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駆け出し冒険者ゼノ プロローグ

初投稿の弊害か誤字脱字がくっそ多いです。見つけたら何らかの方法で知らせてくだせぇ






「ザクスのじっちゃん!帰ったぜ!」


ミズガルド王都を結ぶ街道から離れ、冒険者達の狩場を抜けて進む事3日。そんな辺境にあるこのザクスの村に若者、ゼノの元気な声が響き渡った。


「ご苦労じゃな」


その声に老人、ザクスが切り株から杖を支えに立ち上がって答えると、皺の深い顔をゼノに向けた。


「ニンフウルフのボスを倒したか」


「へへっ」


鼻を擦り、ゼノは証拠に剥ぎ取った素材の1つ《ニンフウルフの大牙》をザクスに差し出した。それをむんずと掴むとコンコンッと軽くノックをしたりジィっと見つめて確かめる。


「偽物じゃねーよ」


「疑っとらんよ。ただ癖で素材の善し悪しを確かめただけじゃ」


「冒険者だった頃の、か?」


ゼノは笑った。

このザクスのじじいは昔、なんでも大層名の知れた冒険者だったらしく、その報奨でこの村周辺の自治権利を当時のミズガルド王に与えられたらしいが、ゼノや村で生まれ育ったものは皆疑っている。村の名前にザクスと入っているからある程度は本当なのかもしれないがどうせ有名な冒険者の荷物持ちでもしてて、そのおこぼれに預かったのだろうと邪推している。


「で、じっちゃん。次は何をしたらいいんだ?」


「ゼノ、そう焦るなて」


ザクスは見ていた素材を放って渡すと杖でゼノの足を軽く叩いた。


「帰ってきたばかりなんじゃから広場でなんぞ食おう」


杖をつきながらひょこひょこと歩き出す。ゼノも頭をポリポリとかくとその後ろへついていく。


ザクスの村は辺境にあってそれなりに賑わっている。ゼクスの名声に惹かれてか引退した冒険者や現役の者達が集まり、その彼らの金を狙って商売人達も集まってくる。なにせ冒険者はよく稼ぐ。称号持ちともなれば稼ぎは貧乏貴族など歯牙にもかけない程だ。


ザクスは広場の端にある大きなテントに入った。ゼノもよく利用する酒場兼食堂だ。


「あら、ザクスおじぃにゼノ坊!いらっしゃい」


タバコの煙と酒の匂いが入り交じった冒険者ばかりの店内で、給仕のリーンが愛想良く迎えてくれた。ザクスはいつも通りオークの厚切りステーキ2つとパンを2人前、それから果実水とエールを頼んで奥の円卓の席へと向かう。なぜかこの円卓の席はいつも空いていて、ゼノも1人の時に座ろうとしたがリーンに止められ、周りの冒険者達の咎めるような視線から、ザクスの特等席なんだと今では思っている。多分、村の長的な権力で作らせたのだろう。ふてぇじじいだ。


席につくとリーンがすぐに果実水をゼノに、エールをザクスの前に置く。ザクスが人好きのする笑みを浮かべながら酒を口から迎えにいって啜る。


「…っあ〜、美味いのう」


その様子を見ると高名な冒険者だったなど絶対嘘だとゼノは思った。


「……エールなんか苦いだけだぜ」


果実水の爽やかな味わいを感じながら肘をついて言う。ゼノからしたらエールなんてのは苦いだけの水だ。飲むに値しない。


「はい、お待たせ」


じゅわぁぁ…と鉄板の上で音を立てる極厚のステーキが2枚とパンのバケットが運ばれてテーブルに置かれる。


「おっ!きたきた!」


ゼノは舌なめずりをするとパンを取り、ステーキに刺さったナイフで縦に半分に切るとステーキを挟んでかぶりついた。


「肉汁垂れとるぞ」


「ふがふが…」


「食い終わってから喋れ」


ザクスは懐から布切れを取り出すとゼノの鉄製の防具に垂れたそれをサッと拭いてやる。周りで見ていた他の客や冒険者がそれを見て笑っている。嫌な笑いじゃない、微笑ましいものを見る目だ。吹き終わるとザクスもステーキにナイフを突き立て切り分けずにかぶりついてブチィっと引きちぎるように食らう。年寄りとは思えない食欲とワイルドな食い方だ。


