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ミステリー ≪僕と友人≫

居座る男

お手にとって頂きありがとうございます

《僕と友人》シリーズとなっていますが、単体でも読める物となっています

ただ、シリーズの「かくれんぼ」という作品を先に読んでもらえれば、より背景が分かりやすいです

その作品を読み終わるのにかかる時間は10分程度なので、宜しければご覧ください


ここに臆病な男がいる

年齢は20後半と言ったところか

彼を知らない友人に彼の特徴を求められる場合ーーもしも、そんな天変地異が起こりようものならーーそれは酷く苦労する

至って凡庸ぼんよう、至って無個性、突出した点のない、これこそ「田中太郎」の名で公共のあらゆる見本に使っていいのでは無いかと言わしめる男の容姿にはかえって感動すらある

ただ、苦し紛れで唯一特徴として挙げられるのは、その平凡な顔を微かに覆う苦悩の陰で、これは後天的な物であった

実際、これのせいで実年齢よりも一回り年配に見られがちであったが、男はそれらに関しては全く気に掛けていなかった


男の意識は常に内よりも外に向けられていたからだ


彼が恐怖するものーーそれは日常にあるとるに足りない物達で、一つ例に挙げれば彼は「朝日」を恐れた

カーテンと床の隙間に出来た僅かな隙間からあの白い光が、幽霊のようにうっすらと現れる様を見ると、男の心臓はどくどくと血流を速め、それにより胃の底から何かが迫り上がって来るのを確かに感じていた

頭は恐怖の余りくらくらと歪み始め、枕に押し付けても治りようがない

仕方がなくベッドから体を起こす、とこのような日常を繰り返していた


こんな世にも珍しい貧弱な男だから、彼が現在無職だと言ってもきっと誰も驚きはしないだろう

それどころか、「あぁ、それはぴったりだ」等と納得してしまう者まで現れてしまうかもしれない

ーー彼はしかもその事実にさえ怯えているのだから、私が彼の事を「臆病者」と言うのも間違ってはいないだろうーー


そんな皆々様から相応な評価を頂いているこの男にも、唯一の気晴らしとも言うものがあって、それは「料理」であった


彼は器用貧乏という奴で、料理を始めて数ヶ月でありながらその腕前はめきめきと上達しており、今では全ての独り者が喉から手が出るほど欲しがっている調理の才能というやつを見出した

彼自身この作業に面白みを得ていて、更に無職の為、収入が無く貯金を削りながら生活している現時点に置いて、家計簿の食費の欄を埋める度に、数字としての成果が出ていることに男は密かな達成感を得ていた


全く素晴らしい事にこの趣味のお陰で彼は完全なる引き篭もりの称号を逃していたのだ


今も丁度、近くのスーパーのタイムセールから帰宅してきたばかりで、そしてまさに今、ドア裏に備え付けられた郵便ポケットに目を向けた

投函されていた薄茶の事務的な封筒理由のない不安を抱きながらーー仕方がない、彼は臆病なのだーー素晴らしい噛み合わせの郵便ポケットから引き抜いたそれの表面に、住居の更新手続きの文字を見るとほっと胸を撫で下ろした

そして、それを開封もせずにとりあえず机の上に置くとーーそうやって2、3日放っておく事も多々あるのだがーーまずは、生鮮品等を仕舞うために冷蔵庫へと向き直りつつ、思考にふけった


前回が3回目の更新だったーーそうか、もう8年になるのか


男がそれに心を揺り動かされたのは、まさかそこまでの年月が経っていたとはという驚きからであった

体感的にはまだそこまででは無いと思っていたが、元々1日1日を生きるのに必死で季節の変わり目に心を傾ける生活を送っていなかったので、1、2年の体感が狂ってしまっているのだろう


