①-4 ふたつの旅立ち
子どもたちがイノシシを三匹も駆除したことに神父は驚愕したものの、肉屋に売却しそこそこの対価を得ることができた。教会や孤児院の運営もより良いものとなるだろう。もちろんちょっとは自分たちの食べる分の肉も残していた。
イノシシ肉のステーキを囲んでアマリリスやゼンニバル、リオンそして孤児たちは盛り上がっていた。
ゼンニバルはリオンの活躍をしみじみ思い出していた。計画を練ってもうまくいくとは限らない。想定外のことが起きるのが当然だ。そんなときに底力を見せてくれるリオンみたいな奴は頼もしい。
そのとき燭台の聖火がゆらめき、天からの声がアマリリスたちに響いた。
『魔王アルゴモーゼが誕生した。7年後の侵攻に備え力を蓄えなさい』
「!!7年後?!」具体的な期限を提示されアマリリスに緊張が走った。
これから七年間の間に、魔王と立ち向かえる人たちを見つけ出し、自らも研鑽し、恐ろしい魔王軍と戦わなくてはいけない。
「ゼン、妖精郷の魔塔に行こう。魔塔主様にご助力を願いましょう。」
「わかった。」ゼンニバルは了承した。
「勇者バーミリオン、きみも一緒に・・・」ゼンニバルがリオンにそう切り出すと、
「俺は行かない」リオンは誘いを断った。何故と一瞬思ったが、リオンの答えはゼンニバルを落胆させるものではなかった。
「俺はまず郷士を目指し、剣を学ぶことにする。そのために州都であるピナシティに向かう。そこで7年間修行し腕を磨く。俺を戦力に加えたいなら7年後にピナシティに来てくれ」リオンはそう言った。」
ゼンニバルは神父に神とペンを借りて、アマリリスに郷士長へリオンの推薦状を書かせた。
「この者は暁の獅子の二つ名を持つ勇者の加護を持つ者です。魔王討伐に必要な人材ですので来る日に備え彼を鍛えるよう求めます。 聖女アマリリス」
どれだけ役に立つかはわからないが何かのハッタリにはなるかもしれない。
7年後の再会を目指して彼らは旅立ってゆく。
ひとりは州都ピナシティの郷士訓練所へ、別の一行は妖精郷の魔塔へ。
あたたかい風は光りあたりに花の香の漂う春到来といった季節だった。