「…なぁじっちゃん」


「んん?」


しばらくお互い黙って食事をしていたが半分ほども食べた所でゼノはザクスに切り出した。


「そろそろいいんじゃねぇか?」


「何がじゃ」


「だから、独り立ちの件だよ!」


瞬間、周りがザワついた。そして少しの間と共にヤジが飛ぶ。


冒険者を甘くみんな!……ガキのお前にゃまだ早い。等様々な言葉で囃し立てるそれに向かってゼノは睨みつける。だが彼らはニヤついて肩をすくめると「おーこわ」と茶化した。


ガキ?甘く見てる?それがどうした。俺は14にしてこの背中の重太刀で、ニンフウルフのボスまでを倒したんだ。お前らが14の時にそれができたか!そんな思いで立ち上がろうとするゼノ。しかし足をペチンとザクスに杖で打たれると、チッと舌打ちをして座り直した。


「やれやれ……ゼノ、お前さんそんなに早く独り立ちして王都に行きたいのか?」


「もちろんだ!」


ゼノは昂る気持ちを抑えきれず両拳でバン!と机を打つ。


「街に行けば、組合に入れる!組合に入ればザクスの村の依頼以外でも狩れるし、見たことない魔物だって狩り放題だ!それに、この前行商人に聞いたんだ。王都で最近称号持ちになった4人の話を。ルーク、バルド、エレン、ツバサ。アイツら昔は今の俺よりずっと酷かったらしいから、俺ならもっと早く称号持ちになれるぜ!」


ガタン!


この言葉に先程ちゃかしていた連中が殺気立って立ち上がる。だがゼノは引かずに逆に大声を張り上げた。


「気に食わないか!でも事実だぜ!俺の歳で冒険者としてある程度立ち回れる奴が何人いる!」


だがその叫びは届かなかった。辺りの冒険者達は皆殺気立ってゼノに睨みを効かせている。だがザクスに気を使ってかいきなり殴り掛かるような真似はしない。膠着状態が場を支配する。


「やめとけ」


すると奥の席で1人飲んでいた男が立ち上がった。歳は30くらいだろうか。冒険者として最も脂の乗った年頃で、紅いワイバーンの甲殻のあしらわれた蒼く光る金属鎧で全身を覆い、背には同じくワイバーン素材の槍が、机には大盾が立てかけられてる。男はゼノと冒険者達の間に割って入る。


「いちいちガキの言う事に殺気立つな。冒険者の格を疑われるぞ」


「なに!?」


ゼノが反発したが男はそれを無視して辺りを見渡す。分かる者には分かる、この男が装備からしてただ者では無い事が。その証拠に殺気立っていた冒険者連中もチッと舌打ちして大人しく席につき直した。


「悪いの」


ザクスが男に礼を言う。男は照れくさそうに頭をかいた。


「止めてくれ。英雄ザクスと呼ばれたアンタに頭を下げられたんじゃ堪らない」


男は身なりを整えると改まってザクスに名乗りをあげる。


「俺の名前はルーゼンバーグ。一応称号「先駆者」の資格を持つもんだ。あなたに会えて光栄だザクス」


「称号持ち!?」


ゼノが声を上げたが2人は無視して話を続ける。


「ほう、称号持ちじゃったか。じゃが円卓の席はワシが来た時空いとったぞ?」


「おいおい、あんたを差し置いてこの村に1つしかない円卓に座ろうなんて奴はいないよ。他の冒険者だって同じ気持ちさ」


すると何人かの冒険者がこちらに向かって手を振っている。彼らも称号持ちなのだろう。

今まで気づかなかったがこんなに身近に何人もの称号持ちがいた事を知り、さらにゼノは驚いた。


「そうか、それは気を使わせたの。じゃが礼はいわせてくれ。このままじゃと収拾のつかん事になっとったかもしれん。ありがとうルーゼンバーグ」


「いやいや、ほんと止めてくれ。悪いのは全部そこにいる坊主なんだから」


そう言ってルーゼンバーグはゼノを睨みつけた。


「なんだよ」


びびりながらもなんとか返事をするゼノ。ルーゼンバーグはその表情のままゼノの顔面に拳を叩きつけた。景色が突然ひっくり返り、近くの空いている机に吹き飛ぶとそれらを巻き込みながらゼノは転がった。ルーゼンバーグはそれを見ながら言う。


「これは酒場の連中の代弁だ。お前のようなよちよち歩きが称号なんぞ軽々しく口にするな。酒が不味くなる」


ザクスはなんともいえない面持ちでそれを見ていたが止めるような素振りはない。ただ黙ってエールを飲む。


「……てめぇ」


ゼノは口元から垂れる血を右手で拭うと立ち上がり、ルーゼンバーグへと突っ込んでいく。だが簡単に足をかけられ、転がされる。また立ち上がろうとしたが今度は背中を踏みつけられた。


