雑文激論「けっして人に聞かれてはいけない内輪話」
「でやーっ!」
「がはっ!」 ばたり
高級マンションのエレベーターホールにて、玄関のオートロックドアを『共連れ』ですり抜けてきた男に対して、美沙の美脚パンチラ蹴りが男の股間にきれいに決まった。
局部への蹴りをまともに喰らったストーカーの男は悶絶の表情を浮かべながらその場に伏す。だが、表情は苦悶に歪んでいたが目元は美沙のパンツをチラ見出来た事で満足げそうだった。
うん、さすがはロクデナシである。自身の欲望に忠実過ぎる・・。
そんなロクデナシを一蹴りで成敗した美沙は深く息を吐き呼吸を整える。
「ふぅ~。またロクデモないもの蹴ってしまった。」
「いや~、いつもながら見事な蹴りね。でも○○を潰した事を五右衛門さまの台詞で後悔するのは止めて。穢れるじゃんっ!」
私は美沙に今年33度目となる賞賛の言葉を贈りつつ、敬愛するアニメキャラの台詞をストーカー男なんぞに使った事を抗議した。
しかしアニメを観ない美沙に私の抗議は通じなかったようである。なので美沙は普通に現実的な注意を返してきた。
「恋菜も気をつけなきゃ駄目よ?こうゆうやつらってか弱そうな女性を狙うんだから。」
いや、美沙よ。それって多分『わたしはか弱い乙女なの』アピールのつもりなんだろうけど、言葉と行動が一致していないからっ!か弱い乙女は男性の局部をピンポイントで蹴り挙げる事なんて出来ないからっ!
まぁ、それでも一応、私もスタンガンは常備しているけどね。うん、まだ一度も使った事はないけど、これは別に私がロクデナシ共のお目に引っかからない程度という意味ではないからっ!
と言うか、本来ストーカーなんてされない方がいいんだからっ!33回も撃退したなんて全然自慢にならないからっ!
そんな私の心の言い訳を聞くことが出来ない美沙は、美沙の実家が雇っている掃除屋にロクデナシの処理を電話で指示していた。
そう、ロクデナシはこれから重りを付けられ生きたまま東京湾に沈められるのである。まっ、自業自得だ。来世は異世界でがんばれ。
で、場所は変わってここは美沙の部屋である。実は私は美沙と一緒に暮らしているのだ。
いや、家賃とか食費とかは全部美沙持ちなので正確には『転がり込んでいる』と言うべきなんだろうけど、まぁ世の中には『自宅警備員』という言葉もあるからね。
「恋菜、なんかテーブル周りが汚いんだけど?」
「あっ、ごめん。掃除するつもりだったんだけど、猫が遊んでくれってじゃれてきてさぁ。なのでそのままになっちゃったの。でもバーベルは動かさなかったわよ?と言うか私ではどうやったって動かせんっ!」
そう、何故かこの部屋には重量100kgはありそうなバーベルがあるのだ。しかもなんか使っている様子が伺えるんだよね。ははは、マジかよ。
そんな私の突っ込みを無視して美紗がお礼を言ってきた。
「仕方ないわねぇ。まぁ、猫ちゃんと遊んでくれたのならばいいわ。大変だったでしょ?」
「無茶苦茶大変だったわいっ!と言うか、なんでこの部屋にネコ科で最大種のアムールタイガーがいるんじゃっ!あれってワシントン条約の取引禁止対象でしょうがっ!」
「や~ねぇ、恋菜ったら。あれはトラネコよ。普通の雑種。阪神タイガースの優勝記念グッズとして配られていたの。」
「優勝グッズだったのかいっ!でも普通の雑種猫は体重が400kgもないっ!危うく押しつぶされるところだったわいっ!」
「まっ、恋菜ったら猫ちゃんに気に入られたのね。私以外にその愛情表現をされたのは多分恋菜が初めてよ。」
「成る程、なんでバーベルが部屋にあるのか判ったよ・・。」
そう、美沙は見た目と違って結構引き締まった体をしているのだ。所謂『着痩せするタイプ』というやつである。
