駆け出し冒険者ゼノ6ルーゼンバーグの過去
すいません嘘吐きました!決戦!次回です!w
ルーゼンバーグが目覚めたのは昼だった。
見張りをしていた冒険者達の中で、採集のない者はそのまま仮眠を取っても良い、という話になっていたので空いているそこらの宿に勝手に入り寝た。まぁバッシュさんは部隊を率いるものとして色々あるのだろう、そのまま起きてきた奴と合流していったが。
ゴキゴキと身体の骨を鳴らしながら伸びをしてルーゼンバーグは昨夜の事を思い出す。
(仲間…か)
悪くねぇ。
あれ程の男にそう言われて悪い気はしない。いや、むしろ誇らしかった。そうだ、俺は今双刃バッシュやレイラと対等に肩を並べているんだと、仲間なんだと。
そんな事を考えながら1人気持ち悪いニヤケ顔を浮かべてルーゼンバーグは宿を出ていった。
「そんで、3日目は特に何も無かった。飯を食って物資を運んで、そこらにいた適当な仲間と下らない話をして、見張りも無かったから眠くもない身体を無理やり横にして寝て、そうして4日目の朝を迎えた」
焚き火を見ながら語るルーゼンバーグを、ゼノはじっと見つめていた。別に語り方が上手い訳でもない。ただ、あの日両親に何があったのか。それを1字1句聞き漏らさないようにしていた。
ルーゼンバーグはポーチから煙草を取り出すと、焚き火で火をつける。いや、つけようとした…が正しい。気付かぬうちに震えていたのだろう、指からポロリと煙草は抜け落ちて火の中へと消えていった。ゼノは一言おい…と言ったがその声は届いていない…ルーゼンバーグは無視して話の続きを始める。
「そう……4日目なんだ。俺は、あの4日目から戦いの終わりまでを一生忘れないだろう…今思い出しても震えるよ。あいつは…奴は本物の死神だった」
目に薄らと光を浮かべながら。
雨が降っていた。
しんしんと降りしきるそれが組合の建物を打ち、サァァァァ…と耳心地のいい音を立てる中で、ルーゼンバーグ含む約18名のバッシュ、レイラ隊が朝食を取っていた。
カチャカチャ……
食器の立てる音と咀嚼音、そして雨の音。彼らは黙っていた。妖精族がいるというのにレイモンドも絡まずにいる。理由は4日目になり俺たちの役割、作戦を告げるとバッシュが言ったからだ。
今までも決して油断してた…という事は無いのだが、どこか弛緩した空気があった。それが今日になり、いつウェンパルカムイが襲撃してきてもおかしく無くなり、そこに来てのこれだ。全員が固くなるのも仕方の無いことだった。
固唾を飲んで全員がバッシュとレイラのいる机を見ている。レイラが頷くとバッシュは緊張した面持ちで話を切り出した。
「俺達の役割は……陽動と遊撃だ」
数人の冒険者とルーゼンバーグ、レイモンドはこれを聞いた瞬間、身体から血の気が引くのを感じ、同時に納得した。自分達の部隊だけ皆使う獲物がバラバラなその理由に。
実は他の部隊は皆使う武器事に統一されていた。槍使いなら槍使いだけ、魔術師なら魔術師だけと、そんな具合だ。バッシュはまだピンときていないメンバーがいるのに気づいたのだろう…流れを話していく。
まずウェンパルカムイがこの王都のどこかにくる。それが防衛設備の設置された場所ではないならそこまで注意を引き連れていく。逆にそういう場所だった場合は他の部隊の攻撃の準備が整うまで奴の相手をして注意を引く。例えば魔術師の部隊が一斉に魔銃による攻撃を行うとして、その間そちらに攻撃が極力行かない様にウェンパルカムイに仕掛けるといった具合だ。一応盾持ちの部隊等もフォローはするが敵に的を絞らせないように、最前線で常に立ち回らなければならない。そうやって主力が武器ごとに分かれてダメージを隙間なく与えていき、最後は折を見て全員でトドメを刺そうという流れだ。勿論全部が全部上手くいく訳が無いが、それでも大筋の流れはこうなっていてそこから大きく外れて立ち回る事になる事はないらしい。
説明され、理解すると同時に先程とは違う静寂が場を支配する。多分、今頭の中は全員が同じ事を思っているだろう。
「め…滅茶苦茶じゃねぇか……」
1人が震える声で言う。さほど大きな声では無かったが静まり返っているので全員に届いた。気持ちは分かる、この作戦は確かに滅茶苦茶だった。全て俺達に、いやバッシュとレイラに丸投げされていると言っていい。バッシュは言葉を選んで説明したがこの作戦を分かりやすく言うなら
バッシュとレイラ達頑張ってくれ。俺達も隙を見てダメージは一杯与えてフォローするから。
だ。
ルーゼンバーグは心の中で激昂していた。こんな作戦を考えた奴に、そしてそれを是とした奴らに。これが同じ仲間に対して、冒険者としてする事か!
