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プロローグ

 白い世界、どこを見渡しても白以外見当たらないない世界に、一人の少年が立っていた。


 少年は、黒髪ストレートを肩の位置で揃え艶やかなサラサラで繊細な細い髪、曇りのない黒眼の女の子以上に女顔の男の子だった。どこからどう見ても女の子にしか見えないのだが、れっきとした男の子だ。

  

 少年は辺りを見渡し、自分の知らない場所と再確認しても恐怖心は全くなく、落ち付いていた。


 白い世界を見渡しながら少年は、現在の自分の置かれている状況を考え始めた。


「ここはどこなのかな? 僕は病院のベッドに寝ていたはず……だよね」

 少年は呟きながら自分の服装を見てみると確かに見慣れたパジャマを着ていた。さらに少年は、ここに来る前のことを思い出そうとしていた。


「寝ていたのは覚えているけど……いや、確か……発作を起こして、暫く苦しんでいた。そして……気付いたらここにいた」


 少年は少しずつ思い出してきた。今までも発作を起こしていた少年だったが、今回ほど酷い発作は初めてだった。と、今更ながらに恐怖した。そして、意識朦朧の中で見た涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった家族の顔と……あまりにも取り乱した声を思い出した。

 

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……。今までにも泣いたのを見たことはある。でも……あそこまで泣いて取り乱したのを見たのは初めてだ」


 少年は、両親と姉のことを思い出すと自然と涙が溢れてきた。

 

「この日がくるとは思っていたけど、急だったな……。僕はとうとう、死……」

結城竜耶ゆうきりゅうや君、あなたはまだ死んでいませんよ」


 死んだのか。少年はそう呟くつもりだった。だが最後まで呟く前に優しく、心に温もりと安心感を与えてくれる優しい声が少年の言葉を止めた。


 結城竜耶と呼ばれた少年は、涙をパジャマの袖で拭き辺りを見渡した。

 キョロキョロと辺りを確認していた少年の目の前に神々しい光が辺りを照らした。

 普通なら目を閉じなければならない眩しさだが、全く眩しさを感じなかった。それところが、悲しみに満ちていた結城竜耶の心を優しく包んでくれる優しい光だった。

 

 神々しい光に目を奪われていた結城竜耶の目の前に二人の人物が現れた。

 一人は、黒髪ストレートを腰の位置まで伸ばし艶やかなサラサラで繊細な細い髪、聡明で神秘な光りを放っている少年だった。こちらの少年も男の子だが、竜耶と同じく女の子にしか見えなかった。

 もう一人は、金髪ストレートを地面に着くほどの長さまで伸ばし、強い意志と慈愛に満ちている金眼、体中から黄金色の光を放ち白い世界に明かりを灯している美しく優しく微笑んでいる女性だった。


 二人の登場に驚いていた結城竜耶に、女性の方が話しかけてきた。

「竜耶君、先程も言いましたが、君はまだ死んでいません」

 竜耶は、名乗っていない自分の名前を知っている目の前の女性に口早に一気に思った疑問を聞いた。

貴女あなた方は一体誰ですか? ここは何処ですか? 僕はまだ死んでいないとは? どうして僕の名前を知っているんですか?」

「竜耶君落ち着いて、説明しますから落ち着いてください」

 女性は竜耶の頭を優しく撫でながら微笑み、落ち着くように言った。

 竜耶はまるで母に頭を撫でられているかのような安らぎを感じ落ち着きを取り戻し女性に向かって頷いた。


 女性は竜耶の落ち着いたのを確認すると、竜耶の後を指差した。

 女性の指差した方を見るとテーブルと人数分の椅子があった。女性は、竜耶ともう一人の少年に座るように促した。

 先ほどまでなかった場所に、テーブルと椅子が現れたのなら普通驚く場面なのだが、竜耶ともう一人の少年も驚くことなく自然と足を動かし椅子に座った。

 座ったところで竜耶は、自分の行動に驚いた。


 あれ? 僕は何故……今、歩けたのかな?