ただ、その体型を維持する目的が猫と遊ぶ為だったとはびっくりだ。
因みに美沙が留守の間、私は男を連れ込んだりしない。まぁ、連れ込めるアテもないのだが、そもそも連れ込んだとしても、殆どの男は猫ちゃんを見た途端逃げ出すだろう。
なので猫ちゃんはある意味、最強の防犯グッズである。まぁ、餌代はかかるけどね。と言うか、私の食費よりも猫ちゃんの餌代の方が数倍高いんだろうな。なんせ猫ちゃんってあの体格なのに生肉しか食べないし。
でも今、猫ちゃんは隣室でお休み中である。なので私と美沙はビール片手に生ハムを肴にして某素人作品投稿サイトで先頃終了した『してはいけない企画』について話し合った。
「では、今回は『してはいけない企画』にて使われていたテンプレの構造について考察します。」
「テンプラの構造は具材と衣よ?そんな事は小学生だって知っているわ。」
「物語の構成で有名なのものに『起承転結』があります。これに似たものが『5W+1H』と言われています。これは『いつ、どこで、だれが、どうして、何を、どうした』という流れで状況を説明し小説を組み立てていく技法ね。」
「相変わらずボケをカレーにスルメイカされた・・。」
まっ、これは仕方がない。そもそも私はまだ修行中の身だからね。でもいつかは浅草演芸場の舞台に立ってみせるっ!
そんな私の野望をしらない美紗は私の呟きを無視して話を進めてきた。
「そして今回のテンプレではまず最初に『登場人物』と『場』、及び『状況説明』を定形文として共用しました。」
「あーっ、親友のマンションに留守番に来たという設定とその動機ね。」
「ザッツ・ライッ!なによ、恋菜。もしかしてお馬鹿キャラは卒業したの?」
「誰がお馬鹿キャラだっ!私はこう見えても早稲田大学の隣にある大学卒業だっ!」
「それって・・、幻の馬鹿田大学・・。あの静岡県○○市の市長ですら『バカは利口で利口はバカ』という馬鹿田大学の理念が高尚過ぎて、そこの卒業生だと公表できなかったという素敵過ぎる大学・・。すごいわ、恋菜。見直したわっ!」
「えっ?いや~、それ程でもあるけど。因みに自慢する訳じゃないけど私って『酒席』で卒業しました。」
「恋菜・・、なんか漢字が間違っている気がするけどそっとしておくわね。で、話を進めるけど今回のテンプレでは『起承転結』の『起』部分を定形文とし『承』部分で個別のネタを開示。そして『転』部分でアクシデントを起こさせ『結』部分でオチを付けるという形でした。」
「つまり『承』部分のネタと、それによる展開とオチさえ思いつけば幾らでもストーリーを作れた訳ね。」
「ザッツ・ライッ!なによ、恋菜。もしかしてお馬鹿キャラを止めたの?」
「それ、さっきも言った。というかネタを被せるのはトンカツじゃなくて『天丼』よっ!」
「天丼ってサクサクに揚げたカツをなんでわざわざ煮込んで卵でとじているのかしら?そのまま食べればいいのに。」
「天丼はそのひと手間が更なる美味しさを引き出しているのよっ!と言うか、天丼の具材はテンプラであってカツではないっ!煮込んだカツを卵でとじる丼はカツ丼だっ!同じ丼モノだけど全くの別物だっ!」
「そうね、確かにそうだわ。だからテンプレを使った作品は似てはいるけどそれぞれ別のモノなのよねっ!」
「そこに持って来るのかっ!回りくどくて直ぐには判らなかったぞっ!」
「でも、だからこそ、テンプレはネタが大切よね。このネタの活きがよくないと美味しくならないもの。」
「今回は食べ物関係で例えるのね。まぁ、確かに旬のネタだと読む方も判り易いだろうからね。だからドリフネタはある意味年齢確認用の踏み絵ネタになっていたし。」
「そうよねぇ、でもさすがに『エンタツ・アチャコ師匠』のしゃべくり漫才ネタはなかったわ。」