抑えきれず両拳が机を打つ。怒りで身体が震え、歯がガチガチと鳴る。
「バ…バッシュさんと、レイラさんはそれでいいのかよ……」
2人を見つめる。自分でも声が震えているのが分かる。悔しくて悔しくて悔しくて、何に悔しいのか上手く言葉に出来ないが、代わりにこんな問いが口から出た。だが2人は俺が本当に何を伝えたいのかを察してくれたのだろう。どこか諦めた様な優しいを笑みを浮かべた。
「言っただろう……仲間だからな」
「っ!」
瞬間、ルーゼンバーグは跳ねる様に立ち上がった。
バッシュさんっ!あんたはっ!!どれだけっ!!!
肩で息をしながらフラフラと出入口へと向かう。
「待てルーゼンバーグ、何処へ行く気だ?」
バッシュが肩を掴む。
「あの会議にいた称号持ちの連中1発ずつぶん殴ってきます」
「止めろ、お前が損をするだけだ」
だが俺は止まらなかった。乱雑に肩の手を振り払い、外に出る。雨が自分の身体を打つがそんな事は構わなかった。
「止まれルーゼンバーグ!そんな事してももう何も変わらないんだ!」
そう、今更何も変わりはしない。それはルーゼンバーグにも分かる。あぁいいさ、作戦はしっかり果たしてやるさ…。けどな、それとこれとは話が別なんだよバッシュさん…黙ってはいそうですかって言える程、俺は人間出来ちゃいないんだよ!
「すぐ戻ります」
俺は駆けた。確か近くの商業地区にウィッドベレンがいた筈だ。
後ろから呼び止める声がする。だが振り返ることなく全速力で駆け抜けた。
商業地区にある時計塔、この王都で最も高い建物の最上階でウィッドベレンは王都を、そして灰色に染まる空を眺めていた。部隊に関する指示は全て、弟子のヴァルガジンに伝えている。ここでウェンパルカムイが来るのを見張り、そして来たら鐘を鳴らすのが王都一目が良いと言われる準備段階での彼の最後の役目だった。
(必要な役割とは思えないけどね)
ウィッドベレンは懐で指を冷やさない様に温めながらそう思案する。
五大竜出現の兆候……。
彼はそれを、よく知っていた。
カツン…カツン…
階段を登る音がして振り返る。ヴァルガジンが朝食をもってきてくれたかな?と思ったがそこにいたのは意外な人物だった。
「君は……ルーゼンバーグ?」
彼を僕の姿を見咎めるとそのまま近づいてくる。そして右拳で顔面を撃ち抜いた。
「っ!」
ウィッドベレンはいきなりの事ではあったがなんとか左足で踏ん張って耐えた。転倒すること無く顎から垂れる血を拭いながら薄らとした笑みを浮かべる。
「理由を聞いても?」
「言う必要があんのか?」
逆に言われて、考える。……あぁ、なるほど?
