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尽くしたがりのつくしさん  作者: マノイ


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第11話 デートプランはどうやって決める?

 仕事を定時で終わらせ、自宅に戻り、帰り道で買って来た弁当を食べ、風呂に入り一息つく。


 仕事モードから私的モードへと脳が切り替わり、俺はベッドの上で横になりながら頭を抱えて苦悩していた。


「やばい、どうしよう」


 まさかこんなことになるだなんて予想外にも程がある。


 自慢じゃないが、デートの経験はそれなりに多い。だから今更デート前に緊張したり慌てるようなことは無いと思っていた。


 それなのにデートを三日後に控えた今、俺は超焦っている。

 どうすれば良いかと悩みに悩みまくっている。


「デートプランが思いつかない!」


 学生の頃は簡単だった。


 住んでいたところに定番のデート先があるし、相手の事をある程度知ってから付き合ったので好みも少しは分かっている。社会人になってからは新卒の年だけ付き合ったことがあるが、それもまた学生の延長線上のようなものだった。


 だが、こうして社会人としての経験を積み、大人としてそれなりの歳になった今、どういうデートをするのが正解なのか分からない。


 大人の初デートは学生時代のソレと全く違う気がするのに、何を変えれば良いのだろうか。


 あるいはそれが分からなくても、相手の好みにマッチしたプランを考えれば大きな失敗はしないはず。しかし真心さんが俺以外のことで何が好きなのかは、まだほとんど判明していない。一緒にご飯を食べに行くようになって、好きな料理がいくつか分かった程度だ。


 じゃあ一体何を基準にデートプランを考えれば良いんだよ!


『なんか最近、キミとデートしても楽しくないんだよね』


 以前の彼女に言われたことがトラウマとして蘇ろうとしている。


 決してつまらないプランだったわけではないはずだ。

 だって彼女達は皆、最初の頃は笑ってくれていたから。あれが上辺だけのものとは到底思えない。


 それなら真心さんも初回は喜んでくれるに違いないと思いつつも、また失敗してしまうのではないかという不安がどうしても拭えない。


 これらの理由により、俺は全くデートプランを考えられないという状況に陥ってしまっているのだ。


「真心さんは何でも喜んでくれる。それは分かってるんだが……」


 デートでは相手を喜ばせてあげたい。そう思っていつもデートプランを計画している。何でも喜んでくれるのであれば、何を選んでも良いはずだ。だがそう言われて、ならこれです、なんてすぐに思いつかない。


 今になって母親に『今日の夕飯何が良い?』って聞かれた時に『何でも良い』って答えることの罪深さが分かって来た気がする。


 いっそのこと丑岡や晴着さんに相談するか?


 そう思ったこともあるが、自分一人で考えたプランの方が喜んでくれるはずだと思うと二の足を踏んでしまう。どっちにしろあいつらも『何でも喜ぶと思うッスよ』とか言いそうだし。


「こういうアドリブの弱さが、つまらない原因だったのかな……」


 カフェ、レストラン、映画、水族館、美術館、夢の国、公園散策。

 無難なのはこの辺りだろうか。

 夜はおしゃれな居酒屋かバーに行くと決めているのだが、昼の予定が全く定まらない。


 大人のデートって、何をするのが定番なの?

 真心さんのような何でもOKな女性には、どこを選ぶのが正解なの?


 分からない。

 全く分からない。


 このままではノープランでデート当日を迎えることになりかねない。

 真心さんも準備があるだろうし、そろそろ大まかな方針くらいは決めて伝えなければ。


 そう思っていたら、真心さんからスタンプが送られてきた。


『こんばんは』


 そういえば今日は遅いな。

 毎日話をしているけれど、普段はもっと早い時間から会話が始まる。

 それなのに今日はいつもより一時間も遅い。悩みまくっていたから気付かなかった。


『土曜日のデートについて相談があります』


 おや、相談?

 何だろう。行きたいところがある、とかだと助かるんだけど。


 しばらく待っていたら、とても長いメッセージが送られてきた。


「こ、これは!?」


 そこに書かれていたのは、俺が最も喜ぶものだった。


『土曜日のデート、こんなプランはどうでしょうか?』


 そんな一文の後に、デートプランがつらつらと書かれていたのだ。

 しかも具体的な場所や店や金額まで書かれている。


 もしかして、今日遅かったのはこれを考えていたからなのか?


 デートプランが決まらなくて困っていたら、そのプランを真心さんが希望して来た。つまりそのプランを選べば真心さんが喜ぶこと間違いなしということ。小躍りしたくなるくらい助かった。


 俺の常識ではデートプランは男が決めるものだった。

 女性が行きたい場所があるなら、それを普段の会話で必死に察し、そして絶妙なタイミングでデートを計画する。そうやって男は女性を喜ばせるものなのだと思い込んでいた。


 女性がデートプランを全部考えるなんてありえない、とまでは言わないが、レアだと思っていた。


「こんなこともあるんだな……」


 スマホをお腹の上に乗せ、天井を見上げながら安堵に身を委ねる。


「…………まさか俺が困っていると分かってフォローしてくれたのか?」


 真心さんならありえる。

 でもわざわざそれを確認する必要は無いか。


『ありがとう。とても良いプランだと思うからそれにしようか』


 わーい、と喜ぶ可愛いスタンプが返って来た。

 こんなのもうデートが成功したようなものじゃないか。


『真心さんはもう準備は終わった?』

『全然終わらないです』

『何が残ってるかって聞いても良い?』

『楽しみすぎて、心の準備が終わらないです』


 今の彼女と付き合うにあたり、過去の女性のことを考えてはならない、ということは分かっている。分かっているが言わせてくれ。


 こんなこと言ってくれる女性、今まで居なかった!


 あまりにも可愛くて、本当にこんな娘が彼女になってくれたのかと幸せを疑いそうになるくらいだ。


「俺もそうなりそうだよ」


 デートプランという心配ごとが無くなってしまえば、後は当日を楽しみにするだけ。このワクワクがずっと続くと思うと、仕事が手につかなくなりそうで危ないな。

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