婚約破棄された瞬間、冷酷公爵の【心の声】が爆音で聞こえ始めたので、幻聴だと思って実家に帰りました。〜実は溺愛されていたなんて検証するまで信じません!〜
『愛してる、行かないで、死ぬほど好きだ』
私に「出て行け」と言った公爵さまの声で全然逆の言葉が聞こえる。
しかも鼓膜が破れるほどの爆音で。
目の前には怖い顔の公爵さまが私を睨んでいるのに……。
私はキョロキョロと辺りを見回した。
この爆音はスピーカーでもあるのかと思ったけど、転生前の世界と違ってこの世界にそんなものはありません。
あったら、公爵さまにだって聞こえているはずで……「出て行け」の怖い顔で私を睨んでいるはずがありません。
『なぜ辺りを見回してる? 動きが可愛い、抱きしめたい! 愛してる、愛してる、愛してる』
ビクッ
な、なぜか、私の動きと爆音が連動してます!
目の前には、こんな言葉を絶対に言わない冷酷な公爵さま。
『愛してる、愛してる、愛してる…………』
きっと私が公爵さまを好きすぎて、願望が幻聴になって聞こえているんです、爆音で!
「わかりました、今すぐ出て行きます!」
婚約破棄されたくらいでこんな幻聴が聞こえてしまうほど、公爵さまを愛してしまっていたなんて!
辛すぎるので、すぐに実家に帰ります!
「聞き分けが良くて助かる。もう二度と君と会うことはないだろう」
『な、なぜ、そんなすぐに受け入れて出て行くんだ、令嬢! 愛してる。俺を捨てないでくれ!』
私が玄関向かって走り出すと女性の声に呼び止められました。
「あら? どこに行くつもりなのかしら、令嬢? 公爵家に嫁ぐからには格下のあなたには学ぶことがたくさんあるんですよ。遊ぶ暇があったら、恥をかかぬように部屋で勉強なさい」
公爵さまのお義母さまに見つかってしまいました。
『母上、良かった! 令嬢が部屋に戻るぞ! 令嬢に出て行かれたら俺は死ぬしかなかった! 令嬢はずっとこの屋敷にいるんだ! 絶対に逃がさない! 好きだ、愛してる!』
「母上には折を見て話す。今日の所は仕方あるまい。この屋敷に滞在することを許そう」
公爵さまが、願望の声とは違って冷たく言い放ちます。
「わかりました。ありがとうございます」
公爵さまは、一度もお義母さまから私を庇ってくださいません。
いつもお義母さまに怒られたり、嫌味を言われて、私は傷ついているのに……。
『令嬢が怒ってる! 怒った顔も可愛い! 怒った顔の肖像画も描かせたい! 屋敷を全部、令嬢の肖像画でいっぱいにしたい!』
私の願望の爆音さえも、お義母さまへの批判はなしですか。
◆◇◆
公爵さまから婚約破棄を言い渡されて私はおかしくなってしまった……。
『令嬢、どうしてるいるんだ。仕事が手につかない。顔が見たい、触れたい、抱きしめたい。側にいたら、甘やかして、俺なしでは生きていけないくらいとろけさせたい』
『令嬢、いた! 後ろ姿だけでも可愛い、いい匂いがする! もっと近づいて、腕の中に閉じ込めてずっと匂いを嗅いでいたい』
『令嬢、もう寝たか。寝顔が見たい、寝息を聞きたい! 腕枕して、ずっと一緒に朝までいたい』
四六時中公爵さまの心の声風の愛の言葉が聞こえてきます、爆音で!
おかげで夜は眠れません!
公爵さまが寝たと思う時間に私の妄想は止まります。
公爵さまは会えば冷たい言葉を吐いて、遠くにいても冷たく睨まれると言うのに!
