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駆け出し冒険者ゼノ7 ルーゼンバーグの過去

決戦始まりました。予定ですが3話分位あとつづきます。


初投稿の弊害か誤字脱字が多発しています。見つけたら何らかの方法でしらせてくだせぇ









雲の上を飛びながら、その生物は湧き上がる欲求を抑えられなかった。前回食らってから幾年の年月が過ぎただろう…あの猿も増えた頃だ。


あの猿は弱い。だが頭が良い。


その知識は、自分の兄弟とも言うべきものとの戦いで必ず役にたつ。奴らを喰らう為に、自らの力を高める為にあの猿は役にたつ。


「チエヲ…」


喉から唸り声と共に言葉が出る。



生物は猿達から、風刃竜ウェンパルカムイと呼ばれていた。



















ヒュルルルル……





その音を聞いたのは、城壁の上で備えていた1人の冒険者だった。雨の音に混じり聞こえる風を切るその音に冒険者は物資を運ぶ手を止める。


彼は身構えた。鐘の音は聞いている。だが、遠くを見渡してもそれらしい姿は無い。しかしそれでもこの風切り音はどんどんと音を増して……


「 上か!! 」


直後、彼のいた場所が轟音と共に弾けた。土煙が上がり、近くにいた他の冒険者達が風圧で吹き飛び、そして……


オアァァァァアァア!!


咆哮が、風の刃と共に周囲に広がった。














「あそこか!!」



鐘の音を聞いたバッシュ達は大通りを走りながら、音を立てて崩れた城壁へと視線をやる。そして直後に、その場の全員の身体がすくみあがった。


咆哮。


大型の魔獣との戦闘経験のあるものなら、その現象が何によって起こるかをよく理解している。だが城壁から今いるこの場所はまだ300mは距離がある。


それなのに硬直現象が起こった。


その事実に、バッシュレイラ含む全員が言い様の無い恐怖を覚えた。今まで俺達が戦ってきた奴らの何体…何十体…いや何百体分だ?どれだけの魔力を保有していたらそんな事が出来る。


硬直は既に解けている。


だが、全員の足は重かった。止まることは無かったがそれでも先程の様に走っていく事は出来なかった。


恐怖、警戒、焦り、使命感。

様々な感情が脳裏を巡る。


全員が身構え、いつでも武器を取り出せる様にして進んだ。進みながらも土煙の止んだ城壁の上から視線を外す事は無かった。


輝いていた。

比喩でも何でもなく、内包する魔力によって薄緑の甲殻が、鱗の1枚1枚が、20mを超える全身が薄く光を放っていた。

綺麗だ。美しいと、あれ程完璧な生物を今まで目にした事は一度としてなかった。


種として負けていると一瞬で分かった。

その姿形がお前達は劣等生なのだと、逆らうなとありありと告げていた。


「ぁぁぁああああっ!!」


突然レイラが吠えた。バッシュ以下全員が我に帰る。帰ってから、知らないうちに呑まれていた事に全員が気づいた。


「気持ちは分かる!でも私達は1人じゃない!皆であいつを追い返す!追い返して明日を!明後日を!未来を!皆で迎えるのよ!」


ォォオ……オオオオ!!


雄叫びが上がる。既に全員が奴を討てるという気持ちは捨てていた。ただ追い返すと、人の怖さをありありと奴に刻み込んでやると、その一心の気持ちを固めた。固めて、前を見据えた瞬間だった。


ジロリ…と。奴の目とバッシュは目が合った気がした。正確にはバッシュは距離があったので分からない。ただ自分の今までの経験が向こうがこちらを捉えたのだと、何かが来ると判断した。ウェンパルカムイは身を縮ませる。


「全員横に跳べぇぇええ!!」


叫び、バッシュは跳んだ。レイラも、レイモンドも、他の冒険者達も。一瞬の静寂…そして直後自分達のいた場所が、地面が、近くの建物が吹き飛んだ。逃げ遅れた数人が何も理解できないまま吹き飛び、目の前が真っ暗になって墜落する。


転がってバッシュはその勢いのまま体勢を立て直すと背中の重太刀を引き抜いて構えた。


目の前には死神がいた。美しい死神が。


「うぉお!」


バッシュは考える間も無く刀をウェンパルカムイの横腹に突いた。身体が反射的にそう動いた。


ガキンッ!