 竜耶は、自分が自然に歩いて椅子に座ったことに驚いた。竜耶の目の前に座っていた少年は、竜耶を見て微笑んでいた。

 女性が座ると竜耶ももう一人の少年も、女性に視線を向け話を聞く体勢になった。


 最初に自分の名前をセラと名乗り、それから二人の名前をそれぞれに教えるところから始めた。

 結城竜耶、もう一人の少年をフェガロフォス・ヴェスナーと紹介した。

「二人を呼んだのは私です。竜耶君の世界、フェガロフォス君の世界を創った神です」

「神様?」

 驚いた竜耶は驚きのあまり声を発してしまい、会話を止めてしまったことに、悪いことをしてしまったと思い俯いてしまった。そんな竜耶を見たセラは、席を立ち竜耶の傍まで寄ると頭を撫でて大丈夫よ、と優しく声をかけた。

 顔を上げた竜耶に微笑んた。竜耶も照れながらも微笑み返した。もう大丈夫だと思いセラは、席に戻り話を続けた。

「神と言っても正確には、竜耶君とフェガロフォス君の知っている神を生んだ神……創造主と呼ばれている存在です」

「創造主様?」

 竜耶が呟くと創造主セラは微笑み頷いた。

「私を呼ぶ時は、セラでいいですよ」

 セラの言葉に竜耶とフェガロフォスは頷いた。


「ここは白の世界、取り出す私の世界です……竜耶君とフェガロフォス君は、肉体を離れ魂だけの状態なので歩けているのです」


 竜耶とフェガロフォスは、生まれた日、生まれた時間も同じ十才。そして、十年間、歩くことも立ち上がることさえできなかったところも一緒だった。それだけではなく、下半身付随により麻痺し感覚もなく触られている感覚さえわからなかった。

 上半身は動くのだが心肺機能が弱く、発作をよく起こしていた。


 女性が誰なのかここがどこなのか理解したフェスは、セラの話で疑問に思ったことを聞くことにした。


「セラ様はさっき……僕の世界とフェガロフォス君の世界と言いました。それって、どういうことですか?」 

 創造主セラは頷き、竜耶の質問に答えた。

「同じ地球でも別の世界の地球なのです」

竜耶君も聞いたことくらいはあると思います。平行世界パラレルワールド又は並行宇宙、並行時空とか聞いた事あるでしょ?」

「はい、聞いた事はあります。SFの架空設定ですよね?」

「竜耶君、架空の話では無く実際の話なの。異世界って言った方が竜耶君にはわりやすいかな? そう言った本も読んでいたでしょ? 竜耶君の世界にはない魔法とか魔術とか魔物に人族以外の種族のいる世界がフェガロフォス君の地球なのよ」

「本当にそんな世界があるの?」


 竜耶はセラの話を聞いた後で、今まで読んだファンタジーの本やゲームを思い出していた。


 創造主セラは、やっと興味を持ち始めた竜耶の言葉を聞き微笑んでいた。 

「竜耶君、行って見たくありませんか?」 

「行ってみたいです。けど……」

 セラの言葉に竜耶は力強く頷き返事をしたが、すぐに不安な顔になった。


 不安な顔になった竜耶の気持ちもわかるセラは、さらに話を進めた。

「ここからの説明は、竜耶君とフェガロフォス君の二人に聞いてもらいたい話です」


 セラ様、いきなり真剣な顔になった?


 竜耶とフェガロフォスが頷くとセラは、二人を一度見てから話し始めた。


「それぞれの世界に一柱ひとり管理者がいてこの管理者を一級神といいます。一級神の指示を受け星を管理するのを二級神といいます。二級神が星を管理し、二級神の細かい指示を実行するのを三級神といいます。二級神と三級神を竜耶君とフェガロフォス君の世界で神と呼ばれる存在です」


 竜耶とフェガロフォスは、困惑しながらも黙って聞いていた。


「竜耶君の世界の地球を例にすると……地球の絶対神を二級神、それぞれの国の神を三級神です。しかし、竜耶君のいる世界は地球にしか知的生命体はいませんから一級神がいませんし、戦争している国はありますけど他の世界に比べあまりにも安全の為に二級神もいません。一級神二級神も不在の三級神のみとなっています。神と言っても三級神一柱の力は弱いため一ヵ所に留まっていては神の加護を地球の隅々まで行き渡らせるのは困難なために移動しながら行っている状態です。……これから話すことは、二人をここに呼んだ理由に繋がります……」

