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エレンのお話2

初投稿の弊害か誤字脱字がくっそ多いです。見つけたら何らかの方法で知らせてくだせぇ

「エレン!」


ヴァルガジンの叫びにエレンはハッと我に返る。初めての大型の魔物に圧倒されて呆気に取られていたが、エレンも冒険者だ。すぐに頭を切り替え、その場を走り出す。しかしその歩みは、予想外の一手により阻害された。


……ォォォォォオオアアアアア!!!


フィンバルレインが吠えたのだ。

その咆哮を聞いた瞬間まるで金縛りにでもなったかのように身体が動かなくなった。


(嘘でしょ!?何で!?)


足をもつれさせ走っていたそのままの勢いで地面を転がる。エレンの冒険者生活でこんな現象は1度としてない。


(早く…立たなきゃ…逃げなきゃ……早く、早く早く早く早く!)


エレンは必死に身体に力を入れる。立て!と自分を言い聞かせ言い聞かせ言い聞かせる。


ゾクリ…


背中を言いようのない悪寒が走る。背を向けているので確認は出来ないが、おそらくフィンバルレインがこちらを見ている。自分は標的にされたのだ。

言いようのない恐怖に支配され、その場を離れようと必死に足掻く。足掻いて、もう身体が自由に動く事に気づいた。


「っぁぁああ!」


エレンは喉から声にもならない声を漏らしながらその場からゴロゴロと転がって離脱する。瞬間、自分が先程までいた地面にフィンバルレインの頭が突き刺さるのが見えた。


「走れ!!!」


ヴァルガジンが叫ぶ。その声は正直届いて居なかったがエレンは生存本能に従い、立ち上がり走った。


「ちっ」


ヴァルガジンは舌打ちする。まさか勝気な自分の弟子が呆気に取られて固まるなど想像していなかった。彼は即座に構えた銃の引き金を引く。込められた弾は魔物用の弾だ。


ガチンッ!


発射された弾はフィンバルレインを貫く事はなく、鱗の下に打撃痕の様な内出血をさせるに留まる。これは予想通りだ。


生体エネルギーが魔力と呼ばれる所以。それは大型の魔物など、一定の強さを持つ魔獣が生体エネルギーを身体に纏わせたりそれを利用した攻撃をする事からそう呼ばれる。魔物の力、ゆえに魔力だ。

だから大型の魔物の素材で作られた防具や武器は強力だし市販の発動体よりもより高品質なのだ。


ヴァルガジンは即座に弾を込め、先程作った内出血の後に向けてまた発射する。こうやって何度も同じ所を狙い、傷口を広げて消耗させて倒すのが、大型の魔物を倒すもっともオードソックスなやり方だ。


ガチン!ガチン!


2発立て続けに同じ場所に被弾すると内出血が広がり、鱗にヒビが入る。フィンバルレインは苛立たしげに喉を鳴らすとヴァルガジンに向き直り口を開けた。


(ブレスか!)


即座にそう判断し、魔銃を抱えるとその場を飛びのき、フィンバルレインを中心に円を描く様に走る。


ピュン!


その音と共にフィンバルレインの口から射出された高水圧の水の柱が先程までヴァルガジンのいた位置の木を貫通する。そしてそのまま首を横に降るとその柱を薙ぎ払った。


「おっと」


ヴァルガジンは上体を前に仰け反らせしゃがむと前転して躱す。そしてフィンバルレインの目に向けて引き金を引く。


ガチン!


