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#98

「ささ、ここが領主様の館ですぞ!」


 元気ハツラツに案内してくれてるのは長老だった奴である。今はもう青年としか言えないから長老というのもなんか違う。老じゃないし。とりあえずわかってた事だけど一番デカイ屋敷が私の家らしい。ある意味さ……この家だけで、皆さん収容出来るんじゃないかって感じ。それくらい人がいない。確かにこの屋敷大きいけど、そんな規格外に大きい訳じゃないからね。

 

「この領地に居るのはさっきの人達で全部なんですか?」

「そういうわけでは無いですぞ。小さな集落が他にも点々としております。ですが一箇所にとどまって生活してるのはここくらいですな」


 遊牧民かな? ほんと原始的な事やってるね。ど田舎とは恐ろしい物だ。なんでそんな風になっちゃってるの? この世界魔物とか居るし、少数で居るのは危険でしょ。

 

「ここは土地が痩せてますのじゃ。だから一箇所に留まっても途端に食料がなくなります」

「だから食料を求めて点々とするしか無いって事? 魔物は?」

「幸いな事にここらには魔物も少ないのです」


 なるほどね。だから集落規模でもどうにか出来るのね。てかそいつらにも挨拶した方がいいの? それぞれに長とかいて面倒そうだな〰。まあ私の美貌があればどうにでも出来るか。特に人種には私の美貌がダイレクトに効くからね。

 

「それぞれの長もこちらに来るようですので、向かう必要は無いかと。貴女様は有名ですからな」

「そうなんだ? どんな風に?」


 だいたい知ってるけど、私はとぼけて聞いてみる。ほらほら言いなさい。私の輝かしい噂を。

 

「獣人の国をその美貌で落とせし天使でしたかな?」

「で、どうだったの? 本物を見て」

「死ぬほど美しく御座います」


 本当に死んだ奴が言うと説得力が違うね。そう思ってると、長老だったやつが近づいてきて顎クイしてきた。ちょっと私貴族なんですけど?

 

「若返った儂は貴女の目にかないませんかな? これでもかなりブイブイ言わせてたんですぞ」

「確かにそれなりにいい顔してるんじゃない? でもそれだけで私を抱こうなんて百年早い。イケメンなんて探せばそこそこ居るものよ。私がほしいのは使えるイケメンなの。使えるんならイケメンじゃなくても別にいいし。寧ろ人じゃなくてもね」

「むっ――ぐぬわ!?」


 私を顎クイしてた長老がいきなり引っ張られて羽交い締めにされる。そこには何も見えないように見えるから屋敷の使用人らしき人達が驚いてる。

 

「一体なにが……」

「カメレオン、姿見せていいわよ。どうせ受け入れてもらわないとだしね」


 そんな私の言葉で長老を羽交い締めにしてたカメレオンがその姿をあらわす。と、同時に使用人の方々が悲鳴を上げる。獣人……それだけで恐怖の対象になるのだろう。この国はその獣人の国に勝ったんだけどね。でもそれもつい先日の事。昔から刷り込まれてる獣人への恐怖がそんな一気に無くなるわけではない。そして外でも同じような悲鳴が聞こえる。蛇たちが見つかったか。

 獣人はダンプの中に居てもらったんだけどね。けど、この領地では獣人も人種も同じように暮らしてほしい。面倒事は嫌だからね。とりあえず騒ぎを納める為に再び外へ。そこには既に鉈やら桑を持ち出した住民達の姿があった。

 いくら魔物が少ないと言っても武器それでいいのって感じ。もっとマシなのないの? まあタダの剣とか出してきても意味ないと思うけどね。あいつら普通に弾丸避けるしね。人種が振るう剣なんて、止まって見える事だろう。だからそんなのは無意味。多分それを皆わかってる。だってその手は震えてるもん。

 

 早く安心させて上げないとまた誰かショック死するかもしれないし、急ぐか。

 

「皆さーーーん! 落ち着いてくださーーーい!」


 そんな私のよく通る声に皆の視線が集まる。そして私が右手を掲げると、獣人達がサッと腰を屈めて礼をする。そんな様子に驚く住民たち。あの野蛮な獣人が人種に頭を下げてる……と思ってるんだろう。けどここで勘違いしてほしくないのは、下ではないと言うことだ。私が一番上だけど、その下は平等なのだよ。そこに変な階級なんかいらない。

 獣人は人種に負けた……その事実が住民達に変な意識を刷り込まないと良いんだけどね。釘はここで打っておくよ。

 

「彼等は私の味方です。大丈夫、見た目はちょっとアレだけど、危害を加えたりはしません。彼等も今日からこの領地の領民です。皆さんと対等の仲間だと思って接してくださいね」


 私は柔らかくそういうけど、両者の間には不穏な空気が溜まってる。獣人は人種を下と思い、人種は獣人を野蛮だと恐れる。この確執はそう簡単になくなる物じゃない。しょうがないよね。そういう世界だもん。けど、全く分かり合えない事はないでしょ。だって言葉は通じて、話も出来る。時間がきっと解決してくれる。私はお気楽にそう考えてた。

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