②-1 準聖女カルマリア
光があれば影もまた存在するのが世の常。
アマリリスと同世代にケミシュ村のカルマリアという名の少女が居た。
カルマリアは金髪で色白の優しい娘で、そして小さな頃から聖魔法が使えた。
彼女は日照りで弱った作物を治癒させたり、お腹が痛くて泣いている子を緩和させたりしていて、ケミシュ村の聖女様と村の大人たちからもてはやされていたのだった。この村から聖女が出たと言うことになったらケミシュ村はどれだけ潤うことだろう。カルマリアは村長はじめ村の人たちの期待を一身に
背負うプレッシャーを感じつつもそれを誇らしくも思い、日々せいいっぱい聖女らしく有ろうと物心ついたときから励んでいた。
カルマリアが挫折を味わうことになったのは彼女が五歳の時、教会で魔力属性の確認の際に彼女の聖魔法の魔力がアマリリスよりはるかに劣っていると判断されたときだった。
教会はアマリリスを聖女と認定し、カルマリアは聖女に劣る準聖女として扱われることとなった。カルマリアは自分が大した存在でなかったのだと思い知らされ、そしてケミシュ村の人たちが落胆しカルマリアのことを落ちこぼれとして軽く見るようになった変化に傷ついた。
「私は変わっていない。でも協会に聖女ではなく準聖女だとされて以来、みんな変わってしまった。」
泣きながら人生に失望しあぜ道を歩いていると、カルマリアは地面に羽が破れ傷ついたニワチコ鳥が悶えているのを見つけた。
「傷ついて、かわいそうに」カルマリアはそのニワチコ鳥に治癒魔法をかけ羽を治してあげた。
ニワチコ鳥は ピピピ♩チョーリリリ♪と嬉しそうに泣き。カルマリアの上を輪のように飛び回り去って行った。
「よかった」カルマリアの顔には笑顔が戻っていた。
「私は私が出来ることを頑張るしかないよね。私は聖女アマリリスにはなれないけれど、私は私として生きてゆこう。アマリリス未満ではなく、カルマリアという人間として!」
鍛えたら魔力だってもっと上がるかもしれないし、聖魔法以外でも出来ることを増やしてゆこう。そうしたらいつか困っているひとを助けられるかもしれない。
考えようによっては、魔王討伐などという危険きわまりない使命などなく、周囲の困ったひとを助ければいいのだから、アマリリスよりも私の方が幸運なのかもしれないわ。
聖女降臨の村という村おこしができなくなり村長が落胆したとしても、自分のことを自慢していた両親の鼻が折れても、そんなの知ったことか。
私だけは私に落胆するのはやめよう。
カルマリアは自分を愛し、自分の可能性を信じ、そしてたとえ教会が認めてくれなくても自分だけは自分のことを認めようと心に誓ったのだった。
このとき無意識にカルマリアは神ではなく己を信じるという道に入ってしまったことを、彼女はまだ自覚していなかった。
カルマリアの本当の苦難の人生はこのときから始まったのだった。
空を舞うニワチコ鳥が哀しげに鳴いていた。