しかしスコープで狙いを付けた訳でもないので狙い通りにはいかず、目の上の辺りにまた新たな内出血を作った。鈍い痛みが走ったのだろうフィンバルレインはブレスを中断し首を左右にプルプルと振る。その隙にヴァルガジンも銃をコックし弾を込める。


(僕の発動体3発で鱗にヒビ。4発で貫けるから通常個体か……上位種じゃなくて良かった。)


頭の中で過去の経験からそう結論を出す。見た目に変化はないが保有する魔力量が明らかに高い上位個体の時がある。今回は杞憂だったがもしそうなるとかなりの長期戦を覚悟する可能性があった。


(ポーチには30発事に纏めた弾袋が2つと6発。装填された1発と合わせて67発……十分だね)


ヴァルガジンはニヤリとするとフィンバルレインの突進と共にまた動き出す。激戦ははじまったばかりである。










「はぁ……はぁ……」


エレンは近くの茂みに身を潜め、身体を恐怖に震わせていた。



今日ほどそれを身近に感じた日は今まで無かった。圧倒的で絶対的にも思えるその恐ろしさに、身体がまるで自分のものでは無いかの様に言う事を聞かなかった。


「そうだ……周り……警戒して、ヴァルガジンの援護を……」


本来を役割を思い出し、震える手で銃に弾を込めようとするが上手くいかず取り落とす。涙が出た。


何が認めさせるだ。こんな風にびびって身体を震わせて、求められていた役割すらこなせない。ヴァルガジンはきっと失望しているだろう。悔しい……惨めで情けなくて、自分がまだまだよちよち歩きの冒険者もどきでしかないこの現実が、遠くに見えるヴァルガジンの踊るように滑らかなフィンバルレインとの立ち回りが、全てが自分にはまだないのが悔しい。


ねぇ、君名前は?僕に師事して見ないかい?


初めてヴァルガジンにあった時のことを思い出す。ヴァルガジンは何故かたくさんの弟子入り志願者を押しのけて、組合の外で絶望ししゃがみこんでいる私を弟子にした。


うれしかった。


その期待に答えたくて認められたくて、私は今日まで頑張ってきた。でも……


「きっと……もう終わりだわ」


エレンは塞ぎ込んだ。まるでヴァルガジンに師事する前のように。

そしてそのせいで、今自分の犯したミスの代償が近寄ってきたことに、彼女はきづけなかった。










ブシュッ!


ァァァァァアアアアッッ!!!あれからどのくらい経ったか。67発あった弾丸の残りは20を切り、フィンバルレインに鱗を砕いて貫通した跡がいくつもある。今も先程の眉間の内出血痕の鱗を砕いた所だ。


(上手くいったね。後は頭の剥がれた位置に直接撃ち込んで終わりかな)


命のやり取りである為楽勝……などとは口が裂けても言えないがヴァルガジンにとってはこの程度、毎度の事だ。周囲の様子を伺う余裕は十分にある。彼は弾を込めながら先程自分の弟子が駆け込んだ茂みへと目を向ける。


(ありゃりゃ、完全に塞ぎ込んでるね)


エレンを見て苦笑する。まるで彼女と初めて会った時の様だ。まぁ気持ちはヴァルガジンも分かる。大型の魔物との初めての対峙、それも初っ端からあんな死ぬような思いをしたのだ。あぁなっても当然だしヴァルガジンの時はもっとひどかった。


(でもエレンなら大丈夫か)


そう結論する。もちろん多少のフォローが必要だと思うが、彼女はきっと立つだろうと半ば確信していた。それはヴァルガジンがエレンを弟子にする際のやりとりに起因する。














初めてエレンを見た時、実はヴァルガジンはエレンを弟子にする気などさらさらなく、称号持ちという名声に群がった弟子志願者の新米冒険者の弾除け代わりに使おうと考えていた。役割を終えて破門したとしても手切れ金を幾らか渡せば問題ない、その程度の認識で声をかけた。


「ねぇ、君名前は?僕に師事して見ないかい?」


称号持ちの冒険者がわざわざ声をかける。断る理由はないはずだとヴァルガジンはそう思っていた。しかし返ってきた言葉は自分の期待したそれとは全く逆の意味だった。


「やだ」


え?なんて?