ーー男がこのマンション最上階の日当たりのよい、しかし広さの面では星3つ程度の部屋に越してきたのは、彼にとって幸運だったのか、不幸だったか

突如与えられた採用通知に感激し、しかし余りにも急過ぎたそれに何の用意も無かった青年は喜びの中にある悲嘆にくれていた

それから、もう既に物件は限られているだろうに親切な不動産屋のお陰でこの部屋に辿り着いたのだ

確かに立地的には割高だが、家具付きなのは魅力的だった

分譲マンションの最上階に位置し日当たりは良好

玄関から入って直ぐに左手に扉がーつあり、便所、洗面所、浴槽が一緒くたにされている

生まれも育ちも大自然の田舎の中で過ごしていた男は、こう言ったものをホテルでしか見た事が無かったので、口には出さぬとも驚いた

その所謂いわゆるユニットバスの反対側、つまり玄関から見て右側にそこそこしっかりしたキッチンが壁沿いに張り付いていて、その横には備え付けの冷蔵庫まである

盛り沢山な短い廊下を抜けて第二の扉を開けば、現在主な居住スペースとして使っている長方形の部屋に出る

またこの部屋は直ぐ上に屋上がある関係で扉を開けて数歩は天井が低いのだが、そこから急に視界が広くなるので却って開放感が増したぐらいか 


男は閉所恐怖症ではない


寧ろ、広々とした家の大家族で何もかも共有して暮らしていた為、こう言った狭くて自分だけの部屋と言うものに無性に憧れを抱いていた


しかし、特に問題も見受けられないとなれば、かえって不安になるのが、脆弱な身でありながらここまでの繁殖を遂げた生物のさがである

他に紹介された二、三件の物件は余りにも酷いもので寝るためだけのスペースと言った具合だったのもあって、案の定、男は何故このような物件がこの時期に残っていたのかといぶかしんだ

藍色のスーツをパリッと着こなした壮年の男はそれを察すると、愛想笑いのまま器用に顔を強張らせて躊躇ためらいがちに口を開いた


『実はこの辺りはあまり治安が良くなくて』


なるほど、不動産の男の言い分ではこのマンションは家賃の支払いが真っ当な金でなくても良いらしい


『今時、ご近所付き合いなんてしないものですし、関わろうとしなければ全然問題ないと思いますが………やっぱり気になりますよね?』


男はその返答にNoと答えた

彼はそもそもが人間関係の構築に積極的な人間ではなかった

それよりも期限が迫られている中、無駄に空回りした結果、安いホテル通い、働きながら休みの日に部屋を探すなんて面倒な事態に陥りたくは無かったのだ

また、突然決まった上京に対する焦りから何かを決めたという事実により安堵を得たかったのかもしれない



そうして歳月が経ったのち、職のために得た部屋はそれを失ってもまだ男のもとに残り、彼の傷つきやすい心を母鳥のように外界から守っているのだ



ーー男は妙に甲高いタイマーの音にぐらぐらと湯立つ水面から麺をザルの上へと救出した

シンクから排水溝に流れていくでんぷんを含んだ白い濁り湯が死に際のささやかな抵抗で男へ熱い蒸気を放つ

男はそれを薄ぼんやりとした顔で一心に浴びると、湯切りした面を既に用意してあったソースの中へと戻し、鍋を軽く揺すり始めた


              X


男は夢を見ていた

過去の友人と学生時代に戻って遊んだり、木陰で昼寝をしている等々もっと現実にありそうな夢では必ずと言っていい程、夢を見ているのだと自覚するのだが、ここ最近何度か見るその類のではいつも彼はその荒唐無稽こうとうむけいの劇を現実のものと捉えていた


パントマイムの主役は彼自身だ


椅子に座って机に向かう男の周りを数人の顔を持たない脇役共が取り囲み、男にちらちらとわざとらしく横目を流す

その滑稽こっけいな様に観客達はくすくすと口元を緩ませる

舞台の中央に座す彼の前には時には白い紙の束、又は使い慣れたパソコンがあり、そこで彼は必死に何かをしようとするのだが、周囲の脇役からの視線で緊張してしまうのかどうにもうまくいかない

観客達が男の怯えぶりを見て大笑いし出すと、いよいよ彼は負の連鎖に陥ってしまう

ペンを持てば不快な音を立てて床に転がり落ちるし、いつの間にか目の前の紙の束はどんどんどんどんと積み重なっていって、その天辺は視界の中に捉えることはできなくなってしまう