顔と声が完全に不一致です。
やっぱり実家に帰った方がいいです。
これ以上ここでにいても妄想を拗らせて私がおかしくなっていくだけです。
「また遊んでいるんですか、令嬢。息子の婚約者には相応しくないと言うしかありませんね」
お義母さまがやって来て嫌味を言います。
『令嬢、愛してる早く仕事を終わらせて、顔が見たい。今朝は一目しか顔が見れなかった。少し寝不足なようで心配だ。もっと、元気な顔を見ないと寂しくて俺が死ぬ。死ぬほど愛しているんだ、令嬢! 俺が、絶対に幸せにする! 早く結婚しよう!』
私の願望の公爵さまは、本人とは違ってまた暴走気味です。
「お義母さま、実は、公爵さまには婚約破棄されたのです。だから、花嫁修行もする必要がないんです。私はこれから、実家に戻ります」
私が言うと、お義母さまは喜びます。
「あら、そうだったの? 確かに、あなたにはいくら教えても、公爵家に相応しい振る舞いが身に付きませんものね」
私は唇を噛みました。
やはり、お義母さまに嫌われているとは思っていましたが……。
公爵さま……。
婚約破棄されて、この屋敷に留まる理由はありません。
『愛してる、令嬢! 仕事が終わった。今から会える。会ったらどうしようか。まず膝に乗せて食事を食べさせよう。令嬢の手を疲れさせるわけにはいかない。着替えも俺がやろう。新しいドレスと宝石もたくさん買って着飾って、満足して俺の腕の中にいてくれ!』
馬鹿みたいなことばかり、公爵さまに言われたい私の願望は止まりません!
屋敷の外に出ようと言う時に、公爵さまに会いました。
「お義母さまに婚約破棄されたことを話したので、もうこの屋敷にいる必要がありません。さよなら、公爵さま」
私が言うと、公爵さまは冷酷な微笑みを見せます。
「それは良かった。私から母上に報告する手間が省けた。そこだけは有能だったな。さらばだ、二度と会うこともあるまい」
私は公爵さまの態度に深く傷付きました。
もしかしたら本物かも、そう思っていた爆音の公爵さまの心の声だけど、やはり私の願望です。
『嫌だ、嫌だ、嫌だ。寂しい! 行くな、令嬢! 俺を捨てないでー! 愛してる!』
私は公爵さまの冷たい顔と全く一致しない声を聞きながら、馬車に乗って実家に戻りました。
公爵さまの声をした爆音は、屋敷を出てもずっと聞こえていたけれど、街の区画を二、三超えてやっと止まった。
『令嬢、俺を振り返らずに出て行くな! 死ぬほど好きなんだ、君がいないと死んでしまう!戻って来てくれ、今すぐに!』
◆◇◆
実家でのんびり過ごします。
公爵さまが好き過ぎて聞こえていた幻聴はもう聞こえて来なくなったので安心です。
私はまだ本格的におかしくなってしまったのではなさそうです。
ただ、公爵さまの冷たい顔を見ながらでなければ、あの夢みたいに強烈に愛を聞かせてくれる爆音はずっと聞いていたい。
公爵さまのいない部屋で一人静かに過ごしていると、公爵さまに捨てられた悲しみが襲って来て、なぜ私の心は今、幻聴を聴かせてくれないのかと思います。
『愛してる、愛してる……』
!
聞こえて来ました!
ああ、公爵さまの声……!
爆音ではなく心地よい大きさでの愛のささやき……!
これです!
この能力さえあれば、公爵さまに捨てられても、自分で自分を慰めて生きて行けます。
寂しいし惨めかもしれないけど、これでいい、私も公爵さまを愛しています。
この閉じた静かな世界で一人幸せを噛み締めて生きて行きます……そう、静かな世界で……。
『愛してる、令嬢。この忘れ物を届けたら、一目だけでも会える! 一晩、君がいないだけで、俺がどれだけ寂しかったか。令嬢が「私も寂しかった」と言って抱きついて来たら、たっぷり可愛がってやる、ふふ、はーははは!」
うるさい爆音ですね……。
「令嬢、公爵さまがお見えです」
メイドに言われて玄関ホールまで行く。
まさか……ね……。
「令嬢、忘れ物だ。わざと置いていき、まだ俺と関わりを持とうなど浅はかだな。二度とこのようなことはするな」
怖い顔の公爵さまがいます。
『会いたかった! 可愛い、半日、会わない間になんと美しくなっているんだ! さあ、すぐに俺の胸に飛び込んでくるんだ! 今すぐ抱きしめたい!』
……。
まさかと思いますが……この爆音、本当に公爵さまの心の声ですか?
