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駆け出し冒険者ゼノ1

初投稿の弊害か誤字脱字がくっそ多いです。見つけたら何らかの方法で知らせてくだせぇ








「じゃ、俺は採集でもしてるから済んだら合図しな。ま、無理だとは思うがな」


馬車に揺られて樹海にたどり着くとそういい残してルーゼンバーグは早速森の中へと去っていった。


(なにが無理だ、ふざけんな)


小さく舌打ちし、地面を蹴り飛ばしてゼノも早速ルーゼンバーグとは反対方向の茂みに入った。ニンフウルフのボスを狩ったのもこの樹海で、ザクス村を拠点としているゼノにとってこの辺りは庭のようなものだ。

茂みを抜けると焚き火や竈の後、そして天幕が張られている。ここは魔物が立ち寄らない場所で、この辺りの冒険者達が狩りの際にはよく使用している野営地だ。張りっぱなしの天幕の中へと入って荷物を下ろすと、ポーチに必要なものだけを移し替えながら、予め水で戻しておいた堅パンをナイフでスライスして口に運ぶ。お世辞にも美味いとは言えないがそれでも腹が減ってはなんとやらだ。いざという時に力が出ないでは話にならない。

荷物を移し終え、今度は背中の真鉄製の愛刀を引き抜いて下ろし砥石を取り出して確認する。いつもなら研ぎにだして、ついでに歪みも直してもらうが今回は売り言葉に買い言葉だった為そんな時間は無かった。


重太刀は刀身が歪みやすいし、刃こぼれもしやすい。振り下ろして獲物を斬るという特性上勢いをつける為に刃のある部分の中程から先端にかけて重りが付いている。このお陰で小型の魔物なら正に一刀両断なのだが、使い方を間違えると重りの遠心力に負けて捻れるように歪む。そして歪んだ刀身では切れ味が落ちるし刃こぼれもする。さすがにそんな獲物で大型魔獣は狩れないだろう。ゼノは念入りに確認しては砥石を当てて丁寧に磨いていく。



「……ふぅ」


四半刻(30分)程かけて愛刀の手入れを終えると天幕を出て、歪みが無いかを2、3回振って確認する。……振った感じ違和感はない。芯がどうなっているかまではわからないが少なくとも使用感に変化は無い。


(じゃあいくか)


カチャリ……と背に刀を戻してゼノは足早に狩場へと向かっていく。

森の隙間から差す日差し。空は晴れあがっていて良い狩猟日和だ。ガサッ……ガサッ…と茂みを抜けて開けた空間に出ると野生の鹿が数匹草を食んでいる。


(鹿か…今はいいや)


食料はある。これが今回の狩りの障害になるならともかく魔物ですらない鹿を狩った所でなんの意味もない。理由のない殺戮は冒険者にとって忌むべき事のひとつだ。

脅かしても可哀想だろうと、ゼノは今の道を迂回して別の獣道へ入って歩いていく。

なだらかな斜面を登り、下り、軽い崖を何回か登る。そして突然ゼノは足を止めた。


(面倒臭いのが居るな…)


フゴフゴ…と鼻を鳴らして周囲を徘徊する人型の猪頭の魔物、キルボアだ。それが確認出来るだけで4頭。だが奴らは10頭程の群れで移動しながら生活している為、茂みにあと何頭かいても不思議ではない。


(どうする……)


倒すのはさほど難しくはない。頭はともかく身体は柔らかいので重太刀ならいくらでもやりようはある。だが、切れば血糊で刃が曇るし仲間が集まってきても面倒だ。


(どかすか……)


ゼノはポーチから卵の様な何かを取り出すとあさっての方向へそれを投げた。投げた物の正体は誘引玉と言って、割れた瞬間魔物の好きな匂いを出してその方向におびき寄せる事が出来る。


フゴ……。


鼻を鳴らしていたキルボア達は誘引玉の匂いに気づいたのか投げられた方向へ小走りに走っていく。今だ!


ゼノは飛び出すと一気に先程キルボア達のいた場所を走り抜ける。走りながら周囲を右に左にと周囲を確認するが気づかれたり不意打ちがくる様子もない。


(巻けたな)


しばらく走り、また遠くに鹿が見えてキルボア達の縄張りを抜けた事を確認した。鹿などの野生動物がいる場所はすぐ近くには魔物がいないというひとつの目安になる。


(つまり…この辺りにもディングスはいない)


付近の開けた場所はあらかた探索し終えている為、残るはあと2箇所だ。1つはこのまま右に抜けた水場、そしてもう1つが左側の……。

ゼノがそう思案して左の道に目を向けた時だった。木々の隙間から上空に赤く上がった狼煙が見える。恐らく先に出発したあのルーゼンバーグとか言うやつが見つけたのだろう。ゼノはその狼煙に向かって一気に走り出した。驚いた鹿が蜘蛛の子を散らす様に走って逃げる。


(悪い!)


心の中で謝罪はしたが今はそんな事を気にしていられない。ゼノははやる気持ちを抑えきれずに真っ直ぐに全力で、目標に向かって走っていった。


















「来たか」


ルーゼンバーグがニヤニヤといやらしい笑いを浮かべながらゼノを見る。しかしそんなことは気にしないでゼノは呼吸を整えながら尋ねた。


「ディングスは!?」


「……あそこだ」


指の刺された方向を見て最初に思った事はデカイだった。最大でも10m程と聞いていたが尻尾の先まで合わせると明らかににそれを超えている。


「デカくないか?」


「……デカい?ディングスの体長に尻尾は含めん。あれは見たとこ7か8m位だから普通のサイズだ」


蛇の様な鱗を持つ赤いディングスを見ながらゼノは喉をゴクリと鳴らす。


「ビビったか?今ならまだ辞めてもいいんだぞ?」


愉快そうにゼノを見て笑うルーゼンバーグ。その小馬鹿にした様な態度にゼノはむかっ腹がたった。背中の重太刀に手をかける。


「ビビるかよ。見てろ、速攻でぶっ殺してやるぜ」


言うとそのまま坂を下りゼノは走った。ディングスは大型の魔物と言っても強さはそこまでだと聞いている。ディングスを狩れて1人前と認められるくらいには、駆け出しの冒険者が最初に狩る大型でもある。


(じっちゃんも村の連中も、こいつを狩ったら俺を見直す!王都にだってきっと行ける!)


