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エレンのお話 ~完~

初投稿の弊害か誤字脱字がくっそ多いです。見つけたら何らかの方法で知らせてくだせぇ

「…………!!」


遠くで何かが聞こえる。フィンバルレインの声ではない。これは………


「……ヴァルガジン?」


エレンは伏せていた顔を上げ、声のする方を見る。すると普段は温厚なヴァルガジンが鬼の形相でこちらに銃口を向けながら走って来るのが見えた。


「えええええ!?」


塞ぎ込んでいたエレンも流石にこれには驚いた。え、何?私ヴァルガジンに殺されるの!?すぐにその場から立ち上がると両手を上にあげ、撃たないでくれという意志を示す。


「ごめんなさいヴァルガジン!!お願いだから殺さないで!!」


しかしヴァルガジンはまだ何かを叫びながらこちらへと走ってくる。


「バカ!!横だ!!」


横?エレンがヴァルガジンの言葉に疑問を抱いたその瞬間だった。何かが横から襲いかかり、天地の景色がひっくり返った。


(なっ!?)


ガサガサと転がりながら、肩に鋭い痛みが走る。鼻につく獣臭、時折見える灰色の毛、ニンフウルフだ!


「くっ」


エレンは回転が止まると即座に腰のナイフを抜き、ニンフウルフの横腹に突き立てる。


キャウン!


エレンの肩に噛み付いていたニンフウルフが声を上げて距離をとる。肉を貫いた感触が手に伝わったがそこまで深く刺さった感じは無い。エレンはナイフを構えてニンフウルフと対峙する。魔銃は取りつかれた時に落としたので武器はこれだけだ。


(あの腰の傷跡……私が仕留め損なった奴だ)


あの時しっかりとヴァルガジンに報告していれば……後悔先に立たずと言うが正にそれだった。


バスン!


身構えていたエレンに飛びかかろうと腰を落としたニンフウルフ。しかしそれはヴァルガジンの放った一撃によって横へと吹っ飛びそのまま動かなくなった。


「無事かい!?」


ヴァルガジンが気遣う様な様子でエレンへと問いかける。エレンは頷くと直ぐに下を向いた。


「ごめんヴァルガジン……私……」


「いいさ、君がこの依頼についてきたいって言った時になにかあるのも、撃ち漏らしがいた事もわかってたからね」


「え?」


なんで?と言いたげなエレンにヴァルガジンは微笑んだ。


「エレンは嘘をつく時敬語になるからね。分かりやすいのさ」


どうやらそういう事らしい。


「それよりまだ依頼の最中だ。フィンブルレインを」


そこまで言ってエレンの目の前で水の柱が飛んできてヴァルガジンが吹っ飛んだ。



「ヴァルガジン!?」


エレンがそう言うと同時に、ォォォォアアアア!!!という咆哮が響き渡る。見るまでもない、フィンバルレインだ。エレンはヴァルガジンとこちらに向けて突進してくるフィンブルレインを交互に見る。


「けほっ……エレン、君は逃げろ」


口から血を吐きながら言うヴァルガジン。エレンは泣き顔で首を横に降る。


「やだ!やだよ!ヴァルガジン!!」


ヴァルガジンが今死にかけているのは間違いなくエレンのせいだ。事実フィンブルレインの身体中は傷だらけ、額からは血を流す様子を見るにあと1発でケリがついていたはずなのだ。

絶対に引けない。ヴァルガジンが死ぬとしてもエレンも一緒に死んでやる腹積もりだった。


ドスン!ドスン!


地響きを立て、涎と血を撒き散らしながら死が迫ってくる。


私を殺しかけた。


フィンバルレインが!


「ばぁぁぁあああああ!!!」


「やめろエレン!」


涙が止まらない。鼻水もヨダレも。怖い怖い怖い怖い死にたくない!!


武器はない。ポーチの中に手を入れる。吹っ飛んだ時に落としたのだろう、魔力を込めた弾もない。でも引けない!!今は引く事が死ぬよりも怖い!!

手に持ったナイフを投げる。弾かれる。ポーチの中に辛うじて残っていたものも全て投げる。ポーション、アンチドーテ、火打石。

何個かのアイテムにはなぜか魔力が籠っていて信じられない速度で飛んでいったが、硬さが足りず、砕け散る。


もうフィンバルレインと10mもない。

頭が、顔が、そして死が近づいて……。


……コツン。


その時ポーチに手を入れていた指先が硬い何かに触れる。しかもこの感じ、魔力が篭っている!!


ギャォォァァァァア!!


「ぁぁぁぁぁあああ!!」


エレンはフィンバルレインの咆哮と同じように自らも咆哮し、相手の血が出ている額にそれを投げつけた。


ビュゥン!!


魔銃を使用した弾とは違い、肉眼で確認できる速度ではあるがそれでも十分な加速を伴ってそれがフィンバルレインの傷口に吸い込まれていく。


ブチュリ!!


耳障りな音と共にその硬いナニカがフィンバルレインの視界を、感覚を、脳を破壊する。瞬間その身体は途端に力を失って崩れ落ち、突進はエレン達の鼻先1m程の場所で止まった。


「……やった…の?」


ストンッとその場に膝をエレン。その顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、少し失禁もしていた。


ヴァルガジンはポーチからポーションを取り出して飲む。


その目は信じられない光景を見たかのように見開かれていた。



















「で、その投げたのが硬パンだったと?」


エールの代わりを貰いながら、笑いを堪えた様な表情でツバサが尋ねる。


「違います。それは硬パンじゃありません!!この話は嘘!!事実無根です!!」


「あ!今エレン敬語使いましたよ!これ嘘ついてます!」


バルドが指摘するとうっ!と耳まで真っ赤にしてエレンが俯く。レイモンドは爆笑し、ルークは席を立って走り出すと


「冒険者のエレンは昔、硬パンでフィンバルレインを討伐したらしいぞ!!」


と叫びながら喧伝する様に酒場の中を走り回った、しかも


「おい、エレンが硬パンでフィンバルレインをたおしたらしいぞ」

「おい、エレンが1人で硬パンでフィンバルレインを殴り倒したらしいぞ」

「おい、エレンが1人で硬パンでワイバーンを殴り倒したらしいぞ」


とさっそく酔っ払い共によって尾ヒレが付きまくっている。フィンバルレインの話だけに。


エレンは頭を抱える。明日から自分がなんと呼ばれるのか……。


でも懐かしい話だ。あの後しばらくヴァルガジンに付いて狩りを学んだが、ヴァルガジンはある日突然「独り立ちの時」と言う訳の分からない置き手紙と共に突然姿を消した。

エレンは酒場中に響くエレンコールを無視し、レイモンドに尋ねた。


「あの…レイモンドさん。ヴァルガジンはその、元気にしてましたか?」


するとレイモンドはニヤリとし、エレンに言う。


「そういうのは、自分で見つけて確認しな。冒険者だろ?」


一瞬呆気に取られる。そしてエレンもニヤリとし、頷いた。


そうだ。私は冒険者、手に入れたいものは自分で手に入れてやる!

初心に返り、その目に爛々とした光が灯る。







エレンは明日から訪れる称号持ち冒険者としての新しい日々に、胸を高鳴らせた。


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