プロローグ
初投稿の弊害か誤字脱字がくっそ多いです。見つけたら何らかの方法で知らせてくだせぇ
「「「俺たちの未来に!」」」
ミズガルド王都の冒険者組合に併設された昼も夜も賑わう酒場の一角、その円卓で4人の若者が樽のジョッキを勢いよく打ち合わせた。
ガゴンッという独特の小気味のいい音と共に
中の酒が飛び散り、ジュワァァ!っと塊肉の置かれた鉄板が音を立てる。しかしそんな事は誰も気にせずその場の全員が手に持ったジョッキに口をつけると、大口を開いてその中身を一気に喉へと流し込んだ。
「っかぁ〜!」
その中の一人、小柄な短剣使いのルークが息をつくと同時にダン!とジョッキを机に叩き付ける。後の3人もそれぞれが飲み終わるとルークに続いてジョッキを置いた。
「僕が2番ですね!」
「っぷはぁ!私が3番ね!」
叩きつけた順に口を開く。2番目が筋骨隆々な大剣使いのバルド、3番目が金髪の魔術師の女のエレンそして
「俺がドベかよ……」
最後は重太刀使いのツバサが端正な顔を苦々しげに歪ませてそう言った。依頼が終わった後の打ち上げ、最初の1杯を飲み終えるのが遅かった者が会計の半分を出すというのが彼らが依頼を受ける前に決めたルールだ。
「じゃ!ツバサ、ゴチになるわよ」
ニヤニヤとしながらエレンが言う。普段ならこんな事はいちいち言わないが今日は特別だ。なぜなら
「いやぁ!助かった!流石にこれを奢るってなったら暫くは節約しなきゃだからな」
これまたニヤつくルークのその言葉に全員が机に並ぶ大きな鉄板料理に目がいく。
大きな鉄板に乗せられたそれは「ワイバーンの塊ヒレ肉と七色キノコの付け合せ、灼熱トマトとジュエルチーズの泡ソース鉄板のせ」と言う。
数多いる冒険者の中でも組合にその貢献度を認められ、さらに称号試験に合格し、上位の者しか席につく事すら許されない専用の円卓に座る資格のあるものだけが頼むことの出来る特別な料理だ。そして値段も席につけるものに見合っているのでべらぼうに特別である。
「っは〜!やってらんねぇ!」
そう言ってツバサが机に突っ伏す。本当に負けたくなかったのだろう。完全に不貞腐れている。
「ははっ、まぁいいじゃないですか今日は僕らにとって新たな門出なんですから」
バルドが言う。
本来この全員はいつもは特定のメンバーとは組まずに個人で活動している。そんな彼らが同じ席についているのは、組合の称号依頼を一緒に受けた為だ。
この称号にはついたそれによって組合から様々な特典を受けられる。称号持ち専用依頼の掲示板もあるし泊まれない宿、専用の席や料理、戦えないモンスター等が代表例で他にも組合を通さずに個人で依頼を受ける事などもある程度のものまでなら許されている。
ちなみに彼ら4人が今回受けた「挑戦者」の称号を得るための依頼の結果はこの席についている時点で言うまでもない。
「バルドの言う通りよツバサ、過酷な依頼の後の美味い酒に最高の料理、金のことより今はこれを楽しまなくちゃね」
エレンは付随のフォークとナイフを掴むとワイバーン肉に突き刺した。程よいレアに仕上げられたそれから赤みがかった肉汁が溢れ出す。フォークで肉をしっかりと固定して柔らかい肉をナイフで切り分けると付け合せの七色キノコにたっぷりとソースを絡めて自分の取り皿に乗せる。遠巻きに見ていた冒険者達がごくり、と喉を鳴らす。それを尻目にエレンは早速取り分けたそれを口に運んだ。
(んっ!……まぁぁぁあ!)
