駆け出し冒険者ゼノ5 ルーゼンバーグの過去
次回、決戦 (予定)
初投稿の弊害か誤字脱字が多発しています。見つけたら何らかの方法で知らせてくだせぇ
夜も灯りが灯る王都に常闇が広がった。
普段ならこんな時間でも王都は賑わっているのだが今は誰もいない。時折松明を持った冒険者が厳しい面持ちで城門の方へと向かっていくのを見るだけだ。ちなみにルーゼンバーグもその1人である。
「バッシュさん」
「ん?あぁ、ルーゼンバーグか。今夜はお前もだったか?」
首を縦に頷く。報告ではまだウェンパルカムイが来るまでに日はあるが、それを鵜呑みにする様な冒険者はいない。今日からは各部隊から交代で見張りが立つ。今日うちの部隊からは称号持ちのバッシュに2人の冒険者、後は志願したルーゼンバーグだ。
「隣、いいですかい?」
「別に構わねぇよ。昼間の相談か?」
「えぇ、まぁ……」
返事をしてルーゼンバーグもバッシュと同じように自分の半身ほどの高さの石壁にもたれかかって空を見る。王都にいて星をまじまじと見たのはこれが初めてかもしれない。
「綺麗だろ?普段は明かりのせいかそんな見えねぇんだけどな。今はよく見える」
「そうですね…」
バッシュと星を見ながらルーゼンバーグは故郷を思い出した。夜は薪が勿体ないからって火を炊くような事も無いしけた貧乏な村だったが、星がよく見えた。バッシュも星になにか思う所があるのだろう。時折目を細めては遠い目をしている。
「ガキの頃はよ、俺はいっつも星ばっか見てた。そんなに身体が強くなかったもんでよ……いっつも近所のガキらにもやしもやしってバカにされてたもんだから1人で星座を見つけては騒いでた」
「バッシュさんがですかい!?」
意外だった。今はもやしって言うようなやわな身体はしていないしどちらかと言うとガキ大将をやっていたと言われた方がしっくりくるイメージだ。バッシュはルーゼンバーグの驚いた顔がよほどおかしかったのかぷっと笑う。
「ははは、レイラにも嘘つくなって笑われたよ。でも本当の話さ……昔は冒険者なんかじゃなくて、観測隊や学者になりたかったんだ」
「じゃあなんで冒険者に?」
興味があった。いっちゃ悪いが冒険者なんていうのはバッシュの少年時代とは正反対の、ガタイの良い奴や悪ガキ、ガキ大将が目指す様な職業だ。自慢じゃないがルーゼンバーグも少年時代は村1番の悪ガキだった。
バッシュはその問いに遠い目をしてまた星を見つめる。
「村が大型魔獣に襲われたんだ…」
「あっ……」
聞いちゃいけない事を聞いた気がしてルーゼンバーグはしどろもどろとする。バッシュは「いいさ」といって苦笑いをすると話を続けた。
「その日は収穫祭でよ。村中珍しくかがり火焚いてバカ騒ぎしててさ……うっとおしかったんだろうな。空からワイバーンが降りてきて、そっからは地獄絵図。俺は近所のガキにいじめられていじけて、星を見に行ってたから助かった。……怖かったよ、怖くて怖くて、遠くで引きちぎられたり食われたりする村の皆や父ちゃん母ちゃんを見てる事しか出来なくて情けなくて、でもなーんも出来ねぇから俺はそのまま走って逃げた。で…逃げ込んだ街で孤児やって、そっからはよくある話だよ」
ポーチから煙草を取り出してたいまつで火をつけるバッシュ。静かな空間にチリチリと煙草の燃える音が妙に耳についた。
「食う為に冒険者になって、気がついたらそこそこ強くなってて、レイラに会って恋をして……今はガキが出来て守るもんがあるって感じだ」
紫煙を吐き出しながらバッシュが横目にこちらを見た。今度はお前の番だぞって所か。
ルーゼンバーグは意を決した様に生唾を飲み込んだ。
「昨日その、バッシュさんとレイラさんの屋上のやり取りを見ちまいました」
「お前いたのか!?」
「すいません……」
ガバッともたれかかっていた石壁からバッシュが飛び上がる。ルーゼンバーグの方は恐縮です…とでも言いたげに背中を丸める。
「どこまで聞いた?」
「えっと…言いにくいんですがバッシュさんが弱音を叫んで、レイラさんとキスするまでは……」
