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本日2話目です

 リクはアイをそのまま救護室へと連れていくと係員に伝え、三人と一緒に向かう。


「ところでリク、その持ち方はどうにかならんのか」


 ルーシーがアイの持ち方に注文をつけてくる。これにはエルも激しく同意している。リクがお姫様抱っこでアイを抱えているのが気に入らないらしい。とは言ってもわざわざ持ち方を変えるのも面倒であるのと、鎧を着ているので女性特有の柔らかな感覚など微塵もなく特に色っぽいことにもならない。


「そう言われても…鎧だって着てるしこれが運びやすいんだよ」


「そんなこと言って喜んでるんじゃないかしら?」


「お父さん抱っこすると嬉しいの?じゃあ後で私も抱っこしていいよ!」


「ああ、後でたくさんしような!」


 助かったとばかりにフーの提案に乗るリク。嫁二人は相変わらず、まだ一回しかしてもらったことないのにと言いながら厳しい目を向けてくる。さすがに声をかけておいた方がいいとリクも思う。


「二人とも、またしてあげるから機嫌を直してくれよ」


「絶対よ!じゃあ私からね」


「何を言っておる。妾が先に決まっておろう」


 もう好きにしてくれと思いながら、先を急ぐリク。早めに精神操作を解除してやらないと、フォータム共和国から横やりが入るかもしれない。

 そして救護室に着いた四人は中に入るとベッドにアイを横たえる。救護室にいる医者には王国側から話が行っているようで、特に何も言われない。


「さて、さっさと終わらせてしまおうかの」


 そう言うとアイの頭にルーシーが両手を掲げると淡い光を放つ。やはりこういった手合いの魔法はルーシーの方が得意なようだ。エルはおかしな所がないか注視している。

 やがて治療が終わったのか、ルーシーが手を下ろす。どうやら気付けも同時に行ったようでアイのまぶたが動いている。


「う、うぅん…ここは…?」


 アイが目を覚まし、辺りを見回している。


「目が覚めたようじゃな。ここは闘技場の救護室じゃよ、勇者アイ」


「恩人に向かってお礼でもいったらどうかしら?」


 うわぁ、二人ともお姫様抱っこの件を根に持ってると思いながらリクはアイに話しかける。


「覚えているかい?君は俺に落とされたんだ。それで俺がここまで運んできたんだよ」


「勇者リク…そっか、私負けたのか」


 その表情を見てリクは安堵する。自分の顔を見ても敵意を見せてこないことから、精神操作は解除されたと判断できた。


「連れてきてくれてありがとう。一つ聞いてもいい?」


「?どうぞ」


「なんで私の雷撃が聞かなかったの?」


「ふむ、確かに妾もそれは興味深いのう。あれは物理障壁や魔法障壁でどうにかなる代物ではあるまい」


「うん、私もそれは疑問だったのよね。どうしてなの?」


「あー、あれは俺のスキルによるものだね。君は知らないだろうけど、二人は俺が魔力操作で体に沿って障壁を張っているのを知ってるよね?」


「うむ、あの変態障壁じゃな」


「ええ、変態障壁ね」


「お父さん変態なの?」


「…二人とも…フーに変な言葉を教えるな…」


 フーから自分に向けて発せられた変態という言葉にリクがひどいダメージを受ける。


「…っふふ」


 一連のやり取りを見ていたアイが噴き出す。


「…ま、まあその障壁だよ。あれは厳密に言うと体に沿って張っているように見えて、そうじゃないんだ。それで特性は物理障壁でも魔法障壁でもない。言うなれば対ダメージ障壁ってとこだね。物理攻撃、魔法攻撃、自然現象なんのダメージだろうが軽減が可能なんだ。とはいえ防ぎきれないほどの攻撃であればダメージは通るよ。事実君の雷撃も僅かだけどダメージを通された」


「アイでいいよ。今まであれを受けた人間で動いた人なんていなかったのに…」


「まあ、相手が悪かったのう。それよりもそんな障壁を使っておったなら妾たちにも教えてくれればよかろう」


「そうよ、なんで黙っているのよ」


 いきなり非難してくる不機嫌な嫁二人にタジタジになりながらリクが答える。


「あれは身体強化魔法の延長なんだよ。体の細胞一つ一つの耐久力を向上させてダメージを防いでいるようなものなんだ。だから見た目にはまるで体に沿って障壁が出来ているように見えるって訳。二人にも多分出来ないと思うよ?ちなみにこれは俺が初めてこの世界に来て作った魔法なんだ。接近して殴るには自分が固くないといけないからね」