男が必死になればなる程、全てが悪い方、悪い方へと進み、わき役共はそんな彼を怒鳴り立てた

観客はそれを見てとても愉快そうに顔に笑みを浮かべる

が、ふと気づけば仕事の束も観客も何もかも消え失せて、目の前に四角い重厚な装置が現れる

それは秒針も無いくせにちくたくと腹の中から音を立てて男に残された時間を知らせる

手の中の冷たい感覚に、右手を見ればニッパが握られていていつの間にか艶やかに発色する赤と青の細い導線が現れた

『どちらかを切らないと』

夢の中の定理で、男はそれをしなければならないと分かっている

しかし、男が震える手で赤の導線へと刃先を向けると途端に背後から誰かが此方を覗いた

『え、それにするの?』

それは既に亡くなった母親だった

慌てて、青い導線へと進路を変える

『嘘だろ?そんな事も出来ないのか?』

反対側から友人達が嫌悪に満ちた顔で男を見る

黄色、緑、白、紫ーー混乱する男をあざけるように導線は増えていき、目の前がカラフルにチカチカと点滅し出した


男を出迎えてくれる母や兄妹達の柔らかい笑みも、親しい友人の楽しげな表情だって全てがあの同じ顔になって背後から男を責め立て、監視しているのだ


苦しい、息が出来ない


踊りだす色彩達が壁に投げつけられたようにドットに散らばり、視界はそれらで塞がれた、前が見えない

心臓はぐちゃぐちゃに揉まれてペースト状になり、痛みを伴って上へ上へと込み上げてきたーー吐きそうだ


怖い

何かをすればまた罵倒されるのではないか、物を投げつけられるのではないか

正しくないと、少しでも手順を間違えたり、間違えそうになったら……誰かが俺を見ている


ーーよかった今日が終わった、でもまたすぐに明日が来る


毎日、毎日これの繰り返し


カーテンの隙間から光が漏れたーーぁあ、朝が来てしまった


また、今日が始まる


嫌だ、助けて欲しい、終わりにしたい

『本当、お前なんて死んだ方がいいよな?』

その声にはっとして目を向けると顔の無い脇役が此方を見下ろしていた

顔がないのにその男がかつて上司だった事は当然の事実ですがのように理解できた

その表情が道端の吐瀉物を見た時のように歪められているのも分かる

自分の存在を否定されるのはまだいい

だが、自分の無能さの為に親兄弟、友人達までもが愚弄ぐろうされるのが耐えられない……自分のせいで


ーー床にうずくまった男の耳にちくたくと例の音がした


そうだ!このままこいつのそばにいれば死ねる


電車を止めるわけでも部屋を駄目にする訳でもないから親にも誰にも迷惑をかけない

爆弾なんだから仕方がない、仕事から逃げ出した訳じゃないから怒られもしない

ただここでその時が来るのを待てばそれだけでいいのだ、なんてお手軽なんだろう

男は救いを見た気がした

どうしようもない自分がその死だけは花火のように美しく晴れ晴れとしたものになるのではないかーー彼はそれを両の手で掴む

自然とその文字盤に映し出された数字を見つめた

見覚えのある数字ーーかつて渡された入社証明書に記載されていた数字だと気づくと、男はその世界で意識を失った



ーー彼の精神は現実の世界へと浮上する

押し殺した呼吸、男の目は大きく見開かれていた

確かに、半年前会社を辞めてからこの夢は過去を忘れ去る事を拒むかのように度々男を苦しめていた

彼が寝る前にふと自分の現状を思い出したりして不安を抱くと、大抵その夜は悪夢に襲われるのだ

普通に会社で働いて、普通にお金を得て、普通に暮らしていく

それが彼の知る生き方であり、現在それから外れている事実が恐ろしいのだ

そのくせ過去の記憶から就職活動どころか、あの狭い空間で他人の目に晒されながら働く、と想像するだけで体が強張る自分がまるで不良品のように思えた

あの日々が終わったと分かっている筈なのに、夢は現実のようにのしかかり、男の心を蝕んだ


しかし、今、男の心を占めていたのはそのような無用の恐怖では無かった

男はなるべく心を落ち着かせて枕元にある目覚まし時計のボタンを押したーー高校の卒業記念品としてもらった物だ

それから、ライトが点いた液晶画面に浮かぶ数字を見ると、またその肉体をマットレスの上に横たえ、すっぽりと毛布に包まった

手足の先端、頭ーー髪の毛一本でさえ、その綿の塊の外に出すことを許さなかった

男はただ、朝が訪れるのを待っていた

暗い室内に、浄なる太陽の光が淡く白くその床を照らし出すその様を心に描いて、ただじっと待っていた


              X


僕が3回目のおかわりへと立ち上がると、友人は物凄い表情で此方こちらを睨んだ


「もう少し、遠慮というものをだね」


慌てて僕の高度な対人スキルを披露する


「いやぁ、今日は特に美味しくてだね

腕を上げたんじゃないのかい?」


「そうだね」


全く、これだ

折角、滅多にお目にかかれない僕の貴重な「媚び」を投げつけてやったと言うのにこの他人事のような振る舞い

もう少し、喜ぶなり破顔するなり感嘆のあまり「舌が肥えている君にそう言ってもらえると嬉しいな」等と僕をたたえるなりすればいいものを

しかし、僕の作戦の本質は成功して友人は黙って食事を再開し始めた


ーー助かった

このまま行けば、友人は僕の人間性からはたまた健康面に関しても口を出しかねない

兄が2人と姉が1人、更に下には無数の弟、妹達から解放された僕は、しかし悲しい事にその事実は体の中枢まで侵略されていた

つまり、弱肉強食である

寧ろ、友人がのんびりのんびりと食べていると、彼が食いっぱぐれないかとても心配になる次第である


「正に今、食いっぱぐれそうだったんだが」


おや、彼はいつの間にテレパシーを取得したのか


「ところで、さっきの話はどう思う?」


華麗に話を変える、が、彼は顔をしかめて此方を見つめた


「さっきの話?」


「もう忘れてしまったのかい?