「ほとんど全部じゃねぇか……」
ボリボリと照れくさそうに頭を搔く。なんというか……バツの悪そうな表情だ。
「それで悩んでたのか……まぁ、自分とこの隊長のあんな姿見ちまったら……そりゃそうか」
「ほんと、すんません」
「お前が謝る事じゃねぇーよ…しっかしなんというか…………幻滅したか?」
「…………少し」
「正直だなお前」
バッシュは笑った。そして下を向く。
「あれを見たなら分かると思うが…実は俺は怖い。今だって本当は怖くて怖くてたまらない」
そう言って煙草を持つ手を見せる。先端の火種が細かく揺れていた。ルーゼンバーグは黙っている。
「一応言うが俺も冒険者だ。死ぬのが怖いんじゃないし、覚悟だってもちろんある。ただ…これは守るもんが出来たからかな…俺は死んだ後が怖いんだ」
「……」
ジリジリ……と音を立てて短くなる煙草を一吸いして地面に捨てると足でもみ消す。
「レイラの事、子供の事…他にも色んな大事な人がいる。昔みたいに捨てっぱちでやってくには、背中に色んなもんを背負い過ぎた」
「……逃げないんですかい?」
ルーゼンバーグが言う。
「バッシュさんなら、粛清に来た奴だって殺れるでしょう…それにあんたは称号と2つ名持ちだ。この国はともかく、余所の国のとこの組合ならそう悪いようにはされない筈だ」
疑問を口にする。そう、レイラとバッシュならそれが可能なのだ。自分みたいな木っ端とは違いそれを押し通すだけの力も、名声もある。後ろ指を指されるにしてもそんなのは冒険者をやめればいいだけの話。その後はそこらの貴族に士官して騎士にでもなればいい。そもそも金はある筈だ。
「ルーゼンバーグ」
ちょいちょいっと手招きする笑顔でバッシュ。内緒話だろうか……顔を寄せたその瞬間、バッシュの右拳がルーゼンバーグの頬を撃ち抜いた。
「ガハッ!」
地面を転がるルーゼンバーグを冷ややかな目でバッシュは見る。
「殴られた理由は……言わなくても分かるよな」
頬を擦りながらフラフラと立ち上がるルーゼンバーグ。キーン……と耳鳴りがするので何を言っているかよく分からなかったが何を主張したいのかはよく分かった。
「すいません……失言でした」
「お前、これが俺じゃなくてレイラだったら不慮の事故で城壁から墜落してるぞ」
さすがにそれは……と思ったが、確かにあの人ならやりかねんなと思い直してブルリと身体を震わせる。
「それにな、さっき言ったろ?色んな大事な人がいるって……そりゃお前らこの街の冒険者だって入ってる」
「……え?」
「なんだ、意外か?同じ獲物を狩ろうってパーティ組んだんだ、みんなもう仲間だろうが」
仲間。
照れくさい響きだが、なにか暖かい者が胸に灯る。
今まで一人でやって来て、そりゃ臨時で組むこともあったけどこうやって面と向かっていって貰ったのははじめだった。
「仲間……」
「そうだ。そこと、そこの見張りしてるヤツらも今街にいる奴らも皆仲間だ。仲間を見捨てる奴は冒険者じゃねぇ、俺は冒険者だ。お前はどうなんだ?冒険者か?」
どんっと胸を押されて灯っていた暖かいものが全身に広がる。その気持ちが、感覚が、バッシュの質問に対する答えだろう。俺は……俺は……。
「俺は、冒険者です」
「いい面になった」
ルーゼンバーグを真っ向から見つめて、ニヤリとしたバッシュ。
その表情に、朝の様な迷いはなかった。
その後はお互い、くだらない話をした。吸った事の無い煙草を教えこまれたり、昼のマイティとのやり取りを見られてたのか幼児趣味とからかわれたり……本当に色々だ。
作戦の事については全員が揃ったら話すと言われた。まだうちの部隊にも王都に到着してない冒険者がいる。
そうしてたわいもない話をしながら、気がついたら朝になった。
決戦までの日は、そう残されていない。
頑張るんで良かったらブクマ、感想などなどよろしくおなしゃす
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