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6.悪役令嬢、再来。

あれから数分。 

ジャンは席を立ちクラス内に居る友人達へ声を掛けに行ってしまった。

ジャンの迫力から逃れる事のできたアリスはクラスの面々を改めて眺める事が出来た。

このクラスに存在する主要キャラは残る2人。


1人はハルク=エイザック。

彼はこのゲームの攻略対象の1人であり、公式が推しに推しているメインキャラだ。

白く輝く白髪に白皙の肌。微かに鋭い目。深海をそのまま切り取ったような青い瞳。

その姿はまさに、童話に登場する王子さまそのものだった。


そんなハルクはアリスから少し離れた席に座っており、

彼の美貌に吸い寄せられるが如く目をハートにした女子達によって囲まれているのが見える。


「ごきげんようハルク様。ハルク様、今日もお素敵でございます。」

「ハルク様…お久しぶりでございます。」

そんな女子達の黄色い感嘆の声はアリスの席のも届いており、

流石のモテ様にアリスも清々しさを感じすにはいられなかった。


(婚約者がいるにも関わらず、この人気っぷり。

 こんな人の隣に立ち続けているリエルは本当に凄いな…)


そしてその婚約者であるリエルにも感服せずにはいられない。


そうして、アリスが女子達と王子を眺める事3分。

女子達が此方を向いて何かザワザワとして居る。そう思えば皆、みるみる内に青褪めて行くのだ。

此方と言うのは厳密に言えばアリスの左隣りの席を指していて、そこにはエリル=エリシュエルが座っているのだ。


(うん…。聞いてないわ。隣の席なんて…聞いてない。右隣が攻略対象、左隣が悪役令嬢…。

 どんな状況でアリスは過ごしてたわけ?それともまた、何か変わったの?)


そう思いながらもアリスは脂汗を垂らしながら横目でリエルの様子を伺う。

延いては、肝を冷やす事になってしまった。

アリスがもの凄まじい形相で女子達を睨んでいたのだ。

また、人に聞こえない程の声で何かを呟いているのが聞こえる。


「…ちっ。腹立たしい。」


そんなアリスの視線に気付いてか、エリスはハッとした様な表情を浮かべ此方に顔を向ける。

その時分、アリスの冷や汗は一層増え挙動不審となり焦りを隠す事が出来ない。


「‥‥…見ました?」


「いっ、いやいやいやっ。別に…何も。」


答えは否。アリスはしっかりとその現場を目撃し、聞いてしまった。

必死に隠そうとするアリスだが、

エリスの冷ややかな声がアリスの速く脈打つ心拍をより加速させアリスを挙動不審にさせる。

(ヤバい…ヤバい…ヤバい‥‥…。すっごい白々しい返事しちゃった…。絶対バレたっ。)


アリスの冷や汗は更に濁流の如く流れ出す。

しかし、リエルの視線は未だアリスを捕らえて離さない。


(やばい…。逃げたい。席を立とうかなぁ。でもどうせ…。)


アリスが限界を越える寸前、エリスの大きな溜息が漏れ沈黙が破れた。


「まあ、良いわ。見なかったと言う事に致しましょう。」


そう言ってエリスは少し微笑んだ。

その時分。アリスはやっと詰まっていた息が抜け安堵の溜息を漏らした。


「あ、ありがとうございました…。」


そう微笑むと、リエルはまたも何かの意を含んだ笑みを浮かべこう言うのだ。


「でも…まぁ、念には念よね。この一点の曇りも無い私の名声に傷を作るわけにはいかないわよね。」


そう微笑みながら顔を近づけて来るリエルは悪役令嬢そのものの、狂気を感じざる負えない。

アリスは一時の安堵から奈落の底へ突き落とされてしまった。


「あ、いやその…。何も見てないですよ……。本当…。ははっ。」


アリスによる必死の取り繕いも虚しく、リエルはそれを許さない。

彼女はアリスの肩を掴み狂気じみた微笑みを以てアリスに迫る。


「そういえば…昨日。貴方、そこら辺の貴族に絡まれていたわよね?

 あれ…私が止めなかったら…。鼻血だけじゃ済まなかったんじゃ無い?」


(覚えてたのか…。これは、学園追放とかされるのかな?)


昨日アリスを助けたリエルは何処へやら、アリスはつくづくとそう思い

エリスが悪役令嬢らしからぬと思った事を撤回した。

アリスは彼女の無言の圧に押され、返事をせざるを得ない。


「何でもします!だから、学園追放だけはっ!なんとか…。」


アリスは必死に懇願した。今始まったばかりの第二の人生。

楽しむ前に学校を追い出されるなど笑えた話じゃなかった。

そんなアリスを見たリエルは目を丸くさせ、唖然とした。


「何を言ってるの…?私にそんな権限ないわよ。するつもりも無いし…。」


その言葉を聞きアリスもまた、豆鉄砲を喰らった鳩の様に目を丸くした。


「へぇ?追放するんじゃ無いの…?だって、王子様の婚約者だし…。」


素っ頓狂な声で尋ねるアリスを見たエリスは急の吹き出す。


「ぷっ。あんたバカねっ。本当に特待生なのかしらっ。

 この学校は一応平等を謳っているのよ?そんな事したら私の顔に泥が付くじゃない。

 それに、王子の婚約者だからって我儘放題出来るわけないわ。

 王子の婚約者だからこそ王子の顔に泥を塗らない様に、行動を弁えなきゃいけないの。」


お分かり?と言って彼女はアリスに微笑み返す。

だがアリスには疑問が残され、首を傾げる。


「じゃあ、何をすれば良いのですか?」


(追放じゃ無いなら…検討が付かない。)


そう思っていると、彼女はまたアリスの肩を掴み言う。


「ちょっと、お手伝いをして貰いたいのよ!放課後、私の部屋に来てちょうだい。」


リエルは人差し指を口に当て分かった?とアリスに反応を促す。

アリスは勿論拒否権は無いのだろうと察し、こくりと頷いた。


(だから、お手伝いって何だろう。難しい事じゃないと良いけど、)









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