 創造主セラは話しを区切った。


 竜耶もフェガロフォスも、今の話からどう呼ばれた理由に繋がるのかわからずに首を傾げていた。 


「子供の肉体を両親が作り、その肉体に合う魂を三級神が作る事になっています。しかし、三級神の能力では肉体に合った魂を作る事か出来ない場合もあります。その際は、二級神又は一級神が作ります。それでも肉体に合った魂を作れない場合は創造主の私が作ります。

 竜耶君の魂を一級神、フェガロフォス君の魂を私が作り、それそれ担当の三級神に渡しました。

 そして、いざ魂を肉体に入れる時になって神の力を封印していたはずの元二級神が、どうやったのか神の力を取り戻し、竜耶君とフェガロフォス君の世界を行き来して魂を別々の肉体に入れ替えてしまったのです」


「「えっ!?」」

 竜耶とフェガロフォスの二人は同時に言葉を漏らした。


「どういうことですか?」

 竜耶は戸惑いながらも質問した。

「……簡単に言うと、本来なら今の竜耶君がフェガロフォス君の世界にフェガロフォス君が竜耶君の世界に生まれるはずだったの……です」


 つまり僕達は、生まれて来る世界を間違えて生まれてきたって事?


「でも、間違えたからってどんな問題があるんですか?」

 竜耶はどんな問題あるのがわからずに聞くとフェガロフォスも頷いていた。


 創造主セラは二人の反応を見て困った顔をしてから口を開いた。


「魂を肉体に入れる時には、魂と肉体の調整が終わっているのだけど……ここで、問題になるのは調整の終わっている肉体に別の魂を入れると体が上手く働かなくなってしまいます」

「上手く働かない?」

 竜耶が聞き返すと創造主セラは、頷き話を進めた。


「……二人の魂情報は、似ていますが違う物です。創造主の私が作った魂と一級神の作った魂。本来入るべき肉体に違う魂が入ったことにより肉体に異常反応が起こってしまいます。異常内容は、色々とあるのだけど……二人の場合は、生まれた時から下半身が動かないのと心肺機能が弱い事。本来なら生まれた時に死んでいてもおかしくはなかったのだけど、二人の魂を作ったのか私と一級神だったことが幸いし今まで生きてこられたの……」

「「…………」」

 二人は視線を合わせたまま固まってしまった。


 どういう事? 僕が生まれてから病院のベッドで生活していたのは……力を奪ったはずの二級神の神様が入れ替えたから、なの? そんな訳の分からない理由で、お父さんとお母さんに迷惑を掛けてきて、お姉ちゃんに心配させてきた? そんな、そんな馬鹿な話! ……いや、そもそも、どうして、違う世界の地球でそんな入れ替え出来たの?


「そんなに難しい話ではありません」


 セラは、フェスの心の声を聞き一呼吸置いてから話を続けた。


「今の竜耶君の地球に三級神は、一柱ひとりしかいない状態になっています。監視の弱くなっているところを狙われたと考えています。……いくら考えてもわからないのは、神と言えとも二級神に境を渡る力はないはずなのです……」


 創造主セラは苦渋に歪んだ顔をしてさらに話を続けた。


「ある一級神によりもたらされた情報を聞き二人のことを聞いた私は、竜耶君とフェガロフォス君の魂を探すことにしました。すぐに発見できると思っていたのですが難しく時間がかかってしまいました」

「僕達を探すことは、セラ様でも難しかったのですか?」

「……私でも簡単に探せないように細工されていました」


 セラは一度言葉を止め、呼吸を整えてから話を続けた。


「二人を探すのに、予想以上に時間がかかってしまい……十年もかかってしまいました。発見した時に二人の寿命は終わりを告げようとしていました」


 暫くの沈黙の後に竜耶は、我慢できなくなり創造主セラに涙を流し呟く感じで聞いた。フェガロフォスも竜耶と同じく涙を流していた。


「それで、もう少しで死ぬから、迎えに来てくれたんですか?」


 竜耶の涙ながらの言葉を聞いたセラは、慌てて首を左右に振り口を開いた。


「ち、違うのよ竜耶君、フェガロフォス君、二人を呼んだのは迎えに来た訳じゃないの謝罪と提案をする為に呼んだのです」


 竜耶とフェガロフォスの二人は、涙を流しながら創造主セラに顔を向けた。


「竜耶君とフェガロフォス君の二人には、十年間本当に苦労をかけてしまいました。……ごめんなさい」

 

