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碧き舞い花//並行譚  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
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「最初の敵として不足なし」

 顔まで黒き鋼に身を包んだ敵はエァンダとサパルを認めると、律儀に名乗った。

「俺は新六番隊隊長、コンゴウル・カル。初陣、華々しく飾らせてもらうぞ、真の鍵束の賢者、そして死神」

「挨拶なら顔くらい見せてするんだな」

 とサパル。鍵を敵に向けて回す。

「悲しむことはない」エァンダは友に続いて、飄々と肩をすくめて見せる。「初陣で死ぬ戦士は少なくない」

 トラセードで懐に入り込んだ。と同時にサパルが回した鍵から放たれた一筋の光がコンゴウルの兜に当たって、あらぬ方へと反射した。

「ふん? なにかしたか?」

「なっ」

 コンゴウルは独特で小さな高音と共に拳を振り上げ、懐にいたエァンダにハンマーのように振り下ろす。

「ぅわっ……っと」エァンダはトラセードでサパルの隣に引き返してその攻撃を躱す。「おい、サパル真面目にやれよ」

「ごめん。まさか反射するとは。特殊な金属か」

「俺のタシェと一緒だろ、あれ」

「え?」

「今、動いたとき伸び縮みしてた」

「よく見ているな」コンゴウルは表情の変わらぬ兜で頷く。「その通り。意思を持ち、使用者に合わせその大きさを変える。それが影鋼(かげはがね)から作られた金属武器の特徴。だが俺はそれをさらに発展させ、装甲にしたのさ。装着者の負担を少なくすることは当然、なにより動作を補助し普段では出せない力を発揮できる」

「説明どうも」エァンダは肩をすくめてみせる。「で、鍵の力を反射するのはなんでだ? 影鋼にそんな効力はないぞ」

「おお、興味があるのか。いいか、それはな……秘密だ」

「……」

 一瞬、時が止まった。トラセードではなく、静寂だ。それをエァンダが破る。

「あっそ!」

 再び敵の懐に入り込み、タェシェを振るう。腹に受け止められた。

「固っ……!」

 斬り抜くことはできなかったが、エァンダはコンゴウルの鎧の上でタェシェを滑らせ、横に振り抜く。

 フィーンッ――。

 金属同士が擦れる音が滑らかに響いた。それでも、コンゴウルの鎧に傷はつかなかった。

 コンゴウルから離れエァンダは肩をすくめる。「さすがは影鋼だな」

「砲門、解錠!」

 エァンダの横を砲弾が通り過ぎた。そして鎧の敵に直撃した。

「うぅ、容赦ないな、サパル」

「能力閉じられないんだから、これしかできることないだろ?」

「ま、そうだな」

 とエァンダが砲弾直撃にへこみ一つつけなかったコンゴウルへと向かおうとした時だった。

 世界に空いた穴に向けて一条の光が刺さった。途切れることなく刺さり続ける。

「……あれは研究施設のあるほうだね」サパルが光が飛んできている方向を見て言った。「魔導賢者がいるみたいだ。閉じようとしてるみたいだけど……」

「力が足りてないな」エァンダは一瞥程度に魔導賢者ヒュエリのいる方向の気配を感じ取ってから相棒を見やる。「協力できるか、サパル?」

「魔素以外が使えるかどうか……。ここは任せても?」

「当然」

「でも、無理は――」

「しないさ。しなくても充分いける」

「……本当に?」

「ああ」

 エァンダはサパルを見ずに頷いた。その視線はすでに敵に向いている。

「じゃあ行ってくるよ」

 サパルが中空に扉を出現させて、その中に消える。

「無理をしないで俺に勝てる、そう言ったのか、死神?」二人きりになると、コンゴウルが兜にこもった声で確かめるように言った。「冗談だよな? 鎧に傷をつけられなかったのは今さっきのことだが、忘れたのか?」

「ふんっ、冗談というか、嘘だ。俺は嘘を言った」

「なに?」

 エァンダはタェシェを左手に持ち替える。

「俺は無理をする。そうすれば、充分いける。これがほんとのことだ」

 包帯の巻かれた右腕を前へ出すと、タェシェを軽く右腕に向けて振るった。

 するすると落ちてゆく白。露わになる黒。

「あいつがいたら絶対に止めるからな。これくらいなら制御できるにしても、そして一瞬で終わるとしても」

「一瞬で終わる? 包帯を取ってなにが変わるという?」

 エァンダはタェシェを右腕の黒と同化させる。

「それはな……」

 前にいたコンゴウルが、一瞬にしてエァンダの後ろにいた。

「……秘密だ」

 コンゴウルの上半身が、ぼとりと下半身から斜めに滑り落ちた。

「お前も秘密にしただろ?……ってもう聞いてないか」

 エァンダはタェシェを収める。そして真っ黒な右手を見つめる。

「…………包帯どうするか」

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