「まだ分からねぇのかガキが。てめぇがこの程度で済んでるのは英雄ザクスがいるからだ。そうじゃなけりゃ今頃簀巻きにされて酒場の外に捨てられてるぞ」


そう言ってポーチからタバコを取り出すと近くにある灯りの火でつけて紫煙を吐き出す。


「それと独り立ちだったか?今の様子で?止めときな、死ぬだけだ」


「うるせぇ!俺は死なねぇ!大体、死んだって迷惑は誰にもかからねぇだろ!」


「かかるんだよバーカ。それが分からねぇからお前はよちよち歩きなんだよ」


「何ぃ!?」


足の下でジタバタと暴れるゼノ。うっとおしかったのかルーゼンバーグは足を上げ、立てるようにしてやる。


「いいか、今のお前じゃ王都辺りの依頼……特に大型の魔物なんかは狩れないし役不足だ。しばらくはゼクスさんに付いて学べ。この人についてりゃ間違いない」


「何が役不足だ!俺なら大型の魔物だって今すぐ狩れるぜ!」


「行商人に聞いたツバサの話みたいにか?」


「そうだ!」


立ち上がりながら言う。

ツバサの話。これは最近称号持ちになったルーク、バルド、エレン、ツバサがその打ち上げで昔話をした事に起因する。エレンのフィンバルレインと堅パンの話、ルークのマグマ大結晶運搬の話、バルドの小型魔獣大騒動の話、そしてツバサの初依頼大型魔獣単騎討伐の話だ。


駆け出しの頃、重太刀使いのツバサは、初依頼で運悪く大型魔獣のディングスに出会ってしまった。ちなみにディングスとは赤い身体と青い尻尾をもつ5〜10mのトカゲだ。


普通の冒険者なら依頼を中止し、すぐに組合に報告するのだがツバサは違った。なんと返り討ちにしてしまったのだ。そしてその素材も一部分を除きほぼ完璧な状態で討伐したらしく、すぐにその素材で防具を作ったという。しかもこれまで1度として冒険者の心得や武器の扱い方などを誰かに学んだ事すらないというからめちゃくちゃだ。

素直に感心したと同時にゼノはこの話を聞いて思った。同じ重太刀使いの、しかも辺境である程度活動している自分ならもっと早く名をあげられるのではないかと。

元々王都で早く活動したいと思っていた時にこの話だ。ゼノは自分の内から溢れ出すやる気を抑えられずにいる。


ルーゼンバーグはハァ……とため息をつく。本物のバカを見る目だ。すると煙草を酒場の中心で焚かれている囲炉裏の中へと放り、ポーチから丸められた羊皮紙を取り出して広げるとゼノに見せる。


「じゃあやってみろよ」


羊皮紙の色は討伐依頼を示す赤色。ゼノは内容を確認する。


「コノ魔物ノ討伐を要請ス……ディングス一頭、場所ザクス村南西ノ樹海。報酬金貨24枚……まじか!」


読み終えるとゼノは目を輝かせる。


「俺が受けた依頼だがお前がやるっていうならやらしてやるよ。組合の依頼だから同行はするが俺はお前がやられるまで一切手を出さない事を約束してやる。やるか?」


「勿論だ!」


「お、おいゼノ……」


ザクスが止めようと声をかけるが聞いていない。もう既に自分の世界に入ってしまっている。


「ザクスさん、いいじゃねぇかやらせてやれよ」


そんな声が成り行きを見ていた冒険者から出た。


「こういう世間を知らないバカは1度痛い目を見なきゃ分からないのさ。生きるか死ぬか、そいつは小僧の運次第だがな」


どっ、と酒場中で笑いが起こる。

無論彼らはゼノが上手くやるなどとは思っておらず、先程の意趣返しでそう言ったに過ぎなかったがゼノはそんな事どうでもよかった。残りのステーキサンドを果実水で流し込むと即座に入口に向かって走っていった。


「おい、ちょっと準備してくるから待ってろよ!いうかポーションを買い足したら直ぐに戻るからな!」


ゼノの言葉を聞いてルーゼンバーグはニヤリとする。


「あぁ、せいぜい無駄な準備を済ませてくるんだな」


「言ってろ」


心地よい風が頬をなでる。ゼノは逸る気持ちを気持ちを抑えながら、村の商店へと走っていった。



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