 創造主が人間に頭を下げる事は初めてだった。そもそも人前に出る事なんてなかったのだが。


「このまま元の肉体に戻っても数時間で、肉体の働きは止まります。ここで提案です。本来生まれるべきだった世界に戻る気はありませんか?」

 セラの言葉に理解できなかった竜耶は聞き返した。

「戻るとは?」

「もちろん生まれるべきであった世界にです。竜耶君はフェガロフォス・ヴェスナーに、フェガロフォス君は結城竜耶に戻るのです」


 そんな事出来るの? でも、出来たとしても死ぬ寸前の体に戻っても……長生きできないんじゃないのかな?


 竜耶の内心の言葉を聞きセラは首を軽く振り、ゆっくりと話し始めた。


「竜耶君、安心してください。本来の肉体に魂が戻れば、肉体は正常な働きを取り戻すことになります。今までの迷惑料代わりに、他の人より健康な体と少し命数を伸ばします」


 創造主セラが二人を見ると竜耶とフェガロフォスは、お互いに暫く見つめ合って頷き合うと、創造主セラに体を向け声を重ねて言った。


「「お願いします」」


 二人の決心の言葉を聞きセラが微笑み口を開いた。

「ここで、お礼を言うのも可笑しいと思います。しかし、言わせて頂きます……決断してくれて、ありがとう。と…………」


 お礼を言ったセラだったが、その後すぐに顔を曇らせ竜耶とフェガロフォスを見て口を開いた。


「フェガロフォス君が行く世界は、命の危険は高くありません。しかし、竜耶君の行く世界は常に命の危険に晒されています。戦争、魔獣魔物モンスターに盗賊等の犯罪者も多数います。それでも、よろしいですか?」

「今の肉体に戻って数時間で死ぬのなら、危険があっても行きます」

 竜耶は、力強くセラに宣言した。竜耶の眼には、涙はもうなかった。


 楽しみだけど……お父さん、お母さん、お姉ちゃんにお別れ言えないのは寂しい……。


 竜耶が内心家族のことを思っているのを聞いた創造主セラは、瞳を閉じ申し訳なそうに言った。


「ごめんね。 お別れを言うために魂を戻すと……また抜くのに一日掛かるからその間に命の灯が消えてしまうから……」

「セラ様……大丈夫です。僕の代わりにフェガロフォス君が行きますから……少し寂しいけど、任せます。新しい世界も楽しみです」

 竜耶の言葉を聞いたフェガロフォスは、頷いた。


「はい、危険はたくさんありますが、ゲームや物語ファンタジー世界そのもので楽しいこともあります。竜耶君には、生きていくために必要な知識に力、能力をお渡しします。準備をしてきますから二人で話でもして待っててください」


 創造主セラが準備のために席を立ち移動すると竜耶とフェガロフォスの二人は話し始めた。


「フェガロフォス君、君の世界ってどんな所?」

「お互い呼び捨てにしない? 言葉も崩そうよ?」

「うん、わかったよ」

 お互いに笑い合ってからフェガロフォスは、先ほどの竜耶の質問に答えた。

「僕も歩けなかったから、実際に見た事は無いけど本や聞いた話では」

 

 フェガロフォスの話では、人族以外にも種族がいる。

 中央に位置する魔人族が多く住むケントルム大陸。西に位置する人族が多く住むデクスィア大陸。北に位置する獣人族が多く住むヴェールフ大陸。東に位置する妖精族が多く住むアリステラ大陸。南に位置する亜人族が多く住むアスファル大陸の五大陸があり、五大陸の周りに大小の島々があった。そして、各大陸の境に神が一瞬で作ったとされるミスティーク大森林がある。

 五大陸の全てを神が作ったとされ同じ形に大きさをしていた。東端から西端を馬車で旅をすると百八十日ほど掛かる。大陸から別の大陸に抜けるには、ミスティーク大森林を三十日ほど掛かる旅をすることになる。