僕はいつか君が健忘症のあまりに僕の事を忘れ出すんじゃないかとひやひやするよ

さっき、君が本を読んでいた時だよ」


「何か言ってたか?」


僕は本当に友人が心の底から心配だ

彼の「はて」と言った擬音がつきそうな顔を見てると、込み上げてくるものがある


「君という人は、そうやって僕を揶揄からかっているのだろう、そうだろう

僕が一生懸命書いた話だって、冒頭の一文と締めのー文だけを読んでどんな話か推測する悪辣あくらつなゲームをしてるんだ、きっとそうに違いない」


「ぁあ、思い出したよ

君が某探偵の如く、労を惜しまず頼まれてもいない連続盗難事件を発見したという話だね」


僕は何かそこに含みを感じたが、早く話を進展させたかったので見ないフリをした


「勝手にとはなんだ!勝手にとは!!

好奇心という物を失った時、そのとき人類史の終焉が告げられるのだぞ

更に、僕には小説の題材を探すというれっきとした理由があるのだ

それを、休日に他の予定もなくて暇潰し程度の心地で「何か不思議な出来事とかありませんでした?犯罪が絡んでそうだとなおいいんですけど」などと根掘り葉掘りしつこく聞き周り、人様の貴重な時間を削った愚か者のように言うとは!!」


体が僕の意識を置いていって勝手に椅子から立ち上がった

すると、見兼ねた友人は僕の空っぽのお皿を手に取ると、白く輝く白米ーー僕にとっては真珠よりも価値があるーーと肉がゴロゴロと入ったルーを装って僕の前に置いた

どうやら、僕が空腹のあまり短気になっていると思っているようだ

それは、断じて違うのだと申し立てたい所だが、僕は温かい物は温かい内に食べるのが主義なのだーー椅子に座り直す


「うわぁ、ありがとうございます」


「とりあえず落ち着いてくれよ

……確か、君の聞き込みの結果でここら辺一帯で過去に盗難事件が多発したんだな?それも同時期に」


「ーーーあぁ、そうだ

しかも、ただの盗難事件じゃないーーー盗難されたのは家の鍵ーーーそれだけなんだーーー室内を調べてみるとーーー何も無くなっておらずーーーーーー鍵はそのうち共同の廊下やーーー落とし物として管理人にーー」


「わかった!わかったから!

一旦、食べ切ってくれ!!」


「しかし、これが無くなってしまったら…」


「もう一杯は許そう」


「恩に着るよ」


僕が食事に集中すると、彼も何か違う物を見つめているかのように視線を斜め上へと向けていた

これは、記憶を辿る時に人がする仕草の一つで、彼は何かを思い出しているようだった

僕がすっかり食べ終わったのを悟ると、友人は口を開いたーー彼も僕も育ちの問題で、口に物を入れながら話すと言う事はしないし、出来ない

僕は前述したような理由で、彼は恐らくそういう実家のルールだったのだろう、つまり僕らの前には空っぽの白いお皿だけが鎮座している……何とも物悲しい風景だーー


「君、盗まれた鍵の部屋はどれも物が少なくなかったかい」


「そう言うと思ったよ

つまり、鍵を手に入れたはいいが、いざ侵入してみれば「あら金目の物がございませんわ」という事を考えているんだね

しかし、実は話を聞いた1人には、偶々(たまたま)五万円が入った封筒を小さな収納棚の引き出しに入れておいたらしいんだが、それは全く手がつけられていなかったらしい

つまり、元から金が目的では無かった可能性がある」


僕が彼の予想を先じて否定したと言うのに、彼は動揺する訳でもなく僕の発言を捨て置いて淡々と続けた


「ーーそれで?

僕の質問は?

家具類は少ない、しくはほぼ無いと言ってもいい

そして、鍵を盗まれたマンションの部屋達は、どれも狭くてあまり家賃を取られる事もない寝に帰る為だけにあるような部屋で更に、住人の多くは同じ境遇の者、昼間は家に誰もいない独り者だらけ、という状況ではなかったのかな?」


