子供たちの秘密基地 9
開拓地に全領民の家が建った頃、エレノアがカーロとダンジョンコアに相談を持ちかけた。
「私たちベイリンガル侯爵領のすべての領民が、遠い森の中に引っ越す日が来るかもしれないの。あなたたちは、どうする?可能であれば、あちらにも楽園を造って、ここと繋げられるといいんだけど・・・できないかしら?」
カーロは首を横に振っている。
ダンジョンボスとは言え、まだ若いカーロには、この素晴らしき楽園を離れることなど、考えられなかった。
たとえ、タクトと別れることになっても。
『エレノアさん。引っ越し先の地下深くに私の一部を埋めていただければ、ダンジョンを造ることは可能です、ただし、ここで造った楽園をそのまま再現することは、私の力ではできません。同じように造るにしても、魔力が必要なので、移動先の魔力の濃さによって、ダンジョンの階層数も広さも変わります。そしてなにより、この楽園に住む住人たちを移動させる術を、私は持っていません。エレノアさん、貴女の魔力と知識で、なんとかできますか?』
「ドラゴンの飛竜便で、何回かに分けてみなさんをお連れすることはできるけれど、そういう話ではないのよね?」
『はい。』
「楽園内に、転移石はどのくらいあるのかしら?」
現在使われている、楽園とベルライド侯爵領内の遺跡地下の転移の魔法陣の遠距離バージョンを、転移石も使って作ってみようと、エレノアは考えた。
この楽園を丸ごと転移させるために。
この洞窟ダンジョンでは、魔力さえあれば、魔法石は生まれ続ける。
たとえ採り尽くしても、時間が経てば魔法石は生まれる。
ということで、楽園内の住人たちは、転移石を集め始めた。
別に引っ越さなくてもいいじゃないか、などと言う住人は一人もいなかった。
この楽園周辺の魔力が心地いいのは、ベイリンガル侯爵領に住む人族とドラゴンたちのおかげだと、分かっていたからだ。
転移石を集めると同時に、大きな魔法石にエレノアとドラゴンたちが魔力を込めることを始めた。
魔力電池だ。
いつか来るかもしれないその日のために、ダンジョンコアが鎮座する楽園最下層の更に1階層下で、階層いっぱいに大きな転移の魔法陣が描かれ、魔法陣上には等間隔で転移石と魔力電池が積まれていった。
そして、ついにその日は来た。
「カーロさん、ダンジョンコアさん。今から私たちベイリンガル侯爵領の領民は、ベイリンガル侯爵領内にあるすべての生活に必要な物と共に、開拓した森の中に引っ越しをします。私がここに来るのはこれが最後になります。今ここに、タクトたちが向かっています。テイムを解除するかどうかは、カーロさん、あなたたちに委ねます。それでは皆様、決心がついたら、来てくださいね。」
エレノアが言い終わると、エレノアの目の前に、ダンジョンコアの分身が現れる。
エレノアは、そっとダンジョンコアの分身を両手で受け取り、自分の収納に入れる。
「・・・待っていますから!!」
そう言ってエレノアは楽園を上へ上へと走って行き、表で待っていたテディに乗って楽園を後にした。




