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尽くしたがりのつくしさん  作者: マノイ
第二章

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第21話 新居を探そう

 同棲する。それなら引っ越そう。

 なんて簡単に済めばどれだけ良かったか。


 新しい部屋を契約するというのは時間がかかるものだ。


「うう~ん。中々良い部屋が無いなぁ」

「後一歩なんですけどね」


 年が明けて最初の三連休。

 新居を探して不動産屋巡りをしていた俺とつくしは、成果なくファミレスで夕飯を食べていた。


「おっ、このマルゲリータ美味いな。サクサクでスナック食べてるみたいだ」

「じゃあピザ窯も設置しないといけませんね」

「おいおい、それじゃあいつまで経っても決まらないぞ」

「くすくす。なら私の部屋に住みます?」

「いやぁ流石に狭いだろ。それに……なぁ?」

「苦情で追い出されちゃいますね」


 壁ドンとかマジであるんだな。あんなの都市伝説かと思ってたわ。正月だから誰もいないと思ってたのに。

 ちなみに何の苦情かを敢えて説明するつもりは無い。いつもつくしが煽るからいけないんだ。


「基本を抑えてるところは結構あるんだよな」

「バストイレ別、屋内洗濯機置き場、二LDK以上、周辺の治安、家賃、通勤時間。問題はこれ以外ですよね」


 ちなみに治安が悪くなければ俺もつくしも地域はあまり気にしていない。


「駅徒歩十分以内は妥協しても良いかなぁ。お金はかかるけど自転車使えば良いし」

「でも雨の日大変ですよ?」

「そうなんだよなぁ。でも少し早く家を出て歩いていけば……台風や大雪の時は休めば良いし、テレワークしても良い」

「テレワークですか?」

「ああ、何故かうちのメンバーはみんなやりたがらないテレワーク」


 うちの会社の方針として、テレワークは使いたければどうぞといったスタンスだ。流行った時は積極的に使えと言われたが、下火になった今はどちらでも構わない。ただ、どっちが良いとかどっちが悪いとかの話では無いため、テレワークの使用状況で差別したり成果に反映させるのはNGだと管理職はきつく言われているらしい。


 部長の指示は基本的に会社と同じく好きにしろ。ただし個人の都合で使いたい場合に、その程度でテレワークしたらダメだよな、なんてテレワークを悪だと判断したらめちゃくちゃ怒られる。


「皆さん、会ってお話ししたいんですよ」

「物好きばかりだな」

「尚哉さんがそれ言います?」

「やっぱりこのマルゲリータ美味いな」

「くすくす」


 寂しがり屋だってわけじゃないぞ。ただ、出社した方が個人的にやりやすいってだけで。ほんとだぞ。だからそんなに笑うなって。


「ということで駅近は条件から除いてもOK。他に除けそうなのは……」

「オートロックとかどうです?」

「絶対に必要だ」


 つくしに何かあったら大変だ。セキュリティだけは絶対に譲れない。


「やっぱり必要ですか。オートロックあっても共連れで入れちゃうから意味無いかなって思ったんですけど」

「む……確かにそうか」


 でもなぁ……それでも悪い奴はオートロック無い方を積極的に狙うだろうしなぁ。


「せめて防犯カメラとかセキュリティサービスに入っているところ。それが最低条件だ」

「はい、分かりました」


 その程度に変更するだけで、大分候補が増えるんじゃないかな。


「やっぱりスーパーや病院が近いのは必須か?」

「もちろんです。それだけは譲れません」


 特に近くに大きな病院があるのが大事だそうだ。俺に何かあった時にすぐに診て貰えるように、だとさ。俺としても全く同じ気持ちなのでこれを変えるつもりは無く、念のため聞いてみただけだ。


「後は……日当たりと収納か」

「お陽様が当たると洗濯物が良く乾いて、尚哉さんに気持ち良く着てもらえるんです」

「それは素敵だな。でも案外この条件が難しいんだよな」

「一番簡単な条件だと思ったんですけどね」


 南向きの建物は山ほどある。真南でなくても陽は当たるので、多少東だろうが西だろうが気にしない。それでもネックになってしまうのは、隣に高い建物が立っていたり、隣の建物との距離が近すぎて冬場の太陽が低い時期には陽が射さないなど、いくつかの理由がある。


「やっぱり陽当たりも出来るだけ良いところを探したいです。尚哉さんには気持ち良く過ごして頂きたいですから」

「収納の方は?」

「それは単純に、今の私達の荷物が入るかどうかで良いと思います」

「クローゼットがあると便利なんだがなぁ」


 押入れがあってもクローゼットが無い部屋も結構あるんだよな。でも部屋が広ければ外に出しても良いかもしれないか。ここは妥協のしどころかもな。


「まぁでも、ここら辺は探せばなんとかなるんだよな」

「はい」

「問題は……」

「…………」

「…………」

「…………」

「防音、だな」

「…………はい」


 初心な中学生じゃあるまいし、何を赤くなってるんだ。いや、いくつになっても恥ずかしいものは恥ずかしいか。この羞恥心が無くなったら終わりな気がする。


「他の人達ってどうしてるんだろうな」

「私達が特別……なんでしょうか」

「煩い方だとは思うが、異常ではない……と思いたいな」


 全力でする時はホテルに行くのだろうか。いやでも同棲してるのにわざわざ?

 デートの最後に流れでとかなら分かるけど、普段からそうするものなのだろうか。


「いっそのこと一軒家でも買ってしまうか」

「名案です!それならピザ窯も自由に設置できます!」


 やけにピザに拘るな。好きだけど夢中になるほどじゃないぞ。


「おいおい、そんな乗り気にならないでくれ。都内近郊で一軒家だなんて、いくらかかるか。しかも頑張ったところでペンシルハウスとかだろ。それを悪くいうつもりは無いが、せっかく買うならもっと夢のある大きな家が良いし」

「でもそれだと通勤時間が二時間とかになってしまいますものね」

「そうそう。夢は夢でしかないってことか。寂しいなぁ」


 いや待てよ。

 建てなくても借りるって選択肢があるじゃないか。


「一軒家の賃貸を探してみないか? それなら色々な問題が解決すると思う」

「ですが賃貸一戸建ては人気だから中々見つからないって聞いたことがありますよ?」

「やっぱりそっか~」


 維持管理が面倒だからアパートやマンションの方が人気かなって思ったんだが、そうでもないんだな。


「それにいざ借りるとご近所付き合いが大変らしいですね」

「あ~それもあるか」

「もちろんそれはお任せください」

「信頼しかない」


 ひとまずは候補に入れておいて、あったらラッキーくらいの感じかな。


「どこかで妥協して急いで部屋を決めるか、それともじっくり選ぶか、つくしはどっちが良い?」


 俺はどっちもありだと思っていて、正直判断がつかない。

 だからつくしに希望があればそっちを選ぼうか。


「急いで決めたいです。多少不便でも尚哉さんと一緒に暮らしたいです」

「お、おう。なら遅くても今月中には決めるか」

「はい!」


 住処を決めるだなんて大事なことなのに感情を優先して良いものか。


 全く問題ない。


 何故なら次の住処はもしかしたらそれほど長く借りないかもしれないから。順調にいけば今年中に『次のステップ』に進み、賃貸ではなく購入を検討することになるかもしれないのだから。

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