ディングスとの距離が縮まる。10m…7m…5m…ディングスはまだこちらに気づいていない。…そして


「うおぉ!」


ゼノは叫ぶとそのままの勢いで重太刀を振りかぶる。ディングスもようやく気づいたがもう遅い。渾身の力で重太刀をその背中に向け、縦に一閃。叩きつけた。


ギャォオオ!…


吠えるディングス。いくらかのダメージは入っただろう。だがそれが自分の想像していたより微々たるものである事は手に伝わった感触で分かった。


(……っ!?)


ゼノが顔を歪ませる。火花が散り、重太刀が弾かれて諸手を上げ腹を晒す格好になった。


(弾かれた!?)


そう分かった直後、ディングスの自分の足ほどもある太い尻尾がしなった。瞬間ゼノは自分の天地が分からなくなっていた。

身体中を地面に叩きつけながら近くの木に衝突する事でようやく止まる。


(くっ……)


脇腹に激痛が走る。おそらく、ディングスの尻尾に吹き飛ばされたのだろう。打たれた鉄製の防具が凹み、ひしゃげている。くるるる……とディングスの鳴く声がして顔を上げると、こちらを向いて上体を上に逸らして喉をふくらませていた。


(やばい!)


歯を食いしばり、ゼノはその場を飛び退いた。直後、自分のいた場所にバシャリと毒液がかかる。


「……っ!」


かわし切れず、毒液が左足に少しかかった。鉄製の防具の表面をボコボコと分解し、隙間から毒液が入った場所が熱湯をかけられた様に痛む。


(早くアンチドーテを!)


ポーチからそれを取り出そうと手を入れる。だが直後そのままの状態で身体が動かなくなる。


ディングスが吠えた。


瞬間、まるで自分の身体が石になった様に動かなくなった。


咆哮


聞いたことがある。大型の魔物がするそれは体内の魔力を一緒に発散する事で獲物を竦ませる効果があるのだと。


(動かねぇ!)


ビリビリと身体に何かが走るのを感じながら必死に動こうと足掻く。指に、手に、足に動けと念じて、 それでも動かない身体を必死に捩る。


(動いた!)


だが、遅い。にゅるんっとゼノの前までいつの間にか来ていたディングスに右の前足で殴られ、吹っ飛ばされる。再度地面を転がって吹っ飛びながら、幼い頃に生き別れた両親の顔が浮かぶ。


(死ぬのか……俺)


地面を跳ね、止まり、仰向けで空を眺めながらそう思った。身体はピクリとも動かない。

両親も冒険者だった。ザクスのじっちゃんと仲が良く、冒険に行く時は決まってじっちゃんに俺を預け、預ける時は2人して目眩がするほど俺の頭をわしゃわしゃした。

そして俺が6歳の時、そのまま帰ってこなかった。


(父ちゃんと母ちゃんも……死ぬ時はこんな風だったのかな)


ズシン……ズシン……と迫るディングス。くるるる……と喉を鳴らし、ゼノが動かない事に気づくと大口を開ける。


(悪いっ……父ちゃん、母ちゃん、じっちゃん……村の皆!)


食われる。そう思い、目をぎゅっと瞑る。


ギャリンッ!と何かにぶつかる音がして自分の最後を覚悟した。


1秒…2秒……3秒……。


しかし、自分の思っていた感触が身体に訪れる事はない。薄目を開けると、大盾を持ったルーゼンバーグがディングスとゼノの間に入り、トドメの一撃を防いでいた。


「ようクソガキ、生きてるか?」


ニヤリとルーゼンバーグは笑う。目をパチクリとさせながら見るゼノを尻目にそのままディングスを盾でいなすと鼻先をバッシュして吹き飛ばす。


キュァァア!


ディングスは短く、甲高い声で鳴くとそのまま後ろに下がり体制を立て直す。


「お前……なんで」


「なんでって、俺が手を出さないと言ったのはお前がやられるまでだぜ?死ぬまでとはいってねーやな」


そう言っておちゃらける様に肩をすくめる。


「つーかお前、重太刀全然使えないのな?あれじゃ振り回してるだけだぜ?」


ゼノは顔をしかめる。


「うるせぇ……槍使いのお前に分かんのかよ」


「分かるも何もお前……いや……そうか」


ゼノの足にアンチドーテをかけながら言葉を返そうとしたルーゼンバーグ。しかし何かを思案すると持っていた大盾をゼノを守るように置き、槍を地面に突き立てると近くに落ちていたゼノの重太刀を拾い、構えた。


「お、おい!」


ゼノが止める。しかしルーゼンバーグはビュンビュンと重太刀を振っている。


「お前、誰かに武器の使い方学んでないだろ?丁度いいや、ディングスにボコられた記念に見ていけよ。重太刀の使い方って奴をな」


そう言うとルーゼンバーグはこちらへと身構えているディングスに走った。


大盾の下でゼノはゴクリと喉を鳴らした。






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