当然、弾かれる。だが予想していた感触、諸手を上げるような無様は晒さない。二撃、三撃と続けて刃を振るう。刀身は雨に触れるとジュウ……と音をたてた。


バッシュの使っている重太刀には炎熱効果が備わっている。俗に言う魔剣と言うやつだ。

火を吐くような魔獣の中でも最上位に位置するものは発動体に高熱の魔力を死後も宿す。そういった素材を惜しみなく使い鍛えたバッシュの重太刀はマグマに匹敵するような熱を刀身に宿していた。たが…


(焼き斬れねぇっ!)


振るいながら、いつまで経っても自分の期待する効果が現れない事にバッシュは舌打ちした。普段なら徐々に鱗が淡い赤色を放ち、熱を帯びて焼けていく。だがウェンパルカムイの鱗は薄緑に光ったままだ。


ぞくり……


寒気がしてバッシュは上体を後ろに逸らした。逸らして、自分のその真上を一陣の風が吹き抜けたかと思うと背後の壁に一筋の斬撃跡が深々と刻まれる。


風の刃。


可視化出来ない一撃。予備動作も無かった。バッシュがそれを躱せたのは経験によるものに他ならない。


(これ以上は無理だ)


バッシュは納刀し、距離を取る。


「バッシュ!!」


「大丈夫だ!」


レイラの悲痛な叫び。そう返しはしたが、額に鋭い痛みが走っているのに気づいていた。多分、先程の一撃が掠めたのだろう。だが身体にも僅かな痛みがある事にバッシュは気づいた。下に視線を移す。細かな切り傷がびっしりと防具についていていた。バッシュは戦慄する。


(冗談じゃねぇぞ!)


バッシュの防具は相当な名品だ。大型の魔獣の一撃を食らったとて衝撃は殺し切れないが防具にはほとんど傷はつかない。それが向こうにしてみれば攻撃とも呼べない、纏う魔力の余波で生じる風の刃でこれほどの傷がつく。それもたった一合の切り結びの時間でだ。


「ぉぉぉおおお!」


バッシュの切り結びを見てか2人の冒険者がウェンパルカムイへと肉迫する。1人は大槌、1人は両手剣だ。


「よせっ!お前らじゃ無理だ!」


バッシュは叫んだ。だがその言葉は届かず、彼らは武器を、自らの誇りを振りかぶる。


そして。


バサりと…。ウェンパルカムイがうっとおしげに軽く翼を羽ばたかせただけで。


彼らは死んだ。


全身を風の刃で刻まれ、武器を振り下ろす事も出来ずにそのままの体勢で糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。


最早誰であったかすらも分からない2人をウェンパルカムイは見つめると齧りつき、ボリボリと防具ごと食らった。まるでお菓子を食べる様に。


バッシュは目を伏せたかった。それ程に仲間が目の前で食われて何も出来ない焦燥感は激しい。だが自分の冒険者としての矜恃と使命感がそれを許さなかった。そして同時に頭から抜けていた本来の自分達の役割を思い出した。すると商業地区の方で照明弾が上がった。バッシュは叫ぶ。


「今のうちに体勢を立て直せ!奴を今上がった照明弾の方まで連れていくぞ!」


返事はなかったが、同胞達の目は死んでいない。







後に伝説として語られるミズガルド王都決戦。






その戦いの火蓋が今、切って落とされた。




今回短めですいやせん。キリよくするならここかなと思って切りました。なんか足りんと思ったら後から書き足しやす。

それとお陰様で合計PVが250を超えました。


これからも頑張るんで良かったらブクマ、感想などなどよろしくおなしゃす。



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