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20.校外学習

 

「ねえ!見てリエル!!凄く綺麗だよ!」


パカパカと走る馬車が体操服姿のアリスとリエルを揺らす。

アリスは窓から前のめりになって流れゆく景色を眺めた。

目の前のには富士山の様な大きな山が重なっていて

高原が広がっている。

そんな素晴らしい景色を前にアリスは胸が高鳴った。


一方、リエルはと言うと少し不安気に窓の外を見つめる。

アリスはリエルの不安げな表情に少し首を傾げる。


(どうしたんだろう?昨日はあんなに楽しみにしてたのに。)


今日は校外学習。生徒間の親睦を深めるのを目的とした

レクリエーションがバルサ山にて行われる。

ただ、この世界にバスと言う物が無いため生徒達は家所有の

馬車に乗って行くのだが....アリスが馬車なんて

持っているはずもなく...。

結果、リエルの馬車に乗せてもらう事にしたのだった。


アリスはリエルの隣に腰掛けた。


「どうしたの?リエル?体調でも悪い?」


リエルは横に首を振った。

リエルの体調が悪い訳ではないと知りアリスはし少し

ほっとしたものの、どうしてリエルが不安気なのか分からず

かと言って無理に聞き出すのも気が引けたため

アリスは声を明るく張って言う。


「今日楽しみだね!ハルク王子とも同じ班に慣れたし

 リエルの恋も今日は上手く行きそうな予感だよ!」



そう言って横目でリエルの様子を伺った。

すると、リエルは大きな溜め息を吐いた。

アリスは自分が何かいけない事を言ってしまった

のではないかとドギマギして息を詰まらせる。


(どうしたんだろう!?変な事言っちゃた?)


だが、どうもリエルはアリスに怒っている訳では

無さそうでただ顔を赤らめる。そしてリエルはそっと

弱々しく呟いた。


「本当に、上手く行くかしら...?」


そう。アリスは驚いた。

リエルがハルクとデートした時以来

ずっと見せて来なかった乙女の表情を映しているのだから。


アリスは拍子抜けと共に

そんな珍しい姿のリエルに可愛らしく思った。


(通りで、今日は何処か気合入っている様に見えたのよ。

    よし!今日は全力でリエルの恋を応援するわ!!)


そうアリスは意気込んで勢いよくリエルの手を取り

自慢気に言った。


「大丈夫だよ!!だってリエルこんなに可愛いもん!

       きっと、ハルク王子だってイチコロよ!」


リエルはいつに無い不安な表情と乙女を思わせる

赤く熱った顔を上げアリスの目を見て呟く。

その表情は幼い少女の様にも見え、それでいて

大人びた美貌をも滲み出している。


「本当に?可愛い?」


(可愛いっ....)


アリスはあまりのリエルの可愛さに目を焼かれ

ただ頷く事しかできなかった。




「じゃあ!私、頑張ってみるわっ!」



(いつもの大人びたリエルも素敵だけど

 こう言う乙女なリエルも可愛いくて好きだな。

         何かいつもより小さく見えちゃう。)


なんて思いながらアリスはリエルを見つめた。


数分後、2人はバリサ山に到着した。

アリス達の他にも点々と生徒達は集まり始めていた。

皆アリス達同様に今日の校外学習に胸を弾ませて

居るようで周りはざわめき立って居る。



その中にジャンとハルクの姿があった。

アリスはリエルの手を取り2人に手を振りながら駆け寄った。

2人も此方に気付いた様で此方に歩みを進めて来る。



「おはよう。リエル、アリス!」


「はよー。」


ハルクは爽やかに、ジャンは気怠そうに2人に挨拶をする。

アリスはもう女子の目など気にする事を忘れ

ただ乙女なリエルを応援する事だけが頭の中を支配する。


「おはようございます!ハルク様、ジャン!」


アリスもハルクに負けじと爽やかに挨拶をした。

ただ、リエルだけは打って変わって控えめに挨拶をする。


「おはよう...御座います。ハルク様..」


しかし、少しはにかみながら彼を見つめるリエルは

アリスですら、ときめいた。


ハルクは何かに気づいた様な素振りを見せたが

直ぐに微笑み呟いた。


「今日はそっちか。」


その呟きは隣に居たアリスにしか耳に入っておらず

リエルとジャンはただ2人で話して居る。

アリスはハルクの一言が気になって仕方が無かったが

先生達が生徒を招集し始めたので、聞くことが出来なかった。


(そっち...?)



こうして、アリス達の校外学習が始まったのだが...。

この校外学習があの様な事件になる事を一同はまだ

知らなかった。












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