私が公爵さまを見つめると、物凄い怖い顔で私を睨んでいます。
手に持った忘れ物のタオルを触るのも嫌だという様子で、私に差し出しています。
でも、そのタオル、公爵家の備品ですよね?
……。
「お嬢さま、公爵家より正式な書類が届いております」
家令が公爵さまを前に言う。
お義母さまからの正式な破談通知です。
私の素行不良と理由があります。
「なんだこれは!」
『なんだこれは!』
驚きで、顔と声が一致しました。
「俺が出したものではない。俺の印章がない書類など無効だ。偽造したものを処罰しなければならない、無効な書類を渡して貰おう」
公爵さまがあわてて破談通知をしまいます。
『嫌だ! 破談になんてしない! 令嬢と結婚する!』
「くれぐれも、婚約破棄を取り消したなどと思うなよ」
お義母さまが、嘘を書いて私の名誉を貶めるために破談通知を出すなんて!
公爵さまが偶然いなければ、実家に恥をかかせてしまうところだった……。
悔しさに身体が震える。
『母上がここまでやるとは……。令嬢を遠ざけるだけでは、守れないのか!? 帰ったらすぐにでも手配しなければ!』
……公爵さまの心の声がお義母さまを、断罪するつもり……?
私は眉間に人差し指を置いて考えます。
『考えごとをしている令嬢もなんて可愛いんだ。愛してる、愛してる』
うるさいですね。
「公爵さま、お帰りください」
私が言うと公爵さまはゴミでも見るような目を私に向ける。
「君と同じ空気を俺が好きで吸っているとでも思っているのか? すぐに帰らせてもらう」
『れ、令嬢〜!? なぜそんなに冷たい事を言うんだ。俺がこんなに愛しているのに伝わっていないのか!?』
こんなもの、伝わりませんよ。
『嫌だー! 捨てないでくれ、令嬢!』
「うるさいですね。後で、公爵家にお伺いしますから、公爵さまは部屋から絶対に出ないで待っていてください」
爆音を公爵さまの心の声だと結論づけるのは簡単です。
でも、それだと私にあまりにも都合が良すぎます!
「ふ、俺に命令するなど、偉くなったものだな、令嬢」
『うん、待ってる!』
冷酷な公爵さまは帰って行きました。
素直な人です。
◆◇◆
公爵さまが家に戻り、部屋に入った頃でしょうか?
私は飲んでいた紅茶のカップを置き、上着を羽織ります。
そして、屋敷を出て行きます。
——さあ、検証開始です!
公爵さまが私の実家からお帰りになった際も、聞こえていた爆音はだんだん小さくなっていきました。
やはり、これは公爵さまの心の声……。
でも、本物の公爵さまの心の声だったら、なぜあんな態度を取るんですか?
もしかしたら、とても深い訳があるのかもしれない……。
もし、私の勘違いで、私の作り出した幻聴だとすれば、私は相当重症です。
でも、私、重症なんです。
ずっと公爵さまのことを愛してるって心が叫んでいるのは私なんです。
だから、声の聞こえる大きさに、ちゃんと法則があることを検証するのです。
ただ遠く離れていれば小さく聞こえて、近ければ爆音と言うのなら、私自身の思い込みで変えられます。
しかし、実際の距離を測り、障害物や地形などを考慮して音量に法則性があれば、それは私の思い込みではありません!