 外洋を渡るための船が無いために人族の大陸から妖精族の大陸に獣人族の大陸から亜人族の大陸に渡る事は出来ない。

 

 竜耶がこれから向かう場所は、人族が多く住むデクスィア大陸の最西端に位置する国であり、フェガロフォスは、大国神聖ヴェスナー帝国の第一皇子だ。


 二人が話をしているところに、準備が出来たと創造主セラが声をかけて来た。


「竜耶君、フェガロフォス君、準備が終わりました。竜耶君は左の扉、フェガロフォス君は右の扉から入ると竜耶君はフェガロフォス君に、フェガロフォス君は竜耶君の体に入るから自分の名前を間違わないようにして下さい」

「「はい!」」


 当たり前だけど名前も変更するんだ。フェガロフォス・ヴェスナー……長い名前だな。 


 竜耶が名前で悩んでいると創造主セラがくすくす笑っていた。


「二人には、生きていく上で必要な能力スキルを渡します」

 

「フェガロフォス君の行く世界は、比較的安全のために周りから変に思われない程度の力と普通能力スキルをお渡しします」


 渡す前に、と創造主セラは、能力について説明を始めた。


「能力には二つの意味があります。一つは、自分の肉体能力、力の強さ、打たれ強さなどがあります。もう一つは、技能スキルです。数百年前までは、能力と技能と分かれていましたが、いつの間にか二つ合わせて能力スキルと呼ばれるようになりました」


 【フェガロフォス⇒竜耶】

 【剣道、言語、記憶、病気耐性】


「竜耶君の行く世界は本当に一日一日生きていくのか危険な場所です。戦いに生活に必要な力と普通能力スキると特殊能力スキルを渡します」


 【竜耶⇒フェガロフォス】

 普通能力スキル【刀術、合気道、防御、魔術、笑顔、礼儀作法、言語、記憶】

「そして、特殊能力スキルと言っても、覚えるのか難しいだけで、他にも持っている人はいますから、無理して隠す必要はありません  

特殊能力スキル【探知、探査、鑑定、無詠唱、魔力探知、空間倉庫】


「普通能力スキルに関しては、名前の通りなので実践し確認して下さい。特殊能力スキルの説明をします。これも実際に使用して慣れて下さい」


 探知―人など生物を確認する能力。

 探査―生物以外を確認する能力。

 鑑定―生物はもちろん生物以外の情報を確認する能力。知識を得ると鑑定出来る項目が増え、会話をすると相手の名前を確認出来るようになる。

 探知も探査も単独で使用すると誰かが居る。何かがあるとしかわからないが、【鑑定】を一緒に利用することにより詳しい情報を知ることか出来るようになる。詳しい情報を知るためには知識を深める必要がある。ただし、どんなに知識を得ても、相手の持っている能力スキルを知る事はできない。

 無詠唱―詠唱の必要とする魔術を、詠唱無しで発動出来るようになる。

 魔力探知―相手の魔力の流れを知ることが出来る。

 空間倉庫―物の大きさ重さに関係なく仕舞うことが出来る。術者以外の人に見ることはできない。入れた物を取り出す際は、取り出す場所を指定出来る。生物を仕舞うことは出来ないが、死んでいる生物なら仕舞うことが出来る。倉庫の大きさは、魔力に左右される。


 魔力を使う術の力は、魔力と創造と想造イメージにより威力を発揮する。


 「自分の能力を覚え増やすことが出来ます。そして、使えば使うほど成長させることが出来ます。が、確認することは出来ません。能力説明の最後に二人に共通したスキルをお渡しします」

 

 【共通能力スキル

 念話―念話の能力を持っている者同士会話する事が出来る。

 知識共有―お互いに覚えた知識を共有出来る。しかし、人物や個人生活プライバシーに関する事、または、知られたくない情報は共有出来ない。


「最後にお金と武器をお渡しします。しかし、残念ながら竜耶君になるフェガロフォス君にお金も武器も渡す事はできません。子供にお金は必要としない世界ですし、武器を持つことを許されていません。フェガロフォス君になる竜耶君にはお金と、武器にナイフと刀を空間倉庫へ入れておきます。貨幣価値は、実践で覚えて下さい」