目をぎゅっとつぶり、堪えきれないとばかりに机をバンバン叩く。これまで食べた肉料理の中で文句なく1番の料理。これだけでも称号を手に入れた価値はあったというものだ。
「うっま!ちょっ!みんなこれホンットにすごい!」
もっともっとと溢れてくる欲望を飲み込んでエレンは3人を見た。狩場ではこんな子供らしい所など1度も見せた事のないエレンの言葉と目の輝きにツバサは突っ伏していた身体を持ち上げ、ルークとバルドは顔を見合わせる。戸惑った様な、なんとも言えない表情だ。
「食べないの?だったら私全部食べちゃうから」
伸ばしたエレンの腕を横から手が伸びガシッと掴んで止める。装備された蒼い魔獣素材の篭手で分かる。ツバサだ。
「ばっか!!誰も食わないなんて言ってねーだろ!つか1人で全部食ったら俺の重太刀でお前を捌いて代わりに食ってやるからな!」
そう言うとツバサもさっさと肉を取り分けてガブッと豪快に口に運ぶ。瞬間、ツバサの目は大きく見開かれ大声で叫んだ。
「ヤッベェェェェエ!うっまぁぁぁぁあ!」
金の事などすっかり忘れてあまりの美味さに身体をブルリと震わせる。
「ね?ね?そうでしょ?」
「これは!やべぇわ!」
そんな会話を2人を余所にルークとバルドも肉を口に運ぶ。
「これは……」
「確かにすごいな……」
震えた声で2人も同意する。わかる。凄くわかる。
エレンはもう1切れ食べ、しみじみと美味さを実感する。この泡のようなフワフワの溶けるようなチーズソースに灼熱トマトの程よい酸味が全くしつこさを感じさせず肉のうまさを最大限に引き出している。これほど美味いなら素材自体を単体で味わってみたいと思ってしまう。きっと料理に負けず劣らずの値段だろうけど。
「はー……」
取り分けた1皿目を全員が平らげ一息つく。チビチビと酒を舐めながらルークが酒場の天井を見ながら零した。
「なんか…よくここまで登りつめたなぁ」
「なによ突然」
同じく酒を飲むエレンがあいうつ。
「ん〜?いやさ、俺は今24でこの組合に来たのが14の時だったんだがその時この酒場で初めて食ったのは安酒でふやかした銅貨1枚の堅パンだったんだ」
「あぁ〜、分かりますよそれ」
するとバルドが話に乗ってきた。
「僕は農家の三男で、そのまま村に残っても厄介者扱いだったんで体格活かして冒険者になろうって組合に登録したんです。その時僕もここで初めて食べたのが堅パンでした。まさか狩場に持って行けるように固められてるとは言えあそこまで固いとは思いませんでしたけど」
そう言って口を開けると欠けた八重歯をルークに見せる。それを横からみていたツバサが豪快に笑った。
「ははっ!分かるぜ水かスープで半刻(1時間)戻してようやくなんとか食える硬さになる代物だしな。俺も酒場で喧嘩してた駆け出しの頃は武器の代わりに堅パン握って相手をぶん殴ってたよ」
「堅パン握って喧嘩しようなんてバカはあんたくらいよ…」
ツバサの言葉にエレンが肩をすくめる。
「なんだよエレン、お前だって冒険者なんだから堅パンにまつわる話の一つや二つあるだろ?」
「あんた達みたいなのと一緒にしないで下さい。私はちゃんと先輩冒険者に師事してたから堅パンの面白話なんて持ってませんよ」
ぶふっ
エレンの言葉に4つある別の円卓席に座っていた1人の壮年の男が酒を吹き出す。たまたまかと思ったが相手がニヤニヤとしながらこちらをちらちら見ているのをエレンは目尻で捉えた。
「……何か用?今私を見て笑ったわよね」
エレンが僅かな殺気と共に剣呑な雰囲気で男に食ってかかる。すると20席以上ある机の喧騒がシーンと静まり返った。