公爵さまは公爵家の自室にずっといるはずですから、私は公爵家の周りを調べていきます。
昨日の公爵家からの帰りの馬車の中で爆音が聞こえなくなったのは公爵家から二、三区画離れた所でした。
『令嬢、早く来ないかな。部屋から絶対に出ないで待っていると約束したのだ、絶対に出ずに待つ! 早く会いたい、会いたい、会いたい……』
やはり今日も二、三区画目の辺りで声が聞こえて来ます。
道の脇の建物によって声の大きさが違って聞こえてくるようです。
背の高い大きな建物の前では聞こえなくなり、背の低い小さな建物の前では微かですが聞こえて来ます。
『じっと待っていると、はじめて令嬢とあった時のことを思い出す。夜会で気後れしていた。誰よりも美しく天使のようだったのに。私が声を掛けると怯えていたが、別れる頃には笑顔を見せてくれて、なと愛らしかったことか。思い出すたびに胸が締め付けられて、好きすぎて死ねる』
入れる建物の中には入り、窓を開けたり閉めたり、一階と五階の高さによる聞こえ方の違いも確かめます。
公爵家から円を書くようにまずは遠い場所の聞こえ方を検証していきます。
やはり、窓を開けたり、障害物のない高い場所の方が声は大きく聞こえます。
『婚約を受けてくれた時の、「はい、公爵さま」と俯いてほのかに赤くなった顔も思い出すだけで、床を転げ回りたくなる可愛さだった。その令嬢が俺に会いに来てくれる! 絶対にこの部屋を動かない!』
とある建物から出ると、空が夕日に赤く染まっています。
今日は二、三区画先しか検証できませんでした。
法則性から、ほぼ確実に公爵さまの心の声で間違いありませんが……。
公爵さまには、後で行くとは言いましたが、今日とは言っていません。
明日、一区画離れた場所を検証して、公爵家の塀の周り、庭園と各部屋の検証をしてから、最終的な結論を出しましょう!
今日は、遅いので実家に帰ります!
『なに! 母上が屋敷に火を放っただと! しかし、俺は令嬢と絶対に部屋から出ずに待っていると約束したのだ。令嬢への愛を証明するために、絶対にここを動くことは出来ない!」
そ、それは出てください、公爵さま!
絶対なんて言ってすみません〜!
私は公爵家へ急いだ。
◆◇◆
「公爵さま! 火事ならお逃げください!」
そう言って公爵さまの部屋に飛び込むと、公爵さまとお義母さまがいました。
お義母さまは取り乱していらっしゃる様子です……。
「どうして私がこの屋敷を出ていかなければならないのですか! 亡くなった先代公爵とあなたを育てたのは家の格が高い私なんですよ!」
「今の当主は俺です。勝手に、破談通知を送って、家名に傷をつけるようなものは家の格以前に、屋敷には不要です、母上。それを恨んで屋敷に火をつけようとして、今更、先代公爵を持ち出すなど聞いて呆れます。即刻出て行ってください!」
火をつける前に止められたのね、良かった。
『令嬢だ! やっと来てくれた! 会いたかった! 数時間離れただけでまた綺麗になってる。好きだ、今すぐ結婚したい! 早く式をあげよう』
公爵さまは私の侵入にとても嫌そうな顔をしていますけど……。
「令嬢、今は母上と話しているのだ。邪魔しないでもらおう」
『母上の令嬢への嫌味は目に余ったが、言って聞く人ではないから、俺が令嬢を遠ざけて守るしかなかった! まさか、母上がここまでやるとは思っていなかった。愛してる。だから君に少しだって、ストレスを与えたくなかったのに! だけど、すぐにでも結婚したい。好きだ、令嬢!』
そういう事だったんですか?