「分かりました。ありがとうございます」



「名残惜しいとは思いますが、そろそろ時間です。最後に話しておくことはありますか?」


「フェガロフォス、いや、もう竜耶と呼んだほうがいいのかな? 竜耶、お父さんとお母さん、お姉ちゃんを……お願いします。生まれてから十年間ずっと迷惑と心配を繰り返してきたから僕の代わりに親孝行をお願いします」

 竜耶改めフェガロフォスが頼みことをすると、フェガロフォス改め竜耶は力強く頷き口を開いた。

「任せて……フェガロフォス。出来る限りのことをするよ」

「うん、頼むね。それから、フェガロフォスって長いから……これからは、フェスって呼んでよ」

「大丈夫、フェスって呼ぶ人もいたから……僕も両親や兄弟達に、と言いたいけと……記憶のある限りでは、二人しか人に会った事ないから、頼むとしたらその二人のことかな?」

 

 悪い事を聞いたかなと思いフェスは、誤魔化すように話し始めた。


「フェスと呼ぶのは、その二人なの? どんな人達なの?」

「ひとりは、身の回りのお世話をしてくれていたアーシャ。もうひとりは、家庭教師のマイン。二人とも僕達の三つ上の十三歳だよ」


 人のこと言えないけど僕以上に人と関わりを持っていないとは……。


「アーシャさんとマインさんだね。僕なりに出来ることをやってみるよ」

「ありがとう。ふたりを頼むよ。僕に関わったことにより二人は、他の職に付けないから」


 フェスが不思議そうな顔をしていると、竜耶が苦笑してから説明を始めた。


「不思議そうな顔をしているね? 僕は、危険な病気と思われてきた。だから僕が死んだら厄介払いされると思う。そこで忠告するけど、歩ける様ならアーシャとマインを連れて国を出た方かいい。僕の薬師をしてきたマインならお金を持っていると思うけど……フェスもセラ様から貰っているから困らないと思う」

「どうして、国を出た方がいいの?」

「後継者は、僕ではなく一つ下の弟に決まったんだ。皇太子の決まった今、動けるようになったフェスを邪魔に思う者に殺される可能性がある亅


「わかった。忠告ありがとう」


 せっかく助かっても殺されるのは嫌だし、いろんな場所にも行ってみたいから丁度いいかな。


 フェスと竜耶の会話が終わったのを見計らった創造主セラは、フェスへ話しかけた。


「旅に出るのでしたら必要になりそう物を空間倉庫に入れておきます。そして、残念だけど時間です」

「はい」

「わかりました」

 セラの言葉に二人は素直に返事した。


「フェス君は左、竜耶君は右の扉に入ってください。扉に入ると本来の肉体に戻り寝ている状態なっています。目を覚まし魂と肉体が馴染むと歩ける様になっています」

「「はい!」」


「さあ、新しい世界に向かって下さい。フェス君、竜耶君……これからが二人の人生の始まりです」


 フェスと竜耶は、お互いに挨拶を交わしセラに礼をして其々の扉に入り新しい世界に旅立って行った。


「フェス君、竜耶君、本当に十年間苦労を掛けてごめんなさい」


 創造主セラは、フェスと竜耶にいま一度謝った。そして、フェスの入って行った扉を不安な顔をしながら見た。


「もしかしたらフェス君は、ここで死んでいた方が良かったと思ってしまうかもしれないわね……それだけ今のあの世界は酷い、なにせ二級神は次々と代わったり、神の空白期間もあったから大陸中不安定になり何か起こるかまったくわからない状態にある」


 口に出して独り言を喋っていることに気づき声に出すのをやめた。 


 新しい担当者を付けても全員、長く続かず辞めてしまう……あの世界で私にもわからない何かが起きているのかもしれない……現在私が直接担当しているけどまだまだ馴染んていないために不安定のままです。フェス君には、これからも苦労をかけてしまうことになってしまいました……そのためにスキルも沢山渡したから乗り切ってもらいたいです。


 創造主セラは、フェスの入っていった扉を最後に見てから姿を消した。


 創造主セラは考えるのを止め白の世界から消えた。


 創造主セラに目的があった事を知らない結城竜耶改めフェガロフォス・ヴェスナーは、新しい世界へ……いや、本来生まれていたはずの世界へと戻って行った。     

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