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森奥の深淵  作者: 初唯
第一章 迷いし森の奥で敗北の書を読み始める青年
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①‐5 妖怪土ころび出現!

 アマリリスたちは魔塔のある妖精郷へ向かっていた。

妖精郷の近くのナツミ村にたどり着いたとき村人にそれ以上進むのはおすすめしないと彼らは言われた。

「私は、聖女としてまだまだ未熟なのです。魔塔に行き魔法について学べば魔王アルゴモーゼを打ち倒すなにかを得られるかも知れません。どうしても行かないわけには行かないのです。」アマリリスは止める村人に切実に訴えた。

村人は困惑した。聖女一行といってもまだ年端もいかない子供なのだ。

「どうして先へ行くのを止めるのですか?」兄のゼンニバルが村人に訊ねた。

「・・・出るのだよ」村人は言った。

「出るって何がですか?盗賊かなにかですか?」

「いや、盗賊は出ない・・・いや盗賊みたいなものだがもっと不気味なものだ」

「それはいったい・・?!」

「「土ころび」だ!妖精郷へ向かう峠に、「土ころび」が出るんだよ」

「なんだってーーーーーー!!!!」


アマリリスもゼンニバルも「土ころび」が何なのか知らなかった。

「「土ころび」って何なのですか?」ゼンニバルは村人に訊ねた。

「毛むくじゃらの化け物だよ。峠に人が通ろうとすると背後から現れて転がってくるんだ」

「化け物・・・もしや魔王の誕生となにか関係があるのかしら?」アマリリスは懸念と興味を抱いた。

「魔物なら俺達は逃げるわけには行かない。でも危険なことに大事なアマリリスを向かわせるわけにも行かない。おじさん、もっとその「土ころび」について教えてくれませんか?」ゼンニバルは何か自分たちでも「土ころび」を討伐出来る方法はないかとまずは情報収集をすることにした。


 ナツミ村の教会、バンビという名の神父はアマリリスとゼンニバルの二人を歓迎した。

「こんなに小さいのに君たちは神の御使いとして邪悪なる魔王を倒すべくがんばってて偉いねえ」

神の加護があるのだと信じて疑わない神父は彼らの道中を危険なものだとは全く心配しない。ただただ頑張ってる子どもたち二人の行動を称賛するばかりであった。


「神父さんは「土ころび」のこと何かしりませんか?」ゼンニバルは聞いた。

アマリリスは夕食に出た 小豆と鹿肉のスープを美味しくすすっている。

「「土ころび」か。私は彼をそんなに邪悪な化け物だとは思わないんだ」神父は言った。

「え?ですが峠を越えようとした旅人や行商人が「土ころび」の襲撃に会い何人も怪我を負わされたと教会に向かう間、いろいろな村の人から伺いましたよ」ゼンニバルは言った。

「それはね、突然毛むくじゃらの化け物が出て、あわてて足を崖から踏み外したり、走って逃げようとして転倒したために負った怪我だろう。「土ころび」が直接負わせた怪我とは違うはずだよ」神父は答えた。

 アマリリスはヨモギを練り込んだパンを口に、ほうばっている。

神父は話を続けた。「それにね、伝承に伝えられる「土ころび」というのは毛むくじゃらの化け物ではなくて、槌の形をした大蛇なんだよ。きっとそれは本当は「土ころび」ではなく別の生き物もしくは魔物なのだと私は考えている」

 

 ゼンニバルは頭を抱えた。「土ころび」が何なのか調べようとしてたら、それは「土ころび」でさえないかもしれないという。完全にお手上げだ。得体が知れないものからアマリリスを守ることなど不可能だ。

 アマリリスは美味しそうに鹿肉のピカタをもぐもぐ食べていた。

 そんなアマリリスを見ながらバンビ神父は優しく微笑んでゼンニバルに言った。

「君も聖女のように糧を召し上がりなさい。どんなときもしっかり食べて、きっちり休んでこそ生きる力が湧いて出ますよ」


ゼンニバルは神父に同意し、とりあえず晩餐を味わった。


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