貴族の家に迎えられたことは政治も絡んでいたんだと思います」

「政治、ですか?」

「最初は養女として拾われましたが、フェス様の状態を知らされてからは下女メイドに変更になりました」

「酷いですね」

「私以外にも貴族の養女になった者もいたようですがその人たちは、良くって孤児院に戻され、悪ければ奴隷商人に売られたそうです。それに比べたら私はフェス様の傍に居られたのですから運は良かった思っています」

「ほかにもですか? どうしてそんなことに……

「フェガロフォス様は第一皇子様で将来の帝王になられるお方でしたから、子供の内から将来の妃選びをさせようとしたようです」

「帝王の妃が孤児院の養女って普通なのですか?」

「もちろん正妃ではありませんよ」

「……そう言えば、兄妹って何人いるの?」

「皇位継承権を持っているのは今のところ第二皇子様だけです。兄二人、姉二人、弟五人、妹四人で、フェガロフォス様を入れて十四人兄弟です」


 多くない? 国を治めている人なら普通なのかな? でも……。


 フェスは気になったことを聞くことにした。


「兄二人がいたのに私が第一皇子だったんですか?」


 アーシャとマインの説明を聞いた。


 神聖ヴェスナー帝国では、皇子皇女で第一第二と名乗れるのは、第一正妃の子供たちのみで、皇位継承権も第一正妃の子供にしか認められていない。

 第一正妃に子供ができなかった場合、またはすべて亡くなってしまった場合のみ第二以降の正妃の子供たちの中から選ばれることになる。


「正妃って何人もいるのですか?」

「現神聖ヴェスナー帝国帝王には六人の正妃と二十人の側室がいて子供が四十人ほどいます。側室の子供は皇子皇女と名乗ることは禁止されています。他にも正妃側室以外の女性に産ませた子は庶子と呼ばれ数えきれないくらいいます。

 帝王の子供はたくさんいますが、フェス様の兄弟と呼ばれるのは正妃の子だけで、他の子は兄弟ではありません。……神聖ヴェスナー帝国の法では」

「……すごいですね」

「フェス様と同腹の子は二人います。弟と妹です。その弟が第一王位継承権の持ち主です」

「まあ、会ったことありませんから実感ありません。そんなに母? とか兄弟がいたのに誰も会いに来ていなかったんですか?」

「来ていないです……」

「なら、仮に兄弟だったとしてもなんの感情も起きませんね」


 多分、僕の下の弟妹は、存在も知らなかったんだろうけど……。


「マインさんは、どうして僕の傍に?」

「私は、一年ほど前に帝都にある学校に通っている際にフェス様の家庭教師として学校から派遣されていました。学生とはいえ優秀でしたから派遣されたものだとばかり思っていましたが、誰も希望者がいなかったために学校から指名されただけだったようです」

「そうでしたか……まあ、過去の話をしても関係ないですからこの辺で止めておきましょう」


 フェスの言葉にアーシャ、マインが頷き……大人しいと思っていたらエナは、寝ていた。

 寝ていたエナを起こして出発の準備を始めた。


 そんなに子供が沢山いて大丈夫なのかな? ……現帝王だけでもかなりの数だけど、過去の帝王の子供も入れるとかなりの数になると思うけど…………いや、考えるのはやめよう……僕には関係ない。 


『フェス、フェス!』

 フェスが考え事をしていると竜耶から念話が届いた。

『竜耶? どうかした?』

『うん、聞きたいことがあって』

『何?』

『なんとなくなんだけど……セラ様との繋がりが消えたように感じるんだけど……気の所為かな?」


 竜耶は少し焦りながら説明をした。


『落ち着いて、分かる範囲で話すから』

『やっぱり何かあったの?』

『実は……』


 フェスは、ここ数日間に起きた出来事を竜耶に話した。

 

 フェスの話を聞いた竜耶は、あまりの出来事に言葉を失ってしまった。

 数分間の沈黙ののち落ち着きを取り戻した竜耶がゆっくりと口を開いた。

『そうかセラ様は封印されてしまったのか……フェスは大丈夫だったのかい?』

『なんとか、ね。回復薬が間に合って生き延びたよ。その後気を失ったけどアーシャさんとマインさん、エナちゃんの三人がいたから助かったよ……誰もいなかったら魔物の餌になっていたね確実に』

『冗談に聞えないよ! 大丈夫そうだから良かったけど気をつけてくれよ』

『うん』

『助けてあげたいけど……僕に出来ることは知識を得て共有することだけだから……死ぬなよ? 五竜を探すんだろ?』

『うん……暫くの間は、体の成長と能力を上げることに専念するよ』

『応援しか出来ないけど……がんばれ! 聖女様』

『……聖女様はやめてほしいけど、ありがとう』


 フェスと竜耶は笑いあいながら念話を閉じた。


 一応気を使ってくれているのかな? さて、出発の準備と言ってもこれと言ってやることもないけど……。「フェス……エナちゃんが先にテントから出ちゃったけど大丈夫かな?」

「えっ!? テントの外はあの女性の人と僕の血の匂いが充満しているから魔物とか魔獣が引き寄せられて危険ですよ!」

 フェスが慌ててテントから出ようとするとエナの悲鳴が聞こえてきた。

 


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