「……あ、あぁ、そうだよ

その通りだ………僕、盗まれたのがマンションの鍵だって言ったかな?」


「言ってないよ」


「……まさか」


「一つ言っておくが、僕は鍵を盗んだ犯人ではないからな」


友人の言葉に安堵する

まさか、話をした当人がその事件の真犯人だったなどと言う展開は小説の中では面白いが、現実に起こってしまうのは遠慮したい

人間不信まっしぐらだ


「君が犯人でないと言うのなら、何で君はその情報を知り得たんだい?」


僕が当然の疑問を抱くと、彼はちらりと僕を一瞥いちべつするとそれからその視線は下に落ちた

どうやら、空っぽのお皿達が気になるようだ

確かにこのまま放置すれば、汚れが染み付いて落ちにくくなるだろうーーうぅ、想像すると気持ちが悪くなる


「………分かった

おかわりは明日に持ちこそう」


「………泊まるつもりか」


「いや、家に帰るよ

明日、朝一番に朝食で頂きに来るから布団の心配はしないでくれ」


友人は安堵のあまりか息を吐いた

僕はそんな彼を置いて、食器類をまとめて流しに持っていくと皿の中に水を張っておいた

こうしておけば、友人の話が終わった後に洗うのが楽だ

僕が戻ってくると、友人は何やら悶々(もんもん)とした表情だったが、目の前の椅子に彼の大親友が腰を降ろしたのを見ると、意識が此方に戻ってきたようだ

首下を手で触りながら、彼はまた視線を斜め上へと向けた


「うーん、なんと始めようかな

まあ、そうだなぁ

君がよくやるように、たまには僕の創作を聞いてもらおう」



(以下、友人の話)

「まず、ここに狡猾な男がいる

彼は持って生まれた才能というか、すこぶる秀でた思考力、想像力とそしてそれらを実行に移す胆力があった

が、しかしそれらを充分に活かし切れる精神は彼に備わっていなくて、彼の精神は幼い頃から大人になった今でも変わっておらず、自分のしたい事の為に時間を使いたかったし、逆に言えばしたくないと思った事は絶対にやらない


そんな訳だから、当然仕事は長続きしなくて優秀な脳味噌であっても働く期間が細切れであれば、当然収入はそう多くはない

何年かそんな風にやっていたのだが、職に就いては辞めるの繰り返しにとうとう飽きた


しかし、だからと言って一つ所に留まって働くなどもしたくなかった

前述したように、彼は自分のしたくない事に労力を使いたくなかったからだーーこの点に置いて彼は、世間的にありふれた仕事を嫌う人種の内の1人だったのだ


だが彼にはその幼稚な心以外のほぼ全てが備わっていたのだろう

幸運が働いて、たまたま彼の計画にぴったりの人間が現れた

その男は、彼も知っているブラック企業に採用された若者でーーその会社の噂は業界の人間でなくとも知っているーー如何いかにも無垢で真面目で騙しやすそうだった


彼はまず、計画に必要な下準備から始めた


1年前から自分が暮らしている部屋にちょっとした細工を施した

それから、書類やら服やらホームページやら様々な物も用意した

例の若者の携帯からメールアドレスを入手し、ーー彼は手先が器用で、幼い頃は暇潰しがてらスリをして遊んでいたーー彼に自分が作った架空の会社からメールを送信した


彼は突然決まった採用に慌てていた為、恐らく住居に関するホームページを多数閲覧しているだろうし、そうすると、それらの会社から物件情報がメールで送られるだろうから、そこに紛れ込ませれば、疑問が抱かれる事はないだろうと考えたんだろうね


しかし、ただ森の中に木を隠すのではいけない

彼に自分のメールに興味を持ってもらわなければならないから男は、彼が陥っているであろう混乱を上手いこと利用して、飴を目の前にチラつかせた

そして、男の策略通り数日もしない内に彼から連絡が来たんだ

2人は順調に話を進めていき、内見の日取りまで立てた


自分が作った罠に獲物がまんまと掛かったーー恐らく、彼は相当に楽しんでいたんだと思うよ

彼は根っからの犯罪者で、そういうたぐいは悪意が無いんだ

悪意が無いと言う事はそれが悪いとも思ってなくて、つまりは反省も後悔もしないし、良心は傷つかないしで永遠にやめる事はない

男にとってそれらはスリルのある遊びで、しかもお金を稼げるという一石二鳥だ


彼はそれからその近隣で条件に合うマンションに張り込み、まだ鈍っていない腕前で彼らのポケットやら財布やらから鍵を手に入れた

ここで、勘違いしないで欲しいのは、男がただ単に金が欲しいわけではないと言う事だ

本物のギャンブラーは絶対に当たる物に賭けないのと同じで、金を稼ぐ事よりも大事な事があるんだ

男は自分の考えた計画に心酔していた

だから、余計な事をしてーーつまり下手に金を盗んだりして計画を無惨に失敗させる事を男はしない

実際、鍵を盗まれた彼らがその事に気づく事はないだろう

『あぁ、あった!よかった!こんな所に落としてしまったのか』とこんな具合だ

ん?僕かい?

