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【完結済】異世界転移したけどチートなスキルも魔力もゼロなので、狐耳美女錬金術師に拾われてスローライフを満喫します。  作者: 橘つかさ
東方より来た使徒?

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79.状況確認

「ふぃー、助かった……」


 俺は安堵の息をこぼしてしまう。

 ルドルフ研究室に、リズの姿はなかったけれど、整理整頓されて掃除の行き届いた室内は、外の喧騒が嘘のように、静かな時間が流れていた。


「足止めされるような襲撃が、最初だけで良かったですわ。でも、テトラ様とリカ様のお二人を止められるような実力者が、学園にいるとも思えませんけれど」

「いやいや、それは買いかぶり過ぎというものです、王女様。純粋な一対一ならば、某は負ける気はないですが、一体複数や魔導具(マジックアイテム)を使われれば、お手上げになります」

「……玉砕前提の肉壁をやられると、確かに厄介。覚悟のない連中ならば、山積みで襲ってきても問題ないけど」


 ロロ様の賛辞に、テトラも六花も謙遜する。二人の様子から、本心のように思える。

 ただ何となくだけど、全員再起不能でよければ、何人束になって襲ってきても、テトラと六花は難なく始末してしまいそうな気がする。

 俺は、死屍累々な流血沙汰な光景を想像し、少し気分が悪くなってしまう。

 元の世界の日常よりも、命の価値が低いことに慣れてきたといえ、学生が死ぬような光景は見たくないな。


『ロロ様、ご無事で何よりです』


 唐突に部屋に響く厳つい声。声のする方――部屋の隅に置かれた鳥かごを見ると、文鳥のような小鳥が止まり木に掴まりこっちを凝視していた。

 小鳥から淡い燐光が舞っている――様に、俺には見えた。ルドルフさんの使い魔、それがあの小鳥の正体だ。


「ルドルフ、今どこ? 状況は?」

『すみません、足止めされて学園にもたどり着けておりません。魔術を妨害する結界が展開されているようで、学園内に配備している使い魔から収集できる情報も制限されている状況です』

「ルドルフ様、王宮から学園へ支援は行われますか?」

『早急に行われることは難しいでしょう。他国に弱みを見せないためというのも理由ですが、王都に魔物の大群が押し寄せています』


 ルドルフさんの言葉に、みんなが息をのむ。

 魔物大量発生(スタンピート)が、このタイミングで起きるなんて意図的すぎる。

 顔を青ざめさせるロロ様に、ソっと寄り添うテトラ。テトラのイケメンな動きに、俺は少し嫉妬してしまう。


「ルドルフ様、王都は無事なのですか?」

『はい、王都は間違いなく無事です。王国最強の剣――クォート様が、単身迎撃に向かわれました。どんな強力な魔物が出現してるいようとも、もう間もなく魔物の大群は殲滅されるでしょう』

「お兄様が単身で迎撃なんて、それ程の緊急時なんですか……」

『魔物の発生地点と王都へ向かう侵攻ルート上に、いくつか街がありました。避難が間に合わない可能性が高く、クォート様が近衛隊団長――アヴロズ様に進言して単独で迎撃に向かわれたようです』

「た、単独って、むちゃをさせすぎなんじゃ……。いくらクォートが強くても、魔物の大群を一人で相手なんて出来な――」

「はっはっはっ! それはそれは、某もついて行きたい話ですな」


 俺の言葉を六花が遮る。彼女は興味津々な顔で、使い魔を見ていた。

 俺は少しムッとしながら、立花に視線を向ける。


「むむっ、凛太郎、その目をやめてくれないか。笑ったことは不謹慎だとは思うが、王国最強の剣の逸話を知っていれば、当然の反応だと某は断言するぞ」

「当然の反応……」


 六花の言葉に、俺は訝しげながら周囲を見渡す。

 テトラもロロ様も、何とも言えない顔をしていた。使い魔からも、ルドルフさんからも似たような気配が伝わってくる。


「お兄様は、同士討ちで怖れられていますけど、単身ならば、間違いなく最強ですから」

「そうですわね。単身ならば、同士討ちの心配もなく、全力で戦うことが出来るでしょうから」

『クォート様が全力を出すためには、単独が必須ですからな』


 若干、諦めを感じさせる三人の声。それを聞いて六花は、どうだと言わんばかりに胸を張る。

 クォートって、そんなにヤバいのか。


『話を戻しますが、王都の防衛が優先のため、学園の騒動に対しては後回しになっています。テトラ様、ソーマ、時計塔に向かって貰えないか?』

「向かうのは構わないけれど、騒いでいる輩を鎮圧する方を優先しなくていいの?」


 テトラの質問に、ルドルフさんが少し言い淀む。


『そこにいる扶桑の留学生』

「学園長、某が如何した?」

『これから王国の問題に巻き込むことになるが、他言しないことを誓ってもらえないか?』

「ふむ、承知した」


 ルドルフさんの申し出に、六花は即答する。彼女の反応は想定外だったのか、使い魔からルドルフさんの戸惑う気配が伝わってくる。


『それは、本当なのか?』

「学園長が某を疑う気持ちは理解している。扶桑をよく理解しておいでだ。不信を完全に払拭することは出来ぬだろうが、某は扶桑のために動いてはいない。某は、某の一族の悲願のために、大陸に渡ってきた。扶桑の利になる情報を得たとて、扶桑へ情報を送るつもりは毛頭にない」


 真っ直ぐに使い魔――ルドルフさんを見ながら、キッパリと言い切る六花。

 全身から放たれる凛とした気配から、彼女の言葉に裏がないことが伝わってくる。

 ルドルフさんは、一呼吸をおいてから口を開く。


『学園の中央にある時計塔の地下に、王都の防御結界の核の一つがある。今回、騒動を起こした連中の目的もそれだろう。現に騒ぎを起こしている連中が時計塔に集まっている』


 ルドルフさんは、俺たちに時計塔の防衛を指示するのだった。


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