7 縁側にて
ポポノミラクルという本を一章読み終えたとことで、ふぅーとハクトはため息をついた。
「えー、ここで終わり?続きを知りたいよ。」と無為という緋色の巫女が残念そうに抗議する。
そこへ濃色の巫女の有為が飲み物を持って顔を出した。
「たくさん朗読して喉が渇いたでしょう?薄荷水をこしらえたので良かったらどうぞ」
「あーこれすっきりする奴♩ ハクト様、美味しいよ飲んで飲んで」
ハクトは薄荷水というものを知らなかったが喉が渇いていたことは確かなので茶碗を取り飲むことにした。
(なんだこれ?!)すーっと喉の奥まで清涼感が通りすっきりとした。
「ありがとう、とてもさっぱりさせてくれる飲み物ですね、これ」ハクトは有為に礼を告げた。
「ふふふ、それにしてもハクト様は本当に素敵な声をお持ちですねえ。」有為がにこやかに言った。
縁側にたたずむ三人にあたたかい春の陽気が包み込む。日だまりと呼べる空間。
「ねえ、これからアマリリスはどうなるの?魔王ってどんな恐ろしい魔物なの?どうやったら倒せるの?」
矢継ぎ早に無為は疑問点をハクトに聞いて回る。
「まだ俺も先は読んでないんだ・・」そう答えるハクト。
だがハクトは何かこの本の内容に違和感を感じていた。
(聖女・・勇者・・何か引っかかるものがある。)
(この本の中に、俺の記憶を取り戻す助けとなるものがある気がする。)
「すごい疑問があるんだけど」無為はハクトに質問した。
「どうしてアマリリスは魔王を倒しに行かないといけないの?」と大前提に疑問を述べた。
「まだ幼い女の子がなんで魔王なんて倒しに行かないといけないのですか?その本の世界には、もっと頼りになる大人の武士や教皇は居ないの?少なくとも子供にやらせるよりは勝率高いんじゃないかと思うのだけど」
「身もふたもないことを言うなあ」ハクトは無為のもっともな疑問に苦笑した。多分これは表向きとは別の教訓の込められた童話か何かなのではないだろうか?最初は歴史書かなと思ったが、これは恐らく大人が子供に聞かせる寓話。民の口から出ていることが王の耳に入れば罰せられる内容を童話の形を装い、代々と先祖から子孫へと口伝として伝えようとしてきた話なのだろう。とすると聖女、 耳と口と王と女とに分解される言葉にも何か暗号が込められているのかもしれない。
(この本の中を解読すれば、俺の記憶を取り戻す助けとなる気がする。)
「とりあえず、先を読んでいこう。無為の感じた疑問の答えも載っているかもしれない」
「うん、わかった。ハクト様つづきを読んで下さいな」
わずかなそよ風がひだまりを居心地の良いものとしていた。
ハクトは次の章をめくった。