僕が鍵が盗まれた事とその詳細を知っているのは、有能な男の盲点のおかげなんだがそれは後で話そう


それで、次に男は条件に合うレンタルスペースを借りてそこを整えた

その条件と言うのが、不動産屋の横に併設された空きスペースで表から見ればそこが隣の不動産と関係ない等とは思えず、借り手があまり来ないのが、土地管理者の悩みらしい


そして、約束の日青年が訪れると、男は彼の持つ優れた才能の内の一つである演技力を行使して彼を騙したんだ


盗んだ鍵の使い途はここなんだよ

内見に用意した部屋が一つだけよりもいくつかあった方が、青年側としては断りづらいし、何より当て馬と言うのかな?彼に選んで欲しい部屋以外は内容を相当下げておくことで、その部屋の評価をあげようとしたんだろうね

『偶々(たまたま)、空きが出たので、本当だったらこの時期に残っているような物件ではないんですけどね…』

ここで意味ありげな笑みを見せてやる、とまぁこんな感じだ


さて、男が彼に選んで欲しかった部屋というのが、先程出てきたちょっとした細工をした彼自身が賃貸している部屋だ

男も気が引き締まっただろうね

違和感を抱かれないように、「普通に、普通に…俺は不動産会社に就職して3年目の若手で、彼の心境に自身を重ねて何とか彼にいい部屋を紹介しようとしている男なんだ」と自己暗示でもかけてね


男はそこで今後必要な罠をばら撒いた

罠、と言うものはね物じゃない程、その効力を増すんだよ

1番危険な罠というのは、認識を変えさせるという事だと僕は思うんだ

人間にとって最大の能力と言っていい「思考」の段階に仕掛けられた罠が最も狡賢くて効果が計り知れないんだ


男の罠に純粋な青年は納得して近所付き合いはしない事ーーそもそも、彼がこれから入る会社は近所付き合いが出来るような就業時間ではないのだが、念のためだーーそれから、少し変わった天井の形にも理解を見せた


全てが万事上手くいっていた

彼が遅い採用をもらった事も、遠方から来ている事も、隣人交流に興味が無いことも、彼の入る会社が彼を始発まで帰さず、それから朝の9時には出勤してくるよう無言の圧を強いる事実も、そして1番は彼が素晴らしく純粋で人を疑うぐらいなら自分自身を疑うような人間だったと言うことだ

青年は男の目論見通り、その部屋を希望し、偽の契約書にサインし、後日引っ越した


計画は完遂した

いや、完遂は可笑しいか

計画はずっと上手い事続行されていたーーそれから7年間はね」


友人は一旦、そこで話を区切ると、いつの間にか用意されていたコップの水で口を濡らした


「先程、僕が何故その事実を知っているのか、という話なんだが

僕は実はその性根のいい青年を知っていてね、と言うよりも彼の叔母さんと知り合いなんだ

彼女は大した女傑だよ

大学で昆虫の研究をしているんだがね、世界中のあらゆる所に出向いては昆虫を採取して調べているのだけど、この話がまた面白くて」


「それはまた今度聞くから!

それで?どういうことなんだ??続きを話してくれよ」


「いや、本当に彼女の話は面白いんだよ?