お義母さまも私を嫌そうに見つめていましたが、
「許して下さい、令嬢! 格下のあなたに当主の妻の座を渡したくなかった。公爵家を守りたかった……それだけなの……だから、どうか、どうか、ここから追い出すのはやめるように、格下のあなたからも息子を説得して……!」
お義母さまは土下座して私に頼みます。
でも、まだ私を見下しています。
「見苦しいですよ、母上」
公爵さまが言うと、使用人が数人係でお義母さまを追放した。
「私が正しかったと、いずれわかりますわ! わかった時にはもう遅いのです!!」
さすがに火をつけようとするのは、擁護できない……する気もなかったですが。
胸がスーッとします。
私と公爵さまは二人っきりです。
「それで、何をしに来たのだ、令嬢」
『大好きな令嬢と二人きり、嬉しい。抱きしめたい、抱きしめられたい! 死ぬほど好きだ! けど、俺が守らなければ……』
私は公爵さまを無視して、部屋の奥へ進みます。
奥には大きなクローゼットがあり、中から扉を閉めれば音をある程度、遮断できます。
パタン
私はクローゼットの中に閉じこもりました。
『令嬢、なぜだ! 顔を見せてくれ! 君を閉じ込めるクローゼットになりたい!』
やはり、扉を閉めると50デシベルほど下がります。
パタン
『令嬢! 出て来てくれるのか! 嬉しい!』
パタン
『令嬢! 閉じこもるな! 悲しい』
パタン
『嬉しい!』
パタン
『悲しい!』
やはり、完全に音の大きさが連動しています。
これは公爵の心の声。
……私がおかしくなったわけではありませんでした。
良かった……嬉しいです……!
でも、本当に……顔と声が一致してませんよ?
ん?
あれ?
パタン
『嬉しい! 令嬢が出て来てくれた!』
そこには、満面の笑みの公爵さまがいました。
「……公爵さま、顔と心の声が一致してます」
「え?」
『は、恥ずかしい! 好きな人に強い感情を送ってしまう俺の特異体質が再発してたのか!? 令嬢に、俺の心の声、全部聞かれてた! でも、好きだ、愛してる!』
そこには赤くなっている公爵さまがいました。
可愛いですけど……。
守るためにって、不器用ですか! 公爵さま!
「あの、私も公爵さまが大好きですから、お義母さまはいなくなって、もう大丈夫ですから。私のこと、ちゃんと愛してください!」
……。
私は真っ赤になりながら、公爵さまに伝えます。
でも、あれだけ爆音でうるさかった公爵さまの声が聞こえなくなりました。
……。
沈黙が何分も続いた気がする。
もしかして、能力はなくなりましたか?
……。
『やったああああああああ! 令嬢も俺を大好きだって!!』
大爆音!
部屋のガラスが振動して割れそうになってます。
あ、まだ能力ありました。
「令嬢、愛してる! ずっとそばにいて、結婚してくれ!」
今度は心の声だけじゃありません。
顔も声も完全に一致しています。
だから、私は答えます。
「はい、公爵さま」
公爵さまに抱きしめられます。
公爵さまの腕の中で思い出すのは、公爵さまにはじめて会った夜会の事です。
ひとりぼっちで不安だった私に、真っ直ぐ手を伸ばしてくれたのが公爵さまでした。
「あの時、きっと公爵さまには私の心の声が聞こえていたんですね……」
◆◇◆
「令嬢、今日も君をと一緒で幸せだった。いつまでも俺は君を愛しているよ」
『今日の令嬢はいつにも増して美しかった。美で全てのものを圧倒していた。君への愛が日々増すばかりで、好きすぎて呼吸ができない。俺へ愛を向けてくれる君は女神だ』
私を腕に抱いた公爵の口からの声と、心の声がいつも二重に過剰に愛を囁いてくれる。
心も身体も、空間ごと愛に包まれて幸せすぎる日々です。
でも、
「君の寝顔を見届けてから眠りたい」
『可愛い令嬢の寝顔をずっと見ていたい』
「それだけは絶対にやめてください!」
爆音がうるさくて眠れません。
「わかった」
『嫌だ』
……。
「聞き分けてください? 公爵さま」
……。
……寝ましたね。
今夜は、なんとか勝ちました!
眠っている公爵さまは冷酷さなんて微塵もなくて可愛いです。
——翌朝。
「先に寝てしまったのか……。令嬢の寝顔は朝も可愛い……」
『令嬢、可愛い。寝息が規則正しい! 今日もずっと一緒だ、離さない、愛してる!』
「うーん……」
「まだ、眠そうだな」
『寝ぼけてる令嬢、可愛い、好きだ、ずっと見ていたい! 俺の令嬢、天使すぎる!』
うるさいですね。
「公爵さま、心の声の音量下げてください……」
「無理だ」
『無理だ』
……顔も声も完全一致。
今日も私は爆音で溺愛されています。