聞き間違いかと思い、再度同じ言葉を繰り返すヴァルガジン。しかしまた、帰ってきた言葉は「いやだ」の一言だった。


「なんで?見たところ君は冒険者になりたいんだろう?でも扱う武器に適性がない、違うかい?」


「そうよ」


「……ならなんで?魔術師に適性は関係ない。体内エネルギーの扱い方を教えてくれる師と努力があれば冒険者としてやっていけるんだよ?」


ヴァルガジンはこの時既に弾除け云々の考えは頭からすっかり抜けていた。ただ純粋な興味からこの質問をせずにはいられなかった。


「…誇りよ。私はスラムで生きてきた孤児。本質を見抜く目はあるつもり。貴方の目は私を舐めていた、だから私は貴方の弟子にはならない」


エレンの紡いだ言葉に、ヴァルガジンは目を見開く。確かにそうだ、僕は最初彼女を舐めていた。自分がさも上等な人間の様に振る舞い、組合の外で項垂れている彼女を自然と下に見ていたのだ。


誇り……この言葉を聞いたのは久しぶりだった。そして今自分に弟子入りを志願しようとしている冒険者達には決してないものだ。

ヴァルガジンは頷くと自分の周りにいる弟子入り志願者の中で、1番ガタイのいい男を見繕うとその男に向かって歩き出した。


「僕を思いっきり殴ってくれ」


男はいきなり言われた言葉に目を丸くしたが、ヴァルガジンが早く……としきりに急かすのでこれも弟子入りに必要かもしれないと思い拳を振りかぶり、ヴァルガジンの左頬に叩きつけた。


ガシャァアン!


と近くの机を巻き込み音を立てて吹っ飛ぶヴァルガジン。周りにいた他の冒険者たちも野次馬根性で集まってきた。


(痛っ……たぁ……)


ヴァルガジンは立ち上がると口の中でコロコロと転がる歯をぺっと吐き捨てる。そしてフラフラとおぼつかない足取りで先程の彼女の前に膝をついた。


「……本当に申し訳なかった。君の言う通り僕は君を舐めていた。正直に言うと、弟子入りにくる志願者がうるさくてその弾除け代わりに使おうとしてたんだ」


恥ずかしい、称号持ちの冒険者とは思えないゲスな発言を聞き、志願者達の顔が歪む。でもヴァルガジンは、正直に言わなければ本当の謝罪にならないと、失礼だと思っていた。なにせこれからまた改めてお願いがあったから。


「僕の名前はヴァルガジン、良ければ君の名前を教えてくれないか?」


「……エレン」


エレン、この子しかいない。

ヴァルガジンはそのままエレンの前に手をつき頭を下げる、土下座だ。


「エレン、お願いします。僕の弟子になって下さい」


この子には才能はないかもしれない。でも最も大事なものを持っている。もしまた断られても、何度でも頼むつもりだった。


「…ひとつだけ条件が」


「条件?」


ヴァルガジンが顔を上げるとエレンはにっこりとして言った。


「ヴァルガジン…って呼んでもいい?」














こうしてエレンはヴァルガジンの弟子になった。


そんな彼女だ。今は泣くかも知れない、葛藤も絶望もあるかも知れない。でもきっとその誇りが冒険者としてのエレンが、エレンを立ち直らせて成長させるだろう。


クルルルル……


(おっと、こんな事を考えてる場合じゃないね)


フィンバルレインの唸り声でまた気を引き締める。油断しきっていた訳では少し気を散らしていた。エレンの事を考えるのはこいつを仕留めた後にしよう。そう思い直し、最後の一撃を頭に撃ちこもうとした時に、それをヴァルガジンの目端が捉えた。


(あれは……ニンフウルフ?)


腰の辺りに傷があるのだろう、足取りが少しひょこひょことしている。そしてそのニンフウルフはエレンに向かって小走りながら加速した。


(まずい!)


「エレン!!!」


大声で叫ぶ。しかし全く聞こえていないのか無反応だ。


(まずい……まずいまずいまずいまずい!)


ヴァルガジンはフィンバルレインの事など忘れてエレンの方へと走り出した。




頑張るんでブクマ、高評価、感想おなしゃす

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