…まぁ、そうだね、話を戻そう

彼女は世界中研究旅行しているとは言ったが、住所はここからそう遠くはないところでね

ある日の朝、消息の知れない甥っ子から電話が来たんだ

『助けて欲しい』

彼は唯一近くにいる親戚が叔母さんだから連絡したのだろうけど、彼女は丁度その時、日本ではあるんだが、その最北端にいてね

直ぐに向かうなんて事は出来なかった

しかし、甥っ子の怯えようは凄まじいものでがたがたと震えている姿が目に浮かぶようだったらしい

朝方、陽が登ると共に家を抜け出し、また大変に慌てていた為、碌に防寒もしてない彼が寒空の下、携帯片手に助けを呼んでいる


ーーなんとも心を揺さぶられるね

それで、住所を聞いてみると古い知人である僕の近所じゃないか

とまあ、その流れから僕の下に連絡が回ってきたという訳だ


実際、彼は酷くやつれていたよ

知人の話では穏やかで朗らかな青年と聞いていただけにその2種類の疲労の影が濃く顔に浮かんでいるように思えた


それはーつは長期的な物で、もう一つは突発的な物だ


しかし、この哀れな青年を現時点で特に悩ませているのは後者だった

僕は彼の話を聞いて、そして、彼の部屋に乗り込んだ

彼も2人ならと後ろから着いて来た

そして、君……察しがついただろう?」


「いや、すまない

まださっぱりだ」


「そうか、ならもう少し話そう

僕らはある一点を確認したのち、僕と彼の推測が正しいのか確かめる事にした

彼は無職らしいし、僕は僕でいつも通りの具合で時間は充分にあったからね


僕らはまず、昨日届いたという部屋の更新手続き片手にその不動産へ向かった

大抵の場合、同じマンションであれば、同じ会社が中立ちをしているからね

それで、彼と同じ階の全ての部屋がロフト付きでしかも、家賃相場が二万五千円ほど安い事を知った


それから、彼の話を聞いて、僕はここら辺付近の便利屋やら何やらを料金の安い順に訪ねていくことにした

これは、何と一軒目から大当たりしてその心当たりのあるおじさんに話を聞いた

これは、僕がこれまで何かあった時に、少しだけ知恵を貸したおかげで信用して話してもらえたのもあると思うよ


まったく人助けは買ってでもしろ、とは的を得ているよ

僕は実際、今だってそれらによって助けられている節があるなぁ…うん、わかったわかった


それでね、その話によると七年前のある一晩、同じ地域で鍵を開けて欲しいという注文が二、三件も入って大変に忙しかったらしい

当然、彼は泥棒の仕業を考えてーープロは、長い間その地域にいるのは危険だと考えてるから素早く警戒を強められない内にやるんだーー、鍵を開けてやった後に何かあったら交番に相談するようにと親切に教えたんだが、どうやら馴染みの警官からはそれらの情報の音沙汰もないしどうやら事件性はなかったのだなと胸を撫で下ろした、と言う話をしてくれた


つまり、僕と君の話はそこで繋がるんだよ

男は、鍵屋の存在を気にしなかった事と、興味本位で鼻を突っ込む好奇心旺盛な成人男性がいるとは思わなかったんだろうな


いや、待ってくれ

僕は何も君を批判しているわけじゃないぞ

その無駄な好奇心のお陰で発覚した訳じゃないか

一見、無意味と思われる行為のお陰で、これまで発見できなかった病気の原因を突き止めたり、本筋では知り得なかった貴重な情報達を得れているんだ

さっき君が自分で言っていたように、僕らが今日こんにちここに居られるのはそれらのおかげでもあるのだから、君のそれをないがしろになんかしないさ


うん、分かってくれたかい


それで、僕らは世にも奇妙な犯罪の全貌を知ったーーこれは鍵の盗難なんかを指してるんじゃないよ、そうだなぁ……題名でも付けるならば「一年多い事件」とかかなぁ?」


「……」


僕は黙り込んだ

彼のネーミングセンスの無さに唖然としているわけではない

僕にも、ようやくその「一年多い事件」(笑)の正体が分かったのだ

僕はそれらを咀嚼そしゃくしてから口を開く


「ーーつまり、そこに男はいたのか?7年間ずっと?」


僕は背筋がぞくぞくとするのを感じながら答え合わせをした

彼は僕に「正解」の返答を出した

それに気づいた時の青年の恐怖が僕にも堕された


「いや、可笑しい事を思いついたものだね

ロフトになっている部分になるべく同質の板を取り付けてね、外から見ればなんの変哲もない壁にしたんだ

これがまた上手い出来で、青年が気づかなくても不思議じゃないよ

何より、まさか天井だと思っていた空間が空洞で、中に人がいて悠々自適に暮らしているだなんてそんな事思いもしないだろ

彼はブラック企業でこってり搾られていた訳だし、そんなとこを気にする余裕もなかっただろうしね

昼間、彼が居ない時に抜け出して、郵便受けを整理したりーーこれは彼の唯一の仕事と言っていいだろうね、その他更新手続きやら何やらもだ

男は彼から拝借している家賃の内、余った部分を自分の小遣いにしていたようだよ

同じ階の気のいい連中に、かつて不動産を名乗った男と同じ容貌の、と言うより、8年前から彼らのご近所さんとして関わっていた男が、至って平然として挨拶を交わしているのも聞いた

逆に、最近男と出くわす事がないがどうしたんだ?と尋ねられたよ」


「それで、どうだったんだい?」


「え?」


「だから、会社の魔の手から抜け出した青年はその殆どを家で過ごしていたのだろう?半年も前から……

だからこそ、男は本物の更新手続きの書類を隠す事が出来ずに、真相が青年の前に届けられた

………君は、その…『存在しないはずの部屋』を開けたのだろ?」


友人はにやりと顔を歪めた

酷く愉快そうだ

彼のこう言う人を揶揄(からか)って楽しんでいる姿を見ると、彼の本性が見えてくる


「まさか」


僕は想像してしまった

白い長方形が何を隠しているのかを気づいてしまった以上、それはいくら変哲もないように見えた壁だとしても、いや寧ろそののっぺりとした様が不気味さを増す

右隣にいる男が実は殺人鬼なんですよと、左隣の男から耳打ちで囁かれた時、その横顔を見た時の心地と言えばいいのだろうか、つまり日常の中にある異常をーーそれも虫が湧きそうなーー知ってしまって、もう以前と同じような目で見れなくなってしまうのに似ている 

