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森奥の深淵  作者: 初唯
第一章 迷いし森の奥で敗北の書を読み始める青年
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3 ハクト

 どうやら朝が来た。・・・もしくは昼か。

閉じた窓の隙間から部屋に差す陽光で、目を覚ましたとき今が夜ではないことは理解した。

記憶をたどる。屋代の門が開き巫女?が顔を見せたまでは覚えている。

気がつけばベッドの上に俺は寝かされていた。


「お目覚めになられたようですね。疲れは取れましたでしょうか?」

濃色巫女が部屋を訪れ声をかけてきた。

「門戸が開かれたあとのことを覚えていないのだが」俺が困惑していると

玄関の扉を開けた途端、安堵されたのか俺が気絶したと巫女は答えた。


「倒れた迷い人様をベッドまで私達で運びました。お湯を用意しておりますので

浴室で身を清めていただけますでしょうか?そのほうが傷にもよろしいでしょう。

ボロボロとなった衣服も新しいものを用意いたしましょう。まずは身を整え、

落ち着いて、お話はそのあとに。では迷い人様こちらへどうぞ」


「貴女をなんと呼べばいい?」俺はあとをついて歩きながらたずねる。

「私のことは有為ういとお呼びください。この禁書庫の司書でありかつ巫女です。」


廊下を歩きながら中庭を眺めた。庭園の岩と木が見えた。


「迷い人様では不便ですね。シロウサギですから、記憶が戻るまで貴方のことを仮にハクト様と呼ばせていただいてもよろしいですか?」有為は聞いてきた。


「構わない。好きなように呼んでくれ。」


有為という濃色の巫女は立ち止まり「こちらが浴室です。どうぞ」と言った。

「すまない。ありがたく使わせてもらう。」


「お背中を流したりの奉仕はありませんが、覗いたりもいたしません。こちらの湯は外傷や皮膚病を癒やす効能があります。どうぞゆっくりと疲れをおとりください」


どうやら温泉のようだ。浴室に入り、ボロを脱ぎ、桶で体を流したのち檜で作られた湯船に使った。

傷が染みるが温かい湯は心地よいものだった。喉も乾いていたので手ですくい湯を飲んでみた。

体に染み渡るようで何回も何回も俺はその湯を飲んだ。

風呂からあがると脱衣所に小綺麗な衣褲(きぬはかま)が置いてあった。これを着ろということだろう。

浴室から出ると有為という巫女が立っていた。逃げないように見張っていたということだろうか。


「お疲れさまでした。ハクト様。では先程の部屋に戻りましょう」有為は言った。

「もう数刻すると昼餉ひるげです。食事をしながら今後の相談といたしましょう。

その場には私の同僚の無為むいも紹介いたします。」


 部屋に戻された俺は自分が空腹だったことを思い出し昼食の時間を待つことになった。

考えてみたら酷い話だ。昨日すでに俺は空腹だった。気絶して夕食も食えずに朝も食えずに昼食を待つこととなった。お腹すいた。


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