喧嘩なんかは酒場の常、さらにここは荒くれも多い冒険者達の常用する場所ではあるが、4卓しかない円卓席の、別の机同士の喧嘩となれば話は別だ。上位の、それも称号持ちの冒険者の喧嘩など滅多に起こらないし巻き込まれたらそれこそ命に関わる。かと言ってそれこそすぐに席を立つ訳にもいかない。なんせ腕っぷしを売る商売だ。逃げたなどと言われたら仕事に支障が出る。なので通常卓の冒険者達はほぼ全員がこれから起こる出来事の成り行きを遠目に見守っていた。
「ん?いや悪かった。別に喧嘩を売ったつもりは無いんだが……エレンねぇ…堅パン…堅パン……ぷふっ」
喧嘩を売っているつもりは無いと男は言ったが、時折エレンの名前と堅パンを連呼しては仕切りに肩を震わせて笑っている。
「なぁ?あんたさっきからなんなんだ?喧嘩を売っちゃいないと言う割に、態度がその言葉と正反対だぜ?」
エレンと男のやり取りにツバサが割って入り立ち上がる。ルークとバルドも即座に対応出来る様に席を立ってはいないが腰を浮かせていた。しかし男の態度は全く変わらず目尻をゆるませながらジョッキを傾けて中身を飲むと口を開いた。
「おっと、そう言えばまだ名乗っていなかったな。俺の名前はレイモンド、「先駆者」の称号持ちで……そうさな、ヴァルガジンという魔術師とパーティを組んでいた。そこのエレンは聞き覚えのある名前なんじゃないか?」
男、レイモンドの言葉を聞きツバサはエレンに視線を向ける。エレンは少し驚いたのか目を見開くと首を軽く縦に振り首肯した。
「ええ、ヴァルガジンは私に色々と冒険者としての事を教えてくれました。レイモンドさんでしたか?ヴァルガジンは今どこで何を?」
「俺も詳しくは知らんがなにやらお隣の国からの指名依頼を3年前に受けると言ってそれきりだ。それより俺もそっちに行っていいかい?ここじゃ話しにくいし酒場の連中も気が気でならんだろう」
そう言って当たりを見渡す。確かにほぼ全員こちらに視線を向けて身構えている様だ。
「確かにそうですね。分かりましたどうぞこちらへ」
「悪いな」
そう言ってレイモンドはエレンの開けた席につく。
「まぁ、そういう訳で別に喧嘩を売ったわけじゃないんだ迷惑をかけたみたいで悪かった」
そう言って3人にも謝罪する。ルークとバルドはホッとしたように浮かせた腰を下ろし、ツバサもしぶしぶ席につき直す。それを見た他の冒険者達も争いが怒らなかったことにほっとしつつ何事も無かったかのようにまた酒場に喧騒が戻った。
「いや、それはいいんだけどよ?なんでさっきエレンを見て笑ったんだ?まずはその理由が知りてぇんだけど?」
まだどこか納得していないのだろう。そんな事をツバサが言う。するとレイモンドが我が的を得たりと言ったような得意げな顔をした。
「そう!それだ!俺がなんで笑ったか。知りたいか?知りたいよな?この話は面白いぞ?何せそこにいるエレンの話だからな」
「私の?」
「あぁそうだエレンお前の話だ。それも堅パンのな。全く、同じ席につく仲間に嘘を言っちゃいかんなぁ、俺はヴァルガジンからあの話を聞いたぞ?冷凍湖のあの話をな」
瞬間、エレンの顔色から一瞬で血の気が引いた。
「「嘘?」」
3人が同時にそう言うと、続けてバルドが疑問を投げかける。
「でもエレンは堅パンの面白話はないって……それに先達に師事してたなら食べ物なんかで失敗するとは思えないんですが……」
「それがあるんだよ堅パンにまつわる話がな。失敗とは言わんがいや長く冒険者をやっているがあんな話を聞いたのは初めてだ。なにせ……」
「だめぇー!」
エレンが即座にレイモンドの口を手で塞ごうとするが片手で軽くあしらわれる。
「よし、最初から話そう……」
そしてレイモンドはニヤリとするとエレンの師匠ヴァルガジンから聞いた話を語り出した。
頑張るんでブクマ、高評価、感想おなしゃす




