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13.5 リエルの異変。



「お腹すいちゃたしねー。 今日は何食べる?」


2人は勉強をした後、揃って夕食を一緒に取る

事が生活の一部に成りつつあった。

そんな友情の進歩にアリスは嬉しく思いつつも

少しくすぐったく感じた。


「そうね。ステーキかしら?」


そう顎に手を当てて考えるリエルを見て

アリスは吹き出さずにはいられなかった。


「えっ。また?昨日も一昨日も食べてなかった?」


アリスはここ3日、リエルと過ごして多くの事に

気づいた。リエルは意外とガサツな事や、飽き性

な事。


そして偶に口調や表情が男らしい所だ。

現に、リエルはアリスに指摘され面倒臭そうな表情

を浮かべて頬を掻いている。


そんなリエルの公爵令嬢あるまじき姿に未だ

慣れずにいた。


(でも、リエルが私に素を見せてくれるくらいには

            仲良くなれたって事よね!!)


そう思いアリスは口角が緩むのを感じた。


「だって、魚とか野菜とかあんまり好きじゃないもの。」


そんなアリスを気にも止めず少し恥ずかしげに

リエルは呟いた。

そう思うとアリスから逃げる様に

リエルは部屋を出て行ってしまった。


「ちょっと待って。」


アリスも急いでその後を追った。


食堂に着くと沢山の生徒で溢れていた。

だが、それでも余裕のある食堂は本当に規格外の

大きさだと心底思うアリスだ。


2人は早々に料理を手にして空いている

席に座った。そうして、目の前の料理に在りつこう

としたその時。


背の高い赤髪の男子と白髪の男子が此方に手を振って

近づく。そう、ジャンとハルクだった。


「よ!良いもん食ってんな?

 俺たちも一緒に食っていい?」


ジャンが人懐っこい笑みを此方に向けて

言う。それに続きハルクも紳士的な笑みを向け

言った。


「勿論、2人が良ければだけどね?」


「うん!全然構わないよ!

 皆んなで食べた方が美味しいしね!」


アリスは快く承諾した。

だが、リエルの応答は無く真顔で固まっていた。

そんなリエルに一同視線を集める。


(どうしたんだろ?もしかして、緊張しているのかも!)


「リエルも、いいかな?」


王子がリエルの顔を覗き込んで様子を伺う。

リアルはそこでやっとハッとした様な表情を浮かべ

我に返って微笑む。


「えっ、ええ。構わないわ。」


そうリエルが言うと全員ほっとした様に

空気が緩む。


そうしてジャンの横にアリス。

向かい合って、リエルの横にハルクという様に

席に座り一同は夕食に在り付く。


そんな中、アリスはピンと来た。


(今こそリエルとハルク様を良い感じにするチャンスでは?)


そう思い、会話を2人に振る。


「そういえば、この前2人で出掛けたんだよね?

                何処に行ったの?」


「そうなんだ。王都の喫茶と露店街かな。

             とても楽しかったよ。」


アリスが白々しくも先日のデートを話題にし

リエルにアイコンタクトを送る。


するとリエルもまたコクリと頷きハルクに続ける。


「そうなのよ!ハルク様とお出掛け出来た事が

            何よりの幸せなんですの。」


「そんな事を言われては照れるじゃ無いか。

 あのドレスを着て私と踊る君を見るのはとても

                  楽しみだよ。」


そういいなが2人は見つめ合って笑い、

その光景をニヤニヤとアリスも見つめる。


そんな場も温まってきた中。

今まで口を開かなかったジャンが口を開く。


「なあ、アリス。これやるよ。」


そう言ってアリスのお皿に乗せられたのは

一切れの人参だった。


(こいつ、嫌いな物置いたな)


アリスはその瞬間

自分の弟に似たような事をされた記憶が

フラッシュバックし懐かしい気持ちで溢れた。

その刹那、アリスはジャンを弟と重ね合わせ言う。


「じゃあ、私もいい物上げる。目閉じて!あーんして!」


ジャンは素直に目を閉じて口を開く。

アリスはそんなジャンの口に先程の人参を放り込む。

するとジャンは瞬く間に顔を歪め、一気に水で流し込んだ。


「アリス!酷いぞ!」


「嫌いな物を人に押し付ける方が悪いのよ!」


そう言って笑っていると、アリスは前からの

視線を感じ其方に目をやった。

するとそこには、先程まで楽しく談笑していた筈の

2人の視線が底にはあった。


「なか良いんだね、2人とも。」


ハルクは暖かい笑みを浮かべ笑って居る。

一方、リエルは面白くなさそうに真顔でアリスを

見つめていた。


(やば!今は2人をいい感じにさせる作戦を

 実行してたのに、私ったら忘れてたわ。)


そう思い再びリエルにアイコンタクトで謝ろうとした時

だった。リエルはその予想に反する行動を取ったのだ。


「それ、美味しそうね。少しくれないかしら?」


リエルはアリスの食べていた料理を指して

言ったあと口を開けて待っているのだ。


「....え?」


アリスは困惑を隠せず、間の抜けた声を出す。

そんなアリスに彼女は顔を顰めてアリスを待つ。


「はい...。」


アリスは何が起こっているのか状況が

理解出来ないままおずおずとリエルの

口にスプーンを差し出す。



「うん。美味しい。」


そう言って悪戯に笑うリエルにアリスは

困惑するしか出来なかった。



そんな光景を見ていた2人も流石に

衝撃的過ぎたのか、唖然とリエルを見つめていた。

リエルはそんな3人にお構い無しの表情で

何事も無かったように自分の皿にある料理を片付けてしまった。









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