「あるかぁーっ!そんな大正から昭和初期時代のネタを知っているやつはここにはおらんっ!」
いや、『エンタツ・アチャコ師匠』が大正から昭和初期時代に活躍されていたと突っ込んでしまえる私も微妙だ・・。
なので私はネタの具体的な例を美紗に問うて年齢に関する疑問点を誤魔化した。
「でも、旬なネタって何があるの?そもそも幾ら旬でも読み手がその事を知らなければ話について来れないでしょ?」
「そうね、だから国際宇宙ステーションを軌道上昇させる為にロシアの補給船『プログレスMS-30』が2025年8月14日に推進ロケットを647.3秒間噴射させたなんてネタは絶対駄目ね。」
「そもそもそのネタをどう使えばいいのかが判らん・・。と言うか細かいなっ!なんなんんだコンマ3秒って!」
「国際宇宙ステーションは秒速7.66kmというものすごい速さで軌道を周回しているから、それに関係する数字は小数点以下まで使わないと誤差が生じちゃうのよ。」
「その情報もいらない・・。と言うか企画はもう終わったんだから今更ネタを考えても投稿できないじゃん。」
「なにを言うの、恋菜っ!企画が終わったらそのテーマに沿った作品を投稿『してはいけない』なんてルールはないのよっ!まっ、とは言え読んでもらえるかどうかは微妙だけどね。でも、優れたネタは何時までも輝くものなのよっ!だから本当にいるんだか判らないのに神様ネタは廃れないのよっ!」
「夢オチならぬ、神様無茶振り奇蹟結末を正当化する主張だった・・。」
「でもまぁ、ここでの共通話題としたらやっぱりランキングかな。なんせエッセイジャンルが昔流行っていたのはランキング批判エッセイが人気だったお陰らしいもの。」
「あーっ、なら今だと『異世界恋愛ジャンル寡占状態批判』かな。」
「残念っ!批判系のエッセイを書くのは男の子たちが殆どであり、それらの子たちは異世界恋愛作品は読まないから批判もできないわ。」
「読まないんだ・・。だとしたら共通の話題となるネタなんてないじゃん。」
「ふふふっ、甘いわ恋菜っ!そんなだから男が出来ないのよっ!いい?男の子にはどんなに精神修行をしても抗えないものがあるのっ!それが『18禁エロ』よっ!」
「運営さ~ん、ここに規定違反思想のバカ女がいま~すっ!アカウントを強制削除してくださーいっ!」
「あっ、ちょっと、なにチクっているのよ、恋菜っ!あっ、手がっ!体が溶けてゆくわっ!こっ、これがアカバンというやつなのねっ!」
私の目の前で美紗はあっという間に溶けてしまった。勿論これまで美紗が投稿していた作品も跡形なく消えている。
まぁ、これがこの投稿サイトでやんちゃした者の末路なんだろう。だが、これはこれで問題がある。
むーっ、来月のここのお家賃って誰が払うんだろう?多分美紗の銀行口座も消えてしまっているわよね?と言うかこの部屋だっていつまで存在するか判らんぞ?
なので私は冷蔵庫からビールを取り出し鞄に詰め込めるだけ押し込んで部屋を出ようとした。
だが、私が玄関の扉を開けると、そこには溶けて消えてしまったはずの美紗が立っていた。
「じゃじゃ~んっ!こんにちは恋菜。新アカウントにて『新』美紗復活よっ!」
成る程、この投稿サイトのアカウントが増え続けている一端はこうゆうことなのか・・。どうりで最近若いアカウントにジジイたちが多い訳だ。
かくして私は生まれ変わった美紗と、今度は秋に催されるという新企画『朝起きたら……企画』について語るべく部屋に戻ったのである。
-お後がよろしいようで。-
次回は『朝起きたら……企画』についてだべりまくるっ!
投稿ジャンルは相変わらずアクション短編だぁっ!
勿論アクション展開もあるよっ!