「君達の作戦の事かい?」
ルーゼンバーグは是とも否とも言わなかった。だが厳しい表情からそれが正解であると確信した。
「随分と直情的だな」
「卑怯者よりマシだろうが」
卑怯者ねぇ…ウィッドベレンは壁にもたれかかるとポーチからポーションを出して一口、口を濯ぐようにして飲む。口内で切れた傷口がムズムズとした。
「そう言われても仕方がないけどね。まぁ僕の話も聞いてみないか?」
「そんな暇はねぇ。俺はお前の他にもあの会議の場にいた奴全員殴ってやるつもりだからな」
「ん?……あぁそんな無駄な事する必要ないよ」
「……何?」
階段へ戻りかけていたルーゼンバーグの足が止まる。ウィッドベレンは掴みどころのない、どこか飄々とした様子で言葉を続けた。
「何せその作戦を提案したのも、他の奴らの反対を押し切って是と言わせたのも全部僕だからね。おめでとう、君は1人目にして大当たりを引いたのさ」
「てめぇ!」
瞬間ルーゼンバーグはウィッドベレンへ飛びかかった。胸ぐらを掴み、壁へ押し付ける。
「話を聞く気になったかな?」
「あぁ!聞いてやる!聞いてやるよ!そのこまっしゃれた面をぐしゃぐしゃにしてからなぁ!」
「それは困るな。僕も……君もね」
チクリ……と防具の隙間に僅かな痛みが走る。そこにはウィッドベレンがいつの間にか抜いた剥ぎ取りナイフが突きつけられていた。
「くそ野郎がっ」
「いいから離しなよルーゼンバーグ。作戦前に大怪我したくないだろう?」
睨み合いが続く。ピリピリとした静寂の中で、先に動いたのはルーゼンバーグだ。
「チッ……」
舌打ちしてウィッドベレンの襟から手を離し下がった。
「物分りが良くて助かるね」
「とっとと話せよ。お前の言い分とやらを…下らねぇ話ならぶっ飛ばす」
腰の鞘にナイフを収納して襟元を正す。瞬間、ウィッドベレンの笑みが深まる。
「ねぇルーゼンバーグ…上位個体への昇華条件ってなんだと思う?」
「無駄話はいらねぇ」
「ははは、まぁそう言うなよ。別にこの話とは全く無関係って訳じゃないんだ」
コツ……コツ……
と靴音を鳴らしながらウィッドベレンが回るように徘徊する。
「僕はね、その条件は魔力を蓄えることだと思っているんだ…長い年月を生き、大型の魔獣同士で食らい合い、そうやって生き残って力を蓄えた一握りが上位個体へと進化するんだとね」
「…それがなんだ」
「察しが悪いなぁ。彼らは餌を求めてるのさ。より安全に、多く、良質な餌をね。五大竜…奴らはおそらくまだ下位種だ」
ルーゼンバーグも冒険者だ。興味深い内容だとは思った。だが思った事を口にする。
「面白ぇ推察だが別に作戦には関係ねぇ」
「あるんだよそれが。奴らはより上質な餌を求めてる。君は今王都にいる人間で誰が一番上等だと思う?」
言われて、何を言いたいかすぐに分かった。表情に出たのだろう、笑みを浮かべるウィッドベレンの目が細まる。
「分かったろう?僕は五大竜についてこれまで調べて回っててね。その為に冒険者になったと言っていい。断言するよ、この布陣が最も効率的だ」
「…分からねぇ」
「何が?」
おちゃらけた様に両手を広げるウィッドベレン。ルーゼンバーグは睨みを聞かせながら続けた。
「人間の魔力は皆一定だ。魔力を蓄えるのが目的なら誰を狙うかなんて分からねぇ」
「まぁ、狙いが魔力ならね。五大竜は多分人間のちっぽけな魔力を得ようなんて思ってない。奴らが僕らに求めてるのはおそらく……」
ウィッドベレンはこめかみをトントンっと指で叩く。
「ここさ」
脳?……こいつ何を。
ルーゼンバーグがそう思った時だった。
「どうやら1日、予定より早かったみたいだね」
何かに気づいたウィットベレンがそう言うとある方向を指さした。つられてルーゼンバーグも視線を向けた。
光の漏れる建物からぞろぞろと小さい影が出てきて、その後を冒険者が続いて出てくる。……小さいのは、妖精族か?
「大地の子が共鳴したみたいだね……無駄話は終わりさ。来るよ」
ウィッドベレンは壁の近くに吊るされている大綱を体重を乗せて引いた。
ゴーン……ゴーン……ゴーン……
王都にいる全ての冒険者に風刃竜ウェンパルカムイ襲来を告げる鐘が響いた。
これは後で聞いた話だ。
バッシュさんはあの後少ししてから俺を追おうとしたらしい。だが、直後異様な光景を目の当たりにしたそうだ。
建物にいた妖精族……その全てがバッシュ達のいる食堂に出てきた。そして虚ろな目で全員がそのまま棒立ちになったと。触れても、何をしても反応がない彼らはしばらくそうしていたが突然上を指さしてこう言ったそうだ。
「くる」
と。
固定の読んでくれてる方がいるのかPVが安定してきやした。超底辺には変わりないですが滅茶苦茶嬉しいです。
頑張るんで良かったらブクマ、感想などなどよろしくおなしゃす




