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「夏と怪異」に寄せて

作者: kohki
掲載日:2026/01/17

私の名前はミーコ、東北の田舎町に住む。家は酪農を営み、父と母、兄がいる。いわゆる“本家”で昔はよく分家の親族が訪れていた。田舎なので家は古いがそこそこ広い。

そんな親族の中に、東京に住むコウキという従兄がいる。兄と1つ違い、従兄の家は共働きのせいか、小学生の頃から、夏と冬の長期休みの時期になると、うちに泊りがけで1週間くらい滞在する。兄とともに家の酪農の仕事を手伝い、と言っても本人たちは遊びの一環のようだ。牛舎には乳牛が30頭くらい、あと子牛が3頭ほど。朝、牛たちに牧草などを食べさせたり、寝床の草を替えたりする。夏場は、少し離れた場所に借りている畑で育てているトウキビの実を収穫した後の茎を根元から釜で切り落とし、トラックに積む。家に戻ると、裁断する機械を使って、細かくしたトウキビをサイロに詰めていく。しばらくすると飼料になる。

東京に住むコウキにとっては仕事というより冒険に近い遊びらしく汗だくになりながらも、楽しそうに笑いながらしていた。そんな兄とコウキを、私はいつも少し離れたところで母と一緒に見ていた。


高校生になってからは、家の都合で来るというより、自分から、毎年県内で行われるワンゲル部の合宿の帰りに寄るような感じで来るようになった。兄は兄でバイク仲間との遊びが忙しく、以前のようにいつも2人一緒ではなく、コウキが1人の時間も多く、自然と私と2人でいることも多くなった。庭でジンギスカンのバーベキューをした後、手持ち花火をした。花火の光で浮かび上がるコウキの笑顔にドキッとした。何回かそんな季節を過ごし、私は、夏休みが来るのが楽しみだった。


ある年、夕飯を終え、お風呂に入り、寝るまでの間、居間でテレビを見てるといつの間にか2人きりになっている。(後日、母は「2人にしてあげていたのよ」と申しておりました)座卓の下でふと裸足の足と足が触れた。「あ、ごめーん」と言って離すところなのに、お互いそのことを言葉にせず、触れた足も離さず、何もないがごとくテレビを見ている。足の触れた部分が熱くなった。コウキは何を考えているのだろう?お風呂から出てきた母が居間に入ってきて「ミーコもう寝なよ」と声をかける。「うん」と頷き、立ち上がり、「おやすみ」と言って居間を後にする。コウキの顔を見れず、どんな顔してたのかな?


次の夏休みが来た。合宿が終わった後、お盆過ぎにコウキは来ることになっていたが、ある日、コウキの母親から電話が入った。合宿中、悪天候の中、コウキが行方不明になった。明日から捜索本部に入るので、そちらにも寄らせてもらう、とのことだった。

父にお願いして私も捜索本部に連れて行ってもらうことにした。その日の夜のニュース番組で大学生遭難のニュースが流れた。

その夏は、小学生の時来るようになってから、初めてコウキのいない夏休みとなった。


私には小さいころ、ユウちゃんというお友達がいた。ユウちゃんは実在しない、イマジナリーフレンド、という言葉を後ほど知ったが、私が寂しいときに現れて、話し相手になってくれた。励ましてくれた。ユウちゃんは私を否定することなく、いつも見守ってくれていた。小学校入学後くらいから現れなくなり、その存在を忘れていたが、ある日の夜、突然私の前に現れた。「コウキのこと、びっくりしたよね」私は頷く。「山の中で動けなくなった後輩の救助を呼ぶために豪雨の中一人で山荘に向かったんだってね」うん。「その後輩は偶然通りかかった山岳ガイドの案内で無事下山できたんだよね」うん。「私、知ってるから教えに来たんだよ。コウキはその山の神様にお願いしてその後輩を守ったの。その代わり自分はしばらくこの世界に戻って来られない、そんな約束。だからね、コウキは死んだわけではなく、いつか戻ってくる。向こうの世界で3年、こっちの世界では何年になるんだろう、ごめん、私わからないや」ほんと?「そう。だから、コウキが死んだって悲しまないで。また会えるから」

いつの間にかユウちゃんは消えていて、窓の外が明るくなり始め、鳥の鳴き声が聞こえていた。


わかっている、ユウちゃんは居ない、自分が都合いいように自分で作り出した幻想だって。わかっているけど、だけど、まだ何も言ってない、何も聞いていない、行き場のないこの想いを、伝えさせて。信じさせて、いつか帰ってくるって。




AVACLUBというアイドルグループの「夏と怪異」という楽曲を聴いて、自分なりに、イメージを膨らませて、書きました。https://linkco.re/fQPrgafQ?lang=ja

初めて書いたので、稚拙な文章ですが、今の想いが伝わるといいなと思い、投稿しました。


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