「本当にリクの魔力操作はズルいわ。何でもありじゃないの」


「全くじゃな。魔力操作と言えば何でも済むと思っておるようじゃ」


「お父さんズルいの?」


「ズルくないよ?二人はお父さんの力が羨ましいだけだよ」


 リクはそう言ってフーの頭を撫でてやり、約束通り抱っこしてあげる。するとフーも負けじとリクの頭を撫でて誉めてくる。


「そうなんだ!お父さんすごいもんね!」


「ああ、そうだぞ!お父さんはすごいんだ!」


 嫁二人が抗議の目を向けてくるがリクは無視しておく。


「今の話を聞く限り、あなたはもしかして召喚者なのか?」


 アイが目を見開いてリクに質問してくる。


「俺もリクでいいよ。聞いてなかったんだな。俺も召喚者だよ、そして俺は魔王討伐まで思考操作を受けてた」


「…思考操作?」


「ああ、召喚者には条件付きで思考操作を施すことが出来るんだ。俺なら魔王討伐するまでは思考を制限されると言うもの。アイの場合は俺を殺すまで思考を制限すると言うものじゃないかな?」


「…ほ、本当にそんなことが…?」


 突然告げられた事実にアイが困惑する。リクももっと丁寧に教えてあげたいが、今は時間がない。


「ああ、今俺を見ても殺意を抱かないのは、嫁二人が解除する魔法を使ったからだよ」


「…確かにあなたを見たらなぜか殺さないといけないって。そんな感情が湧いてきてどうしようもなかった」


 消え入りそうな声で語るアイ。俄には信じがたくても状況からして事実と気付いたのだろう。リクは彼女の気持ちがよく分かるので、どう声をかけていいかわからない。自分の意思に関係なく人を殺そうとした。考えただけで恐ろしい。


「リクは人が好いからのう。自分を殺そうとするものを助けてやるんじゃから」


「そうね、解除魔法を作ったのは私たちだけど、一番感謝しないといけないのはリクにだからね」


「…ありがとう、リク。あとごめんなさい」


 辛うじて聞こえるほどの声量だが、お礼と謝罪をするアイ。


「お礼は受けておくけど、謝罪は要らない。アイが悪いんじゃない。俺だって思考を操作されてたから分かる。いくら俺が気にするなと言ったところで難しいと思うけど、運良く殺さなくて済んだくらいに考えておいた方がいい」


「うん、ありがとう…」


 そう言われて少しだけ表情を緩ませるアイ。その頬にわずかに朱が差し、エルとルーシーが少し複雑そうな顔をしていることにリクは気付かない。彼女の今後をどうするべきか悩んでいた。これだけの観衆と各国の要人の前で敗北したのだ。もはやフォータム共和国の勇者の地位に戻ることは出来ないだろうし、なによりも本人が望まないだろう。かといってうちで面倒を見るのもさすがになぁとリクは思う。嫁二人がいるのに、新たな女性を連れ込むとかどこのハーレム系主人公だよと考えていると、国王が呼んでいるとの連絡が入る。


「今伺います。アイも来るといい。きちんと各国要人の前ではっきりさせておいた方が都合がいい」


「…うん…分かった」


 まだ複雑そうな顔をしているアイ。こればかりは時間がかかるのは仕方ないとリクは思う。そして自分にはエルとルーシーがいたが、彼女にそんな存在はいるのだろうか?と。一人でいるとふさぎこんでしまうのは身をもって証明済みだ。

 フーを胸に抱いたまま、五人は来賓の席へと向かう。さすがに席に着いたときにはフーを下ろす。来賓席にいたのはリクの想像を越える面々だった。スプール王国からはもちろんフリュー王と宰相のプランタ。ザマール公国からはゾーマ大公と補佐官エテ。フォータム共和国からはオートン大統領と外交官ルパート。ウィンテル帝国からはヴィンス皇帝とヴェルビッヒ公爵。漏れ無く国のトップが来ていた。

 フォータム共和国は仕掛けた張本人だからまだしも、ザマール公国とウィンテル帝国に関してはリクが元魔王のルーシーと婚姻を結んだという話が大きかった。直接確かめたいという思惑と、二国のトップが来るのだからという思惑が重なった結果だった。

 しかしこれはリクにとって好都合だ。きちんとルーシーとの婚姻を公にして魔族領への侵攻の牽制をしておきたいのだから、各国のトップがいる現状は願ってもいないものだ。ここで上手く立ち回ることが出来たのならば、自分達にも魔族領にもメリットが大きい。

 そして非公式ながら、各国のトップが一堂に会した会談が始まる。

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21時にもう1話更新です。

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