好奇心と懐疑心ーー本当にそんな事があり得るのだろうか?ーーが織り交ぜになって壁の表面やすみに指先を走らせるーー取っ掛かりだ

その些細な手応えに心臓がびくんと揺れた

無意識に唾を飲み込み、それを手前にゆっくりと引く

ギギギギと開かれた扉に外界からの明かりが少しずつ注がれれば、そこには事実、目を背ける光景がーーーー


「残念ながら」


彼は続けた


「君の思っているような事態には陥ってなかったよ

そもそも幾ら冬とはいえ、人間の死体が直ぐ真上にあったら2週間もしないうちに匂いで気づくよ

空気が入る為に完璧に密閉されてる訳でもないのだし

ーー開かれた壁の向こうには、天井は低いが、座りこんで本を読むのに丁度よく、寝っ転がるには充分なスペースの隙間がそこにあったけど、男はおろか、その痕跡を辿れるような物は何一つ残っていなかった


ただ、僕らの眼前には彼が7年間暮らしていた空洞があった」


友人の言葉に僕はほっと胸を撫で下ろした

全く残念ではない

彼の言葉の使い方は少し人とズレているなと僕は度々思う


「でも、全くの痕跡は無いって言っても更新手続きやその他諸々で男の名前は分かっているんだろ?」


「ああ

突然の事で慌てたのか、平和な生活でボケていたのか、それらを処理する事は頭から抜けてたらしいね

出る機会がいつ無くなるか分からないんだ、自分から居座るのと閉じ込められるのでは同じ行為でも違うものみたいだね」


「じゃあ、そいつは捕まったのか?」


「なんで?」


「なんでって、苦しい想いをしていた青年に追い討ちをかけて甘い汁を啜っていた奴なんだろ?

らしめるべきじゃないか」


僕は語気を強めて言った

どうにも人を騙す連中が気に食わない

憤然とした僕と対照的に友人は静かでそれでいて少し物々しく言葉を紡いだ


「いいかい、君

彼が男のした事に対してどんな感情を抱き、そしてどのような判決をしたのかなんて、そんな事は僕らには無関係なんだよ

何故なら、それらは全て彼の権利なんだ

男を弾劾だんがいするのも、ゆるすのも、それは被害者である彼の権利だ

無関係の、それで不利益を負ったわけでもない人間が自身の心情の為だけにやっていい行為じゃないよ

先日、君が騙された時の怒りを男に上乗せしちゃいけない」


「騙されてなんかないや!」


「僕が居なかったら、20万が色彩豊かなコピー用紙一枚になるところだったのを忘れたのか

ああいうのは、忘れずに教訓にするのがベストじゃないかなぁ」


全く、この友人はこうもあけすけに物を言うから、僕ぐらいしか友人がいないのだろう

僕は彼の言葉に口を閉じた

双眸そうぼうを閉じ、集まった数多の人々の意見を聞きながらも自分の信念を信じ決して首を縦に振らなかった過去の偉人達の厳粛さ同様に口を閉じたのだ

決して「うぐぐぐぐ」などと三下の悪党みたいに唇を噛んでいない

しかし、友人の言う事も腹立たしいだけあって的を得ているのだ

忸怩じくじたる想いで黙り込む僕を見て、彼はおもむろに口を開いた


「でも一つ、君に告げるのだとしたら」


「?」


「彼は今の生活をそれなりに満足しているらしい

その事実だけで充分じゃないか?」


友人はそう言った

僕も彼の意見に頷いた

この世は不確かで出来ているが、それでも他人の言う「こうであれ」ほど脆い物は無い

今まで散々だったのだろうから、彼には彼の為の幸せを見つけて欲しい



ーーー予想だにしない真相とその結末ーー主に青年の現状とに心を奪われていると、いつの間にか友人のマットの上にはほかほかと湯気がたった美味しそうな一品があった

ビーフシチューは照明の灯りを受けて煌めいており、当の本人はスプーンを片手に手を合わせたーー逸る気持ちが抑えられないようだ


「いただきます」


「待て待て、ずるいぞ!」


「何がずるいだ

僕はまだこれで2杯目だ

そもそも、僕が家主でこれは僕の物だぞ」


彼はそう言い切ると、麗しの君をスプーンで持ち上げ口に運んだ

僕はひもじさで泣き出しそうだ

僕の哀れな姿が更に飯を上手くさせるのか、屈折した性格を持ち合わせた友人はだらしなく顔を緩ませながら言った


「あぁ、美味しいなあ」


それで、僕は深く考えることをやめた

最後まで読んで頂いてありがとうございます


もし、宜しければ同シリーズの他の作品も読んで頂けたら嬉しく思います


また、12月10日の金曜日の午後6時ごろに同シリーズで『未遂の男』という作品を私の身に不幸が無ければ載せるつもりなので、もしお時間ありましたらお付き合